ドラゴンクエストXI 〜世界の創造主と勇者が過ぎ去りし時を求める話〜   作:しゃけ21

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 六話目です。
 なかなか主人公が村を出なくて笑ってます(笑うな)


六話 勇者と竜ともう一人の祖父

 大木の根に触れながら、例のイメージを頭に思い浮かべる。

 

『──ここは……』

「え……?」

 

 だが不意に聞こえた聖竜の声に、イレブンはそれまで閉じていたまぶたを開いた。なんだか視界が明るくて眩しい。何度か瞬きをして目を慣らすと、映った景色に目を見開く。

 

「なんで……」

 

 ──気付くとイレブンが立っていた場所は、イシの村の南に位置する、川の桟橋の上であった。若干造りが新しい辺り、どうやら大樹の記憶を見ているらしい。

 そこからハッとしたように前を向けば……すぐに過去の時と同様、本来いるはずのない背中が映って。

 

「っ、じいちゃん……」

 

 少し遠く、桟橋の先方にいるもう一人の祖父を見ながら、感慨深さに目を細める。まさか会えるとは思っていなくて、それこそ不意打ちの邂逅だった。

 イレブンが驚くのも無理はないだろう。

 

『ねぇ聖竜……これって』

『──いえ、私にも分かりません。想定では過去を見たりせずとも力を取り込めるはずだったのですが……なぜかあなたの手が触れた瞬間、根が輝いていつの間にかここに』

『え……じゃあこれ意図的じゃないってこと?』

『──はい』

 

 と思いきやそういう事らしいので、どうやら単なる異常事態(イレギュラー)のようだ。その上聖竜ですら分からないのだから、よっぽど特殊なケースと言える。

 

『そうなんだ……え、じゃあもしかしてこれまずい感じ? 何か問題とかあったりする?』

『──いえ、これはあくまでも大樹の記憶なので私たちに害はありません。原因は未だに不明ですが、通常の大樹の記憶と同様、終わればあなたの精神もまた元の身体へと戻るでしょう』

『そっか、良かった……じゃあ戻ったらまた試せばいいんだね。次は上手くいくかもしれないし』

 

 そうお互いに結論付けて、イレブンは再度前を見据えると懐かしい背中を遠目から眺めた。当時はあんなに大きかったそれが今ではなんだか小さく思えて、懐かしさを孕んだその雰囲気にぐっと込み上げるものを感じる。こうして会うのはいつぶりだろう。

 一歩一歩と近付いていくも、なかなか気付く様子は無くて。手を伸ばせば届くぐらいの距離に来たところで、ようやくイレブンが歩みを止める。

 

「テオじいちゃん」

「うん?」

 

 そして彼の名前を呼べば、テオはゆっくりとこちらを向くなり……うおっ! とその顔を驚愕に染めて、少しだけ腰を仰け反らせた。驚かせすぎてしまったらしい。そのまま下がられると川に落ちてしまうので代わりにイレブンが数歩下がれば、テオはイレブンの全身を眺めた後、呟くようにしてほぉ、と唸る。

 

「……お、驚いたわい。まさか大きくなったイレブンがいるとは……」

「っ……」

 

 なんだかこの会話だけでも泣きそうだった。すごいね、やっぱり分かるんだ。と、そう言葉にしようとして、けれど喉元に引っかかる何かが声に出す事を適わなくさせる。自然と目元が滲み始めて、代わりに深い頷きを返した。

 一方テオは当てられたことが嬉しかったらしい。

 

「ははは、そうじゃろうな。赤ん坊の頃から面倒を見てきたんじゃ。わしには分かるわい」

 

 そう得意げに胸を張られて、またしても涙腺が緩み始める。亡き義祖父にそんな事を言われてしまっては泣かずにはいられないだろうに。

 

「っ、じいちゃん……」

「どうしたどうした。そんな顔をして」

「だって……じいちゃんに会うの久しぶりだから。見てたらなんか、感動しちゃって」

「イレブン、お前……」

 

 目元を拭いながらに言うと、テオがすぐさま察したように険しい顔をイレブンへ向ける。それに力なく笑って見せれば、彼は「そうか……」と短く呟いてから、納得したように目線を下ろした。元々寿命が原因だっただけに、思い当たる節でもあったのだろう。

 

「……なるほど。どうやらお前さんはわしがいなくなった後の未来からやってきたようじゃな。加えてかなり壮絶な人生を歩んでいるらしい」

「うん……まぁ、なかなかね。というかすごいね。そんな事まで分かるんだ、じいちゃん」

「ははは、言ったじゃろう? 赤ん坊の頃から見てると。イレブンの事ならなんでも分かるわい。そうじゃな……例えば今のお前さんにとって、わしの助言はもう必要そうにない、とかもな」

「……! それって……」

「なに、もう知っているのじゃろう? 三角岩の前にわしが隠した事も、その中身も」

「……」

 

 観念したようにコクリと頷く。どうしてそんな事まで……なんて、聞いたところで無駄なのだろう。

 

「うむ。どうやらお前さんはわしが知っている以上にこの世界や情勢に詳しいらしい。昔はあんなにやんちゃだったが……立派になったな。イレブン」

「っ、じいちゃん……そんな、立派だなんて、全然」

「はは、そう自分を卑下するもんじゃない。わしは未来の事はよく分からんが、それでもお前さんがどれだけ大変な思いをしてきたかはその顔を見ればよく分かる。きっと沢山悩んで傷ついて、それでもその度にまた前を向いて、ここまでやってきたんじゃろう? 本当にわしの自慢の孫じゃよ。お前さんは」

「っ……じいちゃん、僕は、本当はもっと、あなたに……」

「よせよせ。いいんじゃよ、わしの事は。お前さんやエマがすくすくとこの村で育っていくのを見れて、それだけでもわしは十分幸せなんじゃ。これ以上はバチが当たるわい」

「じいちゃん……」

 

 はははと朗らかに笑う姿を見て、イレブンがますます眉を下げる。それこそ子供の頃は考えたこともなかったが、それなりに経験を積んだ今では強く思うのだ。もっと色々してやれたのになと。「ありがとう」だとか「好き」だとか、そういう感謝の言葉を沢山、伝えてやれたら良かったのにと。

 

「僕も……僕の方こそ、拾ってくれたのがじいちゃんで良かった。この村で育てて……愛してくれたのがじいちゃんで、本当に」

「イレブン……」

「前にね、じいちゃん僕に言ってくれたんだ。『人を恨んじゃいけないよ』って。その言葉のお陰で僕、今もこうして前に進めてる。皆のおかげでここに立ててる。勇者を創ったのは世界だけど、僕を作ってくれたのはじいちゃんだ。だから本当にありがとう。僕もじいちゃんの孫で幸せだよ」

「…………」

 

 テオが何度も首を縦に振る。目の端には薄らと涙が滲んでいて、思わずもらい泣きしそうになった。言葉はぐちゃぐちゃになってしまったが、それでもエマが言っていたように、過去の自分が言えなかった分も精一杯口にしたつもりだ。悔いがないといえば嘘にはなるが、それでも言わないよりはマシだろう。

 

「本当にわしは良い孫をもった。こんなにも言って貰えるなんてまさに果報者じゃ。拾って育ててみるもんじゃわい」

「いや育ててみるって、そんな果物じゃないんだから」

「ははは、すまんすまん。つい嬉しくてのう」

『──……』

「それで……そちらはお前さんの仲間か?」

『──!』

「そちら──って、え? 見えるの? じいちゃん聖竜が?」

「いいや? 実際には見えとらん。ただこう……お前さんの中に何かいるようなきがしてな。ふと気になったもんじゃから」

「…………」

 

 思わず呆気に取られてしまう。聖竜も非常に驚いたようで、『──なんと……』とぽつりその場に零してはそれ以降ずっと沈黙していた。イレブンも涙が引っ込んだほどだ。どうやらイレブンを拾った豪運──この場合豪運なのはイレブンの方かもしれないが──も去ることながら、その目利きも大したものであるらしい。

 確かに昔はトレジャーハンターとして、世界をまたにかけて旅をしていたというが……なんにせよ聖竜の存在を見抜いたのだから驚きだ。流石は勇者を育てた義祖父と言えよう。

 

「それでどうなんじゃ? 仲間なんじゃろう? お前さんの」

「え? あ、ああうん、そうだよ。大事な仲間。まぁ訳あって身体ごと一緒に行動してるんだけどね、世界を創った人なんだ。ある意味勇者(ぼく)の第三の親的な」

「ほうほう、そうか。世界を……──ん? 世界?」

「そう。ロトゼタシアの」

「な、なんと!? それは本当か! イレブン!」

「うん、本当だよ。……あ、でもこの場合世界を創ったのはまた別の聖竜だから、今僕と一緒に行動してるのは……って、説明するとややこしいか。とにかく凄い人なんだ。人というか竜というか、まぁそんな感じ」

『──随分と雑な紹介ですね……とても納得して貰えるとは思いませんが……』

「ほう……こりゃたまげたわい。不思議な事もあるもんじゃのう」

『──するんですか……』

 

 思わず呆れる聖竜である。やはりイレブンの育て親なだけあって、なんというかこう、適当加減が非常に似ていた。なんなら第二のイレブンだった。なぜか今ので理解したらしい。

 とはいえ時間もあまりなさそうなので、まぁ説明する手間が省けたと思えばこれはこれで良かったのだろう。

 

「それで聖竜さんと言ったか。何かと迷惑かけると思うが、わしの孫をよろしく頼みます。不器用だけどいい子じゃからな。きっと戦力になるじゃろう」

「じ、じいちゃん……」

『──ええ、こちらこそよろしくお願いします。勇者……及び光の子は私が全力で支援する所存ですので』

「えーと、なんか親同士の会話みたいだな……とにかく聖竜がこちらこそだって。あとなんか僕を支援してくれるって言ってる」

「ははは! それは心強いのう。世界の創造主が味方となればじいじとしても安心じゃわい」

 

 心底楽しげに声を上げながら、テオが安心したように微笑む。イレブンとしては通訳みたいでなんだか複雑な気分であったが、それでも聖竜が認められたみたいで仲間としても嬉しかった。テオのようなケースは恐らく稀だが、それでもいつか皆にもこうして紹介出来る日が来るんだろう。

 もう少し話していたいと思って更なる話題を振ろうとすれば、けれども時は残酷らしい。

 

「! じいちゃん、身体が……」

『──どうやら時間のようですね……』

「そんな……」

「ん? おお、そうかそうか、もうそんな時間か。つい年甲斐もなくはしゃいでしまったのう」

「…………」

 

 徐々にテオの身体が透け始めて、やり場のない悔しさから顔を落とす。重々分かりきっていた事だが、それでも別れは辛いものだ。

 ましてや今度こそ本当に二度と、もう会う事は無いのだろう。

 

「イレブン」

「……!」

 

 ぽん、と頭に手が乗せられる。テオが背伸びしているのが分かって、慌ててその場に片膝をついた。そのままぐりぐりと撫でられていれば、次いでぎゅ、と抱き締められて。僅かに体温が伝わるそれに、ハッとして同じく抱き締め返す。

 透けているから無理かと思ったが、幸いにもまだ自由は効くらしい。

 

「胸を張れ、イレブン。お前さんはわしの自慢の孫じゃ。辛いことも沢山あるじゃろうが、それでも前を向いて生き抜け。そうすればきっと、いつか報われる時が来る」

「っ……うん、うん。頑張るよ、僕。ありがとう、じいちゃん」

「なに、幸せになるんじゃぞ」

「うん──ありがとう」

 

 そうして最後にお礼を伝えれば、回した腕が空気を掠めると同時に、眩い光に包まれて。

 

「──っ! ここ……」

『──戻ってきたようですね』

「うん……」

 

 目を開くなり見えた景色に、わかっていながらも足元を見る。先程まで木の造りだった桟橋は緑溢れる草原へと変わり、晴れていた空は夜空となって月の明かりが村を照らしていた。触れていた大木の根もいつの間にか手を離していたようで、役目を終えたと言わんばかりにその輝きを内へと収めていく。しん、と静まった空気が物悲しい。仮にもう一度触れたところで、同じ光景は見られないのだろう。

 

「っ……」

『──大丈夫ですか?』

「うん、平気」

 

 袖でごしごしと涙を拭う。別れの余韻が残っていたようで、思わずはは、と笑みを零した。『──不思議な人でしたね』と言われて、なんだか可笑しくて追加で吹き出す。なんせ不思議そうに言うというよりは、本当に「なんだったんだアイツは……」みたいな感じで聖竜が言うからもう面白くて面白くて。

 

「はー……まぁ確かに変わってるよねじいちゃんて。理解力半端じゃなかったし」

『──ええ、随分と心の広い方でした。あなたを育てたというのも納得です』

「ええそう? ……まぁでもそう思ってくれたんなら嬉しいかな。聖竜の事も紹介出来て良かったよ。じいちゃん元トレジャーハンターだからお宝とか世界の神秘とか大好きでさ。きっと聖竜のこと知れて嬉しかったと思う」

『──そうですか……過去を見たのは想定外でしたが、であれば結果的には良かったのでしょう。人の想いというのは時に、いい意味でも悪い意味でも作用しますから。もしかするとあの方の想いが大樹を通して、あなたと彼とを巡り合わせたのかもしれません。あなたに何かを伝えるために」

「そっか……」

 

 もしそれが本当だとするなら、きっとテオが伝えたかったのはイレブンへの愛情なんだろう。胸を張れ、生きろ、幸せになれと沢山の言葉をテオはイレブンに残してくれた。返せたかどうかは分からないけれど、それでも届いたと信じたい。そしていつの日か世界を救って、この村に帰ってきた時はちゃんと。そんな思いで拳を握る。

 

「──よし。じゃあもう一度やってみよっか」

『──はい』

 

 そしていざ、大樹の根へと手を乗せれば。イレブンのアザが光るのにあわせて、根に刻まれた模様も同じく呼応するように輝き始める。さっきの過去に飛んだ時とは明らかに違う輝き方だった。今度はちゃんと意識もあるし、ひとまず上手くいっていると見て良いだろう。

 

「どう? 出来そう?」

『──ええ、これならば問題なさそうです。ですがもし途中で身体の異変を感じた際は即座に私へと伝えてください。……いいですか、嘘や堪えるのも禁止ですよ。文字通り即ですからね、即』

「な、なんかヤケに疑り深いな……別にそんな事しないのに」

『──一体どの口が言っているんですか……。つい先程まで『死んでもいい』と思って、あまつさえ隠していたような人間なのですよ? 疑わないわけがないでしょう』

「いやだからそれについては悪かったって! でもちょっと痛いだけなら本当に」

『──いいですね、〝絶対〟ですよ』

「聞いてないし……」

『──それとも条件が呑めないのであれば仕方ありません。この話自体無かったことにして他の方法を──』

「あー待った待った! 分かったよ言う! ちゃんと言うから!!」

 

 尚も根に手を触れさせながら、イレブンが慌てて声を荒らげる。すると聖竜もようやく納得したようで、最後に念押しで『──絶対ですよ(二回目)』と付け加えると、例のイメージを浮かべるようにすぐにイレブンへと指示を出した。すっかり扱いの慣れた聖竜である。どうやらイレブンに一番効くのは脅しであると学んだらしい。

 それにイレブンはうんうんと頷いて──これ以上聖竜を怒らせるとろくな事にならない気がして──、言われるがままに目を閉じた。

 そうしてひたすら考えるのだ。ええと、吸い込む、吸い込む……前にベロニカやロウ爺ちゃんが使ってた〝マホトラ〟みたいな感じ……。と。懸命に。

 

「う、わ……!」

 

 するとすぐに自分の手から腕を通って魔力にも似た力が流れ込んでくる感覚がして、イレブンはイメージを続けながらもその新鮮さに驚きを漏らした。

 全身の筋肉が活性化し、体内の血の巡りが良くなったのか、心臓がドクドクと早鐘をうつ。色んな考えが脳を巡って、まるで戦闘中のような感覚だった。だが言っても所詮はその程度のみで、特に身体の異変もなければ、気分が悪くなったということも無く。

 あれ? と不思議に思っていると、聖竜がイレブンに声を掛ける。

 

『──もう少し時間が掛かりそうですが……身体の方はどうですか? 痛みや不調を覚えたりなどは……』

「いや……? 今のところは何もなさそう。というかむしろ元気? なのかな。なんか身体が暖かい感じ」

 

 なんなら絶好調まであるだろう。心做しか集中力まで上がったような気がするし、感覚としては〝ゾーン〟に近い。空いた右手を胸に当てると、聖竜がホッとしたように息を吐く。

 

『──そうですか……ですがまだ油断は禁物です。最後まで気を抜かぬようお願いします』

「うん、分かった。ちなみにそっちは? 大丈夫そう?」

『──ええ、こちらは順調です。このまま行けば問題なく力を取り込めるでしょう』

「そっか、了解」

 

 そういう事であれば安心だ。とはいえ聖竜も少なからず負担はあるだろうし、早いとこ終わらせるに越した事はないだろう。再びぎゅ、と目を瞑りながら、改めて念を送り続ける。

 ──そこから凡そ一、二分もすれば、どうやら無事に取り込めたらしい。

 

『──……完了です。問題ありません』

「ん、良かった」

 

 安堵の息を漏らしつつ、聖竜に許可を貰った上で光の収まった大木から手を離す。先程まで輝いていたアザも今ではすっかり元に戻っていて、慌ただしかった心臓の鼓動も気付けば正常になっていた。きっと緊張でもしていたのだろう。

 正直大樹の根が光ったことで村の皆が気付くんじゃないかとヒヤヒヤしていた部分もあったが……その辺りも聖竜の力かなんなのか、とにかく杞憂であったらしい。

 それでも明日のことを考えるとあまり長居もしていられない──というよりペルラに心配をかけられない──ので、ここはひとまず帰るのが得策だ。今しがた得た聖竜の力は家でゆっくり聞くとしよう。

 

「──さて。じゃあお互い用も済んだことだし、一旦家に戻って話を──っ」

『──!』

 

 しよう、と言おうとして振り返った途端、バランスを崩して両膝をつく。幸い手を着いたので怪我は無かったが、まるで自分の脚じゃないみたいに重くて力が入らなかった。

 ──脚だけでは無い。気付くとなんだか身体も怠くて、あまりの眠さに目まで霞んでくる。連動して着いている手も肘が折れ曲がりそうになり、気を抜くと今にも倒れてしまいそうだった。さっきまでは全然そんな感じもなかったというのに、今では襲い来る疲労感が尋常じゃ無くて。

 

『──光の子よ、大丈夫ですか!? やはり具合が……!』

「っ……」

 

 切羽詰まったような聖竜の声に、目を擦りながらもなんとか応答する。というより話していないとダメなやつだった。今も殆ど頭が働いていないし、倒れるのも時間の問題だろう。

 

「い、いや……僕自身は全然、大丈夫なんだけど……なんだろうこれ、疲れなのかな……とにかくすっごい身体が重くて……」

『──……もしかすると大樹から力を取り込んだ際のエネルギー消耗が激しかったのかもしれません。他に痛みなどは感じますか? 頭痛や吐き気などは……』

「ああいや……うん、平気、大丈夫……ただなんかもう、めちゃくちゃ眠い……」

 

 今にも寝そう……。とフラフラな脳でそれだけ言えば、聖竜が一段と慌てた様子で『──ここで寝るのはまずいです』と呼び掛ける。対するイレブンはほぼほぼ限界で、今にも支えた両手が崩れてその場に寝転がってしまいそうだった。だがそれでも流石に寝るのはマズイと懸命に脳が訴えているようで、イレブンは残る力を振り絞り立つと、家までの道を(時に転んだり這いつくばったりしながらも)何とか歩く。いくら自分の故郷とはいえ、こんな村のど真ん中にて醜態を晒すわけにはいかないだろう。

 

『──光の子よ、もう少しです』

「う、うん……」

『──ああ、違います、そちらではありません。まっすぐです、まっすぐ』

「うん? ああ、うん……」

 

 けれども意識は僅かほどしかなくて、聖竜の言葉も満足に聞けずにふらふらと頼りない足取りを見せる。見た目だけなら完全にスイカ割りだ。これが仮にも〝ラリホー〟であればまだ〝目覚めの花〟で解決出来たのだが……疲労からくる眠気ともなれば全く以て話は別だろう。一応補助として使えるように〝ひのきのぼう〟を持たせてはみたが、それでも棒ごと転んでしまってはいくら聖竜とて手の施しようが無くて。

 

「っ──あでっ!」

『──ああほら、言わんこっちゃない……!』

 

 この通り何度も躓いては膝をつくイレブンを見ながら、焦ったように声を掛け続ける。まるで保護者のような聖竜だった。きっとテオが今の二人をみたらそれこそ笑うに違いない。これではどっちが世界の救世主だか分かったものではないだろう。

 

「た、ただい、まっ……」

「あっ、ちょっとイレブン! あんた一体こんな時間まで外で何を──って、ちょっと、どうしたんだい! イレブン、イレブン!?」

「も……むり、寝る……」

「いや寝るってあんた、寝るならせめてベッドに……ってもう寝たのかい!? ちょっと! 起きなイレブン! こんな入口で寝るんじゃないよ!」

「ゔ、ゔぅ……」

 

 そしてペルラのお叱り──イレブンからすれば魔王より邪神より何より怖い──を受けながら、朦朧とする意識の中をどうにか抗ってベッドまで這いずる。

 それに聖竜は『──まさか本当に這い蹲る事になるとは……』と思いながらも、無事にやり遂げたイレブンに対して労りの言葉を投げるのであった。

 

カミュ(序盤)に使って欲しい武器は?

  • 片手剣
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