今回ちょい長です。
連れてこられた場所はどこだかすぐわかった。
あれだけやめろと言っておいてこれだ。きっと私の意志はどうでもいいのだろう。
そしてとりあえず生徒たちに話を聞こうと声を出す。
「いるんだろう?隣の部屋に。」
そう言うと「先生が起きた」という声と共にぞろぞろと生徒が入ってくる。
「とりあえず、拘束を解いてもらってもいいかな。」
そういうと、シロコが拘束を解いてくれた。
「ん、先生、きつかったよねごめん。」
「謝るなら最初からこんなことをしないでほしかったな。」
皆を睨むようにして先生は言う。
「そして、もう一つ。私はこんなことしてくれなんて頼んでないし、こんなことをされてもうれしくない。どうして言うことを聞いてくれない?」
「それは先生が心配だったからっすよ。」
「私は、さんざん心配しなくていいよって言ってきたよね?」
「それはまあ、そうですが...。」
「そうやってさあ、私はこれまで何度も言ってきたのに君たちはそれを守らない。私は皆をルールを破るように教えてきたつもりはなかったんだけどね。」
「先生、それはちがくて...。」
「違くない。どんな理由があれやってはいけないことはある。超法規的組織所属の私が言っても説得力はあまりないけどね。」
「でも、先生はおじさんたちにとって大事な存在だから、無理して倒れてほしくなかったんだよ?」
「そもそも、私が大事っていうのなんなの?なんでそんなに私にこだわる?」
「ん...それは先生が私たちのために色々頑張ってくれたから。」
皆がうんうんと頷く。
「そこが疑問なんだよね。君たちにとって大事なのは『私』じゃなくて『先生』だよね。たまたま私がキヴォトスに最初にきた先生ってだけだよね。別に私じゃない先生だったなら君たちはその人のことが大事だとか大切だとか言ってたよね。『私』である必要はなかった。誰がどう考えようと自明だ。それになのに先生が大事だからのなんだの...。もう飽き飽きしてるんだよ私は。」
黙り込んでしまう一同。先生の言葉は止まらない。
「つい先日までは私は君たちのことが好きだった、いや大好きだったよ。自分のことを心配してくれてる、大切に思ってくれてる、嬉しかったし並々ならぬ感情を抱いていた。もちろん生徒と先生、一線は超えないように気を付けた。」
「先生...大好きだったって...?」
「そう、大好きだった。」
全員の顔から血の気が引いていく。
「それって今は...。」
「うん、大 嫌 い だ 。」
次の瞬間一同は泣き出し、絶望のそこへと沈んでいった。
「千年の恋もなんとやら、どれだけ大事でも、どれだけ大切でもやっていいことに限度はある。それにそこまでされれば分かるよ。これは『私』への執着ではなく『先生』だって。散々大人だの先生だのは置いておいて話をしてくれと言っておきながら結局はこうだ。結局私は独りぼっち。大人から虐けられた後は子供から虐められる。今までの行動すべてが無駄だったよ。私は今日を以てキヴォトスの先生を止める。恨むのならこんなことをした自分たちを恨むことだね。」
黙って座り込んだまま泣いている生徒を置いて先生は行ってしまった。
「本当に私たちは先生のことがただただ心配だっただけのはずなんですけどね...。」
「そうっすよ。先生は『先生』じゃなきゃいけなかったっす。」
「他の人なら他人にあそこまで優しくできなかったはずだもん。」
「先生...先生...。」
自分たちは真に先生という人間を大事にしていた、そう思いたくて言葉をつぐんだが、先生の言葉が脳内に響く。
『私』ではなく『先生』。
もし仮に先生が先生じゃなかったら、他の人が先生だったらどうなっていたか。
否定したかった事実が迫りくる。きっと先生が先生じゃなくても自分たちは先生に対して並々ならぬ感情を抱いていただろうと。結局自分たちは先生という人間ではなく、先生という立場の人間が大事なだけなのだと気づいてしまった。
「それでも、先生が先生としてキヴォトスに来てくれて、私たちを助けてくれた事実は変わらない。」
とは言ったが、湧き出る嫌な感情に押しつぶされて消えて行くのだった。
一方その頃先生は、生徒たちに絶望していた。今までクソみたいな人生だったけどついに自分のことを真っすぐ見てくれる人に出会えたと思えたのに、結局その瞳の行く先は『自分』ではなく『先生』だったということに。生徒に愛を求めようとした代償なのだろうか。生徒に対して重すぎる感情を持たなければ神様は許してくれたのだろうか。分からない。結局のところ自分以外に信頼できる人間はいないのだ。いや、自分すらも信じるべきではないか。キヴォトスを出たら何をしようか、そこら辺の学校で教師でもやろう。きっとここよりは楽なはずだ。
目の前で先生に大嫌いだと言われた生徒達。
「大好きな先生に、大嫌いって...。」
口からこぼれる言葉はこればかり。だが彼女たちは止まらなかった。先生の意志などもはやどうでもいい、先生がいてさえくれれば一旦はそれでいいとついに本格的に先生を監禁することにしてしまったのだ。
「心は後からでもどうにでもなるっすからね。」
「ん、とりあえず身柄を確保。」
「一応、おじさんが先生にGPS仕込んでおいたからこれで追跡できるよ。」
追跡と言いつつも先生は探すほどの場所にはいなく普通にシャーレに戻って荷物の整理をしていた。全員で堂々と建物を破壊しながら執務室へと突き進む。
その轟音で先生はすべてを察した。
瞬間引き出しにしまっておいた拳銃を取り出し、こめかみへ当てる。
ドガァァン
という音と共に執務室のドアが吹き飛ぶ。
「君たちなら来ると思っていたよ。この先一歩でも歩いたらこの引き金を引く。君たちの大事な『先生』が死んでしまうよ?分かったなら早く帰ってくれ。」
先生は甘く見ていた、キヴォトスの住人の身体能力を。
「先生、その銃は一旦もらうね。」
カズサが飛び出し先生が引き金を引く前に銃を取り上げてしまった。
「みんな先生を捕まえて!」
「おいおい!アロプラ!なんとかしてくれよ!私はもう疲れたんだよ!」
そう言ってもシッテムの箱はうんともすんともいわなかった。
「君たちまで私を見捨てるのか...。」
また拉致されるかと思いきや、そのまま執務室に監禁されることになった先生。
「もう拘束は解かないよ。」
「私たちが先生に対してどんな思いを抱いているか全部教えてあげるからさ、一旦話を聞いてくれない?」
「そういう強引な所が嫌なんだよ。」
「先生、お口はチャックっすよ~。」
イチカが先生のことを見つめる。
怯えているのかフルフルと震える先生。
完全につながった、虐待されてときのあの状況と、前は面影を感じただけだったのに、今回はハッキリとフラッシュバックした。
殴られ、蹴られ、切られ、吸殻を押し付けられ、罵声を浴びせられ、生きる価値のない塵だと自覚させられた日々。
「やめて、やめてよ、ごめんなさい!謝るからやめてよ!お母さん!お父さん!蹴らないで、叩かないで!全部悪かったから全部謝るから!」
「先生急になに言って...。」
全員の頭にクエスチョンマークが浮かぶ。
「自分がいなくなれば二人は仲良くなるのか?私が邪魔なのか?私のせいであの二人りはこわてしまったのか?私のせいで生徒たちはおかしくなってしまったのか?全部、全部、全部私が悪いのか?誰か答えろよ!なあ!」
「先生、落ち着いて!先生は悪くない、大嫌いって言われたぐらいで嫌いにならないから、帰ってきて!」
みなが口をそろえて言う。
「お前らも私を虐めるんだろ!知ってるよどっか行ってくれよ!救えないくせに...救済なんて、抜かしたこと言うなよ...。」
そうして先生は泣き出してしまった。度重なる身体への過負荷、精神の摩耗、過去の記憶のフラッシュバック、先生の中で何かが壊れる音がした。
「これはどうするのが正解だったんでしょうか。」
今さらどうしようもないと知っていながら最悪の選択をしてしまったことを後悔するイロハ。
「誰にもわかんないっすよそんなこと。」
泣き叫ぶ先生をみんなでなだめる。
「少なくとも私たちは私たちのできることやった。」
「ん、それでも足りなかった。準備不足だった。」
「全部私が悪いんだ。私のせいで先生が...。」
そして、ようやく落ち着いた先生だったがその姿に先生の面影はなかった。あの優しい笑顔は消え失せ、目の光は完全に消え去り、ただ茫然となにか見つめる木偶の棒となってしまった。
「先生、なにか言ってくださいよ。」
「頼むっす、何か言ってください。」
「せんせ、何でもいいからさ。」
「先生の声...聴きたい。」
「もう私には喋りかけてくれないのかな...。」
真剣なまなざしで先生を見つめるも、怯えたような視線が返ってくるだけ。
「...ん..い。」
何か喋ったが声が小さすぎた。
「「「「「先生もう一回。」」」」」
全員で言うと涙をこらえながらもう一度
「ごめんなさい。」
「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。」
みんなは気づいてしまった。先生が壊れてしまった、否先生を壊してしまったと。
口を開けば何かに必死に謝るだけ、近づくだけで怯えたようにこちらを見つめる。
まるで、虐待を受けている子供のように。
結果、先生救済委員会の皆で先生の面倒を見ることになった。
―イロハが当番の日
「先生今日も今日とてやってきましたよ...。やはりサボりがばれると色々面倒ですね。」
「...。」
「反応なしですか...。ご飯ちゃんと食べてます?」
「...。」
「そうです、今日はイブキが先生に会いたいと言っていましたよ。久しぶりに外に出てみませんか?(まあ、わたしにむかって言っていたわけではありませんが。)」
「...。」
半ば引っ張るようにして万魔殿まで先生を連れていくイロハ、道中では先生を壊したものとして冷たい視線を浴びせられたがそんなことはどうでもよかった。
「イブキ、先生を連れて来ましたよ。」
「イロハ先輩はあっち行ってて、先生こっちだよ~。」
フラフラとイブキに連れられ一緒に遊んだ?のだろうか、悲しそうなイブキと人形のような先生が戻ってきた。
「イロハ先輩、イブキ先輩のこと好きだったんだけどね、先生がこんなことになっちゃったのは許さないからね。」
少し惜しそうに先生をイロハへと引き渡し悲しそうにイブキは帰って行った。
「さ、先生、私たちも帰るとしましょうか。」
そうして家に帰り、無理やり晩御飯を食べてもらい、風呂へ押し込む。
あれ以降先生は誰かが隣にいなければ悪夢にうなされるのか一人では寝られなくなっていた。イロハは精一杯先生を抱きしめて眠りについた。
―イチカが当番の日
「ただいまっす先生、イチカ登場っすよ~。」
「...。」
「今日も無反応っすか流石に堪えるっすね...。」
「今日はその、先生がほめてくれたギターを持ってきたんすよ。聞いてくれるっすか?」
「...。」やはり無反応。
「沈黙は肯定と見なすっすよ~。じゃ弾くっすね~。」
ギターの引き語りをした後、先生と晩御飯を食べ、風呂を済ませた後、自分の羽で優しく包むようにして眠りについた。
―カズサが当番の日
「せんせ、今日はいいもの買ってきたよ~。」
そういうと取り出したのはおいしそうなショートケーキ。
だが、特に反応を示すことはなく。沈黙を貫いている。
「ごめんね、私らがあんなことしなければ先生は...。弱気になっちゃダメ、先生、ご飯食べるよ~。」
晩御飯の後にショートケーキを食べ、風呂に行かせた。そして先生を話すまいと尻尾を先生の腕に巻き付けて眠りについた。
―シロコが当番の日
「先生、今日は先生が好きそうなもの買ってきたよ。」
そう言って取り出したのはカイテンジャーのフィギュアだった。
「ん、安心して、バイトで稼いだお金だから。銀行強盗はしてない。」
カイテンジャーという言葉に一瞬反応したが、結局興味を引くことはできず、沈黙したままだった。
「あとこれ、先生に初めて会った時にあげたのと同じエナジードリンク。懐かしいね。」
エナドリはしょっちゅう飲んでいたからか自主的に受け取り飲み干した。
「ん、先生最近は前より元気になってるみたいだね。」
そんなこんなで、晩御飯と風呂を済ませ、大事なマフラーを先生に巻いてあげて眠りについた。
―ホシノが当番の日
「せんせ~遊びにきたよ~。ってそんな空気じゃないよね。」
先生は何も言ってないし、そんなことを思っているわけがないと思っても、先生に責められている気分になる。自責の念を抱えながら今日も先生の下へとやってきた。
「今日は水族館に行こうと思ってさ、わたし、チケット買ってきたんだ。よかったら一緒に行かない?」
「...。」
「だよね、私なんかが先生と一緒に水族館に行く資格なんてないよね。」
なぜだが首をかしげる先生。
「あれ~おじさん変なこと言っちゃったかな~?」
「...。」やはり無反応。
「水族館はまた今度にしよっか。」
そうして晩御飯と風呂をすませて、ホシノお気に入りの枕、「どこでも入場券」を先生に貸してあげ眠りについた。
そうしてそんな日々が何日も、何週間も、何か月も続いた。
それでもよくなる気配のない先生。あらたな先生もやってきて、みんなはそちらの先生にもなれてやっと受け入れられるようになってきたときだった。
先生救済委員会のみんなだけは新しい先生を受け入れられなかった。先生の言った言葉が棘となりずっと刺さったままだっただから。そして、治らない先生と少しずつ心が疲弊していく救済委員会。
そしてついに限界を迎えてしまった。
とある日、委員会の皆で先生の部屋に集まり、ついにアレを決行する覚悟を決めた。
先生を巻き込んだ無理心中。どうしても助けられない、罪悪感に苛まれて生きていくことはできない。その結果がこれだ。
「先生は楽に死んでください。私たちはできるだけ苦しんで死にますから。」
そうして、シャーレの先生の遺体の周りには涙を流しながら亡くなっていった生徒の遺体が五つ並んでいた...。
途中で書いてて死にたくなってきましたね。私は何を書いているんだと。
こっからは悪いことが起こる√じゃないんで安心して書けますね。
Bad√が不評といいますかBad感がたりないという意見を参考に書いてみましたがどうだったでしょうか。自分的には報われないことをし続けて最終的に壊れてしまうのが最悪のシナリオなのでこれをワーストとさせていただきました。
worst√ってこんな感じでいいの?(他√書くときの参考にします。)
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これはまだBadだろ
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ちょうどいい
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ちょっとひどすぎるくない?