★書籍発売★追放転生貴族とハズレゴーレムの異世界無双――隠し機能がチート過ぎ――え!?ゴーレムが倒した敵の経験値も俺に入るの!?   作:鏡銀鉢

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絶体絶命

「どうしたのラビ? 嬉しくないの? わたしたち、五階層のボスに勝ったんだよ?」

 

 ハロウィーがきょとんと首をかしげた。

 

「そうなんだけど……リザルト画面が出るの遅くないか?」

「え?」

 

 見れば、イチゴーたちも勝利のダンスを踊らない。

 無表情だけれど、イチゴーは不思議そうにカースメイルの残骸を眺めている。

 メッセージウィンドウが動いた。

 

『しゅうのうできなーい』

「まさか!?」

「ッッ!?」

 

 クラウスが剣を構え、鎧から三歩退いた。

 

「■■■■■■」

 

 ガチャガチャという鎧の金属音。

 それは、毎秒強く、激しく鳴り、そしてカースメイルが跳ね起きた。

 

「うわぁっ!?」

 

 ハロウィーも一歩退いた。

俺の指示も無く、サンゴーがハロウィーを守るように前に並んだ。

 

「■■■■■■■■」

 カースメイルが変形していく。

 

 その姿は、まるでトランスフォーム玩具を彷彿とさせた。

 

 鎧が開き、組み代わり、中から新しいパーツが飛び出し、腕は四本に増え、兜からは禍々しいツノが生えてくる。

 

 その異様に、俺は昔を思い出した。

 

「まさか、隠しボスって奴か?」

「なにそれ?」

 

「家庭教師から聞いたことがある。ダンジョンには、一定の条件をクリアした時だけ姿を現す特別なボスがいることがあるって。それは第二のボス部屋があることがあれば、今回みたく本来のボスが進化することもあるらしい」

 

「じゃあわたしたちが今の戦闘でその条件をクリアしたってこと!?」

 

 やや慌てながら、ハロウィーは声をうわずらせた。

 

「ああ。時間か、人数か、使ったスキルか、それはわからない。だけど問題は、隠しボスは本来のボスよりも圧倒的に強いってことだ」

 

 家庭教師曰く、最低でもプラス五レベル。

 つまり。

 

「あいつの推定レベルは二〇。三年生のトップクラスと同格だ」

「■■■■■■■■■■■■■■■■!!!」

 

 真カースメイルが襲い掛かってきた。

 風切り音を巻き起こす電光石火の踏み込みは、一歩でクラウスとの距離をゼロにした。

 

「ッ!?」

 

 限りなく条件反射に近く見えるガードで防ぐも、クラウスの体は吹き飛ばされた。

 いや、自らうしろに飛んで威力を殺したのかもしれない。

 

「速い、そして重い! だけど何よりも……」

 

 息を呑むクラウスと俺の視線の先で、真カースメイルは四本の腕を掲げた。

 その手、一つ一つに、漆黒のロングソードが握られていた。

 

「手数が違う」

「■■■■■■!」

呪詛のように金属音を鳴らしながら、真カースメイルが突進してきた。

 

 その烈風のような威圧感に耐えながら、俺は叫んだ。

 

「イチゴー! 取り囲んで攻撃だ!」

『がんばるー』

『ぎょい』

 

 イチゴーとニゴーを先頭に、ゴーレムたちが真カースメイルに体当たりをしていく。

 

 だけど、四本の腕はそのことごとくを弾いていく。

 こちらは五人。

 向こうの剣は四本。

 

 けれど、流れるように縦横無尽の軌道を描く剣は、一振りで二人のゴーレムを斬り飛ばした。

 

「剣術も一流かよ……」

 

 オーバースペックに歯を食いしばった。

 それにイチゴーたちのダメージも無視できない。

 さすがはゴーレム、ボス魔獣の斬撃にも耐えている。

 けれど、イチゴーたちの体には浅い切り筋が残されていた。

 

「ゴーレムは離れてくれ!」

 

 言うや否や、クラウスは上段に構えた剣を一息に振り下ろした。

 白銀が床を駆け抜け、真カースメイルを飲み込んだ。

 同時に白い霧が周囲に立ち込め、視界が消えた。

 

「冷たッ!?」

 

 ハロウィーの小さな悲鳴。

 指と頬を切り裂くような冷気に、俺も背筋が震えた。

 

「僕の奥の手、フリージングウェイブだ。進化して別の魔獣になっていれば魔法が効くはず。魔法耐性が据え置きでも、氷の牢屋に囚われて動けなくなるはずだ」

 

 流石は一年首席の魔法剣士。

 魔法選びのセンスは抜群だ。

 やがて白い霧のような冷気が晴れ、真カースメイルが顔を出した。

 クラウスの思惑通り、そこには氷の中に閉じ込められた四本腕の鎧姿があった。

 

「「よしっ」」

 

 確かな手ごたえに、俺とクラウスは同時に声を上げた。

 けれど有利の悦びは一瞬。

 氷の塊にひびが入り、ガラスのように粉々に砕け散った。

 

「■■■■■■■■」

「ッ、ダメか……」

 

 万策尽きた。

 

 クラウスの魔法は効かない。

 ゴーレムたちは斬撃の嵐を突破できない。

 同じ理由で、ハロウィーの矢も通じないだろう。

 あの激烈な打ち込みを連続で浴びせられれば、クラウスでも持たない。

 

 あいつに勝つのは、現実的に不可能だった。

 

「仕方ないクラウス。ここはいったん逃げよう!」

『ドアがあかないのです』

「はっ!?」

 

 振り返ると、ゴゴーが入ってきたドアに触れたまま、足を滑らせていた。

 クラウスがハッとする。

 

「まさか、こいつを倒さないと開かないのか?」

「閉じ込められたってことか?」

 

 これも前に家庭教師から聞いた。

 ボス部屋には、稀にボスを倒さないと出ることができないものがあるらしい。

 ハロウィーだけでも逃がさないと。

そう思って首を回すと、彼女は俺を見ていなかった。

 

 彼女の視線の先にあるもの、それは。

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