バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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純黒の悪夢②

 

 前回までのまとめ。私氏完全勝利。

 

 などとたわごとは置いておいて。

 早めに組織がどこまで情報をつかんでいるのかと、私たちの身の振り方を考えねば不味い段階だ。

 

「それより、キュラソーはどうしたんですか。話を伺いたいのですが」

『あん?奴は……メールでNOCリストを送ったっきりだ。TVニュースを見るに、しくじったようだな』

「!」

 

 現在の私達の情報がどこまで組織に流れているのか確認するためにジンに問いかけると、意外にもキュラソーは原作通り橋下に転落して音信不通となっているようだった。

 

 キュラソーは限定的な完全記憶能力者。

 ジンは「キュラソーがガセをつかまされて悔しがっていた」と言っていることから、一時通話もしていたことが予想される。

 

 これは非常に楽観的な予想だが、第一報で通話にてジンに「NOCリストが偽情報だった」と罵詈雑言とともに伝え、のちに原作通りメールでNOCのコードネームを書き記して送ったのだろう。

 文面は原作通りなら『NOCはスタウト、アクアビット、リースリング。そして貴方が気にしていたキール、バーボン』だったか。

 

 バーボンこと私の立ち位置の影響でメールの文面にも若干違いが出てきているだろう。

 しかし、あの激しいカーチェイスの中で長文メールが打てたとも思えない。とすると、要点のみを押さえた短文を送ったとして、変更は軽微であると考えられる。

 

 夜逃げの準備をしながら自室のTVを点ければ、現在、緊急速報で首都高において車複数台が絡む大事故が発生して炎上中という大ニュースがけたたましく報じられていた。

 

 報道ヘリが上からもうもうと立ち上る煙と炎とを映し出し、首都高が激しく遷ろう炎の光で夜を照らしている。

 うーん大惨事。

 おそらくだがこれも大まかには原作通りなのだろう。

 

 とすると、まだ組織は降谷さんの本名……つまり降谷零を知らない。

 知っていたならこの電話で追及しないほうがおかしいので、これはおそらく正解。

 しかしNOCリストを直接見たキュラソーは知っているはずなので、彼女の記憶が戻る前に確保しなければ芋づる式に面倒なことになりかねない。

 

 降谷零の名を知られてしまっては、組織の調査能力なら警察学校に在籍していたことはすぐにでも明らかになるはずだからな。

 データベースからは名を消されていても人の記憶を消すのは難しい。特に、当時の伝説にすらなっている問題児たちの一人なのだから。

 

 そして今日、リニューアルオープンした東都水族館にコナン君たちと共に遊びに行く予定ともなれば、利用しない手はない。

 

 私は平静を装ってジンにいつも通りの声で問いかけた。

 

「分かりました。キュラソーの救助に向かいますか?」

『いや、いい。サツに捕まってりゃ別だが、奴は奴でなんとかするだろう。出来なきゃ死ぬだけだ』

「……そうですね」

『お前はNOCどもの始末に注力しろ。任せたぜ、ウルフドッグ。今回も動画は撮っておけ。本巣に送り付けて身の程って奴をわきまえさせる』

「ええ。お任せください」

 

 また動画かよ。

 そういえば先日の飲み会の時、ウルフドッグメモリアルみたいな感じで切り抜き編集したスプラッタシーン動画を見せてくれたけど、あれはウォッカに作らせたものだと言っていたな。

 最近組織の新人教育もマンネリ化してるので、新設された2年目研修に使う講習動画の試作品らしい。

 メッセージは「お前も裏切ったらこうなるぞ」にプラスアルファ「このぐらいの活躍を期待している」とのこと。

 無茶をおっしゃる……。というか、そろそろ私の動画を研修に使うのやめて。

 

 実に嬉しそうなジンの声色に若干ほっとした物を感じながら、私は相槌もそこそこに電話を切った。

 

 真っ暗な部屋に首都高炎上のニュースだけがぼんやりと明るく響いている。

 長い沈黙が滞留する。

 私は口を開こうとしては閉じ、何度も息を吸ってようやく降谷さんに切り出すことができた。

 

───上層部へ抗議しに行きますか?わざと私たちを殺させようとしたと

───無駄だろうな。今回のことは単にNOCリストを奪われる不備があったためで、意図したことは何もないと言われるだけだ

 

 降谷さんの声色に無力感と絶望が滴っている。

 私はどう答えればいいのか、一瞬口をつぐまざるを得なかった。

 

───ですが……これは……あまりにも。他国のNOCの命も危険に晒してまで、こんなことをするとは…

 

 もしかしたら、他国も同意のうえで行われたウルフドッグ処分作戦かもしれないが。

 そこまでされているとは考えたくない。

 だが、ルパンの一味だという事を考えれば、それだけの敵を作っていることも事実。

 

 降谷さんは黙ったままだ。

 血のにじむほどこぶしを握り締めて、震えるように息を殺し、ただ俯いている。

 最悪の形で信念に裏切られた絶望はいかばかりか、私には想像することしかできない。

 

 なんにせよ、私たちの取れる手段は三つだろう。

 

───今回の件は不幸な事故だったと見て見ぬふりをし、公安に残りますか。ルパンの元で、自由という名の混沌へ浸りますか。復讐のため、組織という悪に身をやつしますか

 

 個人的にはルパンと共に歩むのが一番楽しかろうと思うのだが、まじめな降谷さんにはつらい選択にもなるだろう。

 降谷さんは「少し、考えさせてくれ」とだけ言って貝のように黙りこくってしまった。

 

 次はコナン君へ連絡を入れるべきだろう。

 少なくとも任務が入って水族館に行けなくなったことだけでも伝えなければなるまい。

 

 まだ真夜中で子供は寝ている時間だが、きっと赤井さんからの電話でたたき起こされているはずだ。

 

「コナン君、夜分遅くにごめんよ」

『……安室さん!?今僕も掛けようとおもってたところだよ!無事!?』

「僕は安全。もしかして経緯は赤井秀一から既に聞いているかな?」

『うん。だいたいはさっき電話があって確認したとこ。今安室さんはどこにいるの?』

「いつものセーフティハウスだよ。万が一の時はルパンのアジトに逃げ込もうと思っていたけど、その必要はなさそうだし」

 

 しかし、まさか本当にウルフドッグ公安説がガセネタ扱いされてしまうとは。

 それだけ組織に貢献してきたという事なので、まぁ公権力を使った暴走と公安に思われても仕方なかろうよ。

 殺すしか能のなかった私がただただ生き残る手段として殺してきて、その報いが返ってきたというだけに過ぎない。

 そんなことに降谷さんを巻き込んでしまったことだけが……心残りだ。

 

「それより、他のNOCの処分を命じられてしまってね。キールが危ない」

『!それじゃあ、つまり」

「そうだ。自動的に、赤井秀一の死亡偽装も危うくなった。僕の方でできる限りキール達は逃がそうと思うんだけど、赤井秀一の疑惑に関してはどうしようもない」

『……くそっ、NOCリストを盗んだって言う組織幹部は今どこに?』

「TVニュースの件と得ている情報は同じ、橋から落ちたあと消息不明だよ。今日行く予定だった東都水族館の近場で連絡が途切れているから、君には幹部…キュラソーの捜索をお願いしたい」

『っ、分かった。ところで、キュラソーが合流していないのにNOCリストとして組織に伝わっているのは、何らかの形でデータが送信されたからだよね。どんな形だったの?』

「メールだとジンは言っていた。キュラソーが確保できれば、送信履歴から追えるだろうね」

 

 コナン君はグッと言葉を飲み込んで、暫し黙ってから慎重に口を開いた。

 

『……絶対、早まらないでね』

「さて。一体何のことやら」

 

 私はわざとすっとぼけた。その言葉をもらうのは、私ではなく降谷さんだったからだ。

 電話越しにぐるぐると思考を高速回転させているだろうコナン君にくすりと笑えば、『何で笑ってんの!!』と怒られてしまった。

 彼と話していると何でもうまくいくような気がしてしまっていけない。

 

 それにしても、早まらないでね、か。

 降谷零が公安から切られかけていることは把握済みのようだ。

 FBIと公安が降谷零排斥を企んでいて、その情報を赤井秀一から得たのか。はたまた限られた情報から切り捨てを推理してのけたのか。

 

 どちらもあり得そうなのがコナン君の凄いところだ。

 

『まったく……じゃあ、安室さんも気を付けて』

「ああ。ありがとうコナン君」

 

 ぷつり、と通話が途切れる。

 

 電話を切れば、次は気は乗らないが狩りの時間だ。

 どんな選択をするにしろ、ひとまずキュラソー確保はコナン君に任せて私は夜逃げ準備の傍ら組織の任務を進めて異変を悟らせないようにしよう。

 

 キール、そしてあまり接点のない幹部諸君。

 きちんと逃がすから、どうか抵抗しないでくれ。

 

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