★書籍発売★追放転生貴族とハズレゴーレムの異世界無双――隠し機能がチート過ぎ――え!?ゴーレムが倒した敵の経験値も俺に入るの!?   作:鏡銀鉢

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ゴーレムが二倍速で踊っております

 それを参考に、イチゴーに3Dプリンタを発動させるよう指示した。

 

 すると、ずんと頭が重たくなる。

 

 他の家のようにケイ素樹脂でシンプルなデザインならともかく、木材や石材など複数の素材を使い、細かい意匠を含む教会の再現は、凄まじい精神的負担だった。

 

 しかも、時間がかかる。

 

 まるで数学の難問に頭を悩ませている最中に好きな漫画の打ち切り報告を耳にしたような辛さにまぶたが下がる。

 

 なのに巨大な青ポリゴンは消えず、いつまでも生成作業を続けていた。

 

 ——ぐっ、辛い。だけど教会は町のみんなの心の拠り所だ。ドールハウスじゃあるまいし中身が平面ってわけにはいかないだろう。

 

 イスやテーブルなどは、瓦礫から回収した物をそのまま使用。

 だけど、他の細かい内装を俺のレベルで再現するのは無理があるようだ。

 

「…………」

 

 それでも、町の人たちが不安と期待の入り混じった顔で、俺の青いポリゴンを見つめている。

 

 教会だけは、二十一世紀的な外観では意味がない。

 

 前と同じ姿でないと。それも、中に入ったら平面の床と壁、ではなく、内装も再現してあげたい。

 

『ますたーがんばってー』

 

 俺の周りで、イチゴーたちがちょこちょこ踊りながらエールをくれた。

 ハロウィーとノエルも、俺を見つめながらぐっと握り拳を作ってくれた。

 その姿に精神力を貰い、俺は耐えた。

 

 ——イチゴー、俺にかまわず全力で頼む。

 ――わかったー。

 

 イチゴーは二倍の速度で踊り始めた。

 スキルの発動にポージングや動きは関係ないけれど、がんばってくれているのはなんだか伝わる。

 

「うっ」

 

 俺の頭にズキッと痛みが走った直後、青いポリゴンが消えた。

敷地には前と同じ、だけど新築ピカピカの教会が姿を現した。

 

 沈む直前の夕日に赤く照らされた教会は、神秘的な魅力に輝き、それこそ宗教画のように、心の奥に沁み渡った。

 

 誰もが歓声を上げる中、俺は深い溜息を吐いた。

 

 力が抜けて膝を折ろうとすると、左右からやわらかい感触に支えられた。

 

「おつかれラビ」

「流石はラビだ。見てくれ、皆の喜ぶ顔を」

 

 精神的には徹夜で勉強した後のようだし、頭にも鈍痛が残る。

 だけど、町の人たちの笑顔を眺めていると、悪くない達成感があった。

 

「ありがとうな」

 

 俺は二人に預けていた体を離すと、教会の玄関まで歩いてドアを開けた。

 

「じゃあ皆さん、入ってください」

 

 俺は住民たちを手招きしながら、神官さんと一緒に教会に入った。

 それから、礼拝堂の奥の台座に、ストレージスキルの赤いポリゴンを展開した。

 

「泥は取り除いて、本体のみを取り出せば」

 

 赤いポリゴンが消えた時、そこには艶やかなプラチナブロンドの髪を垂らした、美しい少女のゴーレムが佇んでいた。

 

 目元はバイザーで隠れているものの、僅かな隙間や半透明のバイザーの奥に隠れた顔は、かなりの美人さんだ。

 

 女神のゴーレムが現れると、彼女の機能で周囲に微弱な回復魔法が広がっていくのが分かる。

 

 そのおかげで、一日中座りっぱなしだった体のこりがほぐれていく気がする。

 町の人たちも、心底嬉しそうに手を合わせ、拝んでいた。

 

「神官さん、町長さん」

「はい」

 

 神官さんが頷くと、視線を受けた町長さんは嬉しそうに破顔して笑った。

 

「皆さん! ここに町の復興はなりました! 町の救世主! ラビさん達に拍手を!」

 

 礼拝堂を埋め尽くす町の人たちは歓声を上げながら、俺たちに惜しみない拍手を送ってくれた。

 

「ありがとうラビー!」

「お前のおかげでこの町は救われた!」

「まだ若いのにすげぇ奴らだよ!」

「うちの息子とは大違いだな」

「おいおい、あんな規格外と比べるなよ」

「オレもああいう冒険者になりたかったぜ」

 

 ドレイザンコウを討伐した時に引き続き、二度目の称賛。

 

 けれどそれは決して慣れるものではなく、俺は達成感と照れ臭さと、少しの申し訳なさを感じた。

 

 ——凄いのは俺じゃなくて、スキルなんだけどな。

 

 この理屈が間違っているのは分かっている。

 令和日本の価値観を引きずる俺にとって、スキルは便利ツールでしかない。

 スマホを使って、

 

「君、遠くの人と話せるなんてすごいね」とか。

「君、映像を記録できるなんてすごいね」とか。

「君、五桁の掛け算ができるなんてすごいね」とか。

 

 ましてネットで検索したことを読み上げただけで、

 

「君って博識なんだね、尊敬しちゃう」

 

 とか言われるような感覚だ。

 

 一方で、神様から一人一つずつスキルを貰うのが当たり前のこの世界では、スキルは才能の一種と捉えられている。

 

 剣術スキルは剣の才能の最高位だし、鑑定スキルは絶対音感のような特殊センスといったところだ。

 

 一部のやっかみを除けば、誰も卑怯だなんて思わない。

 

「ラビさん。今夜は町の復興を祝して、ささやかですが晩餐会を開こうと思います。是非とも泊まっていってください」

「え? どうするみんな?」

 

 ゴーレム車に乗れば、一時間とかからず学園に帰れる。

 正直、泊まるのは完全に予定外のことだ。

 すると、クラウスが肯定した。

 

「いいんじゃないかな? せっかくの厚意は受け取らないと失礼だし、高等部はクエストで遅刻、早退、欠席は認められているじゃないか」

「まぁ、それはそうだけど」

 

 俺は気後れした顔で視線を逸らした。

 けれど、その先ではノエルとハロウィーが優しい笑みを浮かべてくれていた。

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 本作の第2巻はオーバーラップより明日、発売です!!!!

 

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