バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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処刑:スコッチ

 

 スコッチにNOCの疑いあり。

 

 その第一報が入ったのは私で、RUMから直で連絡が来た形だ。

 私もすっかり処刑役扱いされている。

 現在はちょうど近隣にいたライが身柄を追っているらしい。

 

 私と一緒に支部で打ち合わせ中だったジンが、それを聞いて邪悪な笑みを浮かべて私へ視線を向けた。

 

「ライがしくじったらテメェが始末しろ、バーボン」

「分かりました……が、荒事はともかく身柄の捜索は僕苦手ですよ?」

「そっちはライが捕捉してからでいい」

 

 隠れ潜むNOCを見つけるとか防諜系に全然適性のない私には無理な話だ。

 気配を消すのは獣の嗜みなので盗み聞きするぐらいなら可能だが、IT系やらコミュ力やらを駆使してとなると途端にぼろが出る。

 原作通りの探り屋業を諦めたのもその辺が理由だったりする。原作降谷零はすげぇよホント。

 

 直後、私の携帯に非通知で電話がかかってきた。

 どいつもこいつも非通知ばかりだが、名前伏せるの流行ってんのかこの組織。いや犯罪組織なんだから名前伏せるのは常識って言われたらそれまでなんだけど。

 「はい、バーボンです」と電話に出れば、通話先はスコッチを追跡中らしいライであった。

 

 同時にGPSのデータが携帯に転送されてくる。

 ライは前置きも何もなく主題のみをポンと話し始めた。

 

「今は進行方向の大通りを南下している。データは見えているか」

「ありがとうございます、ライ。今すぐ急行します」

「命令だからデータは送ったが……あらかじめ言っておく。お前の出る幕は無い、犬ころ」

 

 凍えるような低音でライが吐き捨てる。

 最近ライ、私に対する当たりが強いんだよな。

 処刑役ということでNOCとして警戒せざるを得ないのはわかるんだが、態度に出すのは逆効果だと思うんだがなぁ。

 それとも私が何か気に障ることでもしてしまったのだろうか。

 

 ひとまずはジンの目もある。突き放すような言い方になるが、 私もそれ相応に言い返した。

 

「それを決めるのは貴方ではない。貴方の出す結果だ」

「……チッ」

 

 スコッチのNOCバレに関しては事前に予兆は察知して、数日前から丹念な準備を重ねている。

 今後ライはFBIからのNOCとして組織を抜けることになるはずだ。

 となるとライがスコッチを始末した場合、NOCが裏切り者を処分したとみせかけて逃しているのではないか、と疑われかねない。

 

 ライ自体のNOCバレを阻止するという手もなくはないが……あまりとりたい手段ではない。

 この世界の主人公たるコナン君の味方が減るのはできる限り避けたいからな。

 

 つまり……取る手段は一つ。

 ライによるNOC逃しを阻止し、私がスコッチを始末したと見せかけて公安の手で保護する。

 

 電話の声を聴いていたらしいジンがフンと鼻を鳴らした。どうやらライの言いざまが気に障ったらしい。

 

「前言撤回だ。奴の面に泥を塗ってやれ、ウルフドッグ」

「了解」

 

 動きやすくなるからジンの命令はありがたいけど、私の目的とジンの目的って全くの別方向性なのよね。

 ジンよすまない、私もNOCなんだわ。

 

 

 と、そんな感じでアジトを出て現在地から予想逃走経路を先回りし、車で急行。

 RX-7で安全運転しつつ事故らない程度にスピードを出す。

 車の運転とか銃の取り扱いとか、そういう繊細な動きって苦手なんだよな。

 力任せこそ至高。でも最近は武術にも手を出したい、そういうどっちつかずなお年頃である。

 

 車を目についた1時間1000円の駐車場へと停める。

 歩いて目的地近くまで来たら、ひと気のない路地裏から爪を使ってビル屋上までロッククライミング。

 監視カメラにも映らない裏技だ。

 あとはじゃんじゃかビルづたいにジャンプしていくだけ。

 

 しばらく進めば、遠く寂れた廃ビルの屋上に二人の姿が見えてくる。

 おっと、ちょうど原作シーン、つまりはライこと赤井秀一が自分の正体をFBIと明かしたあたりだ。

 急がないと間に合わない。

 

 対象廃ビルの隣、このあたりでひときわ高いビジネスホテルへと駆け上り、鷹のように狙いを定める。

 音もなく大ジャンプ、そして落下。

 

 2人の姿がぐんぐんと近づく。

 ここだ。

 

「スコッ──」

 

 ライが何かを言いかけたが、今は無視。

 着地ざまにスコッチの胴を爪で思い切り薙ぎ払う。

 

 肉の抉れる音。血しぶきの臭い。

 特製の血糊に仕込まれた臓物が千切れ飛んで爪に引っかかる。

 あらかじめスコッチには公安特製の血袋を仕込んでおいてもらっているから、これらは全てダミーである。

 派手に飛び散った返り血がライの顔を赤く濡らした。

 

「────ッ、………」

 

 恐ろしいほどの無言が、沈黙が場を支配する。

 

 爪をひと振りすれば、血糊はきれいさっぱり振り払われた。

 本物の血が付いたときはこんなにきれいに払えないから、このあたりは要改善と思われる。

 一瞬焦ったような表情をしたスコッチも今は大人しく死体のふりに徹している。

 

 無言のままのライへの第一声に少しばかり悩んだが、ひとまず何か一言言わねば。

 

「……」

「裏切りには制裁をもって答える、でしたよね」

 

 逆だったかもしれねぇ──……。

 なんてボケをかましている場合ではない。ちょっとヘイトを稼ぎすぎた。

 びりびりと獲物を狙う猛禽類のような凄まじい殺気が私へと叩きつけられた。

 

 スコッチを殺されたと思って怒ったのだろうが、この場面で私に殺気を向けるとか迂闊すぎるぞ赤井秀一!

 組織幹部のふりをするならちゃんとしろ!

 

「……獲物を横取りとはさすがは犬、行儀が悪いことこの上ないな」

「そこは早い者勝ちという事で。恨みっこなしでお願いしますね」

 

 殺気の言い訳がするっと出るあたり、やっぱ頭の回る人は違う。

 ここで相手がジンだったりしたら言い訳する前に殺されてたかもしれないが、それはそれ。

 あんなに銃弾一発が軽い人間も中々いないからな。ミスした下っ端とかもどんどん昇天させてるし。

 ジンはもっと人材を大切にしようね。

 

 スコッチの死体(偽)を雑に肩に担いで持ち上げる。

 この肉体にかかれば成人男性一人程度軽いものだ。

 実際、この両爪だけで10キロはあるのだし、それに体を持っていかれず振り回す筋力がこの身体にはあるのだ。

 ライの視線が剃刀より鋭い。

 勘弁してくれ。私の方にも公安の立場を打ち明けられない理由があるんだ。

 

 ……と、立ちあがった瞬間、一瞬だけぐらりと目が回った。

 この身体の深層心理が何かにかき混ぜられている?降谷さんに何かあったのか?

 

 立ち止まったままの私にライが不審そうな様子を見せたので、不自然でない程度にゆるゆると肩のスコッチを担ぎ直す。

 目眩が結構ひどい。

 まるで心の中で誰かが暴れているみたいだ。

 

「では、僕はこの辺で失礼します。ジンへの報告がありますので」

「……ああ」

 

 私の今の信頼度なら「死体は適当に処分しといたぜ!」だけでジン相手でも全然誤魔化せるから楽なものだ。

 血糊の清掃と死体偽装はちょっと面倒くさいが、その辺は協力業者さんに現金払いを済ませてある。

 公安連中にも車内から電話して連絡済み。

 あとは合流地点でスコッチを受け渡すだけの簡単なお仕事だ。

 

 来た時と同じようにジャンプと巻き取り式フックでビルの合間を渡り、ライの姿が遠ざかっていく。

 担がれているスコッチは逡巡するような口調でぽつりぽつりと口を開いた。

 

「バーボン。知らなかったからしょうがないだろうが、あいつはFBIのNOCだったらしい」

「……そうですか」

「本当のことを話すべきじゃないか?」

「いえ。上はなるべく僕の所属を伏せろとの命でしたから」

 

 ここ最近「厳守しろ」と公安の方から言われた命令だ。

 悪名高きウルフドッグの本当の所属が公安ってのは外聞が悪すぎるからって理由が透けて見えるぜ!

 なんてテンション上げてる場合じゃないな。

 最悪公安側から切り捨てられかねない。

 私という戦力を裏社会に放流するくらいなら公安で首輪をつけておくべきだ、と言う意見が大多数だろうからそこまで心配はしていないが……。

 

 なんにせよ、警戒は必要だろう。

 

「……すまない。俺が不甲斐ないばかりに」

「貴方のせいではありませんよ景光。死亡偽装後も折を見て主人格の様子は報告しますから、貴方はしばらく休んでください」

「ありがとう。君のおかげでゼロも助かっているはずだ」

「そう、だといいのですが」

 

 腹回りから血を滴らせながらも、諸伏景光は柔らかく微笑んでいる。

 

 助けられてよかった。これで降谷さんも一安心だ。

 

 深層心理の底でなぜか暴れていたようだから、きっとようやく彼も目が覚めたのだろう。

 この後様子をうかがってみよう。

 

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