バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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執筆速度が上がってきたので投稿する
風呂祈祷→執筆コンボがはかどる。


番外 オペラ座館殺人事件②

 

 その夜。

 作り置きも多いとはいえ、比較的クラシックで正統派な洋食が出た夕食中のこと。

 

 突然、女生徒の絶叫が館中に響き渡った。

 

 外は土砂降りの雨と轟々と風の吹く中、学生達が次々と駆け足で声の元を探しに出ていく。

 顧問の美人先生も眉間に皺を寄せ、真剣な顔で捜索に加わった。

 ついでホテルオーナーも慌ててその後を追う。

 

 私はもごもごとディナーのムニエルを頬張りながら、その後ろ姿を見送った。

 降谷さんがややあってから私に声をかけてくる。

 

───行かなくて良いのか?

───向かい端の人、警視庁の刑事さんですよね。下手に介入すると藪蛇になりかねません。大きな事件ではない可能性もありますし、事態が把握できるまでは様子見でいこうかと

───そうか。ならオレもひとまず様子見するか

 

 降谷さんは私の言葉に納得したのか、静観の構えに入った。

 

 この場面、動きさえしなければひとまず完璧なアリバイが完成する。

 剣持警部、名も知らぬお医者様、そして私と無関係の3人がそれぞれのアリバイを証明し合えるからだ。

 今後動きやすくなるし、金田一君も推理に変なノイズが入らなくて助かるだろう。

 

 15分、そして20分と経って、それでも帰ってこない高校生達に剣持警部は警察官としてだんだん心配になってきたらしい。

 

 「オレはちょっと様子見てくる」と言って席を立ったので、私も「ご一緒します。昼間僕も彼らとは話をした仲ですので」と言ってひっついていくこととする。

 女性が怪しげな状況で行動することに一瞬剣持警部は嫌な顔をした。

 が、「では私も。怪我をしていたら私が治療できますので」と医者の方──結城というらしい──も立ち上がった。

 

 こうなると女性一人残していくのも気が引けるらしく、剣持警部は「仕方ねぇな…」と頭をガシガシかいて諦めたようだった。

 

 一通り夜のオペラ座館をぐるりと一周し、人の気配の集まる演劇舞台へゾロゾロと男女3人……違うな。むさ苦しく男3人歩いていく。

 

 開けっ放しの演劇舞台の門をくぐり。

 そこで目にしたのは。

 

「こ、こいつは…!」

 

 女生徒の一人が、100キロはあろうかという天井の照明器具に押しつぶされ、血を流して倒れていたのだ。

 絶句した剣持警部が、目の前に広がる凄惨な悲劇に喉を絞められたような声を出した。

 

 すかさず結城さんが「救命処置に入るからどきましょうね」とのんびり言って、しかしテキパキとした動きで立ち尽くす生徒達の間に割って入る。

 

 だがあれでは助かるまい。

 多くの死体を作り上げてきた感性が、あれはすでに死者なのだと告げている。

 

 舞台上では被害者とは別に女生徒が1人寝かされている。

 きっと死体を見たショックで気を失った美雪ちゃんだろう。

 

 気の毒そうに降谷さんが舞台上へ進み出る。

 そこでぐるりと辺りを見渡し、足元に落ちたワイヤーが鋭利な刃物によって切断されていることに気付いたらしい。

 

 沈鬱そうに目を伏せて、降谷さんは深層心理内で独りごちた。

 

───高校生が殺されただと?……あまり先入観で物を言うのは良いことではないが、このメンツだと犯人は同じ高校生の確率が高いのが辛いところだな

───ですね。偶然居合わせただけの剣持警部と医師の結城さんは動機が弱い。教師は1人だけ。あとは同じ部の生徒……

 

 となると、どうしても生徒に疑いが向かざるを得ない。

 原作にてミスリード役となった歌月とかいう男──犯人が顔まで包帯ぐるぐる巻きに変装した姿だ──の情報がまだ出ていない以上、その結論は仕方ないだろう。

 

 空気は完全にブルー。

 沈鬱そうにため息を吐く剣持警部に、私は何となく申し訳なくなってそっと警部に話しかけた。

 降谷さんも未来ある若者が殺人に手を染めたことを深く悲しんでいるようだし、多少は動かねば心が重くなる一方だ。

 

「すみません」

「なんだ!今オレは忙しいんだ、ったく休暇だってのに殺人だなんて、おちおち食事もしてられねえ。あー、なんだ。後にしてくれ」

「そう言わずに。僕、少し気づいたんですけど」

「あぁ?何か見たのか?」

 

 剣持警部は少し不機嫌そうに眉間を指で揉んでいる。

 寝られていないのかもしれない。

 考えてみれば、警視庁捜査一課の警部と来ればそりゃあ寝る暇もないのは当然だ。

 

 なにせコナンと金田一とルパンがいるのだ。

 目も眩むような巨悪から小さな殺人事件まで、事件はよりどりみどり。

 佐藤刑事も高木刑事も毎日の事件に目の下の隈は濃くなるばかりだった。

 

 私はややいたわるように声を柔らかくして言葉を続けた。

 

「できればなのですが、音響室にあるテープを調べてもらえませんか?」

「何のためにだよ。それが事件とどう関係があるってんだ」

「さっき僕たちが聞いた悲鳴、なんか音がガサついていたように聞こえたので。もしかしたらテープの録音なんじゃないかと思いまして」

「録音?一体何のために?」

「アリバイ作りじゃないですか?僕ら、一緒に食事をしてたんですし」

「………わぁったよ、少し見てみる」

 

 牧歌的な会話に思わずにっこりする。

 金田一君やコナン君なら、私が音響室のテープ、まで言った瞬間「そうか!なら俺たちの中に犯人がいるってことになる!」と結論まで辿り着くだろうからな。

 

 看病中の金田一君へと剣持警部が声をかけにいくのを尻目に、私ははぁと軽いため息をついた。

 

 ちなみにだが、ここまでの会話は犯人たる高校生、有森裕二からはわざと少し離れたところでしている。

 彼に聞かれると面倒なことになる恐れがあるからな。

 

 降谷さんがふと気付いたように首を傾げた。

 

───そういえば、この後の警察の事情聴取はどうする気だ?面倒なことになるぞ

───それについては天候が回復したら素潜りで本土まで戻ろうかと

───!?!?どれだけ距離があると思ってるんだ!?陸まで8キロは……ふむ。いや、冷静に考えたらいけそうだな

───でしょう?

 

 もちろん普通に泳いでたらそのまま遭難するに決まってる距離だ。

 しかし、最近肥大化の一途を辿る魂で魚状に体を包んで動かせば、海の中でも最大で時速40kmは出ることは確認済み。

 無論息継ぎはできないので時々顔を出す必要はあるが……それでも破格の水泳性能と言えるだろう。

 魂で包んでいる限り服も濡れないし、良いことづくめだ。

 

 人間じゃねーって?

 大丈夫大丈夫。ルパンだって深海4000m地点で素潜りしてガリガリに痩せる程度で済んだんだから、このぐらい軽い軽い。

 ……冷静に考えると何で生きてるんだルパンは。

 私でも死ぬぞそのシチュエーションは。

 

 

 さて、その後は歌月と名乗る怪しげな男の部屋の見分だ。

 無論、そこは原作通りズタズタに荒らされて、壁に「地獄の業火に焼かれよ」といたずら書きがされていたのだが。

 

 開いたままの窓から雨が吹き込み、切り裂かれた壁紙に染み込んで酷い有様だ。

 おお……修理にいくらかかるのか考えるだけで恐ろしい。

 

 私は怯える生徒達の後ろかららくがきを眺めてぼんやりと嵐の外を見やった。

 

 地獄の業火に焼かれよ。

 

 私は復讐を咎めはしないが、死を齎すからには報復の連鎖には責任を持つべきという論者だ。

 報復の連鎖は治安を乱す。

 責任とってきっちり死ぬか、報復の目を根絶やしにするか、何者にも代えられぬ暴力で以てそれを鎮圧するか。

 

 そのどれかができないのなら、人は殺すべきではない。

 

 ぺろりと己の唇を舌でなぞる。

 血の味はしなかったが、この空と同じぐらい陰鬱な磯の香りは強く残った。

 

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