★書籍発売★追放転生貴族とハズレゴーレムの異世界無双――隠し機能がチート過ぎ――え!?ゴーレムが倒した敵の経験値も俺に入るの!?   作:鏡銀鉢

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リベンジモンスター

 夕方前、校舎裏の森に来ていた俺は、ヒートソードを片手にまっすぐ森の奥へと進んでいた。

 

 レベルは高くなるほど上がりにくくなる。

 

 二〇レベルを超える俺がこれ以上強くなるには、森の深部に巣くう上級魔獣たちを相手にしないと時間がいくらあっても足りない。

 

 イチゴーを引き連れ、俺は草地を踏みしめ、太い木の根を飛び越え、鬱蒼と生い茂る枝葉をかいくぐり続けた。

 

 以前、イチゴーたちを洗った川が見えてきた。

 どうやって渡るか逡巡して、俺は3Dプリンタのスキルの可能性を試した。

 

「イチゴー、橋だ」

『わかったー』

 

 前方の川岸に青いポリゴンが出現すると、それはそのまま対岸まで引き延ばされるように拡大。消えたところにはケイ素樹脂製の床ができていた。

 

「よしっ……ん?」

 

 足音に振り向くと、背後から黒いオオカミのような魔獣が追いかけてくるのが見えた。

 

 構わず、俺は橋を渡り、オオカミも橋を駆けてきた。

 

「よっ」

 

 そこで、俺は橋をストレージに収納した。

 するとオオカミはざぶんと水音を立てて川に飲み込まれた。

 

 狼なら泳げそうなものだが、不意を突かれたためか下流へと流されていく姿はなかなかにシュールだった。

 

「こりゃ戦略の幅が広がるな」

 

 3Dプリンタはただアイテムを作るだけじゃない。

 地形を変えることで、移動や戦術にも使えるようだった。

 

『マスターすごーい』

「ありがとうな。でもすごいのは俺じゃなくてイチゴーなんだぞー」

 

 両手を上げてぴょこぴょこと喜んでくれるイチゴーの頭をなでくり回すと、イチゴーは両手をお腹に当て身を揺らしながら喜んだ。可愛すぎるだろう。

 

 そうしていると、低い唸り声が耳朶に触れた。

 

 聞き覚えのある声に踵を返すと、茂みを踏み潰すようにしてソイツはまた姿を現した。

 

 ウシ並みのサイズとムチのように長い尾を持つハイエナ型魔獣、モリハイエナだ。

 以前、ハロウィーが襲われているのを助けて以来だ。

 

 あの頃は怖くて仕方なくて、命がけで戦い、辛勝をもぎ取るのが精いっぱいだった。

 

 けれど、今は逆に好奇心が沸いていた。

 俺はあれからどれだけ強くなったのか。

 ノエルたちと協力してコマンダーメイルや、ドレイザンコウを倒した俺の実力。

 俺一人なら、どこまでやれるのか。

 興味が尽きなかった。

 

「イチゴーは下がっていてくれ」

『わかったー』

「■■■■■■■■!」

 

 俺の意識がイチゴーに向いたのを好機と思ったのか、モリハイエナは巨大な口を開けて飛び掛かってきた。

 

「ッ」

 

 俺は右手でストレージからボウガンを取り出すと、モリハイエナの顔面目掛けて引き金を引いた。

 

 地面を疾走せず、飛び掛かってくれたモリハイエナの軌道は一定の放物を描くだけ。

 

 手首に強い反動を残して放たれた矢は、モリハイエナの口と鼻こそ逃したものの、目の下を直撃した。

 

「■■■■!」

 

 五十音では表現できないケダモノの咆哮が苦悶に歪んだ。

 

 目をつぶり首を曲げ下ろして俺を見失い、自由落下するだけのモリハイエナを、サイドステップで避けた。強烈な獣臭が、鼻をかすめる。

 

 それでも、流石は魔獣。

 

 顔面に矢が突き刺さった状態でなお、モリハイエナは地面に倒れることなく着地した。

 

 けれど、すぐに次の行動に移すことはできないだろう。

 俺はその隙を見逃さず、モリハイエナの首も、脇腹も無視して、長い尾の付け根に切り込んだ。

 

 ボウガンを手放しながらストレージに収納。

 左手のヒートソードを振り上げながら両手でグリップを保持しなおした。

 前に踏み込み、腰を落として体重を乗せながら一息に剣を振り下ろした。

 

「破ッ!」

 

 俺の魔力に猛りに合わせて鍔から炎が吹きあがり、モリハイエナの剛毛を焼き払う。

 赤く熱した鋭利な刃は重厚な皮膚と肉に食い込み、そして硬い骨に直撃した。

 

「■■■■!?」

 

 果たして、俺の両腕はヒートソードを振り抜き、そして地面を払った。

 つまり、モリハイエナの尾の切断に成功したわけだ。

 魔獣の首が、我が身の一部を奪った怨敵である俺にぐるりと曲げられた。

 

 だけどもう怖くない。

 

 俺は先にバックステップで距離を取りながら、ヒートソードをストレージへ、代わりに両手にボウガンをそれぞれ握っていた。

 

 それから左右の引き金を交互に引いていく。

 装填は、ストレージからカタパルト部分に矢を出すことですぐ終わる。

 

 絶え間なく、隙間なく、油断なく、矢を撃ち込んでいく。

 

 体のバランスを取る舵であり、攻撃を払う盾であり、ミドルレンジで攻撃できるこん棒の役割を持つ尾を失ったモリハイエナは、一方的に俺の矢を浴びるだけのマトだった。

 

 それでも、全身に矢が突き刺さったまま強引に横へ飛んで矢を避けた。

 そのコンマ一秒後、俺はもう片手のボウガンで地面を踏み切り終えたモリハイエナを撃った。

 

 二丁拳銃ならぬ二丁ボウガンスタイルだと、一射目がハズレても二射目が期待できるからいい。

 

「■■……■■……■■ッ……ッ……」

 

 やがて、モリハイエナは飛び掛かることはおろか、立つことも維持できずに膝を屈した。

 

 最後に、眼球目掛けて至近距離から引き金を引くと、モリハイエナは動かなくなった。

 

「ッッ、よしっ、勝った!」

 

 我知らず、ガッツポーズをとっていた。

 コマンダーメイルやドレイザンコウを倒した時以上の達成感。

 

 一人では勝てなかった強敵に勝てた。

 

 できなかったことができるようになる達成感は、やはり悪くない。

 もちろん、今回の勝利は経験ありきではある。

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