バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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原作開始前
バーボン成り代わり


 

 私は憑依系転生者である。

 無論一般人だ。なんの変哲もない村人A。常人程度のスキルしか持ち得ないパンピー。

 

 それなのに、転生した世界はかの有名サスペンスラブコメディ、名探偵コナンだった。

 

 コナンというだけでも厄ネタまみれだと思うだろう。

 殺人事件が頻発する日本なんて現実の下位互換だし、時折春の映画祭りで大きな建物が派手に爆発したりもする。

 

 加えて私の場合、憑依先も悪かった。

 

「キティ、準備はできたかしら?」

「はいベルモット、各種交通機関の手配からホテルまで全て完了しています。ご出発しますか?」

「ええ。行きましょう、明日朝の任務を終えたらそのままショッピングだからそのつもりでね」

「かしこまりました」

 

 キティ、と私を呼ぶのは麗しき黒の組織幹部、ベルモットことシャロン・ヴィンヤードである。

 優しく妖艶に微笑み、私へと命令を下す様すら美しい。

 

 対してスーツでベルモットの側仕えを務める私はといえば、均整のとれた身体に浅黒い肌、金髪碧目の美青年。

 名を安室透という、一人の潜入捜査官である。

 

 潜入なんて超高度スキル私には無いんだがな!!

 この肉体の底で眠りにつく降谷零ご本人のために、彼に代わって必死こいて潜入捜査官の任務を果たし続けてはいるものの。

 いつ命を散らすか分からぬこの状況、そろそろストレスが限界を迎えそう。

 

 私は胃をさする動作をなんとか我慢し、ベルモットへ笑みを返した。

 

 現在、雑魚組織員である安室透の仕事は幹部達の側付きだ。

 任務のために西へ東へと忙しなく移動する幹部の旅程管理やら身の回りの世話やら、そういう雑事を一手に引き受ける執事と言っていい。

 また、別の幹部との調整やらも一部任せられたりしている。

 仕事仲間は主にウォッカ。

 

 無論それだけでなく血生臭い任務も任せられることもあるが……まぁ、今は割愛。

 

 降谷零由来の抜群の記憶力、面の良さ、一般人という組織では少々特殊な属性ゆえに多少気がきく…etc。

 どの要素が生きたかは分からないが、一応こうして重用してもらえる程度には地位を確立できたようだ。

 

 いや、ここまでくるのには涙無しでは語れない苦労があったのだよ…。

 突然安室透として記憶もないまま放り出され、憑依先の本体たる降谷零の意識が眠ったままで公安への連絡方法も分からず犯罪組織に身を置くこと2年!

 

 殺されなかったことだけでも誰かに褒めて欲しい有様だよ!

 

「そういえば、キティ」

「はい?」

 

 ベルモットが麗しい髪をするりと靡かせながら振り向く。

 超有名ハリウッド女優やりながら幹部とかこの人もめちゃくちゃ多忙な人なんだよな。

 

 どうしました、とぴしっと姿勢を正したまま聞けば、ずんずん近寄ってきたベルモットは私の顔を覗き込んだ。

 

「今日から貴方はバーボンと名乗りなさい。良かったわね、私のキティ」

「……それは僕が幹部に名を連ねるということで?」

「そうよ。思ったより長かったけど、貴方は良い子だもの。それだけの力もあるわ」

「買い被りですよ。僕は単なる側仕えです」

 

 ついにコードネームを得られたらしい。

 しかもバーボン。原作通りのそれに感慨深いやら、止めて欲しいやら。

 

 幹部って忙しすぎるんだよ。任務も難しいのばっかだし。

 遠慮したいというか、せめて本体たる降谷さんの意識が起きてからにしたい。

 一般人が幹部なんて超人連中と肩を並べるなんてできるわけないでしょ!

 

「貴方、携帯鳴ってるわよ」

「ああ……失礼します、ベルモット」

 

 少し言い置いてから電話に出る。

 ちなみにだが、現在のコナン世界ではガラケー真っ盛りだ。なんとなく古めかしい気持ちになるよね。

 

「もしもし?」

「よぉ、バーボン。もう聞いただろうが、幹部就任やったじゃねぇか!」

「ウォッカ…ありがとうございます。貴方の教えが良かったからですよ」

 

 電話相手は同じく組織幹部、ウォッカであった。

 身内には優しいウォッカらしく、純粋な喜びとお祝いの気持ちが声に滲んでいる。

 

 ちなみにだが、ウォッカのおかげという言葉はマジの本音である。

 この人本当に教え上手で、ド素人だった私の執事スキルの九割九分を叩き込んでくれたのもこの人だ。

 降谷零ご本人ならばウォッカの教えが無くとも卒なくこなせたのかもしれないが、私は違う。

 

 下手すると機嫌を損ねた幹部に頭の中身をぶち撒けられかねなかったからな。

 普通に尊敬である。すげーよウォッカ。師匠って呼ばせてくださいウォッカ!

 

「よせよせ、オメェの飲み込みが早かったってことだ。素直に喜んでいいぜ」

「はは。今日からは同僚という立場になるかもしれませんが、これまで通り貴方から教えを乞いたい。だめですか…?」

 

 きゅーん、と子犬が鳴くように頼んでみる。

 特にジンの側付きやる時はこの人のアドバイスが無いとマジに死ぬ。

 ジンが「使えねぇ野郎だ」なんて一言漏らした次の瞬間に私の同僚だった男の頭が潰れたトマトになった、なんてことも実際あったからな。

 人材はタダじゃないんだぞ!!!そんなバカスカ殺していいとでも思ってんのかよ銀髪ヤロー!

 

 ウォッカは私の懇願を聞いてうっとたじろいだようだった。

 どうだ!私の渾身の命乞いは!哀れだろう!

 

「ったく、仕方ねぇなあ。俺もまだまだオメーには教えてねぇことも多いからな。ビシビシいくから覚悟しろよ」

「!ありがとうございます、ウォッカ!」

 

 電話を切れば、ホテルの椅子に腰掛けながらベルモットが面白そうにこちらを見ていた。

 

「……何か御用でしょうか、ベルモット?」

「いいえ。キティを見ていただけよ。仕立てたらさぞ良い男でしょうに、まるで愛らしい小型犬のようだから」

 

 ベルモットはふふふと優しく笑っている。

 肉体は降谷零でも中身が一般人だからな。凛々しい狼がポメラニアンになってしまうのも致し方あるまい。

 だが、降谷零本人がキティなんて呼ばれてるの知ったら憤死しそうだからやめてくれ…。

 

「恥ずかしいです、ベルモット。僕はこれでもとうに成人済みですよ?」

「そうだったかしら。ティーンでも通用しそうな甘いマスクだけれど」

「流石に怒りますよ。僕、これでも気にしてるんですから」

「ふふ、ごめんなさいね」

 

 童顔を気にしてるのは降谷ご本人だが、まぁこれ以上からかわれないためにもそういうのは気にしてる設定でも良いだろう。

 

 原作開始までおよそ3年。

 できることはしていこう、と私は気合を入れ直した。

 

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