★書籍発売★追放転生貴族とハズレゴーレムの異世界無双――隠し機能がチート過ぎ――え!?ゴーレムが倒した敵の経験値も俺に入るの!?   作:鏡銀鉢

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「皆さん、よく来てくださいました」

 

 この前、会ったばかりの町長さんと神官さんの顔を見て、俺は胸をなで下ろす。

 二人が無事で良かった。

 教会地区が地盤沈下したと聞いた時から、二人の安否が気になっていた。

 

「お二人ともよく無事でしたね」

「はい。ちょうど町長の家を訪ねていましたので。これも神の御加護でしょう。ですが、代わりに女神像が……」

 

 神官さんの視線の先、教会地区の奥には、あの斜め十字をシンボルとした建物は見えない。

 

 おそらく、地盤沈下で地中に呑み込まれてしまったのだろう。

 なら、女神像も地面の下だ。

 

 神官さん、それに女神像を慕っていた町の人たちの気持ちを考えると、胸が苦しくなった。

 

 俺も、幼い頃からゴーレムに関わって来た身としては、あんな稀少ゴーレムが失われてしまったと聞けば、一種の喪失感がある。

 

 喩えるなら、歴史的重要建築物が火事で焼失したと聞いた歴史オタクの気分に近いだろう。

 

「俺ら以外に冒険者は?」

「この町の冒険者以外は、まだ誰も……」

 

 町長さんは無念そうに目を伏せ、首を振った。

 実際、周囲にいるのは清掃活動に従事する作業着姿の疲れた住民ばかりだった。

 

「人手はいくらあっても足りませんから。周辺地域の冒険者ギルドにも、依頼は出しているのですが……」

 

 今回のクエストの報酬は、決して高くはなかった。

 お金にも武功にもならない地味で辛い復興作業。

 

 地元愛がなければ、いかにも冒険者が嫌いそうなクエストだ。

 

 令和の地球にはボランティアという言葉もあるけれど、あれは時代と倫理が進んだ現代地球ならではの価値観だ。

 

 日々の糧を得るのにも精一杯のこの世界で、ボランティア精神は期待できないだろう。

 

「皆さん、教会地区の復興には長い時間がかかります。それよりも、まずは住民の生活です。最初は他の地域の汚水処理をお願いします。それから後日、大規模な瓦礫撤去計画を組もうと思います」

 

 神官さんの説明に、町長さんが補足した。

 

「瓦礫を撤去しようにも、こう町中が泥だらけじゃ運搬もはかどりませんからね」

「最初の一週間は町の清掃と道路の整備。教会地区の瓦礫撤去は、その後ですね」

 

 女神像が心配なのか、神官さんが沈鬱な表情を浮かべた。

 ハロウィーも表情を曇らせた。

 

「町の清掃と道路整備といっても、これ、全部をですか?」

 

 規模は小さくても町は町だ。

 その地面、道路、全てが泥にまみれ、ぬかるんでいる。

 

 むしろ、人口の密集している都市のほうが、各々が自身の敷地を清掃することですぐに終わったかもしれない。

 

 ノエルも思わず唸った。

 

「とてもではないが、一週間では終わらないな。ある程度は妥協しよう。まずは主要道路を清掃して……それでも限界があるか」

 

 気の遠くなるような作業に、みんな黙ってしまう。

 

 俺らはあくまで学生で、クエストの依頼を受けた冒険者だ。

 この町の復興に一生は付き合えない。

 

 みんなの役に立てればと思って復興支援には来たものの、これでは焼け石に水だ。

 考えが甘かったかと俺が自省すると、イチゴーがぴょこぴょこと跳ねた。

 

 視界のチャット画面が更新される。

 

 ――ますたーの【そざいちょぞうこ】スキルではやくかたづけよー。

 

 神官さんと町長さんが不思議そうにする中、俺は手を打った。

 

 クラウスにも言った通り、俺はまだ、ストレージスキルを他人に言うつもりはない。

 

 俺がそれなりの社会的地位を確立する前にスキルのことがバレれば、利用しようとする連中が近づいてくるのは目に見えている。

 

 だけど、そんな連中を警戒して町の人たちを見捨てるのは、人として間違っている。

 

「悪いノエル。お前との秘密、守れそうにないわ」

「ばかもの。そんなことを気にするな」

 

 ノエルは腰に手を当てると、男前に微笑んだ。

 

「それよりも遠慮はいらない。やってしまえ」

「やらせてもらうよ」

 

 俺がスキルを発動させると、半径一〇メートルの地面からぬかるみが消えた。

 そこには、乾いた硬い地面が広がっている。

 

「こ、これは!?」

 

 驚く神官さんと町長さんに、俺は告白した。

 

「俺、アイテムボックススキルを持っているんです。それも、かなりレベルの高いね。この力で町中の泥、全部綺麗にしますよ。今日中に! ノエル」

 

 ストレージから広い長テーブルを取り出してから、その上に体力と軽傷を回復させるポーションを四〇〇本並べた。

 

「ハロウィーたちと一緒にこれをケガ人に配ってくれ。エスパーダ子爵令嬢の名前を出せば取り合いにはならないはずだ。神官さんと町長さんは住民を集めてください」

「心得た。皆の者! 我はエスパーダ子爵令嬢! ノエル・エスパーダである! 回復のポーションを配布する故! 集まるがいい!」

 

 ノエルが声を張り上げると、通行人や玄関口の清掃をしていた人たちの視線が一斉に集まって来た。

 

「貴族様!? いいのですか?」

「オレらみたいなもののためにありがとうございます」

「ありがたやありがたや」

「いま、祖母さんが足を怪我して寝ているんです。ひとつ貰えますか?」

 

 ノエルの呼びかけに周囲の人たちが集まって来た。

その流れを目にして、さらに遠くの人たちも続々と集まって来る。

 

 外国の被災地ニュースでは、暴徒と化した避難民が物資の取り合いをする話を聞く。

 

 それを見越してノエルに頼ったけれど、想像以上の効果だった。

 

 みんな、子爵令嬢の名前にいい意味で恐れをなして、列を作ってくれた。

 

 神官さんと町長さんは声を出して町の人たちに呼びかけ始める。

 

 ノエル、ハロウィー、クラウスの三列に住民が集まり、滞りなく配布作業は進んでいく。

 

 たぶん、みんなエスパーダ家が支援に来たと思い込むだろうけど、ノエルの実家の名誉になるなら問題ない。

 

「じゃあ、俺も行くか」

 

 まず、ストレージからサイズを半分にしたカーボンボードを取り出した。

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