バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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加速してきた


密着!狐の彫刻家!(TVスペシャル)

 

 イギリス旅行から帰宅して10日ほど。

 

 現在いるのはアメリカのニューヨーク州ニューヨーク市。

 都会の真っ只中である。

 

 あのときコナン君が夕食会の最中に電話してきたのは、ダイアナ・キングストンさんが蘭さんの持っていた花束にある宝石花を見て「まぁ、それは本物の!?」と驚いたかららしい。

 そこから芋蔓式に話がおよび、贈与税のことに話が及び。

 青を通り越して土気色の顔色になった毛利探偵が卒倒しそうになり、慌ててダイアナさんが介抱する事件が起きたらしい。

 

 それで、なんとかなるのか急遽コナン君がご母堂へ連絡することになったのだという。

 

 まあまあな大惨事だったようだがそれはそれ。

 私には関係のないことなのである。

 

 そんなわけで私にコアラ式抱きつきで抗議するコナン君を置いてアジトへと戻ってきたのだが……

 

「お願いします!僕の生き残りをかけて!密着取材をしたいんです!!!」

「いや……僕、犯罪者ですよ?そういうのいいんですか?放送倫理的に」

 

 美しいジャパニーズスタイル土下座をかます朴訥とした顔つきの青年は、ただひたすらに頭を下げて…というか畳にめり込むように頭を擦り付けている。

 短い金髪はまさに白人種といった感じだが、なんだか憎めないコメディアン的要素が見え隠れする。

 

「国際指名手配犯であるルパン一味のフォックステイルは、今回僕らの密着取材対象ではないので。ええ。弊社は謎の彫刻家である『狐』を対象に取材をしているのです!」

「すごいストレートに詭弁ですね…それで良いならいいんですけど」

「はい!おねがいします!!」

 

元気いっぱいに、しかし鬼気迫るように彼はもう一度ばんっと頭を下げなおした。

 

 彼の名はマーク君。あるTV放送会社の若きスタッフだ。

 きらきらと輝く瞳に涙を浮かべ、彼は上目遣いで私をじっと見つめた。

 

 なんでも、彼の所属するのは新聞も持つ、誰もが知る大手TV会社だそうだ。

 その中でも収益の中々出ない美術系企画を担当するマーク君は、この度契約の打ち切りの話が出ているらしい。

 次の放送で全米視聴率が振るわなければ…ジ・エンド。

 企画チームごと路頭に迷うことになるとのこと。

 

「1日だけで良いんです!お願いします!お願いします!!」

「うーん……」

 

 そこで私たち…つまりは狐の彫刻師の取材がしたいのだとか。

 私は困りに困って奥で寝ている五エ門師匠に視線を向けた。

 

 今日ここにいるのは五エ門師匠だけだ。

 というか、普段からあっちこっちふらついているルパン一味は集まること自体が稀だ。

 今日は修行のためたまたま五エ門師匠と一緒にいる、と言った方がいいだろう。

 

 まぁ、ルパン一味は3人とも私たちの料理を気に入ってくれているらしく、割と頻繁に夕飯を食べにきてくれるのだがな。

 たぶん私の生存確認も兼ねてだとは思うが、つくづくハートフルな一味である。

 

 ちなみに、マーク君はこの場所を偶然が重なって見つけることができたらしい。

 具体的にいうと会社のすげない態度に絶望してトボトボ街を歩いていたら、この場所に入っていく五エ門師匠を見た、とのこと。

 豪運かよ。

 

「……減るわけでもなし。受けてやればよかろう」

 

 座禅を組んだまま、あからさまにめんどくさくなって適当に答えている様子の五エ門先生が私にチラッと迷惑そうに視線を寄越した。

 うるさいから早く済ませてほしいと思っているのが丸わかりだ。

 

 犯罪者がメディア露出なんて面倒事しか起こさないから嫌なんだけどなぁ。

 

───蹴り出せこんなの。メディアなんて鬱陶しい。俺たちの仕事には必要ない

───でも、可哀想じゃありません?

───優しさは美徳だが、マスメディアは甘やかしても良いことはないぞ。統制して管理するべきものだ、あれは

 

 元公安らしい意見だ。しかし私は降谷さんほど厳しくはなれないし…ここまで頼みこまれては断るのも気が引ける。

 なんかもう号泣って感じだし。

 

 はぁ、と降谷さんがため息をついた。

 好きにしろ、ということらしい。降谷さんは降谷さんで私に甘いからなぁ。

 

「お願います!なんでもしますから!!!お願いします!」

「…わかりました。はぁ、分かりましたよ。取材、許可します」

「!!!!!」

 

 だばだばと涙を流して懇願していたマーク君はガバッと顔を上げて1、2秒フリーズ。

 そしてその直後、突然両手をあげて走り出してガッツポーズしてまた走り出して。

 そのまま墜落した鷹のような謎の奇声を上げて高速で屈伸。喜びの舞を披露した。

 

 大丈夫かこいつ。

 

「それで、いつ取材の予定ですか?」

「はい、こちらはMr.アムロの予定に合わせさせていただきます!今すぐでも構いません!カメラと音響の奴をすぐ呼び出しますので!」

「ははは。あー、本当に?」

「はい!電話します!!!」

「……じゃあ、今からお願いします。ちょうど作品を一つ作る手筈になっていたので」

「それは最高だ!!よし、アンは今休暇だったか…関係ないね!3コール以内に出ないなら家に凸してやればいい!」

 

 とんでもねーテンションで社畜の鑑みたいなことを言い出すマーク君だったが、私は聞こえないふりを貫いた。

 

 どんな形であれこのアジトがバレた以上、迅速に引き上げねばならない。

 ならばできるだけ急ぎ取材を終わらせて、さっさとトンズラするよりほかあるまい。

 

 五エ門師匠と頷きあう。

 師匠は顔が売れすぎているため、他のスタッフが来る前に「少し出る」と言って席を外すようだ。

 

 ちなみにだが、安室=狐の彫刻師だとバレている理由は、前々から彼が流通経路から推理…とも言えない妄想をしていたかららしい。

 

 この持ち主一覧から考えるに、きっと峰不二子が流通経路となって世界の富裕層に狐の作品を流しているに違いない!

 女に弱い高齢のおじさんばっかりだし!

 あと狐といえばフォックステイル!つまり貴方が彫刻師だったんだ!

 

 などなど。

 凄まじいガバガバ推理だが大正解。

 このアジトを見つけたことといい、彼はなんか運命的なパワーでも持っているのかもしれない。

 

「ふむ。では仕事場へ案内しましょうか。それとも説明だけでも先にしますか?」

「あ、すみません、メモを取りますので…はい、大丈夫です!」

「そう気負わなくて大丈夫ですよ。あと、顔出しは流石にできませんので…ふむ」

 

 奥からゴソゴソと引っ張り出したのは馬マスクならぬリアル狐マスクである。

 元々はルパンが降谷さんを揶揄うためだけに用意したジョークグッズだ。

 それをズボッと頭から被って「これで取材を受けるということで」と向き直る。

 

 被り物であるチベットスナギツネの細ーい悟ったような瞳を見て、あまりのシュールさにブハッとマーク君が吹き出した。

 

「ちょっ、まっ、他、他の被り物ないんですか!?いやインパクトは十分以上なんですけど番組の趣旨から逸れるといいますか!」

「これでいきます」

「断言!?」

 

 私はこの被り物を気に入っているのだ。

 降谷さんは「早く捨てろよ」とイラつき気味だが、己の信念を曲げるつもりはない。

 

 可愛いじゃろチベスナ。異論は認めない。

 

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