ワールドトリガー 二次創作 終わってしまった話   作:三ツ虎 円

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 "主題ある人生を送るためには、人生は単純であるべきだ。
 余計なことに構わずに、ただその目的のためだけに生きよ"


ヒューストンの陥落

 

 何もかも気に食わない。

 ボーダー本部での待機命令から既に一週間、ヒュースは苛立ちを募らせていた。

 唯一の望みは訳もわからぬままに断たれ、事の次第を問い詰めようにも当事者の殆どは行方知れず。

 こちらから接触出来るのは食事の支給係くらいで、部屋から出ることも叶わない。

 (なにが待機だ、これではまるでーー)

 軟禁、拘束。呼び方はいくらでもあるが、要するに収監されたようなもの(身動きが取れない)だ。

 積み上げた戦術も成果も関係性も、全ては玉狛支部《後ろ盾》あっての事だった。

 (……だったというのに、この有様)

 トリオンモンスターと揶揄された唯一のスナイパーは自分と同じく、保護という名目の拘束。

  (何が、どうして、こうなった)

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 失踪したオサムが保護されたと聞いて、てっきり自分も病院へ同行するのかと思っていたヒュースは何故か警察署で、一番ありえないものと対峙することになった。

「ご確認下さい」

 スーツ姿の男がそう言って、手で示す白い布をかけられた小柄な人影。

 この部屋に通されたのは四人だけだ。

 迅と、ユリというオペレーター、自分《ヒュース》。そしてシノダと名乗るボーダーの上役。

 (確認? これは…ミデンの宗教儀式か?)

 枕元に設置された小さな卓には(ヒュースには馴染みのない)火のついた燭台と、小鉢に刺さった煙の出る細い棒。どちらも文化に疎いヒュースには縁のない代物だったが、慣れない煙臭さに混じって慣れた臭いが嗅ぎ取れた。

 (なるほど、死体か)

 迅が、顔にかけられていた布を捲る。

 (……誰だ?)

 記憶にない顔だ、と思った。

 黒髪で癖毛の少年。目蓋は閉じられているが、右側に何かにぶつけたようなアザと、口元の裂傷から歯が見えてしまっている。

 戦場によくある類の死体だった。

「おい、これは誰だ。なぜこんなところに俺が来る必要がーー」

 そう口にする自分の声がやけに遠い。

 白々しい嘘だ、ひと目見た時点ではっきりとわかっていた。

 こちらに取り残されてから、幾度となく目にしてきた顔。

 髪色が違う程度の事で、見間違えようもなかった。

「わかっているんだろう、ヒュース」

 気がつけば掴みかかっていた首元、聞いた事もない声色に肩が震える。

 目の前の、常に軽薄な空気を纏っていた筈の背の高い男、玄界《ミデン》の黒トリガー使い。

 

「遊真は死んだ」

 沼の底を思わせる、昏く澱んだ瞳。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 その後の記憶はあまり定かでは無い。

 『お前たち(ネイバー)を標的にしたテロ、と宣言があった』

 そもそも、サイドエフェクトから考えてもあの男が油断している状況がありえないのだ。

 よほど人間離れした怪物か、あり得るとするなら近界からの奇襲、暗殺か……。

 境遇こそ違えど、最初は敵として、一時的にとは言え仲間として、戦場で肩を並べた男に思いを馳せる。

「一体何があった……ユーマ」

 アレを殺せるただの人間など、想像もつかない。

 もしかしたら、万が一、アフトクラトルから自分を奪還しにきた部隊でも、などという淡い期待は、実行犯発見の一報と共に崩れ去った。

 近界民どころかボーダー隊員ですらない、ただの反近界活動家……一般市民だったと。

 唯一面会に来るボーダーの偉そうな上役の男から、ようやく聞き出せた発見時の状況はあまりにも異様で凄惨だった。

 曰く、その男たちは郊外にある大型倉庫の中で“その中身ごと“綺麗に並べられていた、と。

 

 『黙って見ていろ《Σώπα και δες》』

 

 と、血文字で彩られて。

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