★書籍発売★追放転生貴族とハズレゴーレムの異世界無双――隠し機能がチート過ぎ――え!?ゴーレムが倒した敵の経験値も俺に入るの!?   作:鏡銀鉢

183 / 185
ひどいぜ兄さんww

「どーぞー♪」

 

 兄さんがソファに腰を下ろすと、イチゴーは笑顔で目の前のテーブルにコーヒーとチョコを配膳した。

 

「食ってくれよ。味はみんなが保証する」

「とてもおいしいのです。むふん」

 

 と、言いながらゴゴーが勝手に兄さんのチョコを食べ始めた。おいおい。

 心の中で俺がツッコんでいるとも知らず、ヴァレまでチョコを二つ手に取ると、ブランを連れてその場を離れた。

 

 彼女なりに、配慮してくれたつもりなのだろう。

 俺はヴァレが座っていた場所に着席すると、テーブルを挟んで兄さんと向かい合った。

 

「物まで食べるとは、本当に人間そっくりだな」

 

 ゴーレム使いだけあり、好奇心が湧いたらしい。

 兄さんはヴァレに付き従うゴゴーの背中を興味深げに見つめた。

 

「皆、二階へ行こう」

 

 ノエルが俺らに気を遣い、みんなで席を外そうとしてくれた。

 けれど、兄さんがそれを止めた。

 

「気遣い無用だ。いまさら守るプライドも無い」

 

 それから、兄さんはコーヒーとチョコレートを一口ずつ口に含んでくれた。

 

「どうだ、兄さん。これが今、庶民の間で人気のコーヒーとチョコレートだぜ、代替品だけどな」

 

 俺が歯を見せて笑うと、兄さんも笑みを見せてくれた。

 

「救世祭の時は味わえなかったが、新鮮なものだな。気に入ったよ」

「そりゃよかった」

 

 俺が安心すると、兄さんは申し訳なさそうな、だけど後ろめたさのない、純粋な声をくれた。

 

「……今回はお前に助けられたよラビ。ありがとう」

「頭を上げろよ。俺ら兄弟だろ?」

「ラビ……」

 

 これが、憑き物が落ちたような顔、とでもいうものだろうか。

 兄さんは呪縛から解放されたような晴れやかな顔を見せてくれた。

 

「それで、俺に届け物ってのはなんだ?」

「ああ。ゴーレム協会理事会と、王室の連名で、お前に招聘状が届いている」

 

 兄さんがふところから取り出した封筒を受け取ると、王印による蝋封がなされていた。

 

 貴族と言えど、目にする人はほとんどいないだろう。

 俺は封を開けると、中の書類に目を通した。

 

「内容はそこに書いてある通りだ。イチゴーたちを連れてゴーレム協会へ出頭。そこで本物のエルダーゴーレムと認められたらお前をゴーレム協会最高幹部、ならびシュタイン家から独立した公爵家へ叙勲するというものだ」

 

 兄さんの言葉に、ヴァレ以外の四人が、がたりと椅子を鳴らした。

 キッチン側のテーブルを見やると、ヴァレ以外の四人が驚愕の顔で固まっている。

 無理もない。

 

 公爵家と言えば、レッドバーン家と同じ、王族という例外を除けばこの国の最高階級だ。

 

 国内においては、神にも等しい存在と言えるだろう。

 けれど、俺はその招聘状をソファの上に放り捨てた。

 

「いらね」

 

 また、四人がざわついた。

 兄さんも、目を丸くする。

 

「いいのか? 公爵になれる機会だぞ?」

「ああ」

 

 俺はコーヒーを一口すすり、こともなげに頷いた。

 

「だって明らかにイチゴーたち目当てじゃないか」

 

 カップをテーブルに置いて、俺は呆れ口調を続けた。

 

「イチゴーたちの体を、知らない連中に引っ掻き回されて、王室の都合でエルダーゴーレムの力を振るわされる。その矛先は、罪のない人々かもしれない」

「それはそうだが」

 

「貴族に弾圧された人々によるクーデターの鎮圧、隣国を侵略するための道具にされるかもな。国家のためにゴーレムを使うのはゴーレム使いの矜持だし、俺も昔は、戦争へ投入されるようなことがあっても仕方ないと思っていた。けどさ」

 

 ハロウィーたちに甘えるサンゴーたち。

 

 そして、今もソファの隣に座って、俺の膝を枕代わりにしてくる愛らしい幼女姿のイチゴーを見つめて、俺は頬をほころばせた。

 

「この子たちに、人殺しなんてさせたくないよ。そこまでして手に入れる価値のあるモノなんて、あるわけないさ」

 

 俺がイチゴーの頬を指でぷにぷにつつくと、彼女は幸せそうにもちもちと笑い、兄さんは諦めにも似た溜息を吐いた。

 

「お前に負けた理由が、わかった気がするよ。なぁラビ、本当にシュタイン家はお前が継がないか? 正直、もはやすべてにおいてお前のほうが上だ。私よりもお前のほうが――」

「おいおいやめてくれよ」

 

 兄さんの言葉を遮り、俺は手を横に振った。

 

「俺は当主なんてガラじゃないよ。それに、俺はいつか貴族に戻るかもしれないけど、今は平民のままがいいんだ。そういう話はよしてくれ」

 

 すると、俺の気持ちが通じたのか、兄さんは優しい笑みを浮かべてくれた。

 

「……そうか。言われてみればそれもそうだ。お前に当主の仕事が務まるとは思えん」

 

「だからってそれも酷いなおい」

 

 なんて、ツッコミを入れながら、俺と兄さんは笑い合った。

 

★完結第三巻発売中です。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。