異界冒険譚シリーズ 【セシル編】-聖女様は助かりたい-   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第28話『世界国家連合議会を発足しようではありませんか!』

挨拶に次ぐ挨拶。に次ぐ挨拶の中で私は笑顔を浮かべながら限界を迎えようとしていた。

 

きっつい。

 

人に囲まれ過ぎてどうにかなってしまいそうだ。

 

しかし、頑張らないと……! この会場にはエリカ様やアリスちゃん……そして私の夢を叶えるお手伝いをしてくれる人達が集まっているのだから。

 

少しでも好印象を持ってもらわないと!

 

「お話し中失礼。これからの予定について聖女セシル様に少々お話がありますので、よろしいでしょうか?」

 

「あ、これはアルバート王子。承知いたしました。では聖女様。また後程」

 

「はっ、はい」

 

話をしている最中にそれを遮られてしまい、申し訳ないという想いを込めつつ深く頭を下げる。

 

そして、そういう大変失礼な行為を平然と行っている例の男に私は向き直って笑顔を向け、指で示されるままに会場の外れに移動した。

 

「はい。私にご用との事ですが」

 

「……あぁ、それか。別に用事はない。打合せならこの会談の前に終わらせているしな」

 

「は」

 

はぁぁぁあああああ!!?

 

おまっ! 何も用事が無いのに、人の話を遮ったんか!!

 

なんて失礼な奴なんだ! コイツ!!

 

表面上だけはまともだと思っていたのに、やっぱり我儘王子って訳ですかァ!?

 

「……用事がないという事でしたら、私はまた戻らせていただきます」

 

「まぁ、待て。用事は無いが話はある」

 

「そういう事でしたら、お聞きします」

 

「うむ。ガーランド卿。すまないが飲み物を持ってきてもらえるか? 聖女殿は果実のジュースがお好みだ」

 

「……よくご存じなんですね」

 

「ん? まぁそうだな。私はこういう立場の人間だ。些細な事でも知っておけば色々と有利に働くんだよ」

 

「そうですか」

 

前世でもこういう人の事なんでも知ってますよ。みたいな人居たな。

 

下駄箱に毎日私の行動記録とか書かれた紙を入れられた時はゾッとしたよ。

 

しかし、まさか腹黒監禁ヤンデレ王子も同じようなタイプの人間だったとは……やっぱりアリスちゃんやエリカ様に近づけたら駄目だな。

 

私が護らねば!

 

「あー。それで、だな」

 

なんだ。腹黒王子にしては歯切れが悪いな。

 

普段はもっとシャキシャキ話すのに。

 

「以前の茶会では悪い事をしたな」

 

「茶会……?」

 

「君がエリカ嬢やアリス嬢と行おうとしていた所に、私が乱入しただろう?」

 

「あぁ。ありましたね」

 

「忘れていたのか……」

 

何か酷くガッカリしているけど、なんだなんだ。どういう感情だそれは。

 

でもすぐに、どこかすっきりした様な顔をして、私に向き直ると真剣な表情で言葉を紡ぐ。

 

「私は君の事を誤解していたようだ。リヴィにも諭されたよ。敵を見誤ってはいけないと。故に、改めて謝罪しよう。すまなかった。聖女セシル」

 

「い、いえ。私は別に何も気にしてませんから。という訳で、アルバート様もあまり気にしないで下さい」

 

「ありがたい。感謝する」

 

「いえいえ」

 

恋愛は戦争。何をしても良いって言うしね。多少の事はしょうがないね。

 

まぁ、私とエリカ様を監禁しようとしてた事は許せんけど、今は外に向かう組織に協力してくれてるし。

 

もしかしたら王子も良い人なのかもしれん。

 

アリスちゃんとエリカ様は渡さんが。

 

「うむ。ではそろそろ時間だ。挨拶に向かうとするか」

 

「はい」

 

私はちょうどよく飲み物を持って帰ってきたガーランド卿にお礼を言いながら、その飲み物を持って発表する用の舞台の上へと向かった。

 

そして、まずはアルバート殿下が会場に向かってマイクの様な魔導具で語り掛ける。

 

【歓談中失礼。ヴェルクモント王国王太子、アルバート・ガーラ・ヴェルクモントです。本日はお集まりいただき感謝いたします。まずはこの会の発足人である聖女セシル様にお言葉をいただきたい。聖女セシル様。よろしいでしょうか?】

 

「ひゃい!」

 

私は緊張しすぎて裏返ってしまった声に恥ずかしく思いながらも、その声がマイクに拾われなくて良かったと深く息を吐く。

 

そして、失敗は成功に繋げれば良いのだと会場に集まった人に向かい、マイクを握った。

 

……。

 

私を見つめる幾多の目。

 

あ、駄目だ。何喋るか頭からとんだ。

 

【あ、あ、あの! 私、セシルと言います! その、なんで私がここで挨拶をする事になったのか、よく分からないんですけど、やる以上は、頑張ります! それで、その、お話は既に皆さんご存じだと思うんですけど、私は世界中の人たちがみんなで手を取り合える組織を作りたいと思っています。どこの国とか、どこの街とか、そういう事を気にせず、どんな人でも誰かを助ける事が出来る組織を、作りたい。です。私も、その組織に参加させて頂いて、多くの人の助けになりたいのです。今、悲しい人が明日笑える様に。今、苦しい人が、今日安心出来る様に。私は、頑張りたい】

 

自分でも何を言っているかよく分からないが、とりあえず口が動くままに喋る。

 

しかし、そんな適当すぎる話でも、アリスちゃんやエリカ様は拍手をしてくれて、それに合わせる様に会場全体に拍手が広がっていった。

 

あったけぇ……。

 

誰かが失敗しても笑わない社会。素敵すぎる。

 

【あ、あの、ありがとうございます。本当はどういう組織にするとか具体的な事を話さなきゃいけなかったと思うんですけど、ごめんなさい。緊張し過ぎて、頭から消えちゃいました。あ、でも! あの、折角なんで皆さんに祝福を、しておきますね!】

 

私は終わりの挨拶すら失敗してしまったが、最後に一番派手な光の魔術を使って頭を下げた。

 

何でこんないい人達しか居ない場所で、悪意に反応して幻覚見せる魔術使ってんねんというツッコミを自分に入れるが、一番派手で、慣れてるのがこの魔術なのだから仕方がない。

 

私は最後まで失敗だらけの挨拶を終わらせて、アルバート殿下にマイクを手渡した。

 

すまねぇ。私のせいで会場は冷えっ冷えだ。

 

許されるなら今ここで土下座したいくらいの気持ちだ。

 

【では聖女セシル様に代わりまして、私よりお話をさせていただきます】

 

アルバート殿下はもうすっかり緩んだ会場をたった一言で引き締めると、改めて話を続けた。

 

しゅげぇ。

 

【お集まりいただきました方々にはまずお礼を。そして、ここからは私の話に耳を貸して頂きたい】

 

【アルマの奇跡から数千年。シャーラペトラの天恵。聖女アメリアの救済を受け、我ら人類は大いなる発展を遂げてきました。しかし、今一度我らの国を、世界を見渡していただきたい。どうだろうか。我らは過去の偉人たちに誇れる今を生きているだろうか。ハッキリと言いましょう。否だ。国家間の争いは消えず、隣国が魔物に襲われても支援すらままならず。食糧難で苦しむ国があろうと、暴利で売りつけようとする国ばかり。その様な物で良いのか? 我らの世界は!】

 

【何故我らが言葉を持って生まれたのか今一度考えて貰いたい。何故我らが他の動物とは違い、知性と理性を持って生まれたのか、もう一度考えていただきたい!! それは我らが、互いを思いやり、手を取り合う為では無いだろうか! 手を取り合い、互いの不足を補い合って、より幸福な未来へ向けて歩む為ではないのか!! 他者を踏み台にして、己が利益のみを追求する為では無かった筈だ!!】

 

【そう。我らは理性を、知性を以て社会を構成してきたハズだ。であるならば! もう一度、その力を結集し、この世界を一歩先へと進めましょう! それぞれの国家、それぞれの人間ではなく、国家が、世界が一つとなり、大いなる危機に立ち向かうべく、力と知恵と高潔なる精神を合わせた国家の枠組みを超えた組織、世界国家連合議会を発足しようではありませんか!】

 

【お、おぉー!!】

 

すっごい! 人ってこんなペラペラしっかり中身のある事話せるのね。

 

感動してしまう。

 

思わず感動しすぎて声がマイクに乗っちゃったけど、それを誤魔化すように私は大きく拍手をした。

 

聞いてるだけなのに邪魔する奴がいるらしいよ。セシルって言うんだけどさ。

 

【そして、この世界国家連合には実行組織が必要だと考えます】

 

【かつて、アルマの奇跡が起こる前の世界。暗黒時代において、人類の生活圏を広げるべく、暗黒世界へ旅立った者たちの勇敢な行いを称え、危険を顧みず世界へと挑む者、未知を既知に変える冒険をする者として、そんな行いをしていた人々を冒険者と呼んでいた歴史があります。そこで私は、聖女様を中心とし、貴族も平民も関係なく、多くの勇気ある人々を集め、未知へと挑む……世界を一つにする組織、その組織の名として冒険者組合の設立を提案いたします!!】

 

私だけでなく、多くの人がアルバート殿下の言葉に拍手を送った。

 

てか、名前もう決まってたのね。

 

冒険者組合かぁ。うん。良いんじゃない? 言いやすいし。分かりやすい。

 

未知の世界を冒険する者たちを集めた冒険者組合か。

 

うーん。ロマンがあるねぇ。

 

私も冒険者目指してやるかー!

 

なんて、考えていた私は会場の外から会場に向かって何かが突っ込んでくるのを感じた。

 

そしてソレは天井近くにあるステンドグラスを破壊し、キラキラとしたガラスの欠片を周囲にまき散らしながら現れる。

 

「冒険者組合? 未知へ挑む者? そんな危険な所にセシルを向かわせる訳がないだろう?」

 

その人は、私の親代わりになってくれると言ってくれた人で、誰よりも私に優しくしてくれた人だった。

 

でも、何故かレーニは指先に魔力を集めて、アルバート殿下に向かってそれを打ち出す。

 

私は無意識の内に両手を広げてアルバート殿下の前に飛び出していた。

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