バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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不死の血ののち

 

 あれから、私達は一週間は寝たきりだった。

 

 血が足りないことはもちろん、魂の疲弊で四肢を動かすのも億劫だった。

 傷口は美沙さんの血で塞がったものの、魂にかかった負担は想像を絶する。

 

 私の魂など粘土の如くグニグニに扱ったので、私が表に出ている間は全身が震えて立てない有様であった。

 また、抱え込んだ血が残り少なくなっても肥大化した魂は元には戻らず、私の魂はファットにデブデブしたまま。

 

 精神世界内での見た目こそ変わらないが、重さには反映されるのか深層心理内の屋敷の床が抜けるという事件が発生したほどだ。

 

 床を突き破り地面に落ちた私を抱えて布団に運ぼうとした降谷さんは、全力をつくしたものの動かすのを断念。

 「お前…重すぎだろ…100kgは軽く超えてるだろ」と汗だくで語るなどした。

 

 そのあと、よろよろと自力で床を強化した屋敷の特別区画へ這って移動。

 まったく踏んだり蹴ったりであった。

 

 その間、せっせと面倒を見てくれたのはキュラソーだった。

 

 私はお前に命を助けられたんだ。このぐらいはさせてくれ、とイケメン100%の顔で言う姿の頼もしいことよ。

 気にするほどのことでもないのに、義理堅い人だ。

 

 あと、私を置いて撤退せざるを得なかった次元さんと五エ門先生についてだが。

 心に苦いものが残ったのか、頻繁に見舞いに来ては土産の果物であったり盗ってきた財宝であったりをお供物みたいに布団の脇に置いていく奇行に走っている。

 

 私が影浦を始末したと聞いて、五エ門先生などは涙ながらにうんうん頷くなどした。

 どうやら弟子の成長に感動したらしい。ずるずると鼻を啜って男泣きしている。

 

 そんな感動することか…いや、弟子の師匠超えは一種の境地ではあるだろうが。

 しかし私の場合裏技というか、妖術じみた邪道で影浦を倒したので剣技はあんまり関係ないんだよな。

 

 と、私が微妙な顔をしているのがわかったのか、五エ門先生はすかさずフォローしてくれた。

 

「己を卑下するな。手段は何であれ最後に立って生きていた者が勝者となる。お主は誇っていい」

「……ありがとうございます、師匠」

 

 残りのルパンはと言うと。

 この一週間で美沙さんを連れて八百比丘尼の財宝を見にいったらしい。

 

 帰ってきたルパンは「供養してきたぜ」とだけ言った。

 きっと不死のままこの世にとどまらざるをえなかった八百比丘尼を、ようやく苦しみから解放してやったのだろう。

 本当にハートフルな泥棒だ。

 

 

 しんと静まり返る深層心理の屋敷にて。

 

 軽い倦怠感と痺れのみが残る降谷さんが、私の看病にと布団の横につきっきりで座っている。

 私が全力で守ったため、降谷さんの方はあの時に感じた激痛の後遺症と疲労のみで済んだらしい。

 

 深層心理内の武家屋敷に布団を敷き、すっかり寝込んだままの私を降谷さんがじっと覗き込んだ。

 

───俺は、何もできなかった

 

 痛みを堪えるような顔で降谷さんが震えている。

 ズボンを掴んだ拳に力が入り、破れんばかりに皺が寄る。

 

 私はそっと右手を彼の手の上に重ねた。

 まさに、その程度しか動くことができない現状がもどかしい。

 

───こんなの、適材適所ですよ。私が戦闘、あなたが頭脳労働。いつもそれでやっていけていたでしょう?

───だが、お前が死んでしまうかと思った

 

 揺れる声色が恐れの強さを映し出す。

 自分の言葉にさえ恐怖するように、降谷さんは身を震わせた。

 

 それは私のセリフだ。

 私の失策のせいで降谷さんを巻き添えにしてしまうかと思った。

 

───激痛の中、お前が俺の身体を包むのを感じた。俺を庇おうとしていたんだろ

───どちらかというと道連れにしようとしていたのかもしれませんよ

 

 あの時、私は終わりを悟って共に転生しようと降谷さんの魂を包み込んだ。

 それは今思えば道連れに違いない。

 

 しかし降谷さんは泣きそうな顔で笑顔を見せた。

 

───それでいい。お前となら。

 

 ………。

 おっとぉ……ちょっと不健康なまでの兄弟愛だぞ?

 

 血の繋がりも何もないのに兄弟愛とか言い切っちゃってる私も十分絆されているけれど。

 

───やめてください。僕、自分が死んでもあなたには生きていてほしい派ですので。その辺汲んで健全に生きてください

───断る。俺たちは2人で1人だ。心臓が半分になって生きていけるわけないだろ

───5年より前はどうやって生きてたんですかゼロは!?僕いなかったでしょうに!?

 

 降谷さんはしばし黙った後、少しだけ自嘲した

 切ないような薄く儚い笑みで私を一心に見つめている。

 

───なにか、いつも欠けたような毎日だった

───………っ

───孤独だった。たとえようもなく1人だった。家族の情に恋焦がれていたのかもしれない

 

 降谷さんが私の額に手を当てる。

 優しくも切ない表情で、過去を述懐するのだ。

 

 彼の人生に何があったか、彼は語らない。

 私がこの体の中に入る前、どのような経緯で日本を愛すようになったのか、警察官を志すようになったのか。

 

 どれほどの孤独を味わって生きてきたのか、何も知らないままだ。

 

 それになにより、軽々に立ち入っていい内容でもなかった。

 降谷さんは祈るように言葉を続ける。

 

───お前は、俺のたった1人の家族なんだ

 

 己が魂を預けるような真摯な言葉に、私は気づけば問いかけてしまっていた。

 

「僕なんかが家族で、いいんですか?」

 

 あえて肉体で口に出すのは、その言葉の確かさを証明したかったからか。

 少し乾いた口内がひりついている。

 

 降谷さんも私に倣い、肉体で以て返事を返した。

 

「───もちろんだ。血の繋がりだけが家族じゃないだろう?」

 

 いや、血の繋がりならこれ以上ないほどに深いが、と降谷さんが笑う。

 私達は肉体を同じくしているのだから、血のつながりという意味では肉親よりなお深いだろう。

 

「…そうですね。僕たちは肉体をわけた兄弟。お互いがお互いの不足を埋める、相棒ですからね」

 

 

 

 などと、しんみりと話をしていたら隣の部屋からコソコソとした話し声が聞こえてきた。

 

「フォックステイル×フォックステイル…!禁断の多重人格!淫靡な夜の褥……!」

「!?!?こら麻紀!こっち来なさい!!」

 

 はわわわわ、と赤らんで口元を押さえこちらを伺う麻紀ちゃん。

 そして青ざめてそれを取り押さえようとする美沙さんの2人だ。

 

 なに表紙のタイトルつけとるんじゃコラ。

 中学生が読むなんて大きいお友達も許しまへんで!!!

 

 私はにっこりと笑って魂をムチ状に伸ばし、部屋のドアの隙間から伸ばした。

 決死行で散々実戦使用しただけあって、すっかり慣れたものだ。

 

 そして麻紀ちゃんの頬を魂のムチでもってペェン!と盛大に一叩き。

 「ふべらっ!?」とうら若き乙女にあるまじき悲鳴をあげて麻紀ちゃんが倒れ込む。

 

 うむ。悪は滅びた。

 

「麻紀!?」

「聞こえてますからねそこの2人。本人の前でR-18妄想とは良い度胸だ」

 

 なお、それを聞いていた次元さん、五エ門先生、ルパンの反応は以下の通りである。

 

「あいつら本にまでなってんのか。顔のいい奴は苦労も多いってこったな」

「……不潔」

「まーまー五エ門、そう言うなって。人気者は有名税っつーの?そういうのがあるってわけ。つかさっきの何?安室ちゃんたち念力でも獲得した?」

 

 好き勝手言ってくれる。

 

 ざわざわと変なことで盛り上がるアジト内の喧騒は、買い出しに出かけていたキュラソーが帰ってくるまで続いたのであった。

 




・麻紀ちゃん
姉にしこたま叱られた。
ナマモノ系同人誌の扱いはあれほど慎重にしろと言ったでしょう!!

・帰宅したキュラソー
なにこの机の上にある狐の半獣人間の本?
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