★書籍発売★追放転生貴族とハズレゴーレムの異世界無双――隠し機能がチート過ぎ――え!?ゴーレムが倒した敵の経験値も俺に入るの!?   作:鏡銀鉢

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イースターとヴァレンタインの正体

 ラビたちが一階で和やかな時間を過ごしている間、イースターとヴァレンタインは、こっそりと席を外していた。

 二階のバルコニーに佇み、互いにやや剣呑な雰囲気で視線を交える。

 

「こんなところに呼び出して何の用だい? ボクは早くバニーとベッドで仲良くしたいんだけど?」

 

 フードから溢れた長い赤毛の先をいじりながら、ヴァレは気だるげに言った。

 

「そう時間はかかりませんよ。貴女の正体さえ教えてくれればね」

「……へぇ、なら、そっちの正体も教えてほしいなぁ」

 

 ヴァレは犯人を追い詰める探偵のように鋭い眼差しで、イースターに一歩、歩み寄った。

 

「イースター・D・エイプリル。いや、イースター・ダンジョン・エイプリル。二〇〇〇年前、女神と一緒に世界を救い、ダンジョンを作った少女であり、人として結婚して子供を作り、人として老いて死んだ転生者、宮造穂香(みやづくり・ほのか)の子孫さん」

 

 ヴァレの言葉に、イースターはほくそ笑んだ。

 

「聖典にも載っていない昔話をよくご存じですね。人間の書物には一切残っていないはず。知っているとすれば、当時を見て知っている人、ぐらいでしょうか? 貴女は二〇〇〇歳のお婆ちゃんにしては若すぎますねぇ」

 

「見たのはボクじゃなくてボクのグランマだよ。ハイエルフを超えたエルダーエルフで、学園長のグレートグランマ、ひいお祖母(おば)ちゃんでもあるね」

 

「おや、では貴女は学園長の遠い従姉妹叔母さんでしたか。あまり似ていませんね」

「向こうは何度も人間の血が入っているからね。確かクォーターエルフの半分で、八分の一がエルフだったかな」

「女神の盟友、伝説のエルダーエルフ、ヴァレンティーヌさんはご健在ですか?」

 

「グランマなら元気だよ、心はだいぶ衰弱しているけどね。でもボクをエルフの里から出してから一〇〇年、ようやくグランマが喜びそうな報告ができそうだよ」

 

「イチゴーちゃん、いや、イチゴーさんですね」

「ご名答」

「どうやら、互いに名乗るまでもないようですね。お互いに二〇〇〇年待った者同士、隠し事はなしにしましょう。我々は神話の子孫同士なのですから」

「いいよ」

 

 さらりと言って、ヴァレはフードを脱いだ。

 彼女の首から上が外気にさらされた。

ルビー色に赫く赤毛が流れ出し、そこから長くとがった耳が伸びていた。

人ならざる、エルフの証に、イースターは眼鏡の奥で目を細めた。

 

「先祖代々、異世界転生者を助けるよう言われてきましたが、そちらもですか?」

「うちはちょっと違うかな。助けるのはもちろんだけど、監視の意味合いもあるんだ。二〇〇〇年前の悲劇は冗談じゃ済まないからね」

 

 まるで他人事のように、ヴァレは軽く言い流すと、バルコニーの手すりに座った。

 足をぶらぶらとさせる姿には、まるで緊張感がない。

 

「キミだって知っているだろう? 二〇〇〇年前の転生者大戦をさ」

「そうですね」

 

 らしくもなく、イースターはやや悲嘆の声音を返した。

 

「とは言っても、まるでお伽話ですよ。ワタシの祖先と一緒に日本から訪れた少女、九重巴(ここのえ・ともえ)と七海渚(ななみ・なぎさ)、二人のゴーレムは人類を全ての労働から解放し、人類は一生遊んで暮らすだけの存在になった。けれど人の欲望は限界を知らずより良い暮らしを求め、腐敗し、そんな人類に魔獣型ゴーレム使いの渚が鉄槌を下した。それを止めようと人型ゴーレム使いの巴が戦い共倒れ。人類はゴーレムを失い、原始の生活を余儀なくされた。どんなにゴーレムが優れていようと、全人類を労働から解放するなんてできるものでしょうか?」

 

「それほどに圧倒的だったんだよ。九重巴と七海渚のゴーレムは。何せエルダーゴーレムを無制限に大量生産できたんだからね。エルフの里にいくつか現存しているけど、あんなものが何万何億とあれば、そりゃ人類に労働なんていらないさ」

 

 ヴァレは体をうしろにかたむけ、青い空を仰ぎ見た。

 

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