バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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ホームズの黙示録②

 

 ホームズの黙示録。

 

 この事件は犯人の思惑さえ読み解いてしまえば意外と簡単な作りになっている。

 

 自己顕示欲の強い犯人が多くの暗号を街にばら撒き、その凄惨な犯行を市民に見せつけようとしている、みたいな立て付けだ。

 その犯行とは、芝の女王ミネルバ・グラスの母親殺害だ。

 

 具体的には爆弾の入ったぬいぐるみを送りつけたそうだが……。

 

 だから全てをすっ飛ばしてウィンブルドン会場に乗り込むのが一番、という気がしないでもない。

 犯人は自分の獲物が爆死するのを眺めるため、ウィンブルドン会場に必ず現れる。

 そこで適当にとっ捕まえて始末してしまえばいい。

 

 精神的方向性は「テロはダメ、絶対」である。

 

 この世界、なんなら薬物よりよっぽど頻度が高いからな……爆発物テロ。

 畑で火薬でも穫れるんか?と疑問を覚えざるを得ない。

 

 気をつけるべきは工藤夫妻とコナン君自身。

 あまり不自然に暗号を飛ばし過ぎればコナン君には不審がられる。

 また変装の関係上、ロンドンに来ている工藤夫妻を下手に刺激する行動はNGとなる。

 

 私は真剣な顔で暗号文を覗き込むコナン君をチラッと後目にとらえた。

 

 ちなみに、現在私はレンタカーを借りて運転中である。

 暗号の関係で結構色々な場所を巡ることになるので、あった方が良かろうと考えたからだ。

 ちょっといかつい大型車に荷物を積んで、ついでにルパン達へのお土産も少々購入予定なり。

 

「子供達に配っているということは、初めは子供でも読み解ける要素のある謎ってことだろうね」

「確かにな……くそ、子供を巻き込んで何のつもりだ?」

「そりゃ、自分のやったことを見てもらいたいんじゃないか?観客は多ければ多いほど良い、というありふれた理屈さ」

 

 江戸川文代姿で肩をすくめる。

 ラバーの顎肉がなんだか若干邪魔くさい。

 

「暗号も普通に考えれば城と、食品関係だけど…安室さんは何か思いつくところはある?よくロンドンには来るんでしょう?」

「うーん……そうだなぁ。思うに、建物の形じゃないかな。ロンドンには不思議な形をした建物がたくさんあるし、子供向けの暗号ならそこにひっかけててもおかしくない」

「建物?」

 

 コナン君が首を傾げた。こればっかりは実際にロンドンを巡ってみないとピンとこないかもしれないな。

 

「卵形の建物と、立てたピクルス型の建物とがロンドン市内にはあるってことさ」

「っ!なら、鐘の音はビッグベンから開始しろって意味か!城に住む鼻の長い魔法使いはエレファント&キャッスル駅!」

 

 おお、立て板に水を流すような推理の光だ。

 さすがは工藤新一。少しわかってしまえば全てがわかってしまう。

 

 しかし、これだけいっぺんに真実を手にしたというのに、コナン君の様子はどこか不満げだ。

 じとっとこちらをみてぶっすりと口を引き結んでいる。

 

「……前から思ってたんだけど。安室さんさぁ、僕が解く前に、とっくに全部謎が解けてるよね?」

「ななななんのことかな!?」

 

 語るに落ちたみたいなひっくり返った声が出てしまった。なぜバレたし。

 

「毎回僕にヒント出すみたいにちょっとずつ情報渡されたらわかるよそりゃ。なんというか、本当に凄いよね。格闘もできて一目で謎を解くことができてさぁ…」

「そ、そんなことないよ?」

「けど、いずれ俺だってあんたを超えてみせるから。見てろよ」

 

 青少年の甘くほろ苦い嫉妬の味が言葉に滲んでいる。

 苦々しげに俯いて、しかし瞳だけはこちらを爛々と見据えている。

 まったくもって主人公。輝ける光の魔人であることよ。

 

───しかし、思えばお前の推理も随分早く的確だな。推理ゲームやらはそこまで得意じゃないだろうに、やはり実際の事件でしか勘は働かないということか?

───うーん、似たようなものですかね。というか、僕の推理って推理ではなくて。勘で分かった事実にそれらしい理論を付け加えてるだけですので

───そりゃあどんな名探偵でも敵うはずがないな。で、その勘は俺にいつ実装されるんだ?

───そこに無ければ無いですね

 

 降谷さんが深層心理でハンモックをぶらぶら揺らしながら過去の事件資料を読んでいる。

 で、顔を上げて適当なぐだぐだ会話。

 

 ちゃんと隣に仮設の椰子の木と海スペースが作ってあって、気分は南国リゾートらしい。

 フルーツの盛り合わせも机の上に具現化されている。

 

 実は深層心理内でも食べ物を食べることは可能なのだが…味はすれども腹は膨れず、といった仕様となっている。

 それを利用して、降谷さんなどは最近思う存分深層心理で料理の練習をしているようだ。

 一昨日などは机の上に満漢全席かと言わんばかりの量を並べて、「今日はバイキングだ。思う存分食え」などと突然言われたりもした。

 

 腹は膨れないけど気持ちは一杯になるんですよ降谷さんや……そんなに食えんて……。

 

 ただし。

 その具現化した食物はひっそりと散布した私の魂のカケラを内蔵している。

 降谷さんが多量に食べ過ぎれば「昇格」するかもしれないがな。

 

 などとちょっと現実逃避をしつつ。

 交差点で停車したあたりで、私は振り返ってコナン君に笑いかけた。

 

「僕を超える、か。そんな大それた人間じゃないつもりだけど。できる限り君の目指すべき高みでいられるよう頑張るとしようか」

 




・神食
神を食む。魂にて直接取り込む力の泉源。
魂の位階を上げる、ある種のヨモツヘグイ。
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