バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】 作:ラムセス_
場所は現在サクラサクホテル。
時刻は午前10時ごろ。
園子さんに誘われて、私達はテレビで話題のエミリオ・バレッティの泊まるホテルに電撃訪問していた。
迷惑ってレベルじゃないが、まあこの場合スポンサーたるルチアーノらがしっかりガードしてなかったのが悪かったということでひとつ。
堂々と正面からサクラサクホテルに乗り込まんとする園子さんは、私の方を振り返り意外そうに口を開いた。
「私達はエミリオに会いに行くわけだけど、安室さんはどうしてついてきたの?あの話題の美人秘書さんに一目惚れ?」
「いや、彼女は現地イタリアではエミリオと恋仲ってもっぱらの噂だからね。流石に横恋慕する趣味はないよ」
園子さんの隣の蘭ちゃんが苦笑いしつつも興味津々で私たちの会話に耳をそば立てている。
まあ、確かに降谷さんはイケメンだしな。
その恋愛事情となれば女子高生として捨ておけないことは間違いない。
「え、じゃあどうして?」
「エミリオの護衛として次元大介の姿が見えたから、野次馬根性でね。コナン君もそうだろう?」
「う、うん」
急カーブでキラーパスを渡せば、推理に思考を奪われていたコナン君はどもりながらも何とかついてきた。
目だけで「俺に振るなよな!」と非難してきたが素知らぬ顔。
「はー、このガキンチョも安室さんも色気より事件ってわけね」
「ははは、すみません。これも探偵のサガですので」
「おじさまは美人秘書さんにメロメロだってのに。いや、これおじさまの残念具合を心配するべきね」
「それにしても」と園子さんが私をもう一度まじまじとつま先からてっぺんまで見分して頷いた。
「前はよそよそしかった安室さんも、今ではずいぶん雰囲気が柔らかくなったわよね。親しみやすいイケメンというか、理想の彼氏の具現化って感じ」
「え、ええ…?そうですかね。僕、彼女なんていたことありませんよ?」
「それが良いんじゃない!料理できて、子供好きで、マメで気遣いできてイケメン!」
お、おう。
家は片付けできないんだが、それは言わないようにしよう。
降谷さんなら片付けもできるし完璧なんだが、私では若干片手落ちである。
───俺はマメでもないし気遣いもできないから幾度もふられたよ
───!?!?!?彼女、いたことあったんですか!?女性嫌いの貴方に!?
───学生時代近寄ってきた女は沢山いたからな。でも毎回必ず『私じゃなくても良いんでしょ!?』とか何とかで自分から近づいてきた癖にふってくるんだ
「だから嫌なんだ…ったく、誰でも良いに決まってるだろ」と降谷さんは大きなため息と共に首を振った。
これは……絵に描いたような顔だけ地雷男……ッ!
と、内心こっそり戦慄していると、「安室さん?」と園子さんから声をかけられてはっと我に帰る。
「で、どうなの安室さん。狙ってる子とかいないわけ?」
「いませんねぇ。世界を転々とすることも多いので一緒にいられる時間自体が短いですし」
「そう?私から良い子紹介しよっか!」
「勘弁してください。というか、10も年下の女の子なんて罪悪感が先立つので…」
内側の降谷さんも「ないないないない」と全力否定してるし。
恋バナに花を咲かせているうちに、サクラサクホテルに私達は到着していた。
ちぇっ、と園子さんは唇を尖らせたあと、
「じゃあ、支配人呼び出してくる!」と勢いよく強権を発動した。
珍しくノリノリなあたり、やっぱりエミリオは人気があるのだろう。
しばらく待てば、「少しだけど会えるって!」との事でスムーズに部屋へ通される運びとなった。
さすがはVIP待遇。
もしかしたら幾らか積んだかもしれない。鈴木財閥令嬢が我儘を通すのにタダというのも考えづらいし。
クラシックな内装の廊下を進んでいけば、途中で見知った顔──白鳥警部とすれ違った。
白鳥警部の方も驚いたように瞬いたあと、襟を正して少しばかり頭を下げた。
「蘭さんに安室さん、鈴木財閥のご令嬢もお久しぶりです」
「なにかあったんですか」
「ここだけの話ですが……バレッティ氏に脅迫状が届いたみたいでして」
相変わらず探偵相手には口が軽くなる世の中である。
世間話みたいに打ち明けられた機密事項に自然と身が引き締まるというものだ。
コナン君の目が一気に鋭くなる。
私はコナン君の目配せの意味を正しく受け取って、白鳥警部に切り出した。
「では、僕でよければ力になります。向こうもライブ前であまり大ごとにはしたくないでしょうし」
「それは助かります。世界各地で活躍される名探偵の安室さんなら心強い」
その設定生きてたんだ……。
いや、世界各地で探偵を名目に活動してるから嘘ではないのだが、うむ。
何となく居心地の悪い気持ちになりながら、エミリオのいる部屋へと案内される。
本来なら私たちと会ったあとまた脅迫状の対策相談、という流れだったらしい。
ちょうど良かったというべきか、邪魔してすまねぇと謝るべきか、微妙なラインだ。
エミリオの部屋は最上階の特に何のオプションもない部屋だった。
エミリオほどの知名度を誇る歌手なら普通はスイートルームを取ると思うのだが…。
彼が質素なたちなのか、それともルチアーノがその分の金を絞ってるのか。
私たちが部屋に入るなり、エミリオと一緒にいたルチアーノ氏がびくりと肩を揺らした。
私のことを凝視している。
その露骨な様子に、「いかがされましたかな、ルチアーノさん」と目暮警部に話しかけられて動揺しているようだ。
「あ、いえ……」
「初めまして。探偵の安室透と言います。こちらは助手の毛利蘭と江戸川コナン、それと鈴木園子です」
にっこり笑って「喋ったらどうなるかわかってんだろうな?」という言外の意味と殺気を思いっきり叩きつける。
指向性をぎりぎりまで絞ったので、それに気が付いたのは隣にいたコナン君ぐらいのものだった。
コナン君は私の瞳に殺気が灯ったのを確認して、一気に臨戦態勢に移ったらしい。
恐ろしいほど怜悧な瞳で私とルチアーノ氏を観察している。
「これはこれはご丁寧に、私はルチアーノと申します。どうかよろしくお願いいたします」
声だけは普通だが、顔色はと言えば真っ青でおどおどしているので佐藤刑事が訝しみだした。
さすがは捜査一課の優秀な刑事さんだ。観察眼が違う。
しかしこれ以上怪しまれるのはまずいな。
ルチアーノ氏にイタリア語で「西側エレベーター前」と唇だけで伝えれば、ルチアーノ氏はごくんと生唾を飲んだようだった。
これはつまり後で、西側エレベーター前に来いという意味だ。
ルチアーノが読唇術を習得していることは把握済み。これならひとまず安心だろう。
「それで、脅迫状というのは?」
「こちらにある紙がそうだ。安室君も見てみたまえ」
目暮警部に話しかけて、エミリオに来ていた脅迫状というのに話を強引に戻す。
しかし、少々強引に過ぎたかもしれない。
私に対して若干強い視線を佐藤刑事が向けている。
脅迫状はイタリア語の新聞の切り抜きだった。
これは自分の公演が取引の目くらましにされているエミリオが、それを憂いての自作自演だ。
ただし、この程度でルチアーノが公演を中止することはないだろう。
なにせルチアーノ一派は拠点を一つ潰され、大損害が出ているのだ。
ほうぼうの取引に支障が出ているわけで、ここでさらなる被害を出すのは何としてでも避けるだろう。
と、そこで白鳥警部が目暮警部へ耳打ちした。
高木は無事でした。ルパンは──まで見えたが、これはコナン君も同じだろう。
読唇術で言葉を読み取ったコナン君がむっとして私をじとっと睨みつけた。
別に隠してたわけじゃないよ、言っても特に利にならなかったから言わなかっただけで。
その後はまあ、概ね原作通りと言えるだろう。
ルパンじゃない?と迷推理をかます園子さんだったり、SPを雇わねばならないという議論であったりだ。
脅迫状の犯人がルパンであるにしろ違うにしろ、ルパンが東都で活動しているのは事実。
「それによってこの脅迫文の主も方針を変える可能性がありますので、奴らの動向は注視する必要があるでしょう」
「なるほど!ありがとうございます、アムロさん!」
そう言って私の手を取るエミリオこそが犯人なのだが、これはおそらく…裏にある取引を暴いてくれ、という意味も含めた期待だろうな。
私はしっかりと手を握り返し、「ええ、微力ながらお手伝いさせてください」と笑った。
約束通り、とはいかず。
ボディガードである次元大介を伴ってルチアーノは西側エレベーターへとやってきた。
さっき怯えていた様子とは打って変わって、次元大介という心強い味方を得たルチアーノは自信満々だ。
威張り散らすように胸を張り、鷹揚ににやりと笑った。
「それで、こんな場所に呼び出して何の用かね、ウルフドッグ」
「ああ、別に。お互い不幸な遭遇だったという事で、ノータッチで行きましょうという話がしたかっただけなのですが。勘違いさせてしまったみたいですね」
間抜けな自信を嘲笑えば、ルチアーノは気色ばんだ。
「ふざけるな!あれだけ私たちの拠点で好き勝手しておいて、それで済むとでも思っているのか!」
「ふふ、ふ」
ついつい笑みが陰惨になる。
弱い羽虫がよく吠えることだ。
「いやだなぁ。僕が優しく話をしているうちによく考えて発言してほしかったんですが」
「はっ、ここには先生がいらっしゃる。近接戦も嗜む軍事と銃のエキスパートだ。貴様如き潰すのは容易いんだぞ!」
「ふ、ははは!こんな白昼堂々銃撃戦をする気ですか?それこそ、エミリオのライブは泡と消えることでしょうねぇ」
大袈裟に手を広げて周りを見渡せば、大きな窓から陽光が差し込み、下には人通りの多い大通りが見えた。
ぎり、とルチアーノが歯軋りする。
それに万が一次元さんと銃撃戦になったとして、一応銃弾を弾いて逃げるくらいは可能だ。
次元さんの殺気には悪意がまるで混じらないから感知することが非常に困難だが…一応勘で弾けることは間違いない。
その間に逃げれば、ひとまず態勢ぐらいは立て直せる。
「我々組織と敵対したこと、その慈悲を跳ねのけたこと。よくよく覚えておくことです」
「薄汚い獣風情が…そううまくいくと思うな!」
余裕綽々なラスボスみたいな雰囲気をかもしだしているが、実は結構ギリギリなのだ。
勿体ぶって「ではまた、ルチアーノ。せいぜい脅迫状には協力して差し上げますよ」と言ってうっすら笑う。
後ろから撃たれないか不安で、つい早足になりそうなのを必死で抑えて、私はコナン君と合流すべく階段を降りた。
・バボ主
モテる。
ベルモットに「今夜、どう?」と褥に誘われる程度にはモテる。
なお、降谷さんはゲボを吐いた。
・降谷さん
モテる。
被害女子からのあだ名は「顔だけのクソ野郎」「あのクソ」。