★書籍発売★追放転生貴族とハズレゴーレムの異世界無双――隠し機能がチート過ぎ――え!?ゴーレムが倒した敵の経験値も俺に入るの!?   作:鏡銀鉢

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AIの危険性

 そのことを一瞬の間に、だけど深く考えながら、俺は言った。

 

「答えはNOだ」

 

「……どうしてだい?」

 

 僅かに指を曲げて、だけど手を閉じ切ることなく、クラウスはまだ望みがあるかのように、尋ねてきた。

 

「クラウスの言うことはわかる。平民の苦しみもわかる。だけど、貴族と平民を対等にするというならともかく、貴族たちに武力で復讐するのはおかしい。俺も貴族社会は嫌いだけど、関係のない大勢を巻き込もうとは思わない。それに勝算もない。自分も今の社会は変だと思うけど、少なくとも変える方法が間違っている」

 

 フランス革命や明治維新のおかげで、多くの人が助かったし、そのおかげで今日の令和日本がある。

 

 だけど当時、革命に巻き込まれた無関係な人たちも大勢いたはずだ。

 その人たちに、お前たちは必要な犠牲だなんて言えない。

 

 革命は、多くの人たちを助けるうえで【効率のいい方法】だったとは思う。

 だけど、【正しい方法】だったわけではない。

 

「……ラビは、貴族に戻りたいんだよね?」

 

 確認するような、淡々とした声だった。

 

「でも、それってこの世は貴族が有利で、貴族に戻らないと生活の安全が保障されないからだろ? つまり君は貴族に戻りたいのではなく、安全が欲しいんだろう?」

 

「それは、まぁ……」

「けれど貴族に戻れる算段はあるのかい? 今回の件で、君の御父上が君を許し実家に戻ることを許してくれる可能性は立ち消えた」

 

 痛いどころか急所を突かれて、俺は表情が硬くなった。

 

 兄さんに勝って実力を証明すれば家に戻れる、なんて甘い夢を抱いたけれど、勝負はお流れ。

 

 結果、ただ俺のせいでシュタイン家が王室の命令を失敗したという、汚点だけが残った。

 

「今が戦時中なら戦場で手柄を立てて貴族に取り立てられる可能性もあるけれど、今は戦争の無い平和な時代だ。他に、どこかの国で王室から貴族に叙勲されるだけの手柄を何か立てると言っても、あてはないだろ?」

 

 クラウスの言う通り、特に何をしたら貴族になれる、という決まりはない。

 王族の目に留まるだけの何か凄い手柄、なんて漠然としすぎている。

 将来の不安に、俺は気持ちが沈んだ。

 

「でもね、もっといい方法がある。平民中心の世界にしてしまえばいいんだよ。そうすれば、貴族に戻らなくてもいいじゃないか」

 

 閉じかけた手を再び開いて、クラウスは好意的に笑った。

 

「革命を成功させれば、君の安全は保障される。平民のままでも、貴族に怯える必要なんてないんだ。さぁ、ラビ」

「駄目だ」

 

 これ以上の誘惑を受けないよう、俺は立ち上がり、クラウスから少し離れた。

 

「悪いけど、俺にそんな大それたことをする気概はない。革命軍には一人で入ってくれ」

 

 後ろめたい罪悪感が背中にのしかかって来て、俺はクラウスの顔を見られなかった。

 

 クラウスはいい奴だ。カッコイイ奴だ。

 素晴らしい友達になれると思っていた。

 

 だけど俺は今、親友の手を払った。

 

 王政に苦しむ人々を救いたいという純な願いを裏切った。

 だけど怖いもの見たさか、俺は顔を上げ、クラウスに視線を向けた。

 

「!?」

 

 クラウスは、少しも怒っていなかった。

 悲しんでさえいなかった。

 むしろ、シャイな子供が照れるような表情だった。

 

「フラれちゃったな。でもいいさ。入学試験じゃないんだ。気が変わったら声をかけてくれ」

 

 そう言って、クラウスも席を立った。

 

「親友だからと言って将来の進路まで合わせる必要はない。誘いを断った程度で壊れるならそんな友情は偽物だ。だから気にしないでくれ。僕は君を、これからも親友だと思っているよ。じゃあ、そろそろ授業が始まるから僕は行くよ」

 

 何の確執も感じさせず、クラウスはクールにドアへ向かった。

 

「だけどラビ、たとえ君がどんな道を選んでも、僕はいつかこの世から身分なんてものを排除してみせるよ。みんなの平和の為にね」

 

「クラウス」

 

 教室を出て行こうとした彼を呼び止めて、俺は言った。

 

「お前の夢は、素敵だと思う。成功したら、多くの人が救われると思う。だけど、王族と貴族がいなくなっても、平和にはならないんだ……」

 

 少し考えるそぶりを見せてから、クラウスは微笑した。

 

「そうだね。王族貴族がいなくなっても、窃盗事件とか犯罪は残るだろうし、魔獣の脅威もある。だから革命を成功させたら、僕は残りの人生で治安の維持と魔獣対策をするつもりだよ。じゃあねラビ」

 

「あ……」

 

 本当のことを伝えられないまま、クラウスは教室から姿を消してしまった。

 

 ——いや、これで良かったんだ。

 

 俺は知っている。

 王政を打倒した後の世界を。

 

 令和日本には王政も貴族もない。

 けれど、そこには歴然たる身分と差別が残っている。

 

 金と力を持った平民が、力のない平民を差別する世界が待っている。

 身分制度も魔獣もいない。

 

 誰もが学校に行って字の読み書きと計算ができて衣食住に困らない生活をしている。

 

 なのに自殺率は世界トップクラス。

 それが、俺の住んでいた日本という国の実態だ。

 

 そして近い将来、地球はAIに支配されたディストピアになるかもしれないと言われている。

 原因はAIが人から仕事を奪うから。

 

★この続きは発売中の本作2巻でイッキ読みできます。

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