バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】 作:ラムセス_
申し訳ねぇ…
私と次元さん、そしてコナン君の三人でホテル付属のバーにしけこむ今現在。
あれから、私はルチアーノ氏との会話を盗み聞きしていたコナン君を素早く確保して「盗み聞きとはいけない子だな」と詰問した。
「だって僕も読唇術できるって知ってるだろうし、きっと僕も聞いていいんだろうなと思って…」などと供述していたが、気配が全然隠せていないので落第である。
盗み聞きはバレなければこそ生きるもの。バレバレな時点で詰める対象確定なのだ。
問題ないかどうかで言えば、盗み聞きしているだろうという前提で話をしていたのでまあ問題ないのだが。
コナン君には一度みっちり気配の消し方を指導する必要があるな……。
あと思考に集中すると背後がおろそかになるところも。
後ろから忍び寄るもう一人の仲間に気が付かなかった!なんて間抜けな真似は公安では許されないからな。将来的に抱き込む以上、その辺はきっちり指導しておかねば。
などと考えつつ、下階にあったちょうどよい密談場所としてバーを選べば、後を追うように次元さんも来店。
特に打ち合わせしたわけでもないのにルパン一味が一部結集することになったのであった。
ちなみに、頼んだ商品はコナン君がオレンジジュース、私はアメリカンウイスキー「アーリータイムズ」…つまりはバーボンだ。
次元さんは今日は日本酒の気分なのか、高そうなお猪口をカパカパと頼んでいる。
昼間っから酒というのも背徳的だが、私は酔わないのでこの後の仕事にも特段の影響は出ない。
とはいえ、飲み過ぎると中の降谷さんがべろんべろんになってしまうので加減はせねばならないが。
三人並んでバーカウンターに座り、次元さんはおもむろに「よう、最近調子はどうだ。学校とか」と正月に久しぶりに会った親戚のおじさんみたいなことをコナン君へ問いかけた。
「あえて言うなら早く僕も高校に行きたいよ…出席日数とかホント大丈夫かなって。蘭も待たせちまってるし」
「なら早めにあの黒づくめの三下どもをぶちのめして元の姿に戻るんだな」
「わぁーってるよ!うぅ…それよりもパパ、ルチアーノさんをどうする気?」
「俺は単なるボディガードだ。どうするも何もねぇよ。それより、聞くんなら怖ぁい狼犬だろうが」
あとパパって呼ぶな、と言って顎をしゃくって私を差すので、私は苦笑した。
「聞いてた通り、僕も中身のない会話しかしてないから特に何も考えてないよ?」
「あんなに威圧してたのに?」
「威圧してただけというか、要約すると『舐めたことすっとどうなるかわかってんだろうなぁオラァ』としか言ってないし…」
思わずといった調子でコナン君がブッと吹き出した。
実際、あの時は無駄にオラついたチンピラの自慢話大会とニアリーイコールぐらいの意味合いしかない空虚な話し合いだったので、それはそれで間違いではないのだ。
「変な要約しないでよ!ジュース吹き出すところだったんだけど!?」
「ごめんごめん。でもあれはあれで重要なんだよ?野生動物の威嚇に似ていてね、相手が軽々に動かないよう抑制することができるからね」
「それはわかるけど気の抜けた感じに訳すのは良くないと思う」
コナン君は憮然としている。なぜ。
次元さんも高級日本酒に舌鼓を打ちつつ私の言葉に同意した。
「まあ、たしかにありゃチンピラ犬が凄んでただけだったな。お前のあのねちっこい殺気もあるし、ルチアーノ程度の三下ならあれで十分だったみてーだが」
「ね、ねちっこい…?」
「オメェの殺気は陰湿なんだよ。なんだあれ、何かの嫌がらせか?」
ふん、と鼻を鳴らして次元さんは日本酒のとっくりを持ち上げてゆらした。
殺気が陰湿とかは分からないが、確かにルパン一味の殺気は三者三様だ。
ルパンさんならあらゆる奇想天外を織り交ぜた柔軟かつトリッキーな戦い方がポイントだ。
殺気もあるが、どちらかといえば翻弄する、に主軸を置いた気配なので攻撃のタイミングが非常に読みづらい。というか、殺気の発露のタイミングと攻撃のタイミングがずれているとかいう凄いバグ技をかましてくる。
常に神経を研ぎ澄ませなければ予想外のタイミングで致命的な一撃をもらってしまいかねない強者だ。
対して次元さんは殺気自体が非常に読みづらい。
悪意のこもらない透明かつ薄い殺気が機械的に照射される、といった感じだ。
詰将棋に似た戦略的に追い詰めてくる感じが非常に厄介で、気づくと逃げ場が失われているのがいやらしい。
五エ門師匠は非常にシンプル。殺気を感じたころにはもう斬られているという超神速。
一太刀一太刀が致死の一撃なのに、実はフェイントもありつつ。まさに達人の剣といった様相だ。
普通に勝てない。打ち合っているだけで神経がガリガリ削られる凄まじさは筆舌に尽くしがたい。
翻って、私はどうなのだろうか。
五エ門師匠いわく、剣技を覚えた野の獣だとのことだが……果たして。
「坊主も感じたろ。俺らといるときの安室は普通の殺気だが、組織の狼犬として行動してるときはこう、なんつーか、殺気がキモイんだよ」
「キモイはストレートに名誉棄損ですよ!?殺気にそんな違いありますか!?」
「ある」
次元さんは断言した。
そして「ちょっとやってみろ、ほら、そこからこっちへ向けてまずは普通にな」などと注文を付けるので、私は仕方なく立ち上がり一メートルほど距離を取った。
微妙な気持ちになりながらも、ころしちゃうぞ~という気概を込めていつも通り殺気を放つ。
びくり、とコナン君が肩を揺らした。
「じゃあ次、あの年中暑っ苦しい黒服を着てる野郎どもの仲間として働いてる気持ちで」
どうしろと……。
迷った末、この間門番をバラして玄関に飾り付けた時の心持を思い出してマイナス方向に気合を入れる。
少々鬱だが、仕方あるまい。
バラしてやるぅ~という気持ちで殺気を放てば…おっとコナン君が素早く立ち上がり…スライディングするように次元さんの後ろに緊急避難した!
素晴らしい機動力だ!
だろ?との次元さんの言葉に無言でこくこく頷くコナン君。
「そんな違います!?え、殺気ですよ!?」
「そんな粘着質な殺気出せるのはテメーぐらいだ」
かなり不服だが、2人が言うならそうなのだろう。
なんとなく納得いかない気持ちでぶすくれていれば、コナン君が若干恐る恐る隣の席へと戻ってくる。
私を見上げて首をかしげるさまは、吹き出しを付けるなら「いぢめる?」とかだろうか。
「納得いきませんが理解はしました。なら、僕の威嚇の甲斐ありルチアーノも軽々には動くことはないだろう、という事ですね」
「そうだな。積極的に大きく動こうという気にはならねぇだろう。暫くはな」
しばらくは、と付け加えるあたりルチアーノの胆力の強さがうかがえる。
それともお馬鹿さんなだけか……いや。馬鹿にイタリアンマフィアの幹部は務まらない。そう考えると、ルチアーノもあれはあれで優秀な男なのだろう。
と、その時。スマホが着信音を喚きたて始めた。
しかもコナン君と次元さん、両方のスマホがだ。
「エミリオがいない?」「エミリオと一緒!?」
おっと、原作イベント・エミリオ脱走が始まったようだ。
まさか本当に脱走するとは……彼女である秘書さんの命がどうなってもかまわないのだろうか。
ルチアーノらにとって大事なのはエミリオという世界的人気歌手のみ。
だからライブ前に脱走したなどという「おいた」をしたエミリオに、裏社会的指導を行っても何らおかしくないのだ。
例えば、エミリオの大事な人を消す、とか。
それをおして脱走したという事は、それほど腹に据えかねたという事か。あるいは自死すら考えていたか。
なんにせよ良い兆候とは言い難い。
「安室さん!行こう!」と勢い良く立ち上がるコナン君だったが、そこでちょうど私にも着信が入ってしまった。
デフォルトの軽快な着信音が呼び立てる相手は組織の幹部、ジンだ。
『よぉ、ウルフドッグ』
「……仕事ですか?」
『そうだ。奴ら、お前がアジト一つ潰したってのに日本でライブをオトリに取引なんざ、まだ懲りてねぇらしいからな。ルチアーノを始末しろ』
「暗殺は苦手なのですが……貴方がそう言うのなら」
『ハッ、安心しな。派手にやっていいそうだ。後始末にウォッカとキュラソーを向かわせる。お前はただ殺し尽くせばいいだけだ』
「なるほど。承知しました。ご満足いただけるよう、精一杯派手に切り裂いて見せましょう」
『楽しみにしてるぜ、ウルフドッグ。詳しいことは今日の9時に例の埠頭で話す』
それだけ言って、ジンは一方的に電話を切った。
コナン君もそうなんだが、この世界の住人ってガチャ切り好きだよね。
振り返ってコナン君に「僕は少し用事ができたから、先に行ってて」と言えば、コナン君は一切合切把握したみたいな自信満々の顔で頷いた。
「なるほど、組織の仕事だね。この盗聴器持って行って」
「駄目に決まってるからね?あと僕割とマジでこれから忙しくて、罪のない民間人をルチアーノごと大量虐殺しなきゃならない事態を何とか回避すべく奔走する必要があってね?」
「やだなぁー、そういう時こそ三人そろえば文殊の知恵っていうじゃない。ぱぱぁ、ママのピンチなんだから力を貸してくれるよね?」
「おうともよ。精々足掻けよママ」
「ママは止めてくれません!?!?そのヴェスパニア王国での設定は早いところ忘れましょう!百害あって一利なしなので!」
2人してからかいおるわ。
ニヤニヤ笑う二人を追い散らしながら、私はなんとなく沈んでいた心が少しだけ上向くのを感じていた。
・バボ主の戦闘評
原理不明の謎直感で攻撃をひょいひょい避けつつ、人外の膂力で爪を振り回してくる凶暴なヒグマ。
裏社会では死んだふりが有効という俗説がまことしやかに囁かれている。
※実際有効である。死んだふりや重傷者等は意図的に見逃しているため