ドラゴンクエストXI 〜世界の創造主と勇者が過ぎ去りし時を求める話〜   作:しゃけ21

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エマとは村で別れちゃって、ベロニカとセーニャも当分居なくて、マルティナがまだまだ出てこないとして、加えて聖竜が性別不明となるともう現状のヒロインなんて一人しかいないんですよ。
そうデク!!お前だ!!!(絶対に違う)



十八話 勇者と竜と相棒との再会

 

 ちなみにデクの話によると、賄賂を受け取った後の兵士は、交代の兵士が下層から来るまでその場で待機しているらしい。

 なので自分達もそうしておこうと、いざ入り口に立ってみた訳だが……。

 

「……どうする? コレ」

『──ううむ……』

 

 べコンと凹んだ地面を見ながら、聖竜とその場にて渋面を作る。まるで「ここだけ爆発でもしたの?」ってくらい明らかに地面が抉れていた。隠すとかそういう次元じゃなかった。試しに足でチョイチョイやったが、なんかもう気休めにもならないのである。いやはや、どうしたもんかコレ。

 

「いやぁ……こればっかりはどうしようもないよね。水溜まりレベルで凹んでるし」

『──ええ。ましてやこの窪みを作ったのが生身の人間であると思うと、あなたって人は本当に……』

「ねぇその嘆き方やめてくれる? 人をそんな怪力バカみたいに」

『──いや『みたい』じゃ済まないレベルですってコレ』

 

 というか前から散々言ってるでしょうに。互いにぶつくさと文句を言いながら、はァ……とそれぞれにため息を吐く。イレブンは暇を持て余したようで、兵士から奪った槍を下ろしては作った穴をツンツンしていた。時折ガッと切っ先で刺したり、手をグリグリと捻ったりして地面の土をいじいじする。よっぽどすることが無いらしい。

 

『──ちょ、やめなさいよ土弄るの……子供じゃあるまいし』

「でも心はいつまでも少年だから……」

『──いやうるさっ。というかあのホント、あなたからそのちょいちょい出てくる謎の発言はなんなんですか? そもそも少年はこんなに地面抉らないんですケド』

「ヴゥ〜〜〜〜(言い返せないので心の叫び)」

「──隊長すみません! 戻るのが遅れ──ってなんですかその穴!? 掘ったんですか!?」

「ヴェッ!? あ、ああいや! その、これは、だな。ちょっと色々あったもんで……」

「え、色々って、それに兜も凹んで──っ!? ま、まさか隊長、例の商人と揉めてそこに……!」

「いや埋めてない埋めてない。まぁ埋めたけど」

 

 主に君の上司の人とか。とは流石に言わず、代わりに手をパタパタと振って伝えると、兵士から「ヒッ!」と悲鳴が上がった。本気で怖い時に出るやつだった。兜がベコベコに凹んでいたのも彼には恐ろしかったらしい。

 とりあえず長居する理由も無いので、イレブンは「あとは頼む」と短く伝えると、持っていた槍を兵士に押し付けてそのまま一人城へと向かう。元より気絶させた兵士の口調を知らない──そういうの聞く前にぶっ飛ばした──ので、必要に駆られる以外の場面では基本無口の方がいいだろう。

 

『ねぇなんかめちゃくちゃ穴見てるんだけど、あの兵士』

『──気にしたら負けです。早いとこ行きましょう。葬った兵士が起き上がる前に』

『いや『起き上がる』って……そんな〝くさった死体〟じゃあるまいし』

 

 などという至極どうでもいいやり取りを二言三言繰り返しつつ、「でも本当に殺っちゃってたらどうしよ……」と今更な事を思いながらも、イレブンはデルカダール城へと向かうのだった。

 

「うわ……隊長絶対やっただろコレ……」

 

 ──そして次の日「隊長が商人を土に沈めた」と兵士の間で噂になるのだが……それはまた別の話である。

 

 

 

 *

 

 

 

 その後城までの道を兵士(ぜん)として堂々と歩きつつ、その都度「お疲れ様です隊長!」と敬礼してくる兵士達──兜がベッコベコなのでみんなビビっていた。ええい喧しい──を「うむ」だの「おう」だのとテキトーに流して。

 

『さて、とりあえず城内に入れたワケだけど……』

 

 念の為辺りを警戒しながら、ひとまず人目を避けるようにして左側の通路を真っ直ぐ進む。

 このまま行けば最奥が地下牢獄だが、とはいえここは敵の根城。いつどこで敵に出くわすか分からない以上、終始油断は禁物だ。仮に下手をしてホメロスやグレイグ、魔王なんかに会ってしまえばその瞬間にお陀仏と言える。

 なので決して「ああここ左に曲がったら〝ちょうのはね〟あるな」とか考えてないし、「その先の〝プラチナソード〟回収したい」なんて専ら考えちゃいないのだ。ゼンゼン。決して。

 

『くっ、みすみす宝を逃すなんて拷問が過ぎる……!』

『──いや本音がダダ漏れちゃってますって』

 

 尤も聖竜にはバレバレなのだが。それでも大事なのは気持ちなので、こんな邪念まみれの勇者だとしても考えないよりはまだマシだろう。

 

「──あ、た、隊長! お疲れ様です!」

「うむ」

 

 そのまま真っ直ぐ進んでいると、丁度中間の客間辺り。T字路に差し掛かった道の途中で、一人の兵士と鉢合わせた。ビシッと音がしそうな程に完璧な敬礼を向けられて、イレブンも同じく反応を返す。案の定ベッコベコな兜に驚かれたが、まぁこれもスルーで良いだろう。面倒だし。

 

「……それは?」

「はっ! こちらは受刑者である盗賊カミュの食事になります! 本日の担当は自分ですので!」

「ほう」

 

 兵士の手に持つ食器を指差し、それから納得したようにイレブンが頷く。元より彼が食堂の方から来たので、会った時から気にはなっていたが……なるほど、どうやらそういう事らしい。

 試しに数歩ほど近付いた上で食器の中身をチラッと覗けば、そこには何と言うか、水のような薄い液体が器の半量ほど注がれていて。豆が一粒だけ浮いたようなそれに、いやうっっす! と聖竜共々驚きながら、誤魔化すようにしてイレブンがゴホンと咳払いをする。どう考えてもこの器の底まで見えるようなスープ(?)が美味い訳などないだろう。

 

「ン"ンッ、その……本日は私が持っていこう。貸してくれ」

「え? あ、いやいや! そんな隊長の手を煩わせるほどでは……!」

「いや、構わん。むしろ私がそうしたいのだ。頼む」

「? は、はぁ……分かりました。では」

「うむ」

 

 そう言ってイレブンは兵士から器を受け取ると、向こうが消えるのを見送った上で、止めていた歩みを再開させた。反動でこの水だかスープだかまるで分からん謎の液体が豆を中心にチャプチャプと揺れて、イレブンは改めて「うわぁ……」と呟くと不快感から顔を歪ませる。いやもうホントになんコレ、ほんとに。

 

『え、なに水? 水なの? コレ』

『──さぁ……それにしても、流石は魔王の統治国家ですね。受刑者に容赦が無いというかなんというか』

『いやそれにしたって酷すぎるって……』

 

 流石に無慈悲もいい所だろう。人に飲ませるスープというよりは、なんかもう「豆育ててる」みたいになっちゃってるし。

 一体何をどう料理したらこんな謎の汁が出来上がるのか。……いや、むしろ何もしていないからこそコレが出来上がったのかもしれない。ここまで行くともうただの白湯だ。確かに料理は足し算引き算だと一般にしてよく言われているが、それにしたって引き過ぎて。なに? ここの料理人夜逃げでもしたの? 旅を始めた頃の僕だってもう少し色々やってたんですが。むしろ毎日が足し算だったんですが。一口食べたら吐くスープとか匂いだけで吐くシチューとか。我ながら吐いてばっかだなおい。

 

『やっぱりデクさんの家で厨房借りといて正解だったね。流石にこれじゃ力付かないし』

『──ええ、それにただでさえ空腹は判断力を鈍らせるそうですからね。手紙を信じてもらう為にも、やれる限りの手は尽くしましょう』

『うん』

 

 イレブンはそれにひとつ頷くと、片手のスープ(?)を揺らしながらに地下牢獄へと早足で向かった。

 

 

 

 *

 

 

 

 牢獄の上層から階段を降りて下層へと進み、「お疲れ様です隊長!」と敬礼してきた見張りの兵士──一人で担当しているらしい。なにそれめちゃくちゃ好都合すぎる──を、適当にこれまた外(城のどっか)へと追いやって。

 

『アーやばいドキドキする。緊張で死にそう』

『──そんな恋する乙女みたいな』

『見た瞬間に叫んじゃうかも』

『──そんな幽霊屋敷みたいな』

 

 ズーヘーハーヘーと謎に呼吸を整えるイレブンを見て、聖竜が「重症だな……」と独りごちる。まるで告白五秒前みたいにガッチガチになるイレブンだった。だがそこからものの数秒ほどですっかり勇者の顔つき──兜をしていても聖竜には分かるらしい。理屈はさっぱり分からないけど──になったので、聖竜は「流石だなぁ」と思ったし、同時に「どうしてこれが常でないんだろうこの人……」とその場で酷くガッカリするのだ。「黙っていればカッコイイのに」を地で行くようなイレブンである。いっそ永遠に黙ってて欲しい。スキル:勇者行為(不法侵入&殺人未遂&強盗)だなんてギャップじゃ到底済まされないだろうに。

 

『──彼もあなたには苦労するでしょうね……』

『よし、行こう!』

『──あ、はい』

 

 どうやら腹が決まったらしい。聖竜のため息を早々に流しつつ(というか多分聞こえてない)、靴の踵をカツカツと鳴らしてはイレブンが牢屋内を進んでいく。やはり地下水路の影響なのか、足場のそこらに水が溜まっていてジャバジャバとなんとも歩き辛かった。もうフローリングとかにしたらいいのに。

 

「っ……」

 

 そしてそんな下らないことを考えつつ、「あれ牢屋ってこんなに広かったっけ」と独特な感想を抱きながらにいざ最奥まで足を運べば。そこにはフードを深く被った、見慣れたかつての相棒が居て。

 

「……」

「……」

 

 ギロ、と鋭く睨む視線に、イレブンがゆるりと口角を上げる。思えば彼からこのように敵意を向けられるのは、過去にも今にもこれが初めての体験だった。片や嫌悪、片や安堵とお互いに感情は真逆だったが、それでも今のイレブンにとってはそんなこと少しも関係無くて。

 

『──ようやく再会出来ましたね』

『うん……』

 

 つい名前を呼んでしまいそうになる衝動を必死に抑え込みながら、イレブンは大きく息を吸い込むと、牢の扉に数歩寄っては片膝をついて身を屈める。すると藁束に寄り掛かっていた盗賊──もといカミュが尚のこと睨んで来たので、イレブンはそれすら嬉しくなって更にニコニコと笑みを深めた。なんせカミュが無事に生きてさえいてくれれば最早なんでもいいイレブンなのだ。当分口角は下がりそうにないし、まさに兜様々だろう。

 そのまま床に器を置いて、膝に水が染み込むのも構わず、懐に入れていた手紙を取り出す。本当は持ってきた食事だったり水だったりを真っ先に渡してやりたいところだが、とはいえこれだけ親の仇みたいな目をしたカミュだ。こちらの信用がゼロである以上、仮に無理やり投げ込んだところで彼が口にする可能性は低い。

 

『とにかく、まずは手紙を……!』

「っ、」

 

 よって手紙から渡そうと思って、イレブンはそれを右手で挟むと、牢屋の扉を左手で握っては目一杯腕を真っ直ぐに伸ばした。突如外から伸びてきた腕に、カミュがぎょっとして僅かにたじろぐ。まさか接近してくるとは思わなかったらしい。

 しかしここで手紙を離してしまえば床の水やらで濡れてしまうので、イレブンは肩を入れて更に腕をぐんと伸ばすと、時折肘を曲げたり伸ばしたりしてはカミュに「受け取れ」と催促をした。向こうの怪しむ気持ちも分かるが、とはいえそこまで時間は無いのだ。お互いバレずに済ませる為にも急ぐに越したことはないだろう。そんな気持ちで腕を伸ばす。

 

『ぐ……き、きつい……!』

『──あともう少しです。頑張ってください』

 

 プルプルプルプルと腕が震える。聖竜もここが踏ん張りどころだと判断したようで、珍しくまともに応援していた。意外にも空気の読める聖竜だった。だがそれでもやっぱりキツいもんはキツい。体幹も同時に刺激されているし、このままではイレブンのあらゆる筋肉に更なる磨きが掛かってしまうだろう。僕もうこれ以上力要らないのに!

 

「っ……、っ……!」

「…………」

 

 するとそんなイレブンを見て、カミュもまた居た堪れなくなったらしい。それまで怪しんでいた様子から一転、「なんなんだコイツは……」と若干引いたような顔を浮かべると、けれど警戒心だけは剥き出しのままに、おずおずとイレブンの手紙を受け取る。埒が明かないと思ったのだろう。

 

「──なっ!」

 

 そしていざ手紙を開いた瞬間。視界に飛び込んできた「デク」の名前に、カミュは思わず声を上げた。それなりの声量が辺りに響いて、慌ててイレブンが「しー!」と口元に人差し指を立てる。いくら兵士がいないとはいえ、声に出すのは非常にまずい。カミュもまたそれを理解したようで、咄嗟に自身の口を手で覆うと、再度イレブンの方に視線を向けた。余程衝撃だったらしい。

 

「…………」

 

 尚もチラチラとイレブンを警戒するような目を寄越しつつ、けれど内容が気になるのか、カミュが手紙を読み進める。するとそこにはどこか見慣れた文字で、以下の文章が記されていた。

 字体からして本人(デク)のものだろう。

 

 ──カミュの兄貴へ。

 この手紙を読めているってことは、そこの兵士さんが無事に届けてくれたんだね。ひとまず元気そうで安心したよー。それと……兄貴、安心して! その人は悪い人じゃないよー! むしろ味方! カミュの兄貴を助けるために、わざわざデルカダールまで来てくれた兄貴の昔のお友達なんだって!

 

「はぁ?」

 

 思わずキレたカミュである。一応声は抑えたものの、溢れる怒気が凄まじかった。眉をこれでもかと寄せた顔には「お友達だぁ?」と書いてあって、またイレブンを睨むその眼差しから、「おいテメェまさかデクの奴を騙してるんじゃないだろうな」という苛立ちと、「俺にはそんなダチなんていねぇぞ」という怒りがそれはもうひしひしと伝わってくるのである。まさに疑い百パーセントって感じだ。

 一応怪しまれると不味い──そもそもレン自体偽名だし──という事で名前は伏せて貰ったワケだが、これで名前なんか出していた日には確実に話が終わっていただろう。聖竜がホッと息を吐く。

 

「……!」

 

 だが当のイレブンはそんな事これっぽっちも気付かなかったようで、カミュの視線にコクッと頷くと、彼の怒りを煽るようにして得意げに親指をグッと立てた。とりあえず雰囲気でやってみたらしい。察しの悪いイレブンである。

 だがまぁしかしそうなるのも無理はないだろう。なんせカミュが今どこを読んでいるとかそういうの全く分からないので。手紙ですし。

 

「〜〜っ……!!」

 

 おかげでカミュがマァ〜怒る怒る。けどそれにすらサムズアップを返すイレブンなので、もはや一種の煽り芸みたいになっていた。やはり彼はどこまでいっても残念で残忍なイレブンであるらしい。そりゃ聖竜も「あーあ」とガッカリするだろうに。(しかし面白いので助けてはやらない。コイツが一番の戦犯まである)

 

『ねぇカミュ今どんな感じ? 伝わってる?』

『──ええ、とても』

 

 しれっと嘘を吐く戦犯(セイリュウ)である、だがカミュがペースを狂わされていることもまた事実なため、無理やり丸め込むという意味ではあながち間違った方法でもなかった。

 要は脱獄のタイミングさえ調整出来ればそれでいいのだ。別に今すぐ仲良くなる必要も無いし、多少信頼を得る程度であれば手紙だけでも十分だろう。実際察しのいいカミュなだけあって、これがデク本人の書いた字であると向こうも理解しているようだし。

 

「……」

 

 などと聖竜が考えていれば。尚も親指を立てるイレブンの横で、不満全開の顔をしたカミュが、再び手紙を読み進める。どうやら彼に聞くのは無駄だと思ったらしい。誠に賢明な判断と言えよう。

 

 ──それでそこにいる兵士さん……カミュの兄貴のお友達がね、ワタシに言ったのよー。カミュの兄貴が穴を掘って、牢屋から脱獄しようとしてるんじゃないかって。

 

「!」

 

 カミュがまたしても目を見開く。そしてバッバッ! と手紙とイレブン、そして自身の掘っている穴──バレないよう(むしろ)を掛けて隠してある──をそれぞれに見ては、「ウソだろ……!?」という顔をしていた。まさに信じられないと言った様子だった。だが親指を立てるイレブンである。これでは流石に長丁場だろう。

 聖竜はそんな彼らをいよいよ見兼ねて、イレブンに『──とりあえず手紙を全て読ませてしまった方が良いです。彼まだ半分しか読んでないので』とひとつ助言をしてやった。イレブンはそれに「え、そうなの!?」と驚くと(※今更)、すぐに親指と人差し指を入れ替えては、カミュの持つ手紙をチョイチョイと指し示す。早く読めアピール(勇者ver.)らしい。

 するとカミュは脱獄を見透かされた事もあってか、今度は意外にも言われた通り、静かに手紙へと視線を落とした。そのまま真剣に読んでいく辺り、彼もまたこの状況を受け入れようと必死なのだろう。

 

 ──それでね兄貴、もし兄貴がこの兵士さんの言う通り本当に脱獄を考えているのなら……お願い! あと二日だけ、二日だけ待って欲しいのよー! そうすれば兵士さんの準備も整って、きっと兄貴を助けるために色々と動いてくれるから! 今は信じられないかもしれないけど、この人は本気でカミュの兄貴を救おうと動いてくれてるよー。ワタシが言うんだから間違いなし!

 

「…………」

 

 ──だから兄貴。ここはワタシを信じると思って、この人の言う通りにして欲しい。それにこの人言ってたのよー。兄貴には沢山の借りがあるって。カミュは命の恩人なんだって。ワタシ兄貴の昔のことはよく分からないけど……それでもこの人がウソをついているようには思えないよー。だって今もこうして兵士のフリをしてまで兄貴に会いに行ってくれたんだから。だからワタシはこの人を信じる! そして兄貴が戻ってくるのをワタシずっと待ってるから! それまでワタシもワタシに出来ることを精一杯やるよー! だから兄貴もガンバって! 応援してる!

 デクより

 

「デク……」

 

 カミュがその場でぽつりと呟く。そのままイレブンに視線を移せば、彼は今度こそ誇らしげな顔で、ビシッ! と親指を立ててみせた。それを胸に何度か当てたりしながら、心配するなと言わんばかりにあの手この手でジェスチャーをする。それがあまりにも適当だったので聖竜はやれやれとため息を吐いたが……まぁこれこそ気持ちの問題なので、とやかく言うのは辞めておくとしよう。

 

『──光の子よ。そろそろここが引き際かと』

『あ、うん!』

 

 聖竜の言葉にパッと頷く。それからイレブンは腰に下げた袋を取り出すと、中へ強引に手を突っ込んでは手当り次第にガサゴソと漁った。そうして食料や水を掴んでは両腕に溢れんばかりに抱える。例のカミュへの手土産というヤツだった。時間が限られていたのもあってあまり選別はしてやれなかったが、これで少なくとも二日は持つ筈だ。

 こうして手紙も読んでくれた事だし、今ならきっと受け取ってくれるだろう。

 

「はい、これ食べて」

「うおっ」

 

 急に喋ったので驚いたらしい。そこからイレブンが食べ物やら飲み水やらを次々にドサドサと牢屋に放れば、カミュは「ちょっ、バカ!」と小声で言って、慌ててそれらをバタバタと拾った。早くしないと濡れてしまうので一旦筵の端に寄せつつ、手元の藁束で隠したところでカミュが改めてイレブンを見やる。そこに警戒の色が無かったのは驚いた故か手紙の効果か。パッと見だけでは分からないので、答えは後日に回すとしよう。

 

「待ってて、カミュ」

「……!」

 

 ──必ず助ける。

 そう言って踵を返すイレブンを、カミュは貰った手紙を握りながらに見えなくなるまで眺めるのだった。

 




ちなみに聖竜はカミュの仲間入りを今か今かと待ち望んでいます。
勇者のお守りが一人増えるので。(そして最終的に勇者と聖竜のオカンになるカミュ)

カミュ(序盤)に使って欲しい武器は?

  • 片手剣
  • 短剣
  • ブーメラン
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