バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】 作:ラムセス_
ルパン達がいない間は黙々と2人でお詫びの菓子折りセットを作っていた。
生活必需品類をのっしのっしと詰め込み、時々隙間に宝石花を装飾代わりに押し込む、の繰り返しだ。
サイズもちょっとした引っ越し段ボールぐらいの大きさに成長したため、どうやって引き渡そうか……と思案していたところにルパン達は帰還した。
なお、私達は帰還早々次元さんに「札束で黙らせる気か。加減しろ馬鹿!」とハリセンで叩かれることとなった。
宝石花だけじゃなく宝石彫刻品をありったけ詰めていたのだが、それが良くなかったらしい。
せっかく綺麗に彫れたんだがなぁ。
「そいつは不二子ちゃんの伝手でまた好事家のブローチとかにする用に売れば良いっしょ。それより、オメーの親友のヒロ君から伝言預かってるぜ?」
どさっとソファに腰を下ろし、小さな宝石の削りカスの残る机を見下ろしながらルパンが応えた。
伝言の四文字にすぐさま食いついたのは降谷さんだ。
「───ヒロはなんて!?」
「『とりあえず、お前のせいなんだから早急に有り金よこせ』だとさ。中々苦労してそうだこと!」
「まさかのカツアゲ!?───よしわかった。どこの口座に振り込めば良い?10桁円を容赦なくぶちこんで良いんだな?」
文面からして相当おどろおどろしい怨念籠った言い方だったが、降谷さんにはそれが推しに貢ぐチャンスみたいに見えたようだった。
「ヒロは俺が責任持って養う!」とか言い出したので、私は真顔で降谷さんを拘束せざるを得なかった。
札束で頬を殴る男は嫌われるぞ!
ただでさえ何も言わずに日本を発ったことで好感度が地に落ちているのに、あげく札束ビンタなんかしようものなら絶交されかねない。
……え?宝石花入り菓子折りだって十分札束ビンタだって?
ちょっとよく聞こえませんね…耳鳴りのせいかな…。
ともあれ。
帰還したルパン達は無事お目当ての宝石である「人魚の涙」を手に入れることができたらしい。
しかし厄介なことに、依頼主…脅し主である藤堂とかいうヤクザ一派は既に何者かに殺害されていたとのこと。
しかも訳ありっぽい少女が一緒についてきて、弟子になりたいと声高らかに宣言する始末。
少女はどうやらドアの外でこちらの様子をしばらく伺っていたみたいだが、私たちの会話がひと段落したことを察して突入してきたのだ。
バタン!と今にも「たのもう!」と宣言しそうな勢いで扉を開けて、少女はルパン三世に駆け寄った。
「さっきも言いましたけど、あたし、麻紀っていいます!本気なんです!弟子にしてください!」
「うおっお前どうしてここに!ってか、だーかーらー!冗談じゃねぇよ!」
少女の身のこなしは完璧に素人さんで、とてもプロであるルパンの後を付けられるようには見えない。
いや……違うか。後を付けられているのは気付いていたんだろうが、下手に1人にするとどう動くかわからないから大人しく付けさせていた、と考えるべきか。
実はこの麻紀ちゃん、不老不死の体現たる少女を姉と慕う本作のキーキャラクターだ。
その血の不死性を狙う氷室という悪役に攫われた姉を奪還したいと願っているが故、泥棒を目指すのである。
そんな事情は知らないまでも、何か事情があるであろうことは理解しているルパンは、少女のことを心配しているのだろう。
紳士だなぁ。
「初めまして泥棒の仲間のみなさん。あ、貴方はオークションにはいませんでしたよね?」
「ああ、そうだよ。僕は安室透。よろしくね」
「おい普通に自己紹介してんじゃねーよ!俺は弟子は取らないの!!」
ルパンがプンスカ怒っている。
その裏側に少女・麻紀への心配が垣間見えて、私は思わず破顔した。
怪盗KIDといいルパン三世といい、どうして泥棒は皆こんなにハートフルなのだろう。
「ルパンさんの弟子になりたいみたいだけど、君はどうして彼の弟子になりたいんだい?」
「あたし、立派な泥棒になりたいんです!」
立派な泥棒って概念がもう既にバグなんだよなぁ。
中でキレた顔の降谷さんが「ガキは大人しく家に帰れ!」とか言ってため息をついている。
まぁ警察官だもんね…境遇を思うと可哀想だが、流石に見逃せない発言よな。
そこで次元さんが「ルパン、オメェ弟子ならもう安室がいるじゃねーか」と笑いながら付け加えた。
場を混沌とさせることが狙いの揶揄いだ。
露骨にうげっとした顔をしたルパンと、目を輝かせる麻紀ちゃん。
「ねえねえ先輩、私、立派な泥棒になれるとおもいますか!?泥棒になるにはどうすれば良いですか!?」
先輩ってなんだ先輩って!
まず立派な泥棒とかいうものが存在しないのだがどう答えれば正解なんだ?
「そうですねぇ、やっぱり体が資本の稼業ですから。君も鍛えてはいるみたいですが、もう少し体力気力ともに充実させるべきでしょうね」
「やっぱりそっかぁ……」
麻紀ちゃんはへなへなと萎れた。
フィジカルを鍛えるのはホントに大変かつ地道だからな。
一発逆転を狙う夢見がちな若い子にとっては望ましい回答ではない。
「例えば……」
「?」
しっ、と少女の首に軽く斬鉄爪を当てる。
「これくらいにはすぐに反応できるようになるべきでしょうね。死にたくなければ」
「………えっ、!?」
五エ門先生が奥の茶の間で眉間に皺を寄せ、「女子に傷をつけるか」と不機嫌そうにしている。
いや、寸止めだから大丈夫です、と軽く答えればそれ以上の追及はなかった。
その辺厳しいよね、五エ門先生。
何が何だかわからないのか、爪をどかしても麻紀ちゃんは一歩も動かず呆然と首をさするだけだ。
この調子じゃホントに死んじゃうからとても実戦には送り出せないぞ!?
一連の流れを見て、ルパンがため息をつきながら口を開いた。
「だからぁ、弟子は取らないっつってんの。お前もそんな様子じゃ話になんねーし」
「でも安室さんは弟子なんでしょ?」
「そいつは例外。ガキが泥棒だなんて冗談じゃねぇ。家へ帰んな!」
しっしっと追い払うルパンに、私も同意した。
私はやむを得ず犯罪者へと落ちた身だが、もしそうならない未来があったなら…降谷さんも私も間違いなくそちらを選ぶだろう。
「僕もルパンと同意見だ」
「えっ、どうしてですか!?私頑張ります!何でもやります!!」
「……犯罪者はなるものじゃなくて落ちるものだ。気づけばまっとうに生きられなくなっていたから─薄汚い泥棒なんて─しているのであって、何か志してなるものじゃないよ?」
すっと実に滑らかに降谷さんが口を挟んだ。
薄汚いっておま、口が悪いですよ降谷さん!
無論その言葉にすぐさま反応したのはルパンだ。
私を睨みつけてォオン?と凄んでいる。
「おいちょっと待てぃ!薄汚いってなんだァ!」
「ちょっと待ってください、今ピンポイントでゼロが口をはさみましたのでさっきのセリフは僕のものじゃないです!───別に間違ってないだろ。犯罪者なんてそんなもんだ」
「語弊ありすぎ!」
ルパンが抗議の声を上げている。
麻紀ちゃんはどうにも不服のようだが、真実なのだから仕方ない。
少女のむすっとした顔へと微笑みかけ、降谷さんが微笑みかける。
「俺からアドバイスだ。まっとうな職業に就き成功しているといわれている人間でも、そういった後ろ暗いところに手を染めていることもある」
「……ばれなければいいってことですか?」
「いや。ほかの人間を使うってことだ。自分は手を汚さず、本職に頼むのさ。世界中のあらゆる富豪・権力者だってしている賢いやり方だ」
なんとなく嫌そうな顔だ。
泥棒を志すにしてはどことなく夢見がちで健全な少女、といった雰囲気を纏う少女だ。
だからこそ泥棒なんてしてほしくないわけだが……。
ルパンも眉をへの字に曲げて、心底困った様子で諭すように言葉を続けた。
「こいつの言い方は悪いけどもよ、泥棒なんざ因果な商売だ。お嬢ちゃんだけじゃねぇ、誰にも薦められねえ仕事だってのはわかるな?」
「………うん」
「俺らに任せな。きちっと盗んでやるからよ」
憮然としながらも、こくり、と少女は頷いた。
そして私の知るのと同じこと、即ち麻紀ちゃんの身の上と八百比丘尼の血を引く姉の情報を教えてくれた。
次元さんはやや考え込み、ルパンは「不老不死」というつながりにニヤリと口角を上げた。
「藤堂のところにいたはずの姉がいなくなった…か。殺されてる可能性も高いが、死ぬような怪我も癒えるってんだからどうなってるやら」
「人魚……八百比丘尼。まさに不死のお宝ってわけだ」
次元さんが帽子を引き下げる。
方向性は決まった。
二つの宝石、即ち人魚の涙と竜の鱗の二つを手に入れ、その上で敵さんが大事に抱える現代の人魚の女を手に入れるのだ。
「よし、安室ちゃんと次元と五エ門は屋敷の方。
俺が宝石の相方、龍の鱗を取ってくる」
「ルパンは1人でいいのか」
「ああ。本命は屋敷の方なんでね。そっちに全力を集中させたい」
さて、行きますか。
ルパン、次元さん、五エ門先生、が各々立ち上がる。
それを不安げに見送る麻紀ちゃんの頭を優しく撫ぜて、私は五エ門先生の後に続いた。
マキちゃん「そういえば先輩の出てる薄い本見ました!すごく可憐で女らしくて!」
降谷さん「は????(全ギレ)」