ワールドトリガー 二次創作 終わってしまった話   作:三ツ虎 円

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"必要が無いなら多くのものを定立してはならない。少数の論理でよい場合は多数の論理を定立してはならない"


オッサムの慢心

 

 薄暗い隧道に足音が反響する。

  黒髪にアンダーリムのメガネをかけた少年、三雲修は、冷や汗をかきながらも出口を探して歩みを止めずにいた。

 反響するのはもうずっと一人分の足音だけで、ここにいるのは自分だけだと否応なく自覚させられる。

 (早く合流しないと……)

 

 奇妙な襲撃だった。

 玉狛支部に泊まった夜、コンビニでアイスでも買おうかと、いつもの部屋着にパーカーだけ羽織ってのちょっとした外出。 コンビニに辿り着く直前、着信を知らせるスマホに相手も確認しないでつい内部通話の感覚で出てしまったのが良くなかった。

記憶はそこで途切れている。

 この薄暗い隧道で目を覚ました時は近界人による攻撃か、あるいはボーダー内部の抗争にでも巻き込まれたかと考えたが、何か違う感覚があった。

トリガーを回収されていないのだ。

トリオン体にも問題なく換装できるし、同行していた空閑とも内部通信で連絡は取れている。

だが、外部とは遮断されていた。

(時折、空閑との通信が途切れるのも気になる)

そもそも、自分が目を覚ました状況からして不可解なのだ、拘束もなく、見張もいない。

トリオン量が多いわけでもない自分にはその価値すらないということだろうか。なら、却って動きやすいとすら思えた、が。

 (嫌な予感がする)

 修にとってはよくある、しかしあまり思い出したくはない感覚だった。冷や汗とはまた違った、忌避や嫌悪にも似た予感。

『どうしたオサム』

 何かを察してか、空閑から通信が入る。

 (……今の段階では何も言えない)

 かぶりを振って息を整える。

「いや、分断されてる状況がわかるだけでも収穫だ。焦らず進もう」

 焦りを見透かされなかっただろうか。

自分でないなら、おそらくは空閑が目的だと言える。

ただ確証がない。

隊長という立場で、不確定な感覚を一々仲間に言って回るわけにはいかない。

(そもそも、ここがどこなのか……)

そして、あれからどれくらい経過しているのか、何故空閑とだけ通信が出来ているのか、わからない、考えなければいけないことは山積みだ。

 それでも、どんな窮地にある時も三雲修は迅悠一の言葉を思い出す。

『揺れるな』

 その言葉は常に判断の芯にあり、それをよすがにランク戦でも大規模侵攻でも生き残って来た。

 足は止めない、ためらわない。

 そうやって積み重ねてきた実績が自負となり、修に自信を与えーー

 

 

 ーーそのささやかな慢心が最初の掛け違いだと気づいた時には、全てが手遅れになってしまっていた。

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