バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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ホームズの黙示録①

 

 イギリス旅行当日。

 

 私は全身に変装用のラバーと化粧を仕込んだ暑苦しい姿で毛利探偵事務所前へ来ていた。

 

 江戸川文代はふくよかな女性だ。

 工藤夫人の変装である以上身長は私たちよりも低く、そのため厚底ブーツを履いているように偽装して身長を誤魔化した。

 

 それでも若干高めに見えるだろうが、かなり前に一回あったきりの人物の身長だ。

 そうそう違和感を覚えることはないだろう。

 

 チャイムを鳴らせば、すぐに毛利探偵が事務所のドアを開けて歓迎してくれた。

 

 春とはいえ上半身は丸々すっぽり覆うような変装だ。

 暑くて仕方がない。

 

 バッグの中にミネラルウォーターのボトルをしまいながら、毛利探偵に「あらまぁお久しぶりですわね!今回はコナンちゃんを連れてくださってありがとうございます」などと挨拶をする。

 江戸川文代というキャラの勢いが苦手なのか、毛利探偵はたじたじだった。

 

 コナン君に事前に聞いたキャラ通りだが、やはりアニメで実際に江戸川文代を見ていたのが大きい。

 自然に、かつ一度会ったであろう人物達にも違和感を抱かせない変装に仕上げることができた。

 

「大丈夫?安室さん、母さんとは体格全然違うのに…」

「もし本物と比べられたら全然大丈夫じゃないけど、この程度の薄い関係性の人たちなら大丈夫だよ」

 

 ただし、観察眼の鋭いコナン君からしたらやはり違和感は拭い切れないらしい。

 そりゃ誤魔化しているとはいえ20cm近く身長が違うしな。無理よりの無理という奴だ。

 降谷さんが若干苦笑いして私のふくよかな腹──ラバー製だ──を見つめる。

 

───やっぱ無理がないか、この変装。ルパンなら身長差をものともせずに変装できるだろうが

───あれ、もうほぼ認識操作のレベルですよね。超能力ですよ超能力。

 

 なんとかぎこちない空気を連れて空港へ向かい、一旦毛利探偵達と別れる。

 

 実は私もファーストクラスで別の席を取得していて、空では別の席でまったりする予定だ。

 ファーストクラスなのは変装したままだからなるべく事故で変装が剥げるのを防ぐため、広い椅子に座りたいからだ。

 

 ああ、すっかりファーストクラスが体に染み付いて、金持ち感覚になってしまった。

 

 実際、私の口座残高からすればファーストクラスなんて一生乗り続けても安いものだ。

 

 

 

 

 と、そんな感じで長時間の空の旅はつつがなく終わり、毛利御一行とお別れしたコナン君がルンルンとした足取りで近づいてきた。

 

 後ろから毛利探偵が「夜にあの金持ちオバサンとホテルで落ち合うのを忘れんじゃねぇぞ!」と声をかけられ、「はぁーい!」とコナン君が返事を返している。

 こうやって見るとただの小学生さながらだ。

 

「ねえっ、ねえっ!まずどこ行く!?大英博物館!?シャーロックホームズミュージアム?」

「どこでもご随意に、名探偵君。僕はルパンと仕事でよく来るから、君の好きなルートで回ると良いよ」

「やったー♡」

 

 上機嫌過ぎてセリフにハートすら付いているように聞こえる。

 天井知らずにテンションが上がっていくな、この子。

 今からこの調子だとホームズ博物館に着いた頃には爆発するんじゃなかろうか。

 

 ひとまず、初めは今回の目玉であるシャーロックホームズミュージアムに行くことに決めたらしい。

 

 地図もパンフレットもすでに頭の中に入っているのか、こっち!の一言で私は引きずられるようにホームズ博物館へ足を運ぶことになった。

 

 シャーロックホームズミュージアムには、主張し過ぎないこじんまりとした緑の看板がかけられていた。

 しかし中に入ると圧巻、ヴィクトリア時代のインテリアが所狭しと並び、美しい小道具達と雑然としたどことない生活感が人々を魅了する。

 

 今ふと思ったが、次の彫刻の題材でヴィクトリア朝系家具も楽しいかもしれない。

 木という削りやすい素材、ヴィクトリア朝の使い古された題材と注目を集めるのは難しいかもしれないが……廉価におしゃれな家具を市場に卸すには良いかもしれない。

 

 持ってきたカメラをすっと取り出し、パシャパシャと資料がてら撮影していく。

 

 コナン君はといえば。

 朝から人の賑わいはあったが、その中をかき分けふにゃふにゃの頬でふらふらと進んでいく。

 もはや表情も戻らないらしい。この世の天国みたいな顔をしておられる。

 

───彼、本当にホームズが好きなんだな。

───そりゃそうでしょう。前に迂闊にもホームズの話を振ったら、30分はマシンガントークが止まらなくなった子ですからね…

───どうも蘭さんの話を聞くに同級生の友達が少なそうなのは、それもあったかもしれないな…というか、あのホームズトークを年中滝のように浴びせられてよく恋愛関係に至れたな、蘭さんは

 

 などと他人の恋をネタに馬に蹴られそうな話をしていると、小さな子供がスタッフさんに食ってかかっているのが視界の端に映った。

 

 小さな子供…芝の女王の弟、アポロ・グラス君だ。

 順調に原作イベントを踏むことができたらしい。

 しばらくコナン君はアポロ君と話し込んで、その後こちらへてててと走り寄ってきた。

 

 ぴらり、と見せてもらったのは謎の暗号文だ。

 

 轟く鐘の音で私は目を覚ます。

 私は城に住む鼻の長い魔法使い。

 腹ごしらえは死体のように冷たくなったゆで玉子。

 全てを終わらせろ。白い背中を二本の剣で貫いて。

 

 私ははたしてどの程度、先に情報を出すべきだろうか。

 この事件にはかの工藤優作氏も関わっている。あまり先走れば私の発言に違和感を持たれかねない。

 

 コナン君が静謐な声で言って、暗号文から顔を上げた。

 

「これをロンドン警視庁(スコットランドヤード)へ持っていくって約束したんだ。少し寄り道になるけど、いいかな安室さん?」

「もちろん。助けを求める声を無碍にしないのがホームズの弟子なんだろうさ」

「!?まさか聞いてたの?」

「あの少年にホームズの弟子と自称していたのは聞こえたよ。君にしては随分謙虚じゃないか、平成のホームズ君」

 

 恥ずかしそうにコナン君が黙り込む。

 事件は始まったばかりだ。

 

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