★書籍発売★追放転生貴族とハズレゴーレムの異世界無双――隠し機能がチート過ぎ――え!?ゴーレムが倒した敵の経験値も俺に入るの!?   作:鏡銀鉢

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ノエルのスキルってなんだっけ?

 太陽が真上を少し過ぎる頃。

 俺らは見上げるような堤防の近くで、本日三つ目の群れであり、五五頭目のレッサーウルフを退治していた。

 

「■■!」

 

 膝まで伸びた長い草地を、狼の群れが獰猛に吠えながら襲いかかってくる。

けれど、雑魚魔獣の一体に数えられるレッサーウルフ程度、クラウスとノエルの敵ではなかった。

 

 凶暴な個体から順に剣に切り裂かれ一撃で絶命。

 俺のストレージ送りになった。

 

 臆病風に吹かれた個体は逃げていくも、その背後をハロウィーの正確無比な狙撃が襲った。

 

 一番弱そうな俺に襲い掛かって来た個体は、もれなくニゴーがワンパンで頭蓋骨を叩き割っていた。

 

「ハァッ!」

 

 ノエルが横薙ぎの一撃を振るうと、サーベルはその細身な剣身に似合わず、レッサーウルフの口を左右に切り裂き、肩、背骨を抜けて背中から抜けて行った。

 

 返り血が彼女の制服と金髪を赤く濡らすも、彼女が気にするのはサーベルに付着した血のりのほうだった。

 

 鋭くサーベルを振るう血振りで男前にサーベルの輝きを取り戻すと、ノエルの青い瞳は次の敵を探して周囲を鋭く一周した。

 

「……どうやら、今ので最後だったらしいな」

 

 ハロウィーが矢を放つと、遥か遠くから犬のような鳴き声が聞こえた。

 ノエルは嬉しそうに笑った。

 

「どうやら、今ので本当に最後だったらしいな」

「だね」

 

 ハロウィーはノエルと笑みを交わし合うと、武器を納めながら俺に歩み寄って来た。

 

「一日で大収穫だね」

「これもラビのスキルのおかげだな」

「褒めたって体を綺麗にするぐらいしかできないぞ」

 

 俺がスキルを使うと、ノエルの浴びた返り血が消えて、彼女の金髪は美しい輝きを取り戻した。

 

 俺のスキルは自律型ゴーレム生成だ。

 

 けれど、そこから生まれる派生スキルとして、ゴーレムの素材を巨大な異空間に収納しておける。

 

 いわゆるアイテムボックスというもので、俺はストレージと呼んでいる。

 

「本当だね。普通の冒険者は魔獣を何体か倒したら討伐証明になる部位や価値の高い箇所だけを持ち帰るのが普通だ。全身を持って帰るなら、一体二体がせいぜいだ。でも、僕らは何十体でも全身ごと持ち帰れる。一日で五五体のレッサーウルフを倒しました、なんて言ったら驚くだろうね」

 

 クラウスは自分のことのように誇らしそうに褒めてくれるも、俺は表情を曇らせた。

 

「う~ん、それなんだけど、町に入る前に討伐証明の犬歯だけ取り出して、袋詰めにしてからギルドに提出させてもらってもいいか?」

「どうしてだい?」

 

「俺が事実上のアイテムボックススキルを持っているってことは、あまり広めたくないんだ」

 

「そっか、強力過ぎるスキルを狙って悪い人が集まって来るかもしれないからね」

「理解が早くて助かるよ。それにアイテムボックススキルには偏見もあるからな」

「あ~、泥棒あつかいされちゃうんだっけ?」

 

 ハロウィーが声を曇らせると、クラウスが補足説明を始めた。

 

「アイテムボックススキルは他人に所有権のある物は許可が無いと収納できない。でもそんなこと、普通の人は知らないから物が無くなるとすぐに疑われるんだ。今でも一部の地域では来店お断りの店まであるって話だよ」

 

「解説ありがとうな」

 

 説明の手間が省けて微笑を作った俺に、クラウスは人懐っこい笑みを返した。

 

「じゃあ僕は君の秘密を知る数少ない友人ってわけだね」

「え、まぁ、そうなるかな」

 

 恥ずかしいことを平気で言うキラキラ美少年ぶりに、むしろ俺が恥ずかしくなった。

 

 ——くっ、これがイケメン主人公パワーなのか。

 

 俺が女子なら、恋に落ちていたかもしれない。

 ノエルの手が、俺の肩をわしづかみにしてきた。

 

「そうだぞラビ。このことは他の人には絶対に言うな。これ以上秘密の共有者を増やしてはいけない」

ノエルの手が深く食い込んだ。深く。

「お、おう」

 

 何故そんなにも念を押すのか理由がわからない。

 そしてハロウィーが頬を赤らめながらそわそわしている。

 これも理由がわからない。

 そこへ、ちょこちょことイチゴーたちも戻って来た。

 

「みんなお疲れ様な。特にニゴーは頑張ったな。偉いぞ」

 

 俺が頭をなでると、ニゴーは恥じらうようにややうつむき、体をもじもじと揺すった。とにかくかわいい。

 

「ラビ、ヨンゴーちゃんとゴゴーちゃん、あんなところに登っちゃってる」

 

 ハロウィーに言われて見上げたのは、すぐ近くの堤防だった。

 

 クラウスが去年修繕作業に従事した堤防で、運河が洪水を起こさないよう治水をしている町の重要施設だ。

 

 急こう配なその頂上で、二人はもちもちと動いて遊んでいた。

 

『すごく、たかいのです』

『てんしるちしるひとがしる、つきにかわっておしおきかめんとうじょうっす』

 

 とう、とばかりにヨンゴーはジャンプ、ゴゴーは側転ポーズでコロコロと転がって来た。

 

 そうして二人は地面に転がると、小さな子供のように手足をぱたぱた動かしてはしゃいだ。

 

「緊張感ないなぁ」

 

 俺が呆れ気味に笑うと、ノエルが頬を緩ませた。

 

「ま、まぁ仕方ないではないか。スキルを使うまでもないレッサーウルフ相手では誰だって気が抜けるというものだ」

 

 いつも油断なく毅然とした騎士様であるノエルも、ゴーレムには甘々だった。

 

「だが、高い所は危ないので連れ帰らなくてはな、うむ」

 

 言って、ノエルはヨンゴーとゴゴーのもとに走った。

 なんて欲望に忠実な子だろう。

 普段はカッコイイノエルに子供っぽいところを見せられると、妙に愛らしく見えてしまう。

 

「あれ? そういえばノエルのスキルって何だっけ?」

 

 ふとしたハロウィーの問いかけに、俺とクラウスも興味を惹かれた。

 

「そういえばまだ聞いたことなかったな」

「今後も組む可能性があるなら、戦力は知っておきたいよね」

 

 両脇にヨンゴーとゴゴーをがっちりとキープしながら離そうとしないノエルは、凛とした表情で立ち上がった。

 

「む、そういえばまだ言っていなかったな。別に隠していたわけではない。たんに言う機会がなかっただけだ。つい昨日まではハズレスキルだったしな」

 

 ——顔は凛々しいけど両脇で台無しですよ。

 

 ノエルは本当にゴーレムが大好きなんだなぁと、つい笑ってしまう。

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