バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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純黒の悪夢③

 

 午前9時。東都水族館が開園時間ちょうどのこと。

 コナン君からの電話は思ったよりずっと早かった。

 

『安室さん!キュラソーを見つけた!』

「まだ東都水族館についたばかりじゃないかい!?早くない!?」

『水族館の駐車場にあるベンチに座ってたんだ。怪我をしてるし、服からガソリンの匂いがする。間違いないよ』

 

 爆速でキュラソー見つけるやんけ。いや、早く発見できるに越したことはないけれど。

 やはり主人公力は偉大だ……などとどうでもいいことに感動していれば、コナン君が不安げに言葉を続けた。

 

『でも様子がおかしいんだ。自分が何者なのかわかっていないみたいで……』

「記憶喪失?彼女が?……手荷物の方は?」

『そっちは回収済み。スマホを回収したからそっちは復元して中を解析する予定だよ』

「それはありがたい。また後でかけ直すから、進捗は教えてほしい」

『え、ちょっとま』

 

 遠慮なく一方的に切るが、悪しからず。

 現在こちらも仕事中なので、悠長に電話している時間が無かったりする。

 少なくともキュラソーの身柄とスマホの確保さえできればそれでいい。

 原作通りキュラソーが記憶喪失になっていることも私には追い風となる。これで、私達の本名が降谷零であることが組織に知られることはない。

 

 スマホを持つ手を降ろし、私は目の前で左肩から血を流す男へと酷薄にほほ笑んだ。

 

「では、申し訳ありませんが…アクアビット。死んでくれませんか?」

「F****!」

 

 アクアビットは悪態をついた。実に可愛らしい抵抗だ。

 

 やはり他国と公安は結託していたらしく、スタウトとリースリングは既に逃げ出していた。

 しかし、どうも突然決まったことなのか動きが遅く、私が動きだした段階でまだ二人は行方をくらまし切れていなかった。

 中途半端な逃走が私としては一番困る。

 

 補佐についたウォッカと共に追跡すること1時間で、手早くスタウトとリースリングの行方を捕らえることができてしまった。

 2人の乗った逃走中の装甲車をヘリで追跡し、頭上から私を投下。

 車のボンネットに乗った私が装甲車ごと真っ二つにするというダイナミック処刑方法で、結局二人の処刑は完了してしまったのだった。

 渡航時間の関係でどうしてもルパンの到着が間に合わなかったのも痛かった。

 

 この作戦考案はウォッカ、ヘリの操縦等々の補佐もウォッカが務めていた。

 ウォッカは補佐をさせたら世界一ってぐらい優秀な男なので、それも二人を逃がしきれなかった一因かもしれない。

 

 私もやらないのは不自然なので殺さざるを得ず。

 まったくもって嫌になる。公安にも裏切られ、もはや大義すら失せているというのに。

 

───すまない、お前には迷惑をかけてばかりだ。俺が…せめてもっと上層部とコンタクトを…

───違いますゼロ。私の行いがあなたを巻き込んでしまった。貴方の当初の計画通り、探り屋として働けるだけの技量が私にあればこんなことにはならなかった

 

 互いにかばい合う事のなんとむなしいことか。

 分かっているのだ。すべてが全て、こうなってはもう遅い。私たちは選択を迫られている。

 

 二人のNOCを切り裂いた時、自嘲めいた亀裂の如き笑みを浮かべる降谷さんを確認してしまって少々不安がぬぐいきれない今現在。

 もはや人を殺すことに何の躊躇も覚えなくなってしまった私と違い、降谷さんは大義の名目の下に悪を成していた正義の人。

 公安という足場を崩され、その不安と驚愕はいかばかりか。

 

 ……いけない。仕事中に考えることではなかったな。

 深く沈み込み、思考の海に浸る降谷さんの様子を少しだけ確認してから、私は軽く頭を振った。

 

 今目の前にいるアクアビットの方は攪乱なのか途中でスタウトとリースリングから別れ、別の方面からフェリーで逃げようとしていた。

 そこを港に先回りしたのが今さっき。

 港近くの倉庫街を追いかけっこすること30分、ネズミをいたぶる──と見せかけて時間を稼ぐ──作業にいそしんでいるが、それももう限界だ。

 

 切り傷だらけで肩で息をするアクアビットが、私の方を見て吠え掛からんばかりに叫んだ。

 

「貴様とて公安の犬だろう!ふざけるな!くそ、こんなところで殺されるわけには……」

「あははは。僕が…公安の犬?本当にそんなことを思っているんですか?」

 

 壁ドンしてつつと頬を鉄爪でなぞってやれば、一条の傷跡から赤い鮮血がにじみ出てきた。

 私がNOCだって信じてる奴いる?居ねーよなぁ!的なヤンキー所作である。

 地味にウォッカが聞いてるからそういう振りをされると困るのだ。私も全力で否定せざるを得ない。

 

 アクアビットは苦り切った顔で吐き捨てた。

 

「………悪魔め」

「そんなたいそうな呼ばれ方は初めてです」

 

 ちょいとばかり恥じらって、ぐっと顔に爪を喰い込ませた。

 黙るがよろし、というメッセージだ。

 これから事前に連絡を入れたルパンがお前を回収して無事送り届けてくれるので、準備が間に合った幸運をかみしめて舌を噛まないように黙るべし。

 

 酷い状況が続いて私もちょっとばかり闇落ち気味なのだ。

 やんのかワレぇ。っすぞオラぁ。チンピラマインドがむくむくと芽生えてくる。

 

 スタウトとリースリングの処刑からおよそ3時間。

 既にルパンは到着している。今度こそ助けられるはずだ。

 ルパンは「俺らが身体は入れ替えとくからよ、オメェはいつも通りやればいい」と言っていたが、果たしてどうすればいいのやら。

 

「では、さようならアクアビット」

「ッ、ぅおおおお!」

 

 命がけの最期の特攻だ。

 こうした苦し紛れの攻撃をされることはよくあるが、まだこれで怪我をしたことは一度も無い。

 インファイトで私に勝てると思うなよ。

 

 瞬間。

 異常な刺激臭が目と鼻を焼いた。

 痛みから反射的に目をつぶり、それでも一気に切り裂けば、声も無く男は倒れたようだった。

 

 唐辛子スプレーを浴びたような痛さだ。涙に滲む視界に、切り裂かれて血だまりに倒れ伏す男の死体が映る。

 死体は重要な臓器をずたずたに引き裂かれており、即死だったことがうかがえる。

 

 それを見て、私はほっと安堵の息をつきかけて既のところでのみ込んだ。

 この死体、さっきの男そのものだが何かがおかしい。

 きっとルパンが偽の死体とすり替えたのだろう。刺激スプレーも彼の仕業のはずだ。

 

 遠く離れていてもくしゃみが止まらないらしいウォッカがずるずるになりながらこっちへ向かってきた。

 

「ぶえっくしょん!!ったく、何だこの匂いは!?最後のすかしっぺ、ってやつか?スカンクじゃあるまいに、下手な真似しやがる!」

「対人用のスプレーが暴発したんですかね…ああ、持っていました。男の懐に市販の不審者撃退スプレーがあります」

「なんだそりゃ!ふざけやがって!」

 

 ウォッカは派手に死体を蹴とばした。

 この辺、ウォッカもジンの陰に隠れているが立派にヤバいやつなんだよな。

 

「ご苦労だったな、いつも通り完璧な仕事、お疲れさん」

「いえ。貴方のサポートがあってこそですよ。こちらこそいつもありがとうございます、ウォッカ」

「よせやい。オメェもすっかり出世しちまって。教育役の俺も鼻が高いってもんだ」

 

 と、凄惨な死体を前にして完全に気のいい兄ちゃんになれるウォッカの逸材感は半端ない。

 実際ウォッカには諜報やら立ち回りの基礎を教えてもらったが、これが無ければリアルに死んでいたからな。

 頭が上がらないとはこのことだ。

 

 そんなわけで。

 死体の処理は下っ端に任せ、私たちは一路日本へと戻ることにした。

 

 昼には日本に着くはずだ。

 

 そこで風見さんとコンタクトを取るその時こそが……私たちの選択を口にする時だろう。

 




次回、ルート決定
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