異界冒険譚シリーズ 【セシル編】-聖女様は助かりたい-   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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エピローグ

(第三者視点)

 

 

 

ヴェルクモント王国王都に存在する王城の最奥地にて、今から秘密の会合が行われようとしていた。

 

参加者は、ヴェルクモント王国王家より長男のアルバート、次男のエリオット、そして長女のリヴィアナ。

 

同王国の貴族として、アリス・シア・イービルサイド、エリカ・デルリックが参加しており、聖国からもレーニというエルフが参加していた。

 

この会合は非公式な物であり、外部の者には情報が洩れぬ様に徹底されている。

 

「それで、第一回会議はどの様に決まったのですか? お兄様」

 

「言わずとも分かるだろう? 無論、光の魔術の研究だ。そして削れてしまったであろう寿命の回復方法についての調査。この二つが最優先事項である」

 

アルバートは妹であるリヴィアナの問いに真剣な表情で答え、そしてやや気落ちした様に言葉を続けた。

 

「反対意見など無かったよ。あの場に居た誰もがあの奇跡を目の当たりにした。そして、その後、永遠に目覚めぬのではないかと思われるほどに深く眠ったセシル嬢を見たんだ。当たり前だな」

 

「そうですか」

 

リヴィアナが返した言葉に、その場に居た全員が何かを考え込むように黙り込んだ。

 

そして、最初にその静寂を破ったのは、レーニだった。

 

「それで? その研究をすれば本当にセシルが助かるのか?」

 

「絶対とは言えない」

 

「……」

 

「だが、もし貴女がアリス嬢を贄として、セシル嬢の命を繋げようとしても、彼女自身がそれを望まない事はよく分かっているだろう?」

 

「分かってるさ。セシルは確かに、アリスとエリカの傍で安心していた。魔力の使い過ぎもあっただろうけど、それ以上に心が落ち着けたんだ」

 

「……レーニさん」

 

「セシルはね。まだ小さな子供だった頃に、両親を賊に殺されたんだ。親しくしていた友人も、隣人も皆殺されたらしい。その時、セシルは子供だったから深く眠っていたらしくてね。目覚めた時にはもう両親が冷たくなっていたそうだよ。多分それからなんだろうね。あの子はあんまり眠れなくなったんだ。寝ている間に誰かを失ったら怖いってね。言ってたよ。私が居るって言ってもいつも不安そうだった。だからさ。二人には本当に感謝しているんだ。悪い事をしたとも思っている」

 

「い、いえ」

 

「終わってみれば、誰も傷ついて居なかったですし。良かったのでは無いでしょうか」

 

「でも……それも、セシルの魔術のお陰だ」

 

「……誰も傷つかない様にというセシルさんの願いが形になった魔術、ですか」

 

「その代わり、命を沢山削ったんだよね」

 

「うん。そう、だよね。そうなんだよね」

 

「アリス……なら、もう聖女セシルが命を削らない様に世界を、平和にしなきゃいけないんじゃないのか?」

 

「エリオット殿下」

 

「聖女エリカ。アリス。二人の協力が必要だ。何せ光の魔術が使える人間は酷く少ないからな」

 

「承知いたしました」

 

「うん。任せてよ!!」

 

エリオットの言葉にエリカとアリスは頷き、そして皆の意思が強く固まる。

 

そして、世界国家連合議会とは別の形で一つの集まりが結成されようとしていた。

 

「セシルの命を繋ぐ為に」

 

「エリカちゃんの命も元に戻す為に」

 

「それを言うのなら、アリスちゃんも同じですよ」

 

「協力しようじゃないか。諸君」

 

最後に放たれたアルバートの言葉を合図として、全員が拳をぶつけ合った。

 

そして最初の計画について話を始める。

 

「研究と言っても、時間が掛かるんだろう? セシルは子供の時からずっと光の魔術を使っているんだ。いつまで命が持つか分からないぞ」

 

「それは、確かに」

 

「それでしたら、以前聖獣ユニコーンのお話を聞いた事があるのですが、レーニさんはその事について何かご存知ではありませんか? 何でもその血を飲めば寿命を伸ばす事が出来るとか」

 

「ユニコーンか。出来なくはないが、ユニコーンは森の奥地に住んでいるし、汚れなき乙女の前にしか姿を現わさないからな。難しいんじゃないか?」

 

「であれば、道中まで護衛と共に行き、最後は女性だけでユニコーンを呼び出すしか無いだろう」

 

「ふむ。まぁ、それなら可能かもな」

 

「ではその案を採用するとして、レーニさんはユニコーンの血がどれくらい寿命が延びるかご存知ですか?」

 

「あー。そうだな。確か一回で残っている命の時間を十倍に増やすとかだったか?」

 

「十!?」

 

「無論、それはユニコーンが好意的に渡してきた場合だし、受け取った者にしか効果はない」

 

「しかし、十倍か。調整が難しいな。実際レーニから見て、セシル嬢の寿命は後どのくらいなんだ?」

 

「そうだな……人間の寿命が大体六十年くらいだとして、セシルも特に病弱という事は無いからな。多分六十年だろう。そこから今までに使ってきた魔術を考えると、下手をしたら後一年も無い」

 

「そんなに……!?」

 

「驚いているがな。エリカ。お前だって他人事では無いからな。お前もアリスも自分の事も大事にしろよ」

 

「……はい。ありがとうございます」

 

「ふむ。そういう状況か。では、セシル嬢には十回ほどユニコーンに血を貰えば良いだろうか?」

 

「その辺りは十回分を一回でくれとユニコーンに言えば良い。何なら千倍くらい寿命を伸ばせば良いだろう」

 

「いや、それだとセシルさんが千年くらい生きる事になっちゃうんですけど」

 

「何か問題あるか? どうせセシルは惜しみなく自分の命を使うだろうし、それにもし千年生きるとしても私が居る。私たちエルフは終わらせようと思わなければ永遠の時を生きる。何年だろうと問題なくセシルと共に居るさ。あぁ、そう考えるとユニコーンに永遠を願っても良いかもしれないな。どうせならその方が良いだろう」

 

「……それはセシルさんの意思を聞かねばいけないと思うのですが」

 

「必要無いだろう。自分だけ命を延ばすという話をセシルが喜ぶとは思えん。適当に体に良いとか言えば良いさ」

 

「それは、あまりにもセシルさんが可哀想です! 何も知らぬまま永遠の時を生きる事になるなんて」

 

「価値観の違いだね。永遠の時だなんて言っても、途中から時間の感覚は無くなるさ」

 

「それはレーニさんのお話でしょう? セシルさんの話ではありません」

 

「なんだ。妙に突っかかるじゃないか。聖女エリカ。君だってセシルじゃないだろう? 私とセシルの間に口を出さないで貰いたいな。君には関係ないだろう?」

 

「関係なくないです!! 私、セシルさんととっても深い仲なんですから!」

 

「えぇ!?」

 

「本当なの!? 恵梨香ちゃん!」

 

「はい!」

 

エリカの言葉に、部屋の中は騒然となり、どういう事だと皆が動揺する。

 

しかし、そんな中でもエリカとレーニは変わらず視線をぶつけ合うのだった。

 

「ふぅん? 気に入らないな」

 

「どう思っていただいても結構です」

 

「恵梨香ちゃん! 恵梨香ちゃん! どういう事なの!? 私、何も知らなかったんだけど!?」

 

「あーちゃんは黙っていて下さい」

 

「は……はひ」

 

横から服を引っ張りながらエリカに迫るアリスも一蹴し、エリカは真っすぐにレーニを見据えた。

 

「フン。お前はそこのアリスを好いているんだろう? この国に入り込んでいるスパイから聞いたぞ。ならセシルは」

 

「二人の人を好きになっちゃいけない理由はありません!」

 

「っ」

 

「レーニさんだって心には、アメリアさんという方が居るでしょう? その上でセシルさんを思っているではないですか」

 

「……私の心を覗くな!」

 

「貴女に言われたくはありません。そっちだって同じじゃないですか」

 

「お前、イヤな奴だな。アメリアやセシルとは大違いだ。本当に聖女なのか?」

 

「貴女こそ。よくもそんな捻じ曲がった心でセシルさんに接する事が出来ましたね」

 

火花が散る。

 

互いに一歩も引かず、敵意がぶつかり合っている。

 

「お前なんかにセシルは渡さない! あの子は私の大切な子供なんだ! アメリアと私の子供なんだ!」

 

「アメリアさんの代替品として扱われるセシルさんが可哀想ですね!」

 

「代替品だなんて思った事はない! セシルはセシルなんだ! 私はセシルの母親だ! 愛情を向けるのは当然だ!」

 

「親だと言うのなら、セシルさんの意思を尊重して首を突っ込まないで下さい!」

 

「煩い! お前だけは駄目だ。お前だけは絶対に駄目だ!! 聖女の癖に闇の精霊なんかと契約してさ! そんな危険人物、セシルに近づけたくないね!」

 

「あ! 言っちゃいけない事言いましたね!? 言っておきますけど、セシルさんは私が闇の精霊と契約してる事も既に知ってますから! その上で、人の気持ちに寄り添える人だから闇の精霊さんが契約してくれたんですねって言ってくれましたから!」

 

「どうせソレも言わせたんだろ! 闇の魔術の使い手はいつもコソコソ陰に隠れて、人の心を覗き見て、操って、薄汚い奴らだ! お前たちは!」

 

「そんな風にしか人を見れない貴女に、セシルさんの傍に居て欲しくないですね!」

 

「チッ! あー言えばこう言う! どうなってんだこの国の聖女は! セシルはもっと素直で可愛いのに!」

 

「私はセシルさんとは違いますから。それに、それを言うなら、貴女もセシルさんの親を名乗っている割に全然似てませんよ」

 

もはや終わりのない争いに思えたが、この争いも終わりの時が迫ろうとしていた。

 

何故なら、部屋の扉がノックされ、セシルが来たという話が聞こえたからだ。

 

そして、争いを止めるべくアルバートは恐ろしい速さで入室の許可を出し、セシルという抑止力を部屋の中に投入する。

 

「お待たせしました。申し訳ございません。お時間が掛かってしまって」

 

「いや、問題は無いよ。お茶も用意している。座ると良い」

 

どことは言わず、そんな事を言うアルバートにセシルは少し考えた後、アルバートとエリオットの間に座ろうとした。

 

無論、セシルは深い事など何も考えていない。ちょうど広く空いてるし王族の間だけど良いかぁ。くらいの気持ちだ。

 

が、それを許せば、この場に血の雨が降ると気づいたリヴィアナは急ぎセシルの手を掴んだ。

 

そして、アルバートお兄様の横にはエリオットお兄様が居るから、別の所が良いかもしれないわね。等と言う。

 

「なるほど。ありがとうございます。リヴィアナ様。ではお隣失礼しますね」

 

「えぇ……は?」

 

二人で座る用の椅子に、一人で中央に座っていたリヴィアナはすぐ隣にセシルが座ろうとした事で急いで反対側に跳ぶ。

 

理由など言うまでもない。

 

先ほどまで好意のぶつけ合いをしていた二人が自分を睨みつけていると感じたからだ。

 

命の危機にリヴィアナは敏感であった。

 

しかし、そんな逃亡を許すセシルではない。

 

「あれ? どうしたんですか? リヴィアナ様」

 

「いえ? 別に? ほら、どうせなら多く座れるようにした方が良いじゃない? だから端に行こうと思ってね?」

 

「そうなんですねー。確かに。ではちょっと失礼しますね」

 

「は?」

 

セシルは隣にも人が座れるようにとリヴィアナの方に動いた。

 

もはや腕と腕が触れ合うくらいの距離となったリヴィアナとセシルに、約二名から強い視線が飛ぶ。

 

しかし、やはりセシルは何も気づかず、メイドから受け取ったお茶を飲み、ホッと一息吐くのだった。

 

彼女を中心とした争いはまだ始まったばかり……。

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