バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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ホームズの黙示録③

 

 さて。

 コナン君が真相に辿り着いた後は早かった。

スコットランドヤードに連絡を入れて、その暫く後にハーデス・サバラが逮捕された。

 この迅速な行動の裏には別口で動いていた工藤優作氏の成果もあるだろう。

 

 おかげでイギリスに招待してくれた金持ちのおばさん、ことダイアナ・キングストンさんの主催する夕食会には遅れることなく参加することができた。

 彼女はロイヤルファミリーだからな。

 コナン君も顔をつないでおいて悪いことはない。

 

 私を夕飯に連れていけないことにコナン君が申し訳なさそうな顔をしていたので、「気にせず行っておいで。僕は近場のアジトで適当に何か作って食べてるから」と軽く言っておく。

 

 降谷さんのリクエストで本日は白身魚のムニエルだ。

 レモンバジルソースを添えて。

 アジトには私たちが買い込んだ料理道具もあるので、短期滞在するには十分だ。

 

 明日からはコナン君の要望で少し遠出してダートムーアに行く予定なので、少しばかり朝が早い。

 ダートムーアへは車で片道4時間、夜には戻ってくる弾丸計画となっている。

 まるで遠慮なく私を使い倒そうとする姿勢は大いに結構。

 車の運転は相変わらず若干苦手だが、最近は降谷さんの教えもあってやや改善傾向だしね。

 

 蘭ちゃん達はロンドンをもっと見てまわりたいそうなので、私たちだけの旅行となる。

 

 そんなわけで。

 集合場所のホテル前で別れて、私がアジトに戻ろうとしたその時。

 こんこん、と車のサイドガラスをノックする音が響いた。

 

 顔を上げれば、そこには短い黒髪の変装した有希子さんの姿があった。

 有希子さんは私を見ながら、ややブスッとして口を尖らせた。

 

「はい、どちら様でしょうか」

「ちょっと、透ちゃんよね?その格好使うなら一言言ってくれてもよかったんじゃない?すごくびっくりしたんだから!」

 

 ぷりぷりと怒っておられるようで、腕組みしたままフンと顔を背けている。

 

 実は私と有希子さんは面識がある。

 この間有希子さん用に宝石花を作ったとき、イメージに合うようにデザインするため工藤優作氏の紹介で直接会うことになったからだ。

 

 私はわたわたと慌てて愛想笑いで運転席の窓ガラスを開けた。

 

「すみません有希子さん。ほんの数日のことですのでそこまで気にすることはないかと思い……有紀子さんもいらっしゃったんですね、ロンドンに」

「ええ。それにしても……新ちゃんが告白したってほんと?」

「ああ、そのことですか。ほんとですよ。何か噂になってました?」

「近くにいたって知人から話を聞いたのよ。新ちゃん、花束を蘭ちゃんに渡したんですって!?」

 

 そう。

 原作告白イベントとは少しばかり経緯が違うが蘭ちゃん&新一君の仲の進展イベントがあったのは確かなのだ。

 

 少し前に私から宝石花をもらったコナン君は、心の葛藤だか後押しだかがあったらしく。

 このロンドン旅行で蘭ちゃんに告白することを決めていたらしい。

 

 ビッグベンの鐘の音とともに宝石花を中心に添えた花束をわたして告白する、とロマンチストさを炸裂させた計画を作成。

 

 事件があった時は少々焦ったようだが、その謎もお昼にはスピード解決していたし、ゆっくりと花と場所の選定に移ることができたらしい。

 私も告白スポットはきちんと紹介したし、花屋の案内もした。

 

 そうして、無事告白は成功して…実にいい感じの雰囲気で夜を終えることができたのだ!!!

 

 覗き?勿論したとも。

 こんなビッグイベントみなくちゃコナンファンとは言えないだろう。

 なお降谷さんには「馬に蹴られそうだなお前。そして馬を返り討ちにしそうだ」などとコメントをいただいた。

 かなり失敬じゃないか?

 

「まぁー!!!素敵!ついになのね!」

「甘酸っぱいですよね。なんというか、青春、と言った感じで」

「透ちゃんもナイスアシスト!私からも感謝しなくちゃ!」

「いえいえ。僕こそでしゃばりすぎたかもしれません。彼の告白がうまく行ったようで何よりです」

 

 きゃあきゃあと黄色い声をあげる有希子さんだったが、そこでちょうど電話が入った。

 

 一瞬自分のものと勘違いしてスマホを取りかけたが、どうやら着信は有希子さんのものだったようだ。

 有希子さんが電話に出ると、その向こう側から幼い声が聞こえてくる。

 

『母さん?』

「新ちゃん?どうしたの?いまはキングストンさんと夕食中でしょ」

『いやなんで知ってんだよ!……まぁいいけど』

 

 声の主はコナン君だったようだ。

 今の時間だと夕食会の途中だと思われる。

 耳をそばだてると、なんとなく気まずそうな雰囲気が伝わってくる。

 

『それよりさ、母さんと父さんの専属の税理士って、おっちゃんに紹介できるかな?』

「え?できるけど、どういうこと?」

『いやぁ……おっちゃんのピンチっていうか。税金とか、その辺が不味かったっていうか。プレゼントを張り切りすぎたっていうか』

「……な、なるほど。一大事ね」

 

 暫く困惑した後、それだけで事態を把握したらしい有希子さんは、眉間に皺を寄せてガックリと肩を落とした。

 

 つまりあれだ。

 贈与税で毛利家が爆発四散する、というやつだ。

 

 私が渡した宝石花は、原石の状態で1500カラットもある最上級のレッドエメラルドから丹念に削り出したもの。

 原石の時点で不二子さんから買い取った時の金額は約60億。

 宝石花となった状態なら値段は120億は下らないだろう。

 

 細かい事情を廃して単純計算すると、それにかかる贈与税はだいたい宝石花一つで60億円ほどとなるはずだ。

 

 うーん死ぬ。

 小金持ち程度なら悠々と薙ぎ払う凄まじい破壊力だ。

 しかも毛利家にはあともう一つ宝石花がある。

 

 南無三!

 私のあげた方の宝石花はすぐ売っぱらって税対策に当ててくれと明日コナン君を通して伝えておこう。

 もともとそのつもりで渡したんだし、毛利家に残してきたものは珍しい花の種類だから希少価値もつくはずだ。

 

───わかってたことだが酷いなしかし。新手の財政攻撃か何かか?

───調子に乗っていたことは否定しません。でも、まぁその程度の金額なんとかなると思っていたというか。金持ち感覚だったというか

───わかる。俺らの銀行口座の桁、ちょっとバグってるよな。なんだあれ。不労所得だけで一生暮らせるぞ……ん?なんで俺ら泥棒なんてやってるんだ……?

───んん?なんででしょうね……?

 

 少々現場が混乱している。

 組織壊滅はお金に代えられない価値を持つ、プライスレスな働き方。

 そんなことを思い出すまでしばし時間を要したあたり、私たちは疲れていたのだろう。

 

 なにやら電話に集中する有希子さんを置いて、私は車を発進させ戦略的撤退を果たしたのだった。

 




次回、小話…閑話、密着!狐の彫刻師24時!(CCN放送)
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