★書籍発売★追放転生貴族とハズレゴーレムの異世界無双――隠し機能がチート過ぎ――え!?ゴーレムが倒した敵の経験値も俺に入るの!? 作:鏡銀鉢
「いや、そうじゃなくてこいつら一人一人に人格があるんだ」
「どういうことだ?」
「だからこれは俺が喋らせているんじゃなくて、イチゴーやニゴーたち一人一人が自分で考えて喋っているんだよ。だから俺の指示が間違っているって判断したら命令も無視するんだ」
「……」
不意に、兄さんはさっと顔色を変えた。
無言のままに、グリージョは大剣を横に振るい、バリアの檻を破壊した。
まずい、次の攻撃が来る。
そうして俺は身構えるも、グリージョは動かなかった。
兄さんは難しそうな顔をして、左手親指の先を顎に当てて推理中の探偵のように独り言を始めた。
兄さんが長考に入る時の仕草だ。
「兄さん?」
こちらから声をかけると、兄さんは顔を上げた。
そこには、もう敵意も俺を見下す嗜虐的な色も無かった。
鋭い視線をイチゴーたちに向けてから、手を下ろした。
「戻れグリージョ。剣を退け」
兄さんの命令通り、グリージョは剣を納めると、主のもとに帰っていった。
「部隊長、大変お見苦しいものをお見せしました。ただちに王都へ戻り、状況を報告致しましょう」
「え!? 兄さん決闘は!?」
あまりの豹変ぶりに、俺は唖然として狼狽した声を上げてしまった。
「どうするも何も、女神像は正式に王室が与えた物であるという証拠があるのなら仕方ない。私は上の指示を仰ぐまでだ」
決闘前とはうってかわり、淡々と事務的に告げて、兄さんは馬車に乗り込んだ。
部隊長さんも少し困った顔をしたけれど、納得したのだろう。俺らに一言詫びを入れてから馬車に戻った。
支援物資の運搬車だけを残し、次々走り去っていく馬車に、俺はぽかんと口を開けてしまった。
「いったい何だったんだ?」
わけがわからず、俺は首をかしげるばかりだった。
少しして、俺らは一度、教会の中に戻っていた。
「女神像様、ラビさん達が貴女を守ってくれましたよ」
町のみんなと一緒に、ゴーレムに手を合わせる神官さんの言葉を聞いて、俺はちょっと照れ臭くなった。
「そんな、大げさですよ」
女神像の正体はゴーレムだ。
バイザーで顔を隠し、耳からアンテナのようなものを伸ばす彼女は、俺にとっては機械仕掛けのロボットかアニメキャラの等身大フィギュアそのものだ。
けれど、神官さんは本物の女神であるかのように、うやうやしく扱っている。
その態度を見るだけで、彼女がどれだけこの町の人たちの救いになっているのかよくわかる。
日本にはイワシの頭も信心から、という言葉がある。
上位種のエルダーゴーレムとはいえ、それでもゴーレムにすぎない彼女も、この町の人たちにとっては本物の女神以上なのかもしれない。
すると、イチゴーがちょこちょことゴーレムに歩み寄った。
首、はないので、まぁるい体ごと上に傾けて、彼女を見上げる。
じーっと、メッセージウィンドウを使わず、何も言わずに見上げる姿は、まるで小さな子供が初めて見るものを観察するようだった。
「じゃあそろそろ俺らは。ほらイチゴー、もう行くぞ」
赤ちゃんのように小さなイチゴーを抱き上げると、俺の視線は女神像のバイザーとかち合った。
その時、ふと、バイザーの右上がチカッと赤く光った気がした。
「え……?」
反射的に後ろを振り返った。
背後に、赤い光源はない。
鏡のように何かが映り込んだわけではない。
まさかと思って視線を戻すと、バイザーは黒一色にシャットダウンしていた。
気のせいかと思いつつ、イチゴーに尋ねてみた。
——イチゴー、今、このゴーレムと何か通信したのか?
すると、俺にしか見えないチャット画面には、またあの表示が現れた。
【アクセス権限がありません】
◆
俺と兄さんが決闘をした翌日。
再度、町に呼び出された俺は、みんなの前で町長から表彰された。
町の予算で購入された記念碑が教会に建ち、石工に依頼して本当に俺の名前が刻まれていたのにはちょっと驚いた。
そしてさらに驚いたのは、その翌日だった。
「さぁ皆さんご注目ぅううう! ドレイザンコウを討ち取った謎の新人冒険者の正体はあの、平民科一年二組! ラビ・シュタインだったぁ! しかも郊外の町を洪水被害から一日で復興させて一区画をまるごと自作しちまったんだからおでれぇた! その上あの歳でハイゴーレム使いときたもんだ! 詳しくは今日の学園新聞を見てくれ!」
貴族科校舎と平民科校舎を繋ぐ連絡棟にある掲示板ホールには、朝から生徒たちがごった返していた。
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