バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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閑話 ゼロの休日Re

 

 深層心理の中では相変わらず、私たちはある種の兄弟のように過ごしている。

 

 畳敷きの部屋に布団を敷いて、年中程よい温度の心理世界は安眠にはうってつけだ。

 寝るときの服装は私がだいたい普通の寝間着なのに対し、降谷さんはパンツ一丁の裸族となっている。

 

 宗派はそれぞれあれど、基本私たちの眠りは穏やかだ。

 深層心理はその性質上眠りやすいというのもあるのだろうが、安心感という意味でも実に優れている。

 特に、もこもこのナイトキャップを付けて惰眠を貪るのは至福と言っていい。

 

「朝だぞ!鯖折りされたいのか!!」

「うみゅ……眠い……あっ待って本当に鯖折りはやめいダダダダダダ!?」

 

 なお、朝はこのように降谷さんにパワー100%で起こされて、時折本当に鯖折りされかかっているのだが。

 

 アジトの一室、私達に与えられた個室は簡素なベッドがあるだけの実にシンプルなものだ。

 これをルパン達はそれぞれダーツボードで飾ったり、酒を持ち込んだりと各々自由にレイアウトを変えている。

 

 私たちはまだこのアジトに来たばかりなので、ほこりを払って使えるようにしただけだ。

 これからどんどん軽い家具を運び込んだり趣味のものを持ち込んだりする予定だ。

 

 とはいえ、ルパン一味は世界各地を股に掛けるため、このアジトも一か月後には引き払う予定となっているが。

 

 パンツ一丁の姿から───これは降谷さんの寝るときのスタイルに合わせた形だ───軽く動きやすいジャージに着替え、スニーカーを履いて紐を結び直す。

 日本にいた時と変わらない朝の日課、走り込みと筋トレの時間である。

 

 異国の街並みを感じながら軽く1時間半ほど走り込み、内心で雑談しながらこれからの予定を立てる。

 私は筋トレはあまり好きではないのだが、降谷さんの方はそうでもないらしく誰に言われずとも毎日の倣いとしているのだ。

 

───よく飽きませんね…筋トレなんて代り映えしないし、きついばっかりでとてもモチベーションが続きませんよ

───まあ、なんだ。俺はインフラ整備みたいな基盤づくりが好きなんだよ。俺のおかげで世の中が回ってる感がいいというか

 

 つまり、私というユーザーがいるから筋トレが苦ではないということらしい。

 根っからの奉仕体質と言えばいいのか、なんとまぁ一途な仕事人であることよ。

 

───奉仕体質というならお前の方こそそうだろうに。俺なんかのために何年犯罪者やってたんだよ

───なんかとはなんですか。僕の主人格に文句でもあるんですか?

───あるとも。たかが殺人1件でなよなよしく何年も奥で引きこもってめそめそする腰抜けだ。その間に友人まで失って、情けないことこの上ない

 

 降谷さんが吐き捨てる。

 そんな自己嫌悪が詰まった声を吹き飛ばすように、私はからからと笑った。

 

───だから僕がいるんじゃないですか。駄目な主人ほど支え甲斐があるというでしょう?

───駄目とはなんだ駄目とは。ケンカ売ってるのか

───なぜそこでプライドエベレストの片鱗を出してくるんですか。自信を失っているのかいないのかはっきりしてください

 

 などと和気あいあいと会話していれば、朝の筋トレセットも終わり、他のメンバーも起きてくる頃合いだ。

 

 一味が揃っている時は、私たちが一味分の朝食を作っている。

 割と個々で仕事をしていることも多いのだが、今日はメンバーが揃っているので私たちの出番である。

 なお、不二子さんはお友達のところの高級レストランで舌鼓を打っていることだろう。うらやましい限りである。

 

 キュラソーは外出中のようだ。仮であてがわれた部屋にも気配がない。

 

 さて。

 今日は純和食の日らしい。ぶりの照り焼きに味噌汁にたくあん、そして白米。

 最近は和食を作る機会も多いからか、元々美味しかった降谷さんの作る和食のクオリティが段違いに良くなってきている。

 

 バーカウンター隣に設えられた畳敷きの謎空間に正座し、目の前に並ぶ純和風の朝食に納得の表情で五エ門先生がうなずいた。

 どうやら出来上がりを待っていたらしい。

実に美しく背筋をただし、白米を口に運んでいる。

 

 次に現れたのはルパン三世だ。

 だらしないランニングシャツにパンツ姿のルパンが大あくびでカウンターに座り、ぶりの照り焼きにフォークを突き刺した。

 そして一口でガブリ。骨だけをきれいに残して瞬時に食べ終わる。どうやってんだそれ。

 

 次元さんも気が付いたらルパンの隣に座ってタバコを吸いながらぶりの照り焼きを酒と共に楽しんでいた。

 朝から飲むのか…。

 

 さて、こうして食べ終わったら皿洗いと、それが済んだら暇つぶしがてらルパンとポーカーのお時間だ。

 プレイヤーは主に降谷さん。

 幾度やってもルパンに勝てた試しがない。

 

 ルパンは普通にやっても強いが、袖の中から胸ポケットの中からとあらゆるところからカードが現れるので、イカサマを見抜くのも尋常ではなく難しいのだ。

 次元さんを誘ったものの、「ルパンとはやるだけ無駄だ」とすげなく断られた辺り、どれだけ過去に翻弄されたかが分かるというもの。

 

「はいロイヤルストレートフラッシュ~!」

「───絶対どこかでカードをすり替えただろルパン三世!」

「ふっふっふ、それは現行犯逮捕しなきゃ意味ないっての。降谷ちゃん、おわかりぃ?」

 

 「降谷ちゃんもがんばってはいるけどまだまだなんだよなぁ」なんて言ってルパンが手を伸ばし、降谷さんの袖からスペードのAをするりと取り出した。

 もはや言葉も無い降谷さんは木製のローテーブルをダンッと荒っぽくたたいた。

 おお、ルパン相手にイカサマ勝負など無理に決まっておろう……。

 

 そして、もう一度だ!と降谷さんはガウガウと嚙みつかんばかりの勢いで吠え立てた。

 幾度コテンパンにしてもこうして喰らいついてくる様がルパン三世としても楽しいらしく、1時間はこのような攻防が続いたのであった。

 

 

 10時ごろ。

 腹も落ち着いてきたら五エ門先生と軽い斬り合いだ。

 

「ゆくぞ」

「───はい」

 

 言葉少なにお互いの業を確認し合い、あいさつを交わすように刃を交える。

 私と日常的に打ち合うようになって、五エ門先生の技の鋭さは増すばかりだ。

 

 私が伸び悩んでいるというのに、十分以上に強い五エ門先生がどんどん強くなるとかどんなチート成長速度なんだ。

 どうやら、ここまで打ち合える相手というのが日ごろ周囲にいなかったらしく、毎日の鍛錬に張りが出ていいのだとか。

 私もどこかで自分の業を見直さねばなるまい。

 

 あの細腕から出たとは思えない膂力で体を押し返され、私は勢いに逆らわず後ろに下がって爪を構え直した。

 

「うむ。ここまで。……では次、来るといい」

 

 はて、どういう意味か……と問いかけそうになって、ようやくそれが降谷さんのことを指しているのだと気が付いた。

 降谷さんは刀を構える五エ門師匠の顔を見ながらぶんぶんと首を振った。

 

「───冗談でしょう、俺は無理ですよ!?こんな人外の立ち合い、死ぬに決まってるでしょう!」

「戦いのさなか、片方が気絶することもあるのだろう。そうして1人の時、やらなければやられるのはお主だ」

「ぐ……」

 

 降谷さんを残して私だけ気絶という事態はまれだとは思うが、五エ門師匠の言う通り可能性はゼロではない。

 その時降谷さん単体で生き残れる手段があったほうがいいに決まっている。

 

 狼狽える降谷さんを前に、五エ門師匠は部屋の隅に刀を立てかけた。

 

「素手で相手をしよう。お主の得意なボクシングで来い」

「ぐ……ああもう、殺さないでくださいよ!」

 

 バッキバキに固くなっている降谷さんを内側からそっと包み込み、私はゆったりと声をかけた。

 

───力を抜いて、相手をよく見て。相手の感覚をトレースするんです。そうすれば自ずと攻撃のタイミングも理解できる

───………無理だが

 

 降谷さんは私の言葉を一刀両断した。

 

 そんな言うほど無理か?無理か……。

 

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