ストーリーは最終編までしか読んでおりません
生徒たちの解像度もまちまちです。
それでも言い方は読んでくれると嬉しいです。
『曇らせ注意報発令』
仮面を外すふりとはとは言ったもののどうすればいいのだろうか、そもそも彼女らは私に何をしてほしいのだろうか。
「まずはお風呂に入ってもらおうか。先生、昨日も仕事優先でお風呂入ってなかったでしょ?」
昨日シャワー浴びてないことがバレた?!今度から書類作業より前にちゃんとシャワーを浴びなきゃだ。
「ああ、そうだね。お風呂、行ってくるよ。」
「先生はいつもシャワーだよね。」
なんで知ってる?!
「湯船に浸かると疲れがとれるんだって。だからシャワーだけで済ませるのはダメ。」
なるほど、確かに湯船に浸かれば疲れは取れる。
「よかったら、お背中お流しするっすけど、どうっすか?」
ほえ?
「ん、ずるい、だったら私も。」
ちょちょちょちょっと待って。
「どうしてそうなるのかな?流石の私もお風呂ぐらい一人で入れるよ?」
そうくると思ってましたと言わんばかりにイチカが反論をする。
「だって先生、湯船に浸かったとか言っておきながらシャワーで済ませるかもしれないじゃないっすか?だったら私が監視兼世話係として一緒に入ってやろうとなったわけっす。」
エッヘンといった感じで腰に手をあてている。
「うぐ、そう言われると否定できない...」
日頃から生徒の厚意はガン無視で無理を通してきたのだからこう言われるとどうしようもない。
思わずこめかみを手でもんでしまう。
「けど、それと一緒にお風呂に入るのは違うと思うよ!うん!それに私は『先生』であり『大人』だ。生徒にそんなことさせたらいけないよ。」
「先生」「大人」という言葉に過剰に反応する皆。
「ここでは『大人』とか関係ないってさっきいったよね?」
カズサのガチトーン怖い、これはまさしくキャスパリーグだ...。
「今、失礼なこと考えてない?」
はい、すみません。
「と、り、あ、え、ず、私は一人でお風呂に入れるし、ちゃんと湯船にも浸かるから、一人でお風呂に行かせて。」
「しかたないっすね、ここで引き下がることにするっす。」
ほっと一息ついて風呂へと足を進めようとした瞬間、
「そういえば、着替えはどうすればいいのかな?」
着替えはおろか、タオルすら持ってないことに今更気づいた。
「それぐらい用意してますよ。風呂場に行ってみてください、置いてありますから。」
イロハに連れられ風呂場へ着くと、
「先生のことです、何をするかわかりませんからわたしが外で待っておきます。」
「イ...イロハ?」
名字で呼ぶように自分ルールを設けていたのだが、驚きのあまり破ってしまった。
頑なに下の名前で呼ぼうとしなかった先生がついに下の名前で読んだのが相当変だったらしい。
「ついに下の名前で呼びましたね、先生。」
なんてことを言われてしまった。
「外で待たれるのはちょっと...。」
「外で待たれたら困ることでもするんですか?」
なんでちょっとニヤついてるのかな...。それに、さっきから返答に困ることばかりだ。
「別にそういうわけじゃないけど、外に人がいると入りにくいでしょ?」
「それは監視がいないと何かしでかす、と思わせるようになった先生の責任ですね。」
そう言われると何も否定できない。
「わかったよ。」
かくして、風呂に入ることになった。
広いし、綺麗だし、設備は充実してるし。シャレーのシャワー室も結構いい環境で、それに慣れている私が感心するのだから相当いい場所なのだろう。
そうこう考えながら、全身を洗い終え、いよいよ湯船に浸かる。
「ふあ〜...。」
思わず声が漏れる。染みる、疲れた体に染み渡る。
だが扉一枚挟んでイロハが待機していると思うとどうにも落ち着かない。
せめて、脱衣所の外で待つように言えばよかった。
「湯加減はどうですか。」
湯に使っているのに背筋にゾゾッときた。
「急に声をかけられるとびっくりするよ。」
「ああ、それについては謝罪します。それで、湯加減はどうなんですか。」
扉越しに聞こえる声。なんだよこのシチュエーション、コハルが聞いたらエ駄死確定だよ。
「あの〜、棗さん少しでいいから一人でゆっくりさせてくれないかな?扉越しとはいえ、人がいると落ち着かないんだ。」
「はいはい、わかりましたよ。」
そういって去っていく音が聞こえた。
そうして湯の中で、一人ぼーっとする。何も考えずぼーっと...できなかった。
どうしたら、私が元気になったと思わせられるのか、ということで頭はいっぱいだった。
嘘を信じ込ませるにはある程度の真実を混ぜるのが効果的、であるならば私の昔話の一つでもすれば納得するだろうか。なぜここまで仕事をするのか、なぜここまで生徒のために動くのか、と。
いっそのこと「嫌いだ」とでも言って突き放したほうがいいのだろうか。彼女らも私なんかに時間を割かず各々やりたいことができるだろうし、無駄な心配事も消えるだろう。それに私は開放されてwinwinの関係ではないか。
ゆっくりするために使った風呂は先生の考え事で煮えたぎっていた。
結局こうして一人でいれど、仮面は外せない。
今、仮面の中の自分がどんな顔をしているかなんて想像もしたくない。監禁及び軟禁、これから続くであろう縛られた生活、否が応でも思い出す、地獄の日々。そこにある感情が憎悪なのか好意なのか、そんなものは関係ない。その行為自体が私を削る。体に残ったいくつもの痣が疼く。彼女らに悪意のないことは分かっている。それでも、『幼い私』はそれに恐怖する。
一人でゆっくりするのは危険だ。繋がり、まとまりのない思考で脳が埋め尽くされる。自分でも自分が何を考えているのかわからなくなる。
「あがるか。」
精神的には何も解決されていないが、体の方は少しばかり軽くなったようにも感じる。これが湯船の力!
脱衣所に戻ると、丁寧に畳まれた着替えとタオルが置いてあった。シャーレで使ってたやつが。
「どこから持ってきたの...。」
当番で呼んだ覚えはないのに何故私の私物まで把握しているのだろうか。
脱衣所で鏡を見る。大丈夫だ。
ドアを開けるとイロハが本を読みながら待っていた。
「あがりましたか。で、どうでしたか久しぶりのお風呂は。」
「よかったよ、疲れが取れて元気いっぱいって感じかな。これならもうシャーレに帰っても平k...。」
どうやら流れで帰ろうとするのは許されないらしい。ここぞという場面で行って帰ろうなど思っていたがやめたほうがいい。目がものすごく怖い。
「シャーレに帰れないとして、私はこれからどうすればいいのかな。」
「簡単なことです。先生のお悩み相談会with先生救済委員会を開くだけです。」
「私のお悩み相談会?」
「はい、そうです。当番には誰も呼ばず、仕事は私一人でできるから、銃撃戦に巻き込まれても私は大丈夫だから、で済ませる大人です。一人で何かしら抱え込んでいるなんて猿にでもわかります。」
「確かにそうだけど。」
そう話していると、最初にいた部屋に戻ってきた。
そのへやではすでに三人が『相談会』の用意をすませて待っていた。
「先生はここに座って。」
シロコの指差す方にちょこんと置いてある一脚の椅子。そしてその前方に並ぶ四脚の椅子。
「面談される側になるとは思ってもみなかったよ。」
改めて四人と対峙する。圧がすごい、怖い。
それでも、言わなければならない。
「といっても、君たち『子供』に話せるようなことはないよ。」
風呂で色々考えたが結局こうするしかない。
「私は大人としては不出来だ。それでも君たち『子供』とは違う。自分で背負っているものは自分でなんとかするべきだし、100歩譲って他の大人に頼るのはいいとしても、君たち生徒に頼るのは駄目だ。」
皆が目を見開いてこちらを見ている。あのイチカも。
「それに、私のことを拉致監禁するような生徒には、相談をしても無駄だと思う。」
言ってしまった。でも、こうでも言わなきゃ彼女たちは止まらない、止まってくれない。
「私が背負ってるものなんて君たちには到底理解できるものではないし、今まで一人でやってこられたんだ。わざわざこんなことされなくても大丈夫だよ。」
胸が痛む、結局こうすることしかできない自分に虫唾が走る。
「君たちは私の過去を何も知らない、それなのに私に口出ししないでほしい。私には私の決めたやり方があって、それに従って動いてるだけなんだ。無理してる?当たり前だよ、でも先生は無理をしててでも動かないといけないから。そうじゃないとキヴォトスが回らないから。今こうしてここに連れてこられたせいで、どれだけの学園に迷惑をかけていると思う?私一人の犠牲で、何千何万もの生徒たちが快適に学園生活を送れるのなら犠牲になるべきでしょ?私が倒れたらどうする?替えなんて幾らでもいるさ。なんなら私より有能な大人の方が多いさ。私がいなくなれば優秀な後任者がくるだろうし、キヴォトスはもっとより良い場所になる。だからいいんだよ、今のままで。」
これで、いいんだ。
唖然とする一同。
気持ち悪い沈黙が続くなか、それを打ち破ったのはイロハだった。
「では、私たちの、いえ、私のあなたへの想いはどうだっていいってことですか。そうですか。予想はしていましたよ、あなたのことです、何かしら適当なことを言ってここから逃げ出そうとするんじゃないかと。ですが、予想は半分的中半分外れといったところでしたね。本当のことを言ってでもここから逃げ出そうとする、そんなに仕事が大事なんですね。あなたのことを心配していた私の気持ちはどうしろっていうんですか。」
私はあなたに対して怒っているのだろうか、それとも悲しんでいるんだろうか。キヴォトスを幾度も危機から救い、いつも誰かのために奔走していて。ゲヘナなんてしょっちゅう問題が起こる。その度に解決のためにやってくるあなた。そんな姿を見て並々ならぬ感情を抱いていた。だからこそ、壊れてほしくなかった
。確かにやり方はよくなかったかもしれない、それでもあんなに言わなくてもいいじゃないですか。私はもう先生に嫌われてしまったのでしょうか。
「確かに、イロハさんの言う通りっす。私も先生はなにかしらして逃げ出そうとするとは思ってたんすけど、まさかこんなに抉られることになるとは思わなかったっす。」
知ってるっすよ、不眠不休で仕事してたのも、そんなに忙しい中私の趣味探しのために色々探してくれてたのも。それでもほとんど飽きちゃったんすけどね。あなたと一緒にしていれば何でもよかったんすよ。だからこそきちんと休んでほしかった。今回の一件で嫌われちゃったんすかね...。
「私帰ってもいいかな。このままここにいると先生に言いたくないことも言ってしまいそうなんだけど。」
勉強の分からないところを教えてもらった後に一緒にスイーツ食べに行くの楽しかったし、トリニティでも厄介ごと解決のために奮闘しているのも度々見ていた。それに、いい噂はかねてから耳にしていた。
勉強でもスイーツでも、先生と共に過ごす時間はとても楽しかった。
だからこそ、許せなかった。先生のあの言動が。救うだけ救って、助けるだけ助けて、楽しませるだけ楽しませといて、自分が施される側になると頑なに拒否する。私たちの心配を、思いを踏みにじられた気がした。
「先生は『先生』じゃなきゃダメ、そうじゃなかったらきっとホシノ先輩も、もう一人の私も救えてなかった。確かに先生には抜けてるところもあるし、仕事も苦手なのかもしれない。でもね、先生、大人っていうのは能力だけじゃないと思う。先生は私たちのために全力で行動してくれるし、多分...キヴォトスで一番優しい。私はそんな先生に助けられてここまでこれたし、そんな先生が好き。だから、替わりがいるなんて言わないで。対策委員会のみんなもきっとこう言う。」
今まで誰も手を差し伸べてくれなかった、砂だらけの学校に手を差し伸べてくれたのは先生。たとえ先生が拒否したとしても私は諦めない。
「ありがとう。その気持ちだけでうれしいよ。でも本当に大丈夫だから。」
四人の瞳から零れ落ちる涙。
それを見て先生は逃げるように出ていった。
「少し乱暴すぎましたね。これは間違いなく嫌われてしまったでしょうね。」
「そうかもしれないっすね。先生が危険な状態だったとはいえ、やり方をもう少し考えるべきだったっす。」
「ただ、お疲れ様って労いたかっただけだったのに...。」
「私の言葉届かなかったのかな。」
結局は先生の心労を増やしただけで終わった、という結果への不甲斐なさ、先生に嫌荒れてしまっただろうという推測、先生一番で過ごしてきた彼女らには大きすぎるダメージ。
さらに言うならば、
「それに、私のことを拉致監禁するような生徒には、相談をしても無駄だと思う。」
という言葉は相当効いただろう。少し乱暴ではあったが心配を完全否定されたのだから。
シャーレに帰る道中、先生の心は完全にやられていた。泣かせたくない生徒を、守るべき生徒を泣かせて何をしているのか。トロッコ問題で自分は平気で犠牲にする癖に、キヴォトス中の生徒とあの四人を秤にかけた時、どちらにも傾けられなかった。割り切れなかった、今も先生救済委員会についてずっと考えてしまっている。絶対にあんなひどい言い方をするべきじゃなかった。仕事から逃げ出したいと思っていたのに、今こうしてシャーレに戻っている自分が理解できない。優柔不断な自分が許せない。生徒たちの甲府道を奴らと重ねた自分が許せない。変なルールを設けて自分の首を絞めていると気づいているのに変えられない。生徒の好意に気づいてながら溺れるなどという理由をこじつけて真面目に向き合わない自分に憤りを感じ、能力がないのに他人を頼れない自分に苛々し、ネガティブな思考に染まっていく頭。
「仕事に熱中していたのはこんなことを考えなくて済むからだったのかな。」
なんて独り言を零す。視界がぼやける、でも寝不足のそれではい。ならばこれは涙だろうか。わたしはまた泣いてしまったのだろう。終わりの見えない仕事、答えが見つかりそうにない生徒との距離感、克服できない過去。私はいったいどうすればいいのだろうか。わからない。
それでも、シャーレの仕事はしなくてはいけない。昨日の余りも含めるからこれから数日は徹夜確定だな。結局どこまでいこうと一人で戦おうとする先生だった。
曇らせるのは生徒だけじゃない、先生もだ。
学校で書いたり、深夜テンションで書いたりでまとまりがないかもしれないです。ごめんなさい。
あと、長いね。いつもより2000字くらい多くなっちゃった。
次回「観念しろ、先生。」
委員会メンバー誰追加する?
-
ホシノ
-
ミカ
-
ワカモ
-
ユウカ
-
黒服(ネタやぞ)