★書籍発売★追放転生貴族とハズレゴーレムの異世界無双――隠し機能がチート過ぎ――え!?ゴーレムが倒した敵の経験値も俺に入るの!? 作:鏡銀鉢
個人契約ではなく、商人ギルドを通してガラスを売るとか。
まずはギルド長に相談しようと決めた。
「しかしラビ、階段の上り下りがこうも多いと、給仕に時間がかからないか?」
「あ、そうだね」
ノエルの指摘にハロウィーが同意すると、俺は首を横に振った。
「二階以上にはドローンで給仕するから大丈夫だよ」
言うと、俺はストレージからドローンを飛ばした。
ドローンは螺旋階段の裏側を滑るように飛び、二階へ素早くたどり着いた。
「なるほど、だが注文はどうやって取るのだ?」
「注文はいらないよ。うちにはチョコとコーヒーがあるからな。注文は銅貨五枚(五〇〇円くらい)でコーヒー一杯とチョコクッキー十枚のセットのみ。席に着いたらこれをドローンが自動で運んでくれる」
「ほぉ、流石だな」
「ノエルとハロウィーには目立つ一階で給仕してほしいからな」
「準備は順調なようですね」
そこへ割り込んできたのは、ギルド長だった。
金縁眼鏡の位置を直しながら、俺の店を見上げた。
「素晴らしい外観です。これは目立つこと間違いなしでしょう。やはり私の目に狂いはありませんでしたね」
「いやぁ、本当に客が入るかどうかは当日になってみないとわからないですよ」
「おや、ラビさんはお若いのに慎重だ」
「人生一寸先は闇、一秒後にはどんな不測の事態が起きるかわかりません」
「その用心深さは、新米商人にも見習ってほしいものですね」
ギルド長は満足げに口ひげをなでた。
勘違いかもしれないしリップサービスだろうけど、その愛想笑いは将来有望な若者を温かく見守る師匠のようだった。
「ラビ? え、ギルド長、もしかしてその子」
屋台のおっちゃんたちが、表情を硬くしながら、俺とギルド長の顔を見比べた。
「はい、彼がいま噂のラビさんです。ゴーレムたちの胸元にオーブがあるでしょう?」
「って、あのラビですか!?」
「いやどうりで! そうか、こんなの作れるから町もすぐに復興できたのか!?」
「おい、ハイゴーレムって子供が作れるもんだっけ?」
「スキルだったとしてもおかしいだろ。なんで王室はラビを放っておいているんだよ」
「他国に行かれないようガッチリマークしておけよ」
おっちゃんたちが思い思いの驚きを見せ、イチゴーたちが自慢げに胸のオーブを見せつける。
すると、そこへ慌てた声が飛び込んできた。
「大変だ!」
突然の大声に、その場の誰もが首を回した。
一体何事だと俺も注目すると、商人の一人と思われる男性が息を切らせて走り込んできた。
「イスとテーブルが届かない!」
『なんだって!?』
他の商人、出店者たちが悲鳴を上げた。
「なんでも倉庫が火事になったとかで、広場に貸し出される予定のイスとテーブルがダメになったって!」
「おいおいどうするんだよ」
「今からかき集めてくるか?」
みんなの狼狽ぶりに、俺はイースターに回復のポーションを飲ませた。
おじさんにはハロウィーが飲ませてあげる。
「おいイースター、まずいのか?」
「そうですね。うちのウィンナーは歩き食いするタイプなのでなんとかなりますが、パスタなど皿に盛りつけるタイプの料理を提供する出店は大打撃でしょうね」
歩きながら、あるいは立ったまま、左手で皿を持って右手で食べる。
客足は遠のきそうだと思った。
「…………」
他の出店者たちはああでもないこうでもないと話し合っている。
必要な量のイスとテーブルを集めるには買うしかない。それだと足が出ると騒ぐ。
「なぁイースター、今日は裏通りで店をしている人たちにとってはかき入れ時なんだよな?」
「えぇ、そうですよ。これを逃したら大打撃です」
「それに、客も祭りを楽しめないだろうな……」
せっかくおいしそうな出店があっても、食べにくそうだからと諦める。
それはつまらないと思う。
「よし」
「どうしたんですかラビ?」
「俺がなんとかする。イチゴー、イスとテーブル、大量生産するぞ」
『わかったー、えいえいえいー』
イチゴーが体を横にもちもち振り始めた。
すると、少し離れた地面に、人間大の青いポリゴンが出現した。
みんながなんだなんだと注目する中、青いポリゴンの中からは白いケイ素樹脂製のイスがもりもり出てくる。
「うぉおおお!」
「すっげ!」
「なんだあれは?」
驚愕する人たちの疑問に答えるように、俺は明るく笑った。
「俺のゴーレム系スキルの派生ですよ。こんなタワーカフェを作れるんですから、イスぐらい余裕です。それと、テーブルも」
別の場所に出した青いポリゴン、その中で、一卓のテーブルを生成した。
ガラス張りの面と、その中央から下に伸びる白いケイ素樹脂製の脚。そのデザインに、出店者たちは感嘆の悲鳴を漏らした。
「ガラス製のテーブル!?」
「なんて綺麗なんだ!」
「こりゃあ客が喜ぶぞ!」
「でも、こんないいもの、お高いんじゃないですか?」
「それは――」
そこで一瞬、俺は言葉を飲み込み瞬時に考えた。
ここでレンタル料を取ればそこそこ稼げる。
だけどそれで終了だ。
ギルド長は言った。
『謝礼を受け取っては取引が終わってしまう』
『銅貨を捨てて金貨を拾う』
『金貨十枚よりも貸しを一つ作ったほうが良い』
なら、これは未来への投資だと、俺は瞬時に判断した。
「タダでいいですよ」
「えぇ!?」
「いいのかお前!?」
「これマジで金取れるぞ!?」
誰も彼もが驚愕する中、俺は謙遜して物腰柔らかく頭を下げた。