★書籍発売★追放転生貴族とハズレゴーレムの異世界無双――隠し機能がチート過ぎ――え!?ゴーレムが倒した敵の経験値も俺に入るの!?   作:鏡銀鉢

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兄弟ゴーレム対決

 鋼の騎士が無言のままに駆け出し、一息に距離を詰めてきた。

 

 ——え?

 

 高速の剣技が、サンゴーを斬り飛ばした。

 赤ちゃんのように小さな体が、人形のように飛んでいく。

 

「サンゴー!」

 

 イチゴーが助けに走った。

 その間に、ニゴーたちがグリージョ相手に果敢に立ち向かう。

 

 ゴゴーが大きく跳び上がり上段から、ニゴーが下段から攻め込み、ヨンゴーはバックへ回り込んだ。

 

 しかし、グリージョは足底でニゴーを踏みつけ剣で空中のゴゴーを斬り伏せ、上半身がぐるんと一回転。

 

 真後ろのヨンゴーに間髪を容れずに斬撃を叩き込んだ。

 

「嘘だろ!?」

 

 あまりの強さに、俺は悲鳴を上げてしまった。

 

「どうしたんだいラビ? 遊んでいないで早く本気を出しなよ。あーごめん、それともこれで全力だったのかな?」

 

 得意げに哄笑する兄さんに、俺は羞恥心で顔がカッと熱くなる。

 うぬぼれていた。

 

 イチゴーたちがハイゴーレムに進化して、兄さんより強くなった気になっていた。

 

 コマンダーメイルやドレイザンコウを倒して、調子に乗っていた。

 

 みんなと一緒に敵を倒したつもりになっていたけれど、どちらも俺の役目はサポートで、直接戦闘はノエルやクラウスだった。

 

 俺一人で大物を倒したことは一度もない。

 喩えるなら、一流冒険者の回復役が、前衛相手にタイマンを張るようなものだ。

 

 ——けれど、負けられない!

 

 俺のウィンドウに表示されたイチゴーたちのデータは、未だ健在を示している。

 

「みんな、五人で連係して戦うんだ!」

 

 地面から跳ね起き集合するイチゴーたちに、兄さんは鼻を鳴らした。

 

「へぇ、グリージョの剣で切れないなんて、強度だけは及第点じゃないか。でも、岩をも割断する一撃を、そう何度も耐えられるとは思わないことだね!」

 

 兄さんの意思を受けてグリージョが強く踏み込んでくる。

 地面を軽く陥没させて駆けてくるグリージョが両手の剣を頭上に掲げ、大振りに振り下ろしてきた。

 

「サンゴー」

『まかせるのだー』

 

 サンゴーが両手を左右に伸ばすと、グリージョの凶刃が何かに阻まれた。

 

「なんだって?」

 

 怪訝そうに眉間にしわを寄せる兄さんの視線の先で、サンゴーが展開したのは限りなく透明に近い、バリアだった。

 

 これがハイゴーレムになったサンゴーの追加スキル、バリアだ。

 

 モリハイエナの脅威から、ノエルを一人で守り耐え抜いたサンゴーには、ぴったりだと思って選んだ。

 

「バリア? いや、ハイゴーレムでなくてもそれぐらい」

 

 兄さんは頭を振ってから舌打ちをした。

 

「邪魔なバリアだな。だけどこんなもの、グリージョの剣の前では紙切れだ!」

 

 兄さんの怒りを体現するように、グリージョは両手の剣を唸らせ、連続で斬りかかって来た。

 

 その姿は、まさにバーサーカーさながらだった。

けれど、サンゴーのバリアは耐えている。

 

 一撃ごとに激しく揺れるも、バリアは健在だ。

 

 ——よし! 流石はハイゴーレム。スキルの性能が段違いだ。

 

 けれど安心してばかりもいられない。

 今のうちに打開策を考えないと。

 

 すると、グリージョの頭上にストレージの赤いポリゴンが生じた。

 その中から、巨大な瓦礫が落ちてきた。

 

 ストレージスキルを持たせたイチゴーの仕業だろう。

 だけど、グリージョはサイドステップで苦も無く避けた。

 

「あっ」

「お前はバカなのか? グリージョの頭上にそんなものがあれば上から何かしようとしているなんてバレバレじゃないか」

 

 その通りだと、俺が他に手はないかと焦り始めるも、兄さんは容赦なく次の手に出た。

 

「いい加減邪魔だね。なら、最大の一撃で砕くまでだ! グリージョ!」

 

 両手の剣を腰の鞘に納めると、グリージョは両手で背中の大剣に手を伸ばした。

 長さも幅も、ロングソードの二倍近い威容。

 

 それを、両腕の力で振り下ろす。

 単純な運動エネルギーはさっきまでの比ではない。

 サンゴーの無表情に、冷や汗が浮かんでいるように感じた。

 

「サンゴー!」

 

 離れた場所からでも風圧と風切り音が聞こえる程の勢いで振り下ろされた剛剣の直撃に、バリアが耐えきれず砕け散った。

 

 イチゴーたちの小さな体が衝撃で吹き飛ばされ、バラバラに散らばってしまう。

 

「ぬりかべのじゅつっす」

 

 不意に、グリージョの目の前に真っ白い壁が現れた。

 俺が3Dプリンタで作ったものではない。

 これは、ヨンゴーの追加スキルの立体映像だ。

 

 あくまでも立体映像だけど、俺の3Dプリンタと違って展開が速く、材料いらずで、しかも動かせる。

 

 白い壁は周囲に何枚も現れてスライドして、グリージョの姿を兄さんから隠した。

 

 その上で、イチゴーはグリージョの頭上にまた瓦礫を出した。

 今、兄さんからグリージョの姿は見えていない。

 回避行動は命令できないはずだ。

 

 当たる。

 そう確信するも、グリージョは不意に頭上から降り注ぐ瓦礫を大剣で弾いた。

 

「そんな!?」

「そんな、だって? ラビ、お前はそんなこともわからないのか?」

 

 俺が素っ頓狂な声を上げると、兄さんはまさに出来の悪い弟を持った兄そのものの表情で苛立ち呆れていた。

 

「私ぐらいのゴーレム使いになれば、ゴーレムと視界を共有するぐらいわけがない。自身のゴーレムの姿を見失ったならば、グリージョの視界を借りて死角の頭上を警戒する。それぐらい当然だろう?」

 

 グリージョは剣を上段に構え、ゆっくりと重心を前に傾けていく。

 

「やはり、父さんがお前を追放したのは間違いじゃなかった。ラビ! お前はシュタイン家に相応しくない! いくつかサブスキルを使えるみたいだけど、どれもチャチなものばかり。魔獣型のゴーレムなんて、私のグリージョで両断してやろう!」

 

『あぶないごごー』

 

 イチゴーがゴゴーを突き飛ばして、代わりにグリージョの斬撃がイチゴーの脇腹をかすめた。

 

「ん……?」

 

 兄さんは怪訝な顔をした。

 

「大丈夫かイチゴー!?」

『へいきー』

「よかった。イチゴー、コマンダーメイルの時みたく足元をかきまわすんだ!」

『クラウスがいないからむりー。それよりもぶきふうじがおすすめー』

「わかった」

「ッ、おいおい」

 

 兄さんは辟易とした表情で、グリージョに剣を振り下ろさせた。

 イチゴーはストレージから魔獣の死体を取り出し受けた。

 

 分厚い筋肉繊維をかきわけ骨を断つほど深く食い込んだところで剣は止まった。

 その隙に、ニゴーがグリージョの背後から、弾丸のような加速度で殴り掛かった。

 

 ニゴーの追加スキル、魔力でジェット噴射のような推進力を得るバーニアスキルだ。

 

 けれどグリージョは剣から手を離して、ニゴーを両手で殴り落とした。

 

 そのまま両手は腰の剣を握りしめ抜剣。ヨンゴーとゴゴーに襲い掛かるも、サンゴーのバリアに閉じ込められた。

 

 自分を守るバリアで敵を包む。

 敵を閉じ込める為の檻として使う。

 

 俺にはなかった発想だ。

 

 これもAIというか、自律型ゴーレムならではだろう。

 ゴーレムたちの成長が嬉しくて、胸を打たれた。

 

「いいぞサンゴー、ナイスだ!」

「あのなぁラビ」

 

 グリージョに魔獣の死体から大剣を引き抜かせてから、兄さんは怒りを抑えるように声を震わせた。

 

「さっきからなんなんだその三文芝居は? 頭上に台詞まで表示させて、大切な決闘中に自作自演の人形劇で遊ぶなんてどういうつもりだ!?」

「自作自演……?」

 

 兄さんの言葉を聞いて、俺はハッとした。

 しばらくイチゴーたちと一緒にいたせいで忘れていた事実を思い出す。

 

「いや、違うんだよ兄さん。俺のスキルは自律型ゴーレム生成スキルだろ?」

 

「ん、ああそう聞いている。自律型ということは、過去のデータからある程度は自分で判断して動けるということか?」

 

「いや、そうじゃなくてこいつら一人一人に人格があるんだ」

「どういうことだ?」

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