★書籍発売★追放転生貴族とハズレゴーレムの異世界無双――隠し機能がチート過ぎ――え!?ゴーレムが倒した敵の経験値も俺に入るの!?   作:鏡銀鉢

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貴族科、平民科の合同授業

 ラビたちが話し合いをしている頃。

 

 暗い地下墓地には、一〇〇人からなる黒ローブの集団が控えていた。

 

 ネズミの足音も聞こえそうな程に静かで、冥府の底のようにジメッとした濁った空気の中で、彼らは墓石のように動かなかった。

 

 彼らの耳朶に、石扉が開く音が触れた。

 

 地の底から這い出る亡者のように陰気な存在感をまとい、だが男は力強い足取りで集団の前に立ち止まった。

 

 従者の少年がズズズ、と音を立て、石扉を閉める。

自分たちが隔離されたのを確認してから、男は厳かに口を開いた。

 

「諸君。よくぞ今まで耐え難きを耐え、忍び難きを忍んできた。ここにいる者達は皆、奪われた者達だ……思い出してほしい。作物の実らぬ凶作に見舞われ、食べる物が無くやせ衰えた我々から農作物を略奪した貴族たちの醜悪な顔を……そして飢えて死んだ我が子の顔を……」

 

 ローブ姿の中から、数人の女性がすすり泣く声が聞こえた。

 

「思い出してほしい。税だと称して貧しい生活からどうにか貯えた子供の結婚式代や親の葬式代をむしり取っていった貴族共の高笑いを……」

 

 ローブ姿の中から、数人の男性が歯を食いしばる音が鳴った。

 

「思い出してほしい。財産と作物を収奪しておきながら村が魔獣に襲われた時、真っ先に逃げ出していった兵士達の背中を……そして喰われた家族の悲鳴を……」

 

 その場の誰もが喉の奥から殺意を押し殺すように唸り声を上げ、固い握り拳を震わせた。

 

 バサリとローブを脱ぎ捨て、男は叫んだ。

 

「思い出せ! 奴ら王族貴族が我々にしてきた仕打ちを! 我ら平民を家畜以下の道具として酷使し尽くし! 絞り尽くし! 吸い尽くしてきた奴らの暴虐を! 己の私服を肥やさんがため! 罪なき我らから収奪し! 略奪し! 強奪し! 救いを求め許しを乞う我らに剣を振るう奴らの姿を! 奴らこそ世界への逆賊だ! 神が創りしこの世界を侵す、神への冒涜者だ! かつて女神は魔王の魔の手から人類を救った! だが魔王は消えていない! 奴らが魔王に成り代わり! 世界を闇に包んでいる! これは聖戦である! 邪悪な魔族から神の世界と平和を取り戻す聖戦である! 否! 魔族と呼ぶ価値すらない! 奴ら王族貴族は害獣である! この神の庭を荒らす害獣は我らが駆除する! そして平民による平民の為の平民の世界を作り上げる! 我らは勇者だ! 一人一人が世界を救わんとする女神のしもべであり救世主を支える勇者である! 勇者達よ剣を取れ! 今こそ革命の時だぁああああああああああああああああああ!」

 

『オォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!』

 

 一〇〇人の怨嗟が大音声を上げて地下墓地の天井を震わせた。

 一〇〇人の涙が地下墓地の地面を濡らしていく。

 一〇〇人の殺意が地下墓地を満たし、虫ですらも逃げていく。

 

 怨嗟と涙と殺意の津波を浴びながら、男は側近の少年の肩に手を置いた。

 

「協力感謝する。君のおかげで、世界は救われる」

 

 目深にローブを被った少年は、薄い笑みを浮かべて頷いた。

 

   ◆ 

 

 翌日、朝の一時間目。

 俺はクラスメイトたちと一緒に、学園の敷地内に存在するダンジョンに来ていた。

 

 地下最下層のダンジョンボスがフェンリルであるため、正式名称は魔狼のダンジョン。

 

 狼のレリーフが刻まれた、古代遺跡然とした黄土色の石造りのホールには、平民科の一組から三組、そして貴族科の一組から三組の生徒が集まっていた。

大勢の生徒たちは、誰もが意気込んでいた。

 

 平民科の生徒たちは、貴族科のお坊ちゃまお嬢様方に平民根性を見せつけてやると気合いを入れている。

 

 同じように、貴族科の生徒たちも、平民に格の違いを分からせてやろうと得意満面だ。

 

 ちなみに、身内びいきではなく、実際のところは貴族の方が強い傾向がある。

 

 大切に育てられる貴族は魔獣退治の経験が無いので、多くの生徒は入学時点でレベル一だけれど、貴族のたしなみで全員幼い頃から戦闘訓練を積んでいる。

 

 その戦闘技術は、レベル差を補って余りある。

 

 俺でさえ、宮廷剣術で剣道三段ぐらいの実力はある。

 

 ノエルに至っては、たぶん日本大会で優勝できる力量はあるだろう。

 

 一方で平民は玉石混交。

 

 ハロウィーみたいに畑や家畜を守るために魔獣駆除をして、レベルが上がった状態で入学する生徒もいるけれど、正式な戦闘訓練を積んだわけではない。

 

 中には、戦闘訓練も魔獣退治経験もない町人の子もいる。

 本当に優秀なのは、魔獣退治を経験しつつ剣術道場に通っていたような、一部の生徒だけだ。

 

 生徒同士が互いを意識し合う中、代表教師が授業の説明を始めた。

 

「では! これより貴族科、平民科による合同授業を執り行う! 今日までに諸君は地下五階層まで経験していると思うが、今回限りはその制限を解除する! 己の限界に挑むもよし! 一つの層をじっくりと探索するもよし! 他のチームと連合を組むもよし! 今回は限りなく実戦に近い形式で探索をしてもらいたい! ただし、我々教師陣のサポートは一切無い! 仮にここで死人が出るような事があっても学園は一切関知しない! では、我々は校舎で諸君らの帰投を待つ! 以上!」

 

 教育者とは思えない、令和日本なら確実に大炎上案件の演説をしてから、本当に教師陣は全員ダンジョンを出て行った。

 

 とはいえ、魔獣との殺し合いが日常の冒険者を育成するなら当然だろう。

 

 日本の価値観、倫理観を持ち込む方がおかしい。

 

 周囲ではさっそく、生徒同士でチームを組み始めた。

 

 妙にスムーズなのは、みんな今日に向けて、事前に仮チームの相手を決めていたからだろう。

 

 ——クラウスは……。

 

 今日は彼と組む気はない。

 昨日、あんなことがあったばかりなのだ。

 組む気になんてなれない。

 

 それでも、つい、クラウスの姿を探してしまう。

 組む気はなくても、気になるものは気になる。

 

 ——見つからない?

 

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