憑依した人格が曇らせ隊の一員だったら? という設定です。
主人公はクズです。
「
ほわぁ! 私も! 頑張って国王になりたい! そしてお母様の役に立つの! でも......お母様が期待してるのは私達じゃなくて......。
「ペルヴェーレは......来てないのか?」
ほら、お母様は今ここにいる私達じゃなくてペルヴェーレのことを期待してる。国王になるのはきっとペルヴェーレ。それはそれとしてお母様の質問に答えなきゃ!
「お母様! あの子は自分の蜘蛛のお葬式中です!」
手を上げてペルヴェーレの事を教えてあげる。きっとこの後はクリーヴにペルヴェーレの様子を見に行くように頼むの。
そしてクリーヴはケーキを持っていく。
「まったく......クリーヴ見に行ってくれ」
......あれ? なんでお母様がクリーヴにペルヴェーレの様子を見に行くよう頼むって分かったの? なんで私はクリーブがケーキを持っていくことを知ってるの?
すごい既視感に襲われる。心臓がドキドキ言っていてうるさい。
ふふふ、ふふふふ、全て思い出してしまった。
私は......名前もないバブルオレンジの髪留めを付けた女の子。これから原作が始まる前に(おそらく)ペルヴェーレに殺される女の子だ。
顔がにやけそうになるのをなんとか押さえ込み今日を終えた。幸い今まで生きてきた記憶が消えなかったから今まで通りの生活ができた......はずだ。
ちゃんと誤魔化せたかな? ......うん、きっと大丈夫だろう。ちょこっとご機嫌だと思われたかもしれないけど私の心を読める存在はいないはずだ。
布団の中で足をばたつかせる。なんて、なんて素晴らしいの!?
推しの......推しの顔が良い!! 格好良すぎます! お父様!! 幼少期のお父様を見れるなんて私はとても果報者だ!
そう、私はいわゆる”前世”の記憶を思い出したのだ。憑依? 成り代わり? モブ転生? といったやつだろう。
前世の私はよほど高く徳を積んだんだと感謝を捧げよう。最後は刺されて死んだようだけど些細なことだな!!
話は変わるが......皆は知っているだろうか。
曇らせ......と言う言葉を。そう、罪悪感に苛まれるあの表情を。
ここだけの話だが私は曇らせた表情が好きだ。良い表情をしてくれそうなクリーヴを曇らせるのも捨てがたいけど表情が変わらなそうなペルヴェーレが表情を崩すところも見てみたい。
とはいえ二人に傷付いて欲しいわけじゃない。私は前世から二人のことが大好きだし。嫌われたくもない。
贅沢過ぎる話をしているのは分かるけど許して欲しい。
最後はハッピーエンドに導いてあげるから、それまでにちょこっとだけ、ちょこっとだけ私に曇った表情を見せてね?
「く、くふふっ」
ああダメだ。今絶対に幼女がしてはいけない表情をしている。幸い布団を頭から被っているから誰にも見られることはないけどお顔は元に戻さないと。にやける頬を手で揉んでほぐす。
お父様。前世での最推しの一人。クリーヴという幼馴染みの友を自分の手にかけ、
心の奥底では無意識にダメージを受けつつもそれに気付くことなく、いや、夢のために目を逸らしていた。
であれば、であるならば!! その傷を自覚したらどんな表情をするのだろうか! ショートアニメでは少し目を見開いたのと少し険しい表情をしただけ、伝説任務ではほとんど表情を変えることのなかったあのお父様が! どんな素晴らしい表情を見せてくれるのか!
難易度MAX? 大いに結構! 想像しただけでも顔がにやけて戻らないのだ、本物を見たらどうなってしまうのか!!
さあ、これからどう調理しようか。最高の表情を引き出すためにも下拵えは大切だ。
まずは二人と仲良くなることから始めよう。普通であれば二人きりの世界に割り込むことは難しいけれど......。
「おや?」
突然神の目が私の目の前に現れた。
ああ! ああ! 感謝します! 女皇様!!
これぞ天命である! 神も言っているのだ! 彼の者達を曇らせよと!!
神の目を貰ってから9年後、私はとある一室でクリーヴと肩を寄せあって話をしていた。
「本当に上手くいくのかな?」
「絶対。絶対大丈夫だよ」
そう、今は二人で作戦会議をしている。ペルヴィにはクルセビナに話を聞かれないように足止めをお願いしている。
9年の間で元素の制御力も向上したし、クリーヴ達とも仲良くなった。最初こそペルヴィは警戒してたけど今では私も愛称で呼ぶほどの仲だ。
「でも......またお仕置きされたりしない?」
「だいじょ~ぶだよ。それと失敗した時のことは考えちゃダメ」
懐に潜り込み、仲良くなるのは大前提。信用されるためにも信頼されるためにも、いろんな助言をしたしお仕事の手伝いをした。
割りと早い時期に神の目の存在を教えて今では私とペルヴィのどちらかが王になる。と期待を寄せられている。
そんなときに私だけが......と悲しむクリーヴを慰めたりクリーブがネガティブになる度にクリーヴの良いところを沢山羅列していたらだいぶ懐かれたと思う。前世のオタク魂がでて早口になっていたけど引くことなく仲良くなってくれたクリーヴは天使だと思う。
......そんな天使を定期的に曇らせてたゴミは誰ですか? そんなゴミは煉獄にでも落ちれば良いと思う......ここがもう煉獄なんですけどね!
クリーヴが失敗した時のお仕置きを少しだけ代わりに受けていたのがバレてからはアグレッシブさが減ってしまったけど......お仕置きされる時の表情が怯え顔から曇り顔に変わったからヨシ! クリーヴの心の負担は変わってないだろ! いい加減にしろ!!
「虹色のオーロラ見るんでしょ?」
「ええそうね! 絶対に三人で見るの!」
「じゃあーー」
「うんーー」
キラキラの将来に思いを馳せてニッコリと笑い合う。美少女に育った私の笑顔の裏側にどす黒い感情が渦巻いているなんて誰も気付かないだろう。
だって仲良くなったクリーヴでさえ......。
「大丈夫。ペルヴィもいる。私もあなたのことも信じてるわ!」
「うん......うん! 私に任せて!!」
ね? 私の本性にイチミリも気付いていないのだ。
「何を任せるのかしら?」
「お、お母様......」
びくりと震えたクリーヴの頭を撫でる。それだけで安心して力が抜けるのが可愛いね。
ドアを見ると私達を見て微笑む協力者が立っていた。
「明日も頑張ろうって話よ!」
クリーヴが頑張って誤魔化しているのを聞き流しつつ合図を確認する。
問題なし。......ああ、思わずにやけてしまいそうだ。鍛え上げた表情筋をフル活用して微笑みに変える。
「明日決闘を行う子供を通達しに来たわ。察してると思うけど......あなた達二人よ」
「「はい、お母様」」
遂にこの時が来た。私の仕込みは......完璧だ。
「では、始め!」
クルセビナの合図と共に走り出す。一回、二回と剣がぶつかりいい音が鳴る。
数回斬り合ったあと、クリーヴのお腹を蹴って距離をとった。
「行くよ! クリーヴ!」
「受けてたつわ!」
衝撃によって
「流石ね......」
「先に待ってて。私もすぐに追うから」
クリーヴの背中から刀身が伸びる。
血を吐き、崩れ落ちるクリーヴを受け止めた後、冷たくなった身体を優しく地面に寝かせた。
ペルヴィを見ると上手くいったと安堵の雰囲気を出している。......表情は変わってないから私とクリーヴくらいにしか分からないと思うけど。クルセビナ? 強さ以外に興味がない彼女に分かるわけがないでしょう。
ニヤニヤと笑いつつ、クルセビナは私に指示を出す。
「ちゃんと首を跳ねなさい」
「えっ......」
ペルヴィのいる方向からひゅっと音が聞こえた気がした。
そちらを確認すると焦った雰囲気を纏ってこちらを見ている。それでも私を信じているのか取り乱してはいない。
ペルヴィの表情が変わらないことを確認して信頼され過ぎるのも考えものだなと内心で嘆いているとクルセビナが急かしてくる。
「どうしたの? さっさとやりなさい」
「......はい、お母様」
ここにきてペルヴィも違和感に気付いたようだ。重い足取りでクリーヴに近付いて震える剣を持ち上げる。
「さあ、はやく!」
目を瞑ってクリーヴ目掛けて剣を振り下ろした。
「計画通りだよな?」
「............ごめん」
走って部屋に戻った私を追ってきたペルヴィの質問に目を逸らす。先程の決闘ではクリーヴのことを瞬間冷凍し、後日安全な場所で解凍して蘇生するのが私達の計画だった。
当然首なんて跳ねてしまえば......。
「ごめん......」
「......」
「かふっ」
私の腹部に衝撃が来る。そのまま壁に叩きつけられた私の首を掴み、壁に押し付けたまま刀を私の顔スレスレに刺した。
「ごめん」
「大丈夫だって言ったじゃないか!」
激昂したペルヴィに肩を震わす。
謝ることしかしない私に現実を受け入れ始めたペルヴィの顔がだんだんと曇り始める。
「ごめんね......」
「もう謝るな! くそっ、私であれば......」
私の首から手を離したペルヴィが悪態をつく。
冷凍保存する予定だったから私がクリーヴと決闘できるように手を回したけどペルヴィであれば残影を残せたはずだから......自我が再形成されるかは別として......まだ一緒にいられる可能性があったと思っているのだろう。
私を責めてしまった罪悪感と、首を跳ねるように指示したクルセビナへの憎悪と、自分が戦っていればもう少しマシな結末だったかもしれないというやるせなさで情緒がぐっちゃぐちゃになっているようだ。
床に座り落ちつつもペルヴィの表情を目に焼き付ける。その表情が見れて嬉しいだなんて思って本当にごめんね?
いや~、本当ペルヴィが私とクリーヴの前では表情が出るようになってて良かったよ。二人で頑張ったかいがあった。内心ニッコニコなのを表面には一切出さずに目を伏せる。
「頭を冷やしてくる」
くひっ。......まだだ。くひひっ。まだ我慢だ。
ペルヴィが部屋に入り、扉をしっかり閉めたのを見て......。
「くっくひひひひっ」
ペルヴィに聞こえないように声を抑えつつも笑い声を我慢しきれなかった。
一人笑っていると私の
「私が言うのもなんだけど......本当性格終わってるわよね」
「誉め言葉ありがとう。
「ええ、失敗しないように」
先程の決闘の最後は仕込みだった。クルセビナにはペルヴィの感情を揺らしてから一度心を折れば調教が楽だよ~と言って協力して貰っていたのだ。ま、クルセビナの好きなようにはさせないけど。
そしてクリーヴとの決闘から1年が経った......。
「あなたたち二人共”王”よ」
無数の任務と決闘を終えると、生き残っていたのは私とペルヴィの二人だけだった。
「私達は決闘をしなくてもよろしいのでしょうか」
「ええ。最初は一人になるまで続ける予定だったのだけど......二人共優秀過ぎたから上が処分するのは勿体ないと判断したのよ」
ペルヴィが一瞬だけ顔をしかめる。きっとクリーヴの優秀さが伝わっていれば......と考えている顔だな。
ちなみにペルヴィとは仲直りして前よりも距離が近付いた。クリーヴの一件で親しくなった人が居なくなるのが怖くなったらしい。少しだけ私に依存気味だったりする。ペルヴィの心はそんなに繊細じゃないだろうって? ふっ、表情が出るようにクリーヴと二人で頑張ったのと曇りやすくなるようにゆっくりと心が弱くなるように育てたのさ。そう! ペルヴィは私が育てた! 原作よりも心を弱くするとかどこの邪悪かな?
でも大丈夫。
「お母様......お覚悟を」
「え?」
突然ペルヴィが暴走した。なんで??
私が驚いている間にペルヴィとクルセビナの戦いが始まった。いや、まあ最後は共闘するつもりだったからイインデスケドネ。
なんとも言えないまま少し遅れて私も戦いに参入していく。
戦いは壮絶だった。私の氷とペルヴィの炎が混ざり合う。
クルセビナの身体能力半端ないっス。ショートアニメでは途中からペルヴィが圧倒してたからもっと余裕あると思ってました。
ペルヴィが暴走さえしなければもっと疲れている時に戦うよう調整するつもりだったんだけど......。下手に調整してたら私達死んでたな。
ペルヴィ曇らせ計画も最後に失敗しそうだと嘆きつつもペルヴィが死ぬよりもマシだと自分に言い聞かせて最善手を選んでいく。
私の氷でクルセビナの動きを封じ、ペルヴィの炎でダメージを与える。
10年近く一緒に悪巧みしてきたから阿吽の呼吸で戦える。
クルセビナの剣を私が弾き、クルセビナが頭を狙う。
幾千もの剣撃が交わりあった。炎が舞い、氷が煌めく。
段々と追い詰めていき、最後には......。
「お母様。私達の勝ちだ」
「あら、殺さなくて良いの?」
ペルヴィがクルセビナの喉元に剣を突き立てた。両足も凍結していてもう動けないように見える。
暴走してたしあっさり殺すかと思っていたけど......これはあれか? ラッキーではないか?
「殺すさ。でもその前に一つだけ聞かせろ」
「何かしら」
これはチャンスがありそうだと少しワクワクしながら二人を見守る。
「なぜクリーヴの首を跳ねさせた」
「っ! ......ふふ、それはね?」
ペルヴィの質問に肩が跳ねる。あー、バラされるのはヤバい。ペルヴィ人間不信になりそう......いや絶対になる。
ちらりとクルセビナが私に目を向けたのを見てペルヴィを横から突き飛ばした。
「ぐふっ」
「あら残念」
クルセビナの水でできた剣が私のお腹を貫通している。そっか、そこは計画に乗ってくれるのか。
そのまま壁に向かって捨てられる。あ~血がどくどく出てるなり~。意識が飛びそうになるのを気合いで繋ぎ止める。だって......。
私はまだペルヴィの顔を見てないから!!
こっそりと傷口を凍らせて止血する。すでに死ぬ量の血液が出てるから手遅れだけど......ペルヴィの! 最高の曇り顔を見るまで! 私は! 死ねない!!
ペルヴィが咆哮を上げてクルセビナを惨殺しているのを眺める。炎も使わずに刺し続けてるのに狂気を感じる......。
でもせっかくセルフで延命してるのにクルセビナばかり相手をされるとペルヴィの顔が見えないので......。
「ペル......ヴィ」
「っ! 大丈夫か!?」
はい、名前を呼んじゃいましょうね~。くひひっ、その焦りと罪悪感と後悔が混ざった顔サイコーです! 涙でぐっちゃぐちゃになってるのも得点高いですね! 思わず蘇生されそう......!!
クリーヴの時とは逆に謝り続けるペルヴィ。良い感じにぼろぼろなので笑っても微笑みにしか見えてないと思う。
「ペルヴィが......私を......殺してくれる?」
「......」
きっとクリーヴの事を思い出してるはずだ。あの時は燃やせなかったから......残影として残せなかったけど......今、私のことならば!
その誘惑に勝つも負けるもペルヴィ次第だけど自殺しないように
「家を......任せたよ。本当の家族を......作ってね」
これで死ねんやろ! どこまで追い詰めれば気が済むのかって? そら止めをさして貰うまでだよね。ほらっ! お前が殺るんだよ!!
だいじょうぶだいじょーぶ。私が死んでもケアできる人を手配してるから!
暖かい炎に包まれ、薄れ行く意識の中、”任せろ”と頼もしい言葉が確かに届いていた。
最近ペルヴィを見かけない。クリーヴもどこに行ったんだろう。......なんて、お母様の他にお父様が増えてるから私は上手くやったんだと思う。
それでも最後に本性がバレていたら......なんて考えると会わないように逃げちゃうんだけどね。
でも、今日はとうとう旅人に私の存在がバレちゃった。
そして......今私は二人の前に立っている。
「ペルヴィが大きくなってる!! そっか......私は死んだんだね」
「ああ、もう何年も経過している」
ペルヴィが悲しそうな顔をして私を見る。
当然私は笑顔だよ! そして......。
「クリーヴも......私と一緒なの?」
「違うわ。あなたがかけてくれた保険のおかげで生き残ったのよ」
「そっか! 良く覚えてないけど良かった!」
うん、さすが博士。首が跳ねられていても生き返るとは。瞬間凍結した上で一つも細胞を潰さないように切り落としたのが良かったのかな?
え? 覚えてるじゃんって? やだな~、覚えてるなんて言ったらなんで保険をかけていたのを説明しなかったんだって怒られちゃうじゃん。それは嫌だよ? 私が好きなのは曇り顔であって怒り顔じゃないから。
でもう~ん、この後私は消されるのかな? ルール違反しちゃった?
「いや、いつも助かっている。これからも影ながら手助けしてくれるか?」
「もっちろん! 私に任せて!」
どんと胸を張る。きっと明日になったら忘れちゃうけど......また明日言ってくれればいくらでも手足として働くからね!
たぶん毎日聞いているんだろうな。私。もし覚えていても同じ確認するけど。......だってその方が
あとがきという名の補足
Q.博士とどうやってコンタクトとったの?
A.幼少の頃に神の目を授かったということで主人公は一時期博士のモルモットになってました。そのときの交換条件でクリーヴを殺すときに首を蘇生しやすいように跳ねて殺すから生き返らせてもらうように交渉してます。断ろうとされたらできないの~? とメスガキになる予定だった。メスガキになったかどうかは残影になった時に記憶が焼かれたので不明です。
Q.原作ではクリーヴとペルヴェーレが戦ってたのになんで主人公とクリーヴが戦ったの?
A.主人公とクルセビナの悪巧みです。主人公はペルヴェーレの心を折れば従順にできる。心が折れなければ強い心を持った優秀な王になる。だから感情を引き出したいと言って交渉しました。クルセビナは主人公もお気に入りの一人だったから採用。ペルヴェーレの感情は正直どうでも良かった。
Q.前話であったお願いと対価はないの?
A.ありません。神の目のモルモットが対価。クリーヴの蘇生が願い。博士は蘇生するつもりがなかったけどやけに綺麗な死体だと思って観察していたときにふと約束を思い出して気紛れに対応したら本当に蘇生してビックリしてます。運が良かった。
ドラクエと原神のクロスオーバー二次も書いています。
良ければ読んでくださいな。
魔竜幼女ネドラが行くテイワットの旅
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