ドラゴンクエストXI 〜世界の創造主と勇者が過ぎ去りし時を求める話〜   作:しゃけ21

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こういう相手視点が三度の飯より大好き侍。
主人公があの通りイカれてるのでカミュがまぁ重いこと重いこと。差が酷い。



十八.五話 そして盗賊カミュは決意する

 

 ジャバジャバと水を蹴るイレブンの足音が遠くなり、やがてそれが聞こえなくなると、すぐに辺りが静けさを取り戻す。

 まるで嵐でも去った後みたいだ。見るからに変装していたようだし、時期に本物の牢屋番とやらがこちらに戻ってくるのだろう。

 

「……」

 

 なんだったんだろうか、アイツは。そんな思いで通路を見つめる。いよいよ幻覚でも見たのかと思ったが、とはいえ左手に握った手紙が確かな現実を訴えていた。

 それだけではない。扉に置かれた貧相な食事も、それとは反対に放り込まれた、大量の水や食料なんかも。全部が全部現実で、間違っても気の所為なんかじゃ無くて。

 

「……はぁ、」

 

 ……ったく、どうなってんだ一体。デクの手紙を見下ろしながら、ため息を吐いて後ろ髪をガシガシと掻く。すっかり調子を狂わされたのもあって、なんだか怒る気にもなれなかった。むしろまだ驚きの方が強くて他の感情が湧かないというか。それもこれもあの謎の兵士が色々とザツだったからだろう。

 などと考えたのが良くなかったのか、不意にグッ! と親指を立てる兵士(カレ)がカミュの脳裏をスッと過ぎって、それにようやくイラついていたら今度はぐる、と腹の虫が鳴った。踏んだり蹴ったりなカミュだった。いつもは滅多に鳴らない(仮に鳴っても気にならない)というのに、久々にまともな食べ物を見たせいで食欲が刺激されたらしい。

 しかしイマイチ手を付ける気にもなれなくて、カミュはもう一度ため息を吐くと、隠した食料ごと藁束をずらしてはドサッとそこに寄り掛かる。元より定位置は壁際だったので、こうして藁で追いやってしまえば兵士に見つかる事も無いだろう。……いやまぁ何よりも見つかっちゃいけない(モン)が、たった今一人にバレた訳だが。というか既に見破られてたし。

 

「ワケ分かんねぇ……」

 

 脱力しながら小声で愚痴る。確かに悪い奴では無さそうだが、とはいえ理解が出来なかった。

 実際デクも手紙に書いている通り、わざわざ手紙を渡す為だけに兵士に扮して地下牢獄(ここ)へ来るなんて、そう簡単に出来ることじゃ無い。そんなの馬鹿のやる事だ。捕まってしまえば終わりなのだし、自分だったらハイリスク過ぎてとてもじゃないがやらないだろう。

 だが……それでも奴はここに来た。無茶もリスクも承知の上で、それでも自分に会いに来たのだ。本当であれば手紙だけでも良かっただろうに、気を遣ったのか自分の食料や水まで持って。

 どうやら相当なお人好しらしい。正直デクは自分と違って少し優しすぎる節があるので、きっとただ手紙を読んだだけでは真偽を判別する事は出来なかっただろう。だがこうしていざ本人に会うと……会った後だと嫌でも分かる。理由があるから騙してるだけで、全ては善意から来るものなのだと。むしろ理解を得るためだけに、不要な嘘をデクについたのだと。

 

「……」

 

 牢の鞘へと視線を移す。そうするとすぐに思い出されるのは、先程兵士が言っていた言葉。不思議と安心してしまうような、「待ってて、カミュ」というあの言葉で。初めて呼ばれた筈であるのに、何故だか無性に懐かしく感じた。不覚にも泣いてしまいそうだった。

 だって前にも言われたような気がするのだ。常に隣を歩いていた誰かに。希望の宿った強い瞳に。「すぐに行くから待ってて」と。確かに。

 

「っ……」

 

 そこまで考えて、けれど頭に浮かんだ存在に、思わずハハ、と自嘲が零れる。そんな事を言われる資格など自分には無いと、一瞬にして思い出したからだ。それどころか、もしかすると自分が言ってやりたかった言葉を、あの兵士を通して都合のいいように自身に置き換えているのかもしれない。無意識に守っているのかもしれない。こんな自分を。弱い心を。……全くどんだけ酷い兄貴だよ、俺は。おかげで呆気なくこのザマだし。

 

「……」

 

 クシャ、と手紙を握り締める。だがもしも自分がそれを妹に……〝マヤ〟にあの時言えていたら。あの兵士みたいに力強い声音で、名前を呼んで手を取って。「お前を絶対一人にはしない」と、強く抱き締めてやれていたら。今頃二人で色んな世界を見て回る事が出来たというのに。

 

「マヤ……」

 

 気付くと彼女の名前を呼んで、下唇を噛み締めていた。考えたって仕方がないが、それでも考えなかった日など、これまで一日たりとも無くて。

 浮かんだ後悔を振り払うべく頭を数回左右に捻ると、罪悪感を紛らわすようにしてカミュが手紙を再び眺める。すると嫌でも目に止まるのは、やはりというかなんというか、デクの手紙の中盤付近。強調するような濃さで書かれた、「二日だけ待って欲しい」という部分だった。確かに書いたのはデクなのだろうが、とはいえそれを指示したのはきっと、言うまでもなくあの兵士なのだろう。

 ……あの野郎、また狙った数字言いやがって。再度ガサガサと髪を引っ掻きながら、カミュは筵をペラリと捲ると、自らが掘った穴を見つめた。それはカミュがここに来てから約一年、脱獄のためにと必死に掘ったものだった。まさか丁度あと二日もあれば完成だと思っていた矢先に、こんな事を言われるだなんて。

 ましてや「あと二日待って欲しい」という事は必然的に、「あと二日で完成させておけ」という兵士なりの暗示でもあるのだろう。なんだか「お前なら分かるだろ?」と言われているような気がして、謎の悔しさすら込み上げてくる。まるで自分がこういう時、つい期待以上に応えたくなってしまう性分を見事に見透かされている気分だ。どうやらあんなに適当な感じの癖して、実際はかなり強かであるらしい。──まったく、なんでもお見通しかよ。呆れたようにハッ、と笑う。

 

「……」

 

 正直言って、釈然としない部分は多々ある。あるのだが、それでも向こうが自分以上に何かを知っている事は確かだ。どの道一人でも逃げる気でいたし、幸い急ぐ旅でもないので利用する価値は十分にあるだろう。

 まるであの預言者みたいだと思って、ふと、貰ったお告げを脳内で唱える。

 

 ──伝説の宝珠を集め、いずれ地の底で出会う勇者にチカラを貸せ。さすればお前の贖罪も果たされるだろう。

 

「勇者……か」

 

 まさかアイツがそうだったりしてな。

 なんて事を一人思いながらに、カミュは手紙を懐へ仕舞うと、貰った食料に手をつけるのだった。

 




こうして彼は保護者への道を走り出すのである。
~完~

カミュ(序盤)に使って欲しい武器は?

  • 片手剣
  • 短剣
  • ブーメラン
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