★書籍発売★追放転生貴族とハズレゴーレムの異世界無双――隠し機能がチート過ぎ――え!?ゴーレムが倒した敵の経験値も俺に入るの!?   作:鏡銀鉢

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なんちゃってチョコとコーヒー

 放課後、今日はイチゴーたちを森へ行かせず、新居でハロウィーたちを出迎える準備を手伝ってもらった。

 

 準備が終わり、ゴゴーが滑り台を逆走して、上から滑り降りてきたイチゴーとぶつかり一緒にサンゴーの上に落ちること五回目。

 

 ドアノッカーが三度鳴らされた。

 

「はいはーい」

 

 俺が玄関のドアを開けると、ノエルとハロウィーの二人が立っていた。

 

「ラビ、遊びに来たよ」

「ラビ、此度は災難であったな。いきなり学生寮が火事になるとは」

「いらっしゃい。あと心配してくれてありがとうな。まぁ入ってくれよ」

 

 そう言って俺はサンダルを脱ぎ、上がりかまちに靴下で戻った。

 

「何これ?」

 

 ハロウィーが目を止めたのは、玄関に立てられた看板だ。

 

「む? ここでは、履き物を、脱いでください?」

「土足で家の中を歩き回ったら土で汚れるからな。その代わり、これで泥の中を歩いてきても遠慮はいらない。靴は右手のシューズボックスに、上着はクローゼットにかけてくれ」

 

「何やら変わった趣向だな」

「いや、ラビの言うとおりだよ。これならダンジョン帰りとかで汚れていても遠慮しなくていいし」

「それもそうだな」

 

 慣習に囚われない平民のハロウィーに諭され、ノエルも靴を脱いだ。

 続けて制服の上着を脱ぎ、クローゼットのハンガーにかけていく。

 

 室内では土足厳禁というのは、アジアとヨーロッパの違いではなく、日本とそれ以外の違いらしい。

 

 玄関で靴を脱ぐのは、それぐらい特殊な価値観ということだ。

 当たり前のように、この異世界でも室内は土足が当たり前。

 

 日本の記憶を思い出してからは、それがとにかく違和感でしかなかった。

 だけど、ここは俺が作った俺だけの家。

 ここだけは前世の、日本風のやり方でいかせてもらう。

 

「わぁ……」

「ほぉ、これはすごいな」

 

 リビングに入るなり、二人は感嘆の声を漏らした。

 俺の作ったリビングは、現代日本をイメージした飾り気のないものだ。

 

 それでも、広々としたリビングの床に敷かれたやわらかい緑色の絨毯、白く美しい壁紙、ガラス製のテーブルとそれを取り囲む革製のソファは、異世界人の目には贅沢に映るかもしれない。

 

 二階まで吹き抜け構造になった開放感あふれる天井には天窓が設えられ、一日中太陽の光を取り入れてくれる。

 

 そして二階廊下部分からのびる滑り台の出口には、厚みのあるふかふかの毛布を敷いてある。

 

 滑り台の邪魔にならないよう、その端っこでサンゴーがもふっとお尻を埋めて眠っている。

 

 そのすぐ近くで、イチゴーとゴゴーが二人仲良く滑り台を逆走し、途中でコロコロと転がり落ちてサンゴーにぶつかった。

 

 だけどそれも含めて楽しんでいる様子だった。

 

「ところでラビ、隣に別の家があるようだが?」

「俺と一緒に退寮処分になったブランて男子がいたから、そいつの家だ」

「その人の部屋も燃えたの? ラビのお隣さん?」

「いや、それは……」

 

 プライベートかつセンシティブな内容なので、言っていいものかどうかちょっと悩んだ。

 

 すると、ベランダの外から甘い、蠱惑的な声が聞こえてきた。

 

「えへへ、これでお泊りし放題、むしろ一緒に暮らせるね♪」

「だだ、ダメだよヴァレ! 隣にラビがいるんだから!」

「え~、いいじゃない別に。気にしない気にしない♪ ほら、脱いで脱いで」

「ダメ! ダメ! あ、あっ、あぁ~~~~!」

 

 静寂が流れた。

 

「じゃあ二人とも、好きな席に座ってくれ」

 

 俺はスルーした。

 ノエルとハロウィーも優しいから何も聞かないでくれた。いい子たちだなぁ。

 

「こっちの窓際席は白いケイ素樹脂製のイスとテーブル、壁際のソファ席はガラス製のテーブルと革製ソファで寝転がることもできるぞ。好きなほうに座ってくれ」

「おいラビ、いくら幼馴染の家とはいえ寝転がるなど」

「そ、そうだよラビ、男の子の前で寝転がるなんて――」

 

 そこで言葉を切り、ハロウィーの視線はサンゴーを追いかけた。

 

 ここでは安眠できないと悟ったのか、サンゴーはよちよちと滑り台から離れ、ソファの上によじよじとよじ登った。

 

 それから、クッションの上にふかっと座った。

 

「サンゴーちゃん一緒に寝よ」

「ぬなっ!?」

 

 ノエルが変な声を上げた。

 それからしばしそわそわしてから、何かに耐えるように窓際へ向き直った。

 

「なな、ならば私は、こちらの窓際席がどのようなものか試してみよう」

 

 あとでノエルの部屋にソファを差し入れようと思った。

 

「じゃああとは、お茶とお菓子だな。ニゴー、ヨンゴー」

『ぎょい』

『さんじょうっす』

 

 キッチンのほうから、平らな頭にカップとお皿を乗せたニゴーとヨンゴーが登場。

 ノエルとハロウィーは、それぞれの頭からカップとお皿を受け取った。

 

「ありがとう、ヨンゴーちゃん。あれ?」

「礼を言うぞニゴー。む?」

 

 いつものようにカップとお皿を受け取った二人の表情が、同時に戸惑った。

 

「ラビ、この薄茶色のお菓子何?」

「こちらのカップには黒い飲み物が入っているがなんだ?」

「チョコレートとコーヒーだ。ニセモノだけどな」

「「?」」

 

 二人はそろって疑問符を浮かべた。

 それもそのはず。

 少なくとも、この国や周辺諸国に、コーヒーとチョコレートは無い。

 

 地球での話だけれど、コーヒー豆はコーヒーベルトと呼ばれる赤道近くの土地でないと栽培できないし、カカオ豆も南方でないと生育は難しい。

 

 だけど。

 

「ラビ、ニセモノってどういうこと?」

 

 小首をかしげるノエルへ、俺は雑学を披露するように答えた。

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