ドラゴンクエストXI 〜世界の創造主と勇者が過ぎ去りし時を求める話〜   作:しゃけ21

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ハーメルン(運営)さんお疲れ様です。
命拾いしました。(主にデータが)
恐ろしいので載せておきます。いつも盛大に感謝です。
べっ、別に感想が嬉しくて筆が乗ったとかじゃ、そういうんじゃないんだからねッ! 違うんだから!(嬉しかったです。とても)
感想としおりをくれる方々に捧げます。二十二話です。



二十二話 勇者と竜と将軍グレイグ

 

 (およ)そ一日ぶりの地下牢獄は、相変わらず薄暗い上に空気が悪い。

 

「おら、さっさと歩け!」

「っ、はいはい」

 

 その中を兵士に押されながら、イレブンが渋々と言った様子で最深部までの道を歩く。

 チャプチャプと足元の水を蹴りつつ、現在彼が向かっている場所は地下牢獄の最下層。

 つまるところ、カミュがいる牢屋の真向かいであった。

 どうやら魔王の言いつけもあって──カミュの仲間というのもあって──、過去と同じく最奥の牢屋をわざわざ選んで頂いたらしい。

 きっと「最期くらい仲間に合わせてやろう」という魔王の悪知恵が働いたのだろう。

 

『いやもう本当ありがたいよね、手間も省けるし』

『──まぁ確かにあなたの場合、腕力で牢屋をこじ開けたりして騒ぎを大きくしかねないですからね……。近場で済んで幸いだったかと』

 

 安堵したように聖竜がこぼす。イレブンは「ええ? そんなバカな(笑)」と他人事みたく返事していたが、実際これが他の牢屋であったら確実に何かしらやっていたはずだ。

 今だって両手をパンパンと叩いては(さや)を「ふんぬッ!」とこじ開けるイレブンが目を閉じるだけで容易に浮かぶし、そういう意味でも近い牢屋で本当に良かったと心から思う。

 この勇者リアルにやりかねないので。時々ほんとにバカになるので。(そして聖竜にドン引きされる定期)

 

「そうだ。さっきは悪かったな、知将の事を悪く言って」

「うるさいぞ囚人! 私語は慎めッ!」

「別にいいだろ? 謝るくらい」

 

 思い出したようにイレブンが言うと、兵士達が「黙れ!」と吠えては手にした槍をキン! と響かせる。その音は更に木霊(こだま)となって、次第に辺りへと反響した。

 そのくらいには静かであるのだ。

 この地下牢獄と言う場所は、特に。

 

 「……」

 

 グレイグからの応答は無かった。それどころか彼は一切こちらを向かず、まるで自身の責務を全うするかのようにただ黙々と歩き続ける。

 話す気は無いという意思表示なのだろう。

 

「グ、グレイグ将軍!」

「……どうした」

 

 するともう時期カミュのいる牢屋に辿り着くだろうといったところで、奥から一人の兵士が駆けてきた。

 ピシッと敬礼の構えを取りつつ、ハキハキと状況を端的に述べる。

 

「はっ! 現在そちらの自首した盗賊の件で、罪人である盗賊カミュに尋問をしていたのですが……奴曰く『レン』などという知り合いはいないと……!」

「なんだと?」

 

 ようやくグレイグがイレブンを見た。眉は訝しげに中心へと寄っていて、少しだけ細められたその瞳には確かな怒りが込められている。

 そんな兵士の発言からして、案の定カミュが否定しているらしい。そりゃまぁそうなるわなと思いつつ、イレブンが努めて真顔を貫く。

 実際この兵士がどのようにしてカミュに尋問をしたのかは知らないが、どうせ「お仲間が助けに来てくれたぜ? 泣けるよなぁわざわざ、お前のために」とかなんとか適当を言って彼を意味もなく煽ったのだろう。

 そりゃカミュが「は?」ともなるわけだ。というより、もしかしたら彼は察した上で素直に答えているのかもしれなかった。

 そのくらいにはカミュは聡明で何かと気が付く男であるので。

 元より一昨日会った時点で彼に話は通しているし、ましてや今のカミュであれば尚のこと率直なリアクションが取れる。

 それを狙っての否定なのだろう。

 

「……案ずるな。ヤツが庇っている可能性もある」

「し、しかし……!」

「案ずるなと言っただろう。どの道牢屋に入れば同じ事だ。後はホメロスに任せればいい」

「……」

 

 まぁそれが一番ダメなんだけどね……。思いながら、イレブンが視線を左へとズラす。

 流石に口にはしなかったものの、とはいえついつい呆れてしまった。

 「あーあ」と思わずにはいられなかった。

 だってホメロスに任せたところで彼が(ほふ)るのはスライムであるし。家族も宝も全部ウソだし。

 それでもやはりグレイグはホメロスを心の底から信じているらしい。

 

「……」

 

 出来るなら助けてやりたいと思う。自分を助けてくれたグレイグを。仲間思いの優しい彼を。

 もちろん最終目的は邪神討伐だが、それでも最優先は仲間の幸せだ。自分が動いて変えられるのならやはり最善は尽くすべきだし、それがグレイグのためであるなら尚更尽力しなければならない。それがイレブンの願いでもあるのだから。

 まぁホメロスに関しては完全についでだけど。僕村のこと許してないし。(なんなら一生許さないまである)

 

「はっ! 承知しました! 失礼いたします!」

 

 またしてもお手本のような敬礼をグレイグにしながら、兵士がタタッと反対の方──すなわち地下牢の上層へと戻っていく。

 この通り考え事をしていてすっかり話を聞き逃したワケだが、まぁ彼が走った方向から察するに、自身の持ち場へと戻ったのだろう。

 

「一体何が目的かは知らんが、それでもお前は大罪人だ。大人しく牢屋に入ってもらうぞ」

「ああ、もちろん」

 

 グレイグの言葉に純粋に頷く。その際口角を上げたのが気になったのか、グレイグは一層眉を顰めると、イレブンを鋭くひと睨みしてから再び歩みを再開させた。

 カツカツと少しだけ早まったスピードに慌てて兵士達が歩幅を合わせる。

 だからってイレブンの背中を押すのは流石に理不尽が過ぎるだろうに。

 

「入れ」

「──っ……!」

 

 そうして例の牢屋へと到着するや否や、後ろの兵士がイレブンの背中を今日一番の力でドン! と押しやり……その反動で踏み出したイレブンを、今度はグレイグが受け取る形で牢の中へと強引に押し込んだ。

 カミュの存在を確認する間もなく──というか兵士とグレイグが邪魔で見られず──牢屋の扉がガチャン! と閉められ、彼らの方を振り向く頃にはカチャリと鍵を掛けられてしまう。それこそ取り付く島もなかった。

 いくらこちらが盗賊とはいえ、あまりにも扱いが雑すぎて。

 

「まったく……」

 

 これで僕がいざ無実だったら君たち一体どうする気だよ。

 イレブンはやれやれとため息を吐いて、不服だとばかりに眉を寄せた。

 なんならそもそも冤罪であるので不満に思うのも無理はなかった。

 理不尽さで言えばそれこそ過去の時と同等だ。慣れているのが余計に悲しい。

 包囲から解放された事もあって身体を適度に解していると、「余裕だな」と嫌味満載でグレイグが牢に歩み寄る。

 

「お前の言ったことが真実かどうかは、ホメロスが戻ればすぐに分かるだろう。家族とやらには会えるかもしれんが、お前の命もそれまでと思うがいい。……後ろで聞いてるお前もな」

「……」

 

 そして冷たい声で言い終えるなり、グレイグが背後の牢屋を睨む。イレブンは相変わらず兵士に阻まれて見えなかったが、けれどグレイグの口振りからして、カミュに言っているだろう事は間違いなかった。

 しかし何一つ返事を返さない辺り、どうやらカミュも思考を巡らせて状況の把握に努めているらしい。なんだか「俺は動かねぇぞ」と言われているような気さえしてきて、イレブンが思わず笑みをこぼす。

 ここまで舞台が整っている以上、話を切り出すなら今だろう。

 

「……はは、ご丁寧な忠告どうも。それじゃせっかくの忠告ついでに俺もいい事を教えてやろう」

「……いい事だと? ここに来て今更何を……」

「まぁそう目くじら立てるなって。──実はさっき言った話だけどな。あれは全部ウソだ。俺の作った話であって、本当の事はひとつも無い」

「……なに?」

 

 グレイグが再び眉を顰める。イレブンはそれにニヤリと笑うと、その場の全員に聞こえるようにして少しだけ声のボリュームを上げた。

 正直ホメロスも魔王もいないので心苦しさが尋常ではないが、それでも脱獄のためを思えばここで躊躇う訳にもいかない。

 聖竜の声援を耳に入れながら、努めて悪役然として振る舞う。

 

「なに、ちょっと意地悪したくなってな。信じて貰えるか賭けだったんだが、まさかこんなにもすんなり行くとは。今度知将が戻ったら言った方がいいぞ? 『お前顔に出すぎだ』って」

「──お前ッ!!」

 

 ガシャンッ! と牢の扉を掴まれる。グレイグは怒りに我を任せているのか、鍵が掛かっている事でさえ頭から抜け落ちているようだった。おかげで周りの兵士達がまぁビビることビビること。

 やはり施錠後に切り出して正解だったのだろう。

 それでも動じないイレブンを見て、更にグレイグが声を荒らげる。

 

「これまでの話が全部嘘だと!? ならさっきの家族の話はどうした! ホメロスをあそこに向かわせた理由は!?」

「言っただろ。意地悪したくなったって」

「貴様……ッ!」

 

 グレイグの手に更なる力が込められる。ガシャン、ガシャンと響く牢屋が彼の心情を物語っていた。仮に牢屋に入っていなければ今頃確実に殴られていただろう。

 それこそ斬られてしまったっておかしくはない。それほどまでに憤怒(ふんど)していた。

 自分が騙された事にではなく、あくまでも忠誠を誓った主と親友が欺かれたことに対して。

 そしてそんなグレイグが相手だからこそ、イレブンは狙って煽るような発言を目の前の将軍にぶつけるのである。

 お前ならきっと上手くやれると、むしろお前でなければ救えないのだと。

 そう遠回しにでも伝えてやるために。

 

「現にあの知将の顔を見たか? 人の弱みでも見つけたみたいに怪しく笑って、あんなのどう考えても人助けに行くようなヤツの表情(カオ)じゃないだろ。むしろあれは人が大切にしているものを、敢えて狙って奪うヤツの顔だ。ちゃんと見ていれば誰だって分かる」

「うるさいっ! 知ったような口を! お前にホメロスの何が分かる!?」

「違うな。分からないから嘘をついたんだ。少しでもヤツを遠ざけるために」

 

 なぜならそれこそが最善策であり、全員に都合が良かったのだから。

 魔物にしたって人にしたって、自分に危害を加えそうな相手をわざわざ傍に置くことはしないだろう。

 これは何にでも言えることだが、邪魔なら最初から排除すればいいのだ。そうすれば一時(しの)ぎだろうとなんだろうと、考えるだけの時間が生まれる。対応するための作戦が練られる。

 

「……ま、そんなに知将を悪く言われたくないのであれば、自分の目で見て確かめればいいさ。尤も向こうは既にここを発っているだろうから、今から追うんじゃ間に合わないだろうが」

「っ、貴様……!」

「ああでも将軍様なら追い付けるかもしれないな。足の速い馬がいるって聞いたし」

  

 変わらずイレブンが追い討ちをかける。それは偏に「グレイグじゃなけりゃ追いつけないぞ」と暗に伝えるようなそれだった。

 もちろんグレイグを救ってやりたいという気持ちも十分にあるが、とはいえこちらも脱獄する身。現在最も優先すべきは自分とカミュの命なのだ。

 ましてや自分が来たことによってカミュの処刑まで決まってしまったし(これは完全に想定外だったが)、ここはどうにかグレイグを(そそのか)して上手いこと脱獄を図りたい。ホメロスが怪しいと察した上で、あわよくば後を追いかけて貰いたい。

 過去に嫌な予感を覚えて、イシの村の民を救ってくれたように。

 ……まぁとはいえ、あまりグレイグに助言をすると変な方向に突っ走りかねない──最悪ホメロスと魔王に殺られてしまう可能性だってある──ので、最悪はここに残ってもらってもそれはそれでまぁ構わないけれど。

 なんにせよその辺の判断はグレイグに任せておくとしよう。

 どの道彼が残ったところで今のイレブンの敵ではないので。

 

「っ、黙って聞いていればふざけたことをッ……!」

「ふざけ? とんでもない。俺は至って真面目に話してるつもりだ。……というか、実際俺がふざけているかどうかはそれこそ知将次第だろうな。これで俺の勘が間違ってたらその時はいっそ好きにしてくれ。そこに座ってる盗賊ともども首を刎ねてくれたって構わない」

「──なっ、おい!」

 

 挑発するように笑って言えば、途端に向かいの牢屋から焦ったような声が聞こえた。

 それまで静かにしていたというのに、どうやらいきなり引き合いに出されて思わず耐えきれなかったらしい。

 それにすらイレブンがくすくすと笑って、思い出したように言葉を継ぐ。

 

「ああ、ちなみにそこにいる盗賊の仲間っていうのだけは本当だ。オーブの件でも協力したし、俺はそいつの共犯者で間違いない」

「……」

 

 グレイグが真意を見定めるようにしてイレブンを睨む。

 幸いカミュも空気を読んだようで、ただだんまりを決め込むだけだった。

 もしかすると今頃「嘘ついてんじゃねぇよッ……!」とフードの下で怒っているかもしれないが……だからってここでも嘘を吐くといよいよ本当に冤罪になるので、悪いが流して貰うしかない。

 お説教なら後からいくらでも聞いてやれるが、脱獄のチャンスは一度きりなのだ。

 今も脳内に浮かぶピースを一生懸命繋ぎ合わせてどうにか対峙しているイレブンにとって、カミュの機嫌まで配慮するのはそれこそ不可能に近いと言えよう。

  

「まぁなんにせよ、知将を追うなら早いとこ出ていった方がいいぞ。あの様子じゃ道中でさえ何するか分かったもんじゃないし」

「貴様、ここに来てまだホメロスの侮蔑を……!」

「侮蔑じゃない。これは〝事実〟だ。そもそもあなたは何をそこまで意地になってるんだ? 本当に知将がそんな奴じゃないなら俺の話なんて流せるだろうに」

「っ!」

「とにかく。俺を黙らせたいんならさっさと知将を連れてくるんだな。どの道俺は出られないんだ、せいぜい震えて待っててやるさ。『それ見たことか』って得意げな顔をする将軍サマの姿でも思い浮かべてさ」

「……」

 

 牢を掴むグレイグの手が僅かに緩む。確かに煽られていることに変わりはなかったが、とはいえ最後の一言だけはどことなく違うニュアンスを感じた。

 期待するようなそれだったのだ。

 まるで「そうであって欲しい」、「そうだったらいいな」とある種の希望的観測のようなものがひしひしと込められているような気さえして、グレイグが対比で言葉を詰まらせる。

 一瞬それすらも嘘や演技であるのかと疑ったが、少なくとも自身の命が懸かっている人間がこのような発言はしないだろう。

 

「お前は、一体……」

 

 だからこそ目的がよく分からなくて、グレイグが瞳に困惑の色を乗せる。

 だがイレブンは答えることもせず、ただ相も変わらず真っ直ぐな目でグレイグを真剣に見つめるのみだ。

 それが「もう話すことは無い」という意味であることを分からないほどグレイグも馬鹿では無かったので、彼もまた同じくイレブンと視線を交わらせると、掛けていた牢から手を離しては踵を返して歩き出すのである。

 時間がないのはお互い様だろう。

 これから彼が何を思って、どう行動に落としていくのか。推し量る事こそ不可能ではあるが、それでも彼がイレブンという人間を視野に入れ、認知し、警戒すべき相手としてカテゴライズした事には違いない。

 

「……今に見ていろ。すぐにホメロスを連れてきてやる」

 

 そう言って城へと歩き始めたグレイグに、イレブンはやはり口角を上げると「はいはい行ってらっしゃい。元気でな」と小さく笑って返したのだった。

 




カミュめちゃくちゃハラハラしながら話聞いてそう。

カミュ(序盤)に使って欲しい武器は?

  • 片手剣
  • 短剣
  • ブーメラン
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