バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】 作:ラムセス_
ルパンが不二子ちゃんを人質に取られて盗みを強要させられたらしい。
何回目?と思わず口から出そうになったが、なんとかお口のチャックは持ち堪えた模様。
今回の敵さんのご要望は「人魚の涙」とかいうビッグジュエルだとのこと。
人魚の涙は龍の鱗と対になる秘宝で、八尾比丘尼の残した財宝の在処への道を示すとされるもののようだ。
まさにこれ、ルパン三世アニメスペシャル・血の刻印の始まりに他ならない。
たしか顛末としては、残された財宝とは不老不死の八尾比丘尼の肉体そのものだった……みたいな、不老不死の秘宝を巡る物語だった気がする。
不老不死など1ミリも求めていない私はフーンぐらいの反応だったが、ルパンは特に気にすることもなかったようだ。
「っつーわけで行ってくるわ」と軽く手をピラピラと振って出て行こうとする。
興味も関心もないが、一応は私達もルパンの一味だ。
念のため「僕らはいかなくていいんですか?」と問い掛ければ、ルパンは振り向いて首を捻った。
「んー、正直フルメンバーで行くほどのもんでもねぇしな」
「楽そうな仕事なんですか?」
「オークション会場は下見したけどよ?警備はガラガラ、抜け道もたんまり。どうとでも料理できるってもんよ」
といっているにもかかわらず、五エ門先生と次元さんを連れて行くのだから警戒度はかなり高い。
まあ、おそらくは銭形警部の出現を警戒してのメンツだと思われるが。
私達が留守番なのは戦力的に十分だからというのも嘘じゃないのだろうが…それ以上に、仕事場が日本であるため日本警察と鉢合わせする可能性に気を遣っているのだろう。
たしかに、折り合いがつけられるほどまだ時は経っていない。
降谷さんなども気を遣われた事実を悟ってむすっとしているが、言い返す様子は無い。
なにせ私たちは不当に命を狙われた。
それは間違いない事実だ。
だがこの身が潔白というわけでもなければ、お礼参りにこれといった意味があるわけでもない。
実際お礼参りをするにしてもその方法が問題だ。
ただ上層部の不正を暴露しただけでは公安機能のマヒ・縮小を招いて悪をよりいっそう蔓延らせるだけ。
八方塞がりの状況に頭を悩ませている始末なのだ。
───あのゴミども、桜を背負ってるっていう責任を分かっていない奴らめ…
───まあまあ。大きな組織には癒着がつきもの。それは公安とて例外ではなかったということでしょう
降谷さんが地獄の底からの声みたいな低く怨念のこもったつぶやきを漏らした。
というか、ついに公安上層部のことゴミとか言い出したぞこの危険人物。
まあ個人的な恨みを思えば同意見だが、大量殺人犯の私が言えた義理じゃないのはご愛敬。
世の中の悪を後腐れなく清掃したと思えば多少の弁明の余地もあるってことで一つ。
どうにかして上だけ是正させるには……
例えば、黒羽快斗君を通して白馬君へコンタクトを取って、白馬君の御父上たる警視総監へ直談判するとか。
……だめだ。
息子の紹介ということを加味しても、どこの馬の骨とも知らない犯罪者に警視総監が面会を許すはずもない。
ただまぁ、場合によっては低い可能性に賭けるのもありかもしれないという程度か。
ルパンなら警視総監の私室に直接忍び込んで、なんて手も使えるかもしれないが、この件に関してあまりルパンの力を借りすぎるのも格好がつかない。
というか、きっと怒ってるだろうな、諸伏さん。
さわやかそうな外見だが、意外と根に持つタイプだからな彼。
「お言葉に甘えさせていただきます、ルパン。夜食を作って待ってますから、手早く終わらせてきてくださいね」
「おうおう。二人とも料理が美味くて助かるぜ」
ルパン三世は次元さんと五エ門先生を連れ、明るく笑って部屋を後にした。
静まり返った部屋で一人、私たちは思案する。
───まず第一声、ヒロになんて言えばいいと思う?
───初手土下座すみませんでしたが安牌でしょう。速度重視で、先行を取るのが大事です。手土産を加えるとなお良し
───やっぱそうか。速度、速度だな
探偵、日色ヒカルこと諸伏景光はICPOの銭形警部とともにとあるオークション会場へとやってきていた。
公人としての後ろ盾を持たない諸伏は、現在私費を投じて各国を飛び回る銭形警部に個人的についてきている形だ。
それを理解している銭形警部も、いろいろ気を使って諸伏をそばに置いていてくれている。
探偵としては歪な在り方の諸伏だが、それでも公安時代にためた貯金でなんとかついて行っているが、それもいつまで持つか。
加えて宮野明美もいる。
身一つで逃げてきたような彼女も、安全のため銭形警部のそばを離れるわけにはいかない。
どこか切羽詰まったような空気を醸し出してしまうのもまた仕方のない状況であった。
「盗品ばかりですね。あれは一昨年二月に盗難届が出されたもの、あっちのダイヤは先月宝石強盗で奪われたものです」
「覚えておるのか?」
オークション会場を慎重に覗き見ながら、「ええ、まぁ」と遠慮がちに頷けば、銭形警部は満足そうにうなずいた。
幼馴染である降谷が公安の資料の丸暗記に挑戦していた際、一緒に見て覚えていたのだ。
彼ほどの頭脳を持たない諸伏はそれをおおよそのこととしてしか思い出せないが、それでも十分すぎるぐらいには情報を得ることができた。
「それより、壁から出過ぎるなよ。奴らは後ろ暗いことをしている連中だ。もしルパンに宝石を盗まれれば取り戻すのになりふり構わん可能性が高いからな」
「というと……」
「派手に銃撃戦をするということだ」
「ここ日本ですよ!?奴ら(黒の組織)じゃあるまいに、そんな銃器いったいどこから…」
自分で言っていて白々しいにもほどがあった。
隣にいる銭形警部こそが、そうした銃撃戦を数多く乗り越えてきた経験者であり数々の巨悪と渡り合ってきた凄腕警部であったからだ。
しかし同時にまさか、と思う気持ちも本当であった。
諸伏のためらいを肯定し、かつゆったりと背中を押すような柔らかさで銭形警部が答える。
「日色君。簡単な話だ。君が思っとるより世の中悪は根深いというだけのな」
「……嫌になりますね」
ため息とともに吐き捨てる。
此度の一件といい、悪と不条理に対する嫌悪感は諸伏の中でぐつぐつと煮詰まるばかりだった。
諸伏にとって、降谷零はかけがえのない親友だ。
芯が強く、やや頑固で、けれど友達思い。
そんな彼が解離性同一性障害を発症したのは諸伏にとって意外ではあったが……同時に、自分がどれだけ彼のことを分かっていなかったのかを理解するきっかけとなった。
新たに生まれた降谷零の人格は、一言でいえば零の正反対ともいえる明るく社交的な性格だった。
細やかな気配りができて空気が読めて、誰にでも好かれる好青年。
また、どこか女性的な繊細さと穏やかさで他人を包み込む性質のある様子は、諸伏にとっても安心できて居心地のいいものであった。
人格同士の仲がいいのも特徴だろう。
誰に相談できるものでもないが、きっとお互いがお互いを支えあっている。
そんな風に好意的に諸伏は二人のことを解釈していた。
「しかしまぁ、今回の一件で君の友人の降谷零君が出てくるかは分からん。なにせ昨日の今日だ。まだほとぼりが冷めるまで奥に引っ込んでいる可能性は高い」
「そうですね。あいつは意外と慎重派ですから、俺も出てくるとは思ってません」
そんな中起こった、あの事件。
彼の小さな協力者、江戸川コナンに今回の顛末を聞いた時の思いを、果たしてどう言語化すべきだろうか。
くすぶるような、肌をチリチリと焦がす怒りが今も諸伏の心をさいなんでいる。
諸伏たちに何も言わずに日本を出て行った薄情者への怒りももちろんある。
しかしそれ以上に、誰よりも努力して、日本のためにと身を粉にして働いてきた親友を非情なやり方で亡き者にしようとしたことに、諸伏は誰よりも怒っていた。
こんなにも尽くしてきたのに手ひどく裏切られた、というある意味一方的な怒りだ。
形無きものに尽くすとはそういう意味だと分かっていたつもりだったが、あくまでつもりでしかなかったということを嫌というほど思い知ったような心地だった。
目の前で、宝石がふわりとテグスのようなものでルパンの手に落ちていく。
シャンデリアが狙撃され、どんどんと光を失っていく。
今まさに盗まれようとしているのに、出品者の氷室という男がやけに冷静にふるまっているのが目に映った。
偽物……あるいはルパンとグルか。わからないが、こいつも注意したほうがいいだろう。
兄譲りの冷静な判断力で諸伏が目を細めたその時。
そこまで考えたところで銭形警部が動いた。
「ルパンだ!行くぞ諸伏君!」
「ッ、はい!」
何はともあれルパンだ。
直接あの薄情者、降谷零から話を聞かなければ始まらないだろう。
降谷氏「贈り物…宝石花は定石として…あいつ酒はあんまり飲まないしな…」
バボ「家事をするんでしょう?米とか洗剤はどうでしょう」
降谷氏「お中元のノリはちょっと」