バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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業火の向日葵③

 

 レイクロック美術館、開館1日目の早朝。

 

 1日目は何が起きてもいいように園子さんの関係者やら職員やらをまとめて招待しているらしい。

 次郎吉さんらしい抜け目なさだ。

 

 ただ、園子さんを通じて無理やりその枠に捩じ込んできた海外好事家もたくさんいるとのこと。

 目的はひまわりもそうだが、私の手がけた彫刻が海外で話題になっているのが原因らしい。

 

 というのも、狐の彫刻師名義でこれだけの規模の彫刻展は初めてだ。

 海外において、私の作品は繊細ながら力強い作風と、他の誰もが再現不可能な薄く複雑過ぎる彫刻が特徴だとされている。

 

 特に薄く複雑な彫刻は斬鉄爪の通常ではあり得ないほどの切れ味と、私の斬鉄の腕を使っているが故のものだ。

 これはあまりの切れ味ゆえ、削っている間に本体が欠けてしまわないのも強みだったりする。

 

 特に草花彫刻の斬鉄爪以外には再現不可能な薄さに注目が集まっているらしく、現代のミケランジェロ、なんて過分な評価もいただいている。

 ありがたい限りだ。

 

 もちろん、その大元となる繊細ながら力強いデザインには降谷さんのデザインセンスが発揮されている。

 私は降谷さんの指示通りに彫るだけなのだから楽なものだ。

 

 

 さて、この時間帯だとテレピン油を宮台なつみがひまわりの造花へ流し込んでいる時分だろうか。

 

 今回の真犯人、宮台なつみの目的は贋作のひまわりを焼却処分することだ。

 なお、ここに集められたひまわりに贋作など存在しないものとする。

 

 意味が…分からない……。

 

 KIDに貰った宮台なつみの犯行計画データを思い返しながら、降谷さんが深層心理の内側でうんうん唸った。

 

───宮台なつみは本当に何を考えているんだ?自説に相当な自信でもあるのか?

───厄介オタクの解釈違い問題はそんな生やさしいものじゃないですよ。彼女の逆鱗に触れたんでしょうが、僕達に理解できるようなものじゃないと思いますよ

───まぁ、そうかもな

 

 真面目に考えている降谷さんが首を捻っている。

 本当に理解不能なのであれはそっとしておこう。

 

 KIDのデータは手元にあるから、あとは現行犯で捕まえてしまえばおしまいだ。

 

 遠く視界の向こう側で、宮台なつみが吸水ボトルに似た大容量ポリ容器に入れた大量のテレピン油をせっせと仕込んでいる。

 さすがに普通のテレピン油を使ったら臭すぎるからなのか、柑橘系テレピン油を撒いているようだ。

 オレンジの香りのようなものが通路に充満している。

 

 かつかつとわざとらしく靴音を響かせれば、ようやく気づいた宮台なつみが勢いよく振り返った。

 

「だれっ!?………む、室井さん?」

「分かっているかとは思いますが、建造物に火をつけるのは重罪ですよ」

 

 静かに言えば、「何の話ですか?」と彼女は後ろ手にテレピン油の瓶を隠した。

 そんなんで隠せるとは思っていないだろうから、隙をついて逃げるか、私を亡き者にしようと考えているのだろう。

 

「ひまわりの装飾を提案したのは貴方で……その上で、今の行動。警察が貴方を引っ張るのには十分すぎますね」

「………」

 

激しく脳内で考えを巡らせているようだ。

 これ以上言い募ったところで一旦警察に捕まるのは避けようがない。

 そうすれば展覧会は終わり、5枚目と2枚目のひまわりを処分する機会は永遠に失われる。

 

 宮台なつみは小ぶりのバタフライナイフを取り出し、私に向かって突きつけた。

 

「動かないで!私はこんなところで諦めるわけにはいかないの!」

 

 そこで異変を監視カメラ越しに気がついたらしく、コントロールルームから次郎吉氏やコナン君たちが駆けつけてきた。

 「何をしておる!」と次郎吉氏が一喝したのに驚いたか、宮台なつみははっと彼らの方に振り返った。

 

 私から視線を逸らすとは、これだから素人さんは楽でいい。

 

 とん、と首に手刀を落として宮台なつみを無力化する。

 これ即ちいわゆる首トンである。

 本当に非殺傷制圧技術として優秀なんだよね、これ。

 

 気を失った宮台なつみを抱き抱え、わいわいと騒ぐ中森警部に事情を説明。

 

 そして次郎吉氏のみにそっと怪盗KIDから貰った宮台なつみの犯行計画データを渡す。

 次郎吉氏は「あやつに借りを作ってしまったわい」と苦々しい顔を隠さない。

 

 めざといコナン君が素早く駆け寄ってきて、渡したデータを覗き込もうと四苦八苦した。

 

「いつから気付いてたの!?それにいつ怪盗KIDにコンタクト取ったの!?」

「うん、まぁ成り行きでね。今回コナン君は随分受動的だったね。なんか考え事?調子悪い?」

「!!!!ち、違、べつに僕イギリス旅行なんて考えてなくて…」

 

 語るに落ちた名探偵が、ばつの悪そうに視線を逸らした。

 どうやら今回、イギリス旅行に行けることが気になり過ぎて上の空だったらしい。

 

 どうも、最近富裕層のマダムからお誘いを受けたとのこと。

 

 ふーん、へー、と私は野次馬丸出しでにやにやと口角を上げた。

 

 間違いなく芝の女王編だ。ついに蘭ちゃんと工藤君が恋仲になるのだろう。

 転生者として見逃せない一大イベントだ。

 

「名義を偽っての入国なら任せてね。ちゃんと手配するから!」

「名義?………あ」

 

 なんと、浮かれるあまりコナン名義でのパスポートなど存在しないことに今気づいたらしい。

 可哀想に…頭までホームズに染まりすぎてなにも考えが回っていないと見える。

 青ざめてこちらを見るコナン君に、私は両肩を叩いて笑いかけた。

 

「安心して、日程を言ってくれればそれまでにパスポートも用意するよ」

「ホント!?っしゃあ!」

「うんうん、せいぜい楽しんでくるといい。本物のベイカーストリートとか行くつもりなんだろう?」

「うん!やっぱホームズゆかりの地は、じゃない、ありがとうあむ、室井さん!!」

 

 一瞬早口でホームズ語りをマシンガントークしかけたが、すんでのところで思いとどまってコナン君は私への感謝を口にした。

 ぱあっとこれまで見たことないくらい頬が緩み、目が爛々と輝いている。

 

 頑張りたまえよ青少年。

 あと、偽造パスポートの使用は犯罪だからその辺きっちり理解して使ってね。

 




次回、金田一少年回。
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