バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】 作:ラムセス_
新たに見つかったひまわりを落札した鈴木次郎吉氏、飛行機事故に巻き込まれる!
そのようなニュースがTVとお茶の間を騒然とさせる本日。
これすなわち7枚のひまわりをめぐる大事件の幕開け、「業火の向日葵」に違いない。
この話はニューヨークにてオークションに出品されたゴッホのひまわりからはじまる。
これはルパンも報道を見て知っていたが「んー、別にいっか」とのことで食指が動かない様子だった。
後に起こる大事件を不可思議な勘で感じ取って、その後に盗んだ方が話題になるだろうと思っていたのかもしれない。
そうするとひまわりは無事鈴木次郎吉氏の元に舞い降り、氏の構想するレイクロック美術館、7枚のひまわり展覧会が現実のものとなる。
この発表は私も組織の病室のテレビで見ていた。
たしか美術館が崩落して、大惨事になるのではなかったか。
あの美術館は装飾として私達の彫刻も飾られてるので、私としてもできれば爆破しないで欲しいと願っているのだが。
というのも、鈴木次郎吉氏からかつての探偵・安室透名義に連絡があったのだ。
美術館の彫刻装飾を手がけて欲しいとかで、狐の彫刻師たる私に直接依頼をしてきた。
さすがは大財閥を回す男、鈴木次郎吉氏である。
私の正体のみならず連絡先まできっちり使い倒すとは。
こう言う先見の明があってこそ、財が財を産むということなのだろう。
もちろん、きちんと目の玉の飛び出るような報酬も受取済みだ。
ちょくちょく日本に通っては彫刻を彫ったり、大作をまとめて輸送したりと仕事には全力を尽くした。
草花の彫刻は私達の得意とするところ。
巨大な向日葵を中心とした繊細かつ力強い彫刻を幾つも彫り上げ、レイクロック美術館の各所に配置したとも。
これを美術館第二の売りとするらしく、世界の富裕層の間でも話題になっているようだ。
と、そのようなわけで私としてもレイクロック美術館は守り抜きたいところ。
本日ようやく一通りの検査が終わり、組織の病院から退院できたところなのだ。
結果が出るのは二週間後と言ったところか。
急ぎ身の回りを整える、ジンとウォッカが買ってきてくれた大ぶりのメロンを箱に詰めてセーフハウスの冷蔵庫にシュートすれば、とんぼがえりに日本へ向かう飛行機へGO。
ベルモットの土産のワインは昨晩美味しくいただいた。
相変わらずの憂い顔だが、私が話しかけると少しだけ顔が明るくなるのは幸いか。
件のジェット機墜落事故は数日前のことだ。
たしか次郎吉氏の乗ったジェット機に爆発物が仕掛けられていたのだったか。
飛行機を乗り継ぎ、日本へ降り立ってまず真っ先に向かったのは損保ジャパン日本興亜美術館だ。
レイクロック美術館に展示する予定のひまわりを所蔵する美術館だ。
ここまでの私の実に慌ただしい動きに、なんとなく不審そうな顔をしている。
───なんだ、ひまわりに興味があったのか?それともまたお得意の勘か?
───いえ。近頃KIDがひまわりを狙っているようなので、コナン君に会えないかなぁと
───それなら普通に毛利探偵事務所に会いに行けばいいだろう。何か他に……
そこまで言いかけたところでコナン君の後ろ姿が私たちの目に入った。
少年探偵団も一緒だ。
降谷さんがあんぐりと口を開けた。
───嘘だろ、どうしているんだ。やっぱお前の勘おかしくないか?
───ふっふっふ。僕の推理の結果です。八割当てずっぽうでしたが僕の頭脳も捨てたものではないですね
───八割当てずっぽうってほぼ勘だぞそれ
本当のことを容赦なく言う降谷さんである。
失敬な。これも私の頭脳のおかげというやつよ。
変装姿のまま、わざと地声でコナン君へと話しかける。
「やぁ、コナン君。元気かい?」
「ぶっ……どうして日本にいるの!?」
コナン君は盛大に吹き出して咳き込んだ。大袈裟だなぁ。
姿こそお淑やかな大和撫子、降谷さんの理想の子女なのだが、声は地声にしたためコナン君も一瞬で分かったようだ。
半目で私たちを睨みつけてくる。
「野次馬根性だよ。KIDがひまわりを狙うって聞いて見にきたんだ」
「……悪趣味。ルパンのおじさんはそう言うのには興味無いの?」
「無いって言ったら嘘になるけど、別に今は食指は動かないようだよ。僕も絵は管理が大変だから遠慮したいかな…」
「盗んだ後の管理ってあるんだね。すぐお金に換えたりしないんだ」
へえ、と意外そうにコナン君が喉を鳴らした。
盗人の実情なんて本人から直接聞く経験は無いだろうし、コナン君も興味深げだ。
「泥棒だって人間なんだから、トロフィーはしばらく手元に置いて眺めて満足したいだろう?」
「あーー…その間に傷んで金銭的価値が落ちたら意味がないってこと?」
「そうなるね。すぐに売っぱらってしまえと言うのは本当のことなんだけど、ルパンはどっちかと言うとロマン寄りの泥棒だから、売らないことも多いよ」
「なるほど。安室さんも?」
「うん。僕らもそこまで豪遊するタイプじゃないしね」
そこまで聞いて、コナン君は少しだけ思案した。
私たちならばKIDの考えていることがわかるかもと思ったのだろう。
恐る恐る、私の顔を窺うように切り出した。
「安室さんならわかる?今回のKIDの違和感について」
「違和感?」
聞いてみれば、人を傷つける盗み方であったり宝石以外を盗もうとしたり、変なところばかりなのだという。
私は原作映画のことは一旦忘れ、自らが率直に感じたことを告げた。
「まず、KIDが宝石以外を盗むのは変だね。誰かに頼まれたとか、別人が罪をなすりつけようとしているとかでない限り、彼は宝石以外に興味がない」
「どうしてそう言い切れるの?」
「彼はただ徒に宝石を狙ってるわけじゃない。裏の間で有名な「パンドラ」と言う宝石を狙っているのさ」
これについてはここ一ヶ月で私も当事者になってしまったのでよく知るところだ。
パンドラ狙いの賊に一週間で5度は襲撃されたし、迷惑この上ない。
不老不死の噂なら何でもいいらしいが、宝石が人に化けるわけがないだろうがバカタレめ。
「パンドラ……」
「まあ、どうして彼がパンドラを狙っているのかは知らないけどね」
コナン君は実に真剣な表情で考え込んでいる。
彼、怪盗KIDが盗みをする理由について考えたことがなかったのだろう。
と、そこで続々と刑事さん達がぞろぞろと一般客を掻き分けてやってきて「まだ無事だ!」「よかった!」などと口々に騒ぎ出した。
どうやらこの損保ジャパン日本興亜美術館にあるひまわりにKIDの予告状が出されたのだろう。
コナン君の姿を見つけた毛利さんが「ど、どうして坊主がここにいるんだよ!」と怒ったり館長さんらしき人物が困った顔をしていたり。
場は混沌としている。
刑事さん達の後ろにいた次郎吉氏が、そこで私と目が合いパチリと茶目っ気たっぷりにウインクした。
「おお、お主も来るがいい!KIDの防衛に役立つからな!」
「え、ええ!?」
次郎吉氏にずるずると引きずられ、私はなすすべなく衆目の前に晒されることとなった。
やめてくれ!もし頬をつねられたら私達の化けの皮は剥がれちゃうんだぞ!
不審そうな顔をした中森警部が訝しげに次郎吉氏へ疑問を投げかける。
「……この女性は?」
「ワシの知り合いでな、凄腕の格闘家じゃよ!」
あれよあれよという間に私はひまわりの警備の一員に加わることになってしまった。
いいけど、私の正体がバレたら中森警部以下警官達は全員裸に剥くからそのつもりで。
私の決意が伝わったのか、コナン君がナームーと冥福を祈るポーズをしている。
君も追ってくるんじゃないぞ。事務所NGがあるから裸には剥けないが、紐で括って電柱に繋いでやるからな。
まったく、一回この変装でレイクロック美術館の装飾彫刻をしていたのが仇となったか。
完璧に次郎吉氏にロックオンされていたとは。
コナン君と共に臨時で鈴木次郎吉氏の所有する金庫に案内され、私はうーんとうめいた。
コナン君がこそこそと内緒話をしてくる。
「どう、KIDなら突破してくるかな?」
「実際、金庫はあの程度じゃどうとでも調理できるよ。ルパンなら10秒かからないんじゃないかな」
「安室さんならどう攻略する?」
「僕?僕ならパパッと切っておしまいだよ」
「あー、そうだったね…」
まるで参考にならない意見で済まない…。
・レイクロック美術館
狐の彫刻師の作品が所狭しと並べられた荘厳な美術館。
さりげなく壁面や貯水槽、果てはお手洗いの蛇口にも彫刻が施されている。
ひまわり展示後は世界の彫刻の展示館にする予定らしい。