★書籍発売★追放転生貴族とハズレゴーレムの異世界無双――隠し機能がチート過ぎ――え!?ゴーレムが倒した敵の経験値も俺に入るの!?   作:鏡銀鉢

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二階層ボス

 すると、トレントの死体が消えてストレージ送りになった。

 その様子に、クラウスがきょとんとした。

 

「あれ?」

「ごめんクラウス。おいイチゴー、クラウスも一緒に戦ったんだから、勝手に回収したら駄目だろ?」

『ごめんー』

 

 ダンスを中断して、イチゴーはぺこりと頭を下げた。

 

「もしかしてそのゴーレム、アイテムボックススキル持ちなのかい?」

 

 本格的にチームを組むまでは秘密にしたかったけど、バレたら仕方ない。

「まぁな。と言っても本職のアイテムボックススキルの劣化版だよ。あくまでも自律型ゴーレム生成スキルの派生でゴーレムを作る素材を保存するためのものなんだ。あと、収納できるのは自分の物と誰にも所有権の無い物だけだから、泥棒はできないから安心してくれ」

 

 物を異空間に収納できるアイテムボックス系スキルは多くの人の憧れであると同時に、誤解を受けやすいスキルでもある。

 

 つまり、お店の商品をこっそりとアイテムボックスに入れていないかと。

 でも、そんなことができたらとんでもない。

 

 それこそ、戦闘中に敵の武器をアイテムボックスに収納して強制武装解除ができてしまう。

 

「知っているし、君がそんなことをするような人だとも思っていないよ。それから素材は君が貰ってくれ。僕の誘いに乗ってくれたお礼だよ」

「随分と気前がいいな?」

 

 地下一階とはいえ、一応ボスなので、素材にはそれなりに価値がある。

 

「僕はお金やアイテムの為にダンジョンに潜っているわけじゃないからね」

 

 生活のために命がけでダンジョンに潜っている人たちを敵に回しそうな言葉だけど、天才イケメンが堂々と言うと、文句を言う気力も無かった。

 

「じゃあせめて剣が手に入ったら貰ってくれないか?」

「いらないよ。僕には父さんの形見があるからね」

 

 思い出をなつかしむようにやわらかい声で、クラウスは右手の剣を見下ろした。

 父親が死んでいることをどうフォローすればいいのか、俺は言葉に困った。

 すると、クラウスはまるで俺に助け船を出すかのように話題をくれた。

 

「僕が今日、ここに来たのはラビ、君と話したかったからさ」

「? それってどういう意味だ?」

「……時間がもったいない。歩きながら話そうか?」

 

 クラウスがそう言うと、ボス部屋の壁が開き、地下へ下りる階段が現れた。

 地下へ下りる階段は通路の途中にあった。

 

 けれど、下り階段が複数存在するダンジョンもあるし、どのダンジョンもボス部屋には必ず階段があるらしい。

 

 王立学園のダンジョンも、その例に漏れないようだ。

 

 

 階段を下りながら、クラウスは静かに尋ねてきた。

 

「なぁラビ。君はどうして、実家を追放されたんだい?」

 

 なかなか踏み込んだ質問に、俺はクラウスへの評価に悩んだ。

 

 ちょっと天然だとは思ったけれど、こんなデリカシーの無い質問をしてくるとは思わなかった。

 

 他人を気遣える人だと思っていたけど、違ったのか。

 けれど、そんな俺の意さえ汲み取ったのか、クラウスは続けた。

 

「失礼なことを聞いている自覚はある。普段ならこんなプライベートな質問はしないよ。でもね、どうしても聞いておきたいんだ。貴族に生まれながら、その身分を剥奪されてしまう事情を」

 

 何か深い事情がありそうな語調に、俺も真摯に向き合った。

 

「それは、どうしてだ?」

「貴族を追放された君だから話すけれど、僕は昔から、【身分】というものに疑問があったんだ」

 

 異世界人らしからぬ言葉に、俺は嫌でも異世界転生者ではないかという疑念が頭をよぎった。

 

 地下二階に下りたクラウスは駆け足になり、向かってくる魔獣を次々剣で切り伏せながら、淡々と語り始めた。

 

「身分は生まれながらに決まっている。そして人は生まれを選べない。なのに人の一生は身分で決まってしまう。これは、人の一生は最初から決まっているということ。あらゆる努力や理想を踏みにじる悪魔の呪いだ」

 

 ゴブリンやスライム、ホーンラビットを切り伏せ、フリントマウスを蹴り飛ばし、クラウスは先へ進んだ。

 

「まるで才能やスキルと同じだ。神が最初から人に与えた運命だ。水が上から下に流れ落ち、太陽が東から昇り西へ沈むような、覆しようがないこの世の理だ」

 

 ウォーターリーパーを切り飛ばしながら、けどね、と続けた。

 

「教会で神官様から歴史の授業を受けていた時に知ったんだ。僕の故郷を治める領主様の家は、二〇〇年前の戦争で徴兵された初代様が手柄を立てて平民から貴族に取り立てられて誕生した貴族だって。幼い僕は思ったよ『身分て変わるの?』ってね」

 

 クラウスは演説をするように、朗々と語り始めた。

 

「だってそうじゃないか。太陽は西から昇らない。水は上に落ちない。だけど身分は平民が手柄を立てて貴族になったり、貴族が没落して平民になる。平民が貴族になったら何が変わるんだい? 翼が生えて空が飛べるかい? 未来を予知できるかい? 神様とお話ができるかい? 答えはNOだ!」

 

 語気を荒らげながら、クラウスは岩のような表皮を持つトカゲ、ロックリザードを断ち割った。

 

「平民から貴族という高等種族に転身したわけじゃない。今日から君は貴族だと叙勲された途端強くなったわけでもない。平民のまま貴族以上の功績を上げたなら、身分と能力は無関係ということになる。そして身分が組織の階級のように能力で決まるなら、親が貴族というだけで生まれながらに貴族の連中ってなんなんだ?」

 

 普段の涼やかな彼からは想像できない、苦痛に耐えるような、悲しみを背負った声は熱を帯び、振るう剣も勢いが増していく。

 

「身分が神の定めたこの世の理なら、言葉一つで身分を変えられる王族や上級貴族は神様なのかい? そんなわけもない。平民も貴族も、そして王族だって同じ人間だ。つまり身分というのはこの世の理でもなんでもない、ただの【言葉遊び】。もしくは子供の鬼ごっこの鬼役同様、ただの役柄でしかないんだよ!」

 

「……」

 

 俺はクラウスの言葉に聞き入ると同時に、自分を恥じた。

 クラウスは何の苦労も挫折も知らないキラキラエリート様だと思っていたけどとんでもない。

 

 こいつも俺と同じ、色々な苦悩を抱えて生きているんだ。

 俺が自省すると、第二階層のボス部屋に辿り着いた。

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