ドラゴンクエストXI 〜世界の創造主と勇者が過ぎ去りし時を求める話〜   作:しゃけ21

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八話目です。
聖竜は狂ってるくらいが丁度いいんだなと思う今日この頃。


八話 勇者と竜と断髪式

 桶に溜まった水を持ち帰り、聖竜と変わらず中身が皆無の会話をしながら、ペルラの作った朝食を食べて。

 

「ほら、イレブン。受け取り」

「おお……」

 

 やれそろそろ支度でもしようかと椅子から立ち上がり準備をすれば、笑顔のペルラが持ってきたのは紫のロングベストであった。例のエマに怪しまれたヤツである。

 だがそっちはどうにか小さく畳んで袋の奥底に押し込んだので、多分今彼女が持っているのは所謂新品のやつだろう。

 

「なんたって息子の旅立ちだからねぇ。このくらいの事はしてやらないと」

「っ、母さん……! ありがとう! 早速着てもいい!?」

「いいや! ダメだ」

「えっ」

 

 思わぬ否定に声が出る。感動のシーンかと思っていただけに、なんともマヌケな「えっ」だった。ここで拒否なんてとんだ裏切りだ。どういう事かとペルラを見れば、彼女は何やら腰に手を当て、怒ったように眉を寄せている。なにか不満でもあるらしい。

 

『……え、なに、なにこれ。僕なんかした?』

『──まぁ何かしないとこの顔はされないかと』

『いや冷静に分析してる場合じゃなくて! というか『何か』ってなに!』

『──さぁ……照れ隠しではないですか? 息子の旅立ちが悲しくて〜みたいな』

『いやどっからどう見ても悲しそうじゃないでしょ! むしろ怒ってるまであるでしょ! 睨まれてるし!』

『──そういうタイプの照れ隠しかと』

『人の親タイプ分けするのやめてくれる!?』

 

 そもそも照れても隠れてもいないし! 相変わらず適当な──というより思考回路がおかしい──聖竜に反論しつつ、イレブンがわたわたと分かりやすく慌てる。するとペルラがずんずんと〝キラーマシン〟の如く眼光を光らせてやってきたので、イレブンは「ヒェッ」と悲鳴を上げるとその場から数歩後ずさった。するとまたしてもペルラがずんずんとエンドレスしながらやってくるので、イレブンはいよいよ撃たれる──目から出るビーム的なアレ──気がして「ごめんなさい!」と謝るのである。本物のキラーマシンよりも怖い母だった。彼女には一生勝てる気がしない。

 

『──まるで〝ギガンテス〟ですね……』

 

 また聖竜(コイツ)聖竜(コイツ)で到底役に立ちそうもない事しか言わないため、実質この場にイレブンの味方などもはや居ないに等しいのである。というか人の母親をギガンテス呼ばわりしている時点で失礼だろうに。

 

「イレブンあんた!」

「はい! すいません! 本当に反省して──」

「一体なんなんだい!? この髪の毛は!」

「……へ?」

「『へ?』じゃないよ全く! こんなにギザギザのバサバサで!」

「え、えーと……」

 

 だがまさかの部分を指摘されて、思わず身構えた体勢のまま、イレブンが頭に疑問符を浮かべる。一方ペルラはその件がずっと……なんなら昨日から気になっていたようで、「もうあんたを見た時からこっちはずっと気になってたんだ!」と声を荒らげてはイレブンの髪を掬った。そのまま引き抜かれるんじゃないかと内心で少しヒヤヒヤしていれば、ペルラがはぁ、とため息を吐いて困ったように首を振る。よほどギザギザのバラバラであるらしい。

 

「最後に髪を切ったのはいつだい?」

「……えーと、確か一年前、くらい」

「……何で切ったんだい。ハサミ?」

「その…………剣」

「剣!?」

『──ほう』

「け、剣って、どうやって……!」

「こう、短剣でバサッと……邪魔だったし」

 

 言いながら、実際に切った過程をジェスチャーで伝える。それをペルラは有り得ないものでも見たような目で眺めると、そこから額に手を乗せるなり「あーあー」みたいな顔で肩を落とした。まさに絵に書いたような落ち込み方だ。

 ましてや邪神の力なのかなんなのか、不思議と身体を乗っ取られる前と後では全身に変化がそう無かったため、イレブンが髪を切ったのは殆ど三日前ぐらいのもので。「まぁいっか、切っちゃえ」と軽すぎるノリでバッサリいったのが運の尽きである。

 

『──人間とは器用な生き物なのですね。短剣をそのように使うとは』

『……ドウモ』

 

 そしてこの延々と空気の読めない聖竜は一体なんなのだろうか。何やらご感心されているようだが、とはいえそれが原因で怒られている以上どう考えても今じゃないだろうに。その上一見褒めているように見えて煽っているからタチが悪いのだ。今も確実に使い道が無いのに『──参考にします』とか言っちゃってるし。一体どこを切るんだどこを。

 

「はぁ……しょうがない。切ってやるからこっちにお座り」

「ハイ……お願いします」

『──丁度いいですね。私もこれを機に勉強しましょう』

『いや必要ないって。流石に』

 

 次からは絶対カミュとかに頼も……。イレブンはまだ見ぬ仲間に自身の髪を託す事を決めると、心做しかワクワクしている(?)聖竜を連れてペルラに散髪して貰うのだった。

 

『──……ふむ、これなら私にも出来そうですね』

『絶対やめて!』

 

 拒否したことは言うまでもない。

 

 

 

 *

 

 

 

 そこからものの数分程度で見事に切り揃えてしまうのだから、やはり母親というのは大変偉大な生き物と言えよう。

 

「ほら、出来たよ」

「ありがとうありがとう……!」

 

 顔を振ったり手で触ったりしながら、イレブンがペルラに感謝を伝える。これまで多少ざっくばらんだった襟足も物の見事に整えられていて、加えてギリギリ結べる長さである事に「おお……」と感嘆の声が漏れた。特に要望は出していないが、それでも上手いこと切ってくれたらしい。

 

『──良かったですね、光の子よ』

『うん! これで当分切らなくて済むよ!』

『──あ、そこなんですか。喜ぶポイント』

 

 珍しく(感性が)まともな聖竜である。「うん?」と首を傾げるイレブンにそこじゃなくない? とは思ったものの、けれど本人が嬉しそうだったのでその場はとりあえずスルーを決め込む。そしてひっそり思うのだ。──ああコイツ多分また短剣でバッサリ髪の毛やるんだろうな、と。

 

「さてと……ほら、とっとと支度しなイレブン。予定の時間までもうすぐだよ」

「あ、うん! ありがとう!」

 

 再度ペルラにお礼を言って、イレブンは椅子から立ち上がると早速ロングベストに着替えた。流石に新品同然なだけあって着心地は普段のそれとは違ったが、それだけにグッとくるものがあるのもまた事実。加えて今回は二着あるので、後で前のに着替え直してこれは大事に保管するとしよう。勿体ないし。

 

『──やはりその方が見慣れているのでしっくり来ますね』

『あ、やっぱ聖竜もそう思う?』

『──ええ、よくお似合いです』

 

 またこの通り世界の創造主からもお褒めの言葉──身体の中に居ても見えるらしい。理屈は全く分からないけど──を頂いたので、特に問題という問題も無さそうだった。流石はペルラの用意した服だ。耐久性としても申し分ないし、しばらく防具を拵えずとも当分はこれで凌げるだろう。

 

『そういえばこの服ってなんの素材で出来てるのかな。今まで気にしたこと無かったけど』

『──そうですね、少なくとも革は必要だとして、あと他に丈夫な生地を数枚……って、まさか作る気ですか? これを?』

『え? うん』

『──……』

 

 マジかよ、と思う聖竜である。この人どこまで鍛治好きなんだ……と若干引いている節まであった。

 また当然のことみたくサラッと言っているのも恐ろしい。鍛治台だってまだ貰ってないのに。

 

「母さんどうかな。着てみたんだけど」

 

 一人呆れる聖竜を他所に、腰のベルトの余りを巻きながらイレブンがペルラへと声を掛ける。するとペルラは振り返るなり視界に映ったイレブンを見て、ニコリと嬉しそうに目を細めた。優しい笑みを全面に浮かべつつ、けれど何やら感動したようで「うう」、と目元を潤ませる。

 

「イレブン、あんた本当に立派になって……」

「母さん……」

「髪も満足に切れないってのに……」

「母さん……」

 

 割と容赦のないペルラである。こんなにも落差の激しい「母さん」は生きてて早々言うことも無いだろう。「こうしてみると変わるもんだねぇ」が含み百パーセントすぎて悲しい。どっからどう見ても立派だろうに。(※だがしかし髪は短剣でぶった切る)

 

「その成長した姿をおじいちゃんにも見せてあげたかったわ。きっとさぞ喜んだだろうねぇ」

「え、じいちゃん? あー……まぁうん。そうだね」

 

 実際昨日見せてきたけど。脳内で「イレブン元気か〜」と呼んでくるイマジナリーテオを思い浮かべながら、はは、と乾いた笑いを零す。ペルラは懐かしそうな顔をしていたが、とはいえイレブンからすれば昨日の人……いや、なんなら十数時間前の人だったので「さっき会った感」が半端じゃなかった。また聖竜も同じくペルラの話を「あーあの人ね」みたいな感じで聞いているので、そりゃ当然しんみりなんかしないのである。

 むしろ昨日ちゃんと泣いたのでこれ以上は野暮というものだろう。

 

「いいかいイレブン、忘れるんじゃないよ。あんたは村で一番勇敢だったおじいちゃんの孫なんだからね。この先何が起きてもあんただったら乗り越えられるってお母さん信じてるわ。だから頑張って来るんだよ」

「! 母さん……うん、ありがとう。頑張るよ」

 

 ペルラと瞳を真っ直ぐ合わせながら、イレブンが深く首を縦に振る。そして口角を少し上げれば、ペルラもそれを見て安心したのか、同じようにして笑みを浮かべた。「大丈夫そうだね」とひとつ言われて、「母さんの子だからね」と返す。すると不意打ちを喰らったみたいにペルラが顔をクシャッとさせたので、イレブンは慌ててハンカチを取るとすぐさまそれを彼女に差し出した。どうやら泣かせてしまったらしい。

 とりあえず『──とどめを刺してしまいましたね』とかなんとか言ってる語弊まみれの聖竜──これでも上手いこと言ったつもりらしい。ほんともう一回黙っててくれ──についてはこの際ガン無視で良いだろう。というか人の母親にとどめとか言うなし。

 

「えっと、母さん大丈夫? 水持ってこようか、水」

「いいや、大丈夫。……それにしても、あんたも言うようになったねぇ。母さん思わず泣いちゃったよ。ついこの間までそんな事言わなかったのに」

「え? あー、はは……まぁこれでも数年経ってるからね。旅でそれなりに成長もしたし」

『──ましてや幼なじみにドスケベするくらいですからね。確かに成長しているのでしょう』

『ねぇ僕の成長を一瞬で残念な方に持っていくのやめてくれるかな。ドスケベじゃないし』

「そうかい、子供の成長は早いもんだねぇ……。昔からやんちゃな子だったあんたが……」

『──なるほど昔からでしたか……』

『ほらもうそっちにしか聞こえなくなっちゃったじゃん!』

 

 せっかくいい話風だったのに! 脳内で聖竜に文句を言いながら、一人ほっこりと話すペルラの横でイレブンが「ぬぁぁぁあッ!」と頭を抱える。昨日から若干思っていたが、なんだかテオに会った辺りから聖竜がおかしくなってしまった。最初はあんなに淑やかな感じで「うふふ」とか「おほほ」とか言っていたのに(※言っていません)、今じゃどこぞのホメロスみたいに煽りしか言わないんだから豹変が過ぎる。いやまぁ遠慮しなくなったと言えばそれはそれでまた嬉しいけれども。仲間だし。

 

「ああそうだわ、イレブン。はなむけとしてあんたの荷物の中にお金を入れておいたからね」

「エ!? 荷物って、僕の!?」

「当たり前だろう? ……まぁと言っても、あんたの財布がパンパンすぎてお母さんちょっとびっくりしたけど」

 

 まさか……まさかよね? と若干顔ごと背けられて、イレブンがそれこそ光の速さで自身の財布をガバッ! と開く。すると案の定エグすぎる額が財布にパンパカパンと詰まっていたので……イレブンは思わず唖然とすると、はくはくと口を開いたり閉じたりした。間違いない。推定二百万ゴールドの大金である。そりゃペルラも(盗みや悪事を疑って)顔を背けたくなるだろう。

 

「な、な……!」

『──あ、そういえば言っていませんでしたね。ゴールドの引き継ぎも出来てたんですけど』

「…………」

 

 そう言ってまたしてもサラッと言ってのける聖竜に、イレブンは「んぬぁぁぁあッ!!!」とキャパオーバーなる奇声を上げると百万ゴールドほどを引っこ抜いてはペルラへと強引に押し付けるのであった。




アンケート新しくしたので投票してくださると嬉しいです。
ベロニカに関しては後日その時にまた設置しようと思います。

P.S
感想やる気出ます。励みです。ありがとうございます\(^o^)/

カミュ(序盤)に使って欲しい武器は?

  • 片手剣
  • 短剣
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