バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】 作:ラムセス_
エッジオブオーシャン内部、フードコーナーにて。
───ここだな
───ええ、ここで間違いありませんね
降谷さんと頷き合い、内部の飲食店キッチンスペースにて私たちはじっと神経を研ぎ澄ませた。
風見さんが黙り込む私達に恐る恐る話しかけてくる。
「降谷さん、何か気になることでも?」
「ここにあるインターネット接続タイプのガスバルブと電化製品だが、システムの見直しは可能か?」
「セキュリティに何か不備が?……正直、今からの修正は時間的に厳しいかと…」
「ならIoT機能を持たないものと交換してくれ。エッジオブオーシャン内部のものは全部」
「え、ええ!?全部ですか!?それはウチの権限では……いえ、わかりました」
現在、私たちは周囲の安全のため軽く変装中だ。
一般的日本人男性に見えるよう、特徴のない凡庸な顔立ちのマスクを被り、警官がいる中を業者を装ってエッジオブオーシャンに来ている。
もしまかり間違って正体がバレることがあれば、警官の群れを押し通らざるを得なくなってしまうからな。
私も降谷さんも、できれば元同胞を傷つけたくはないのだ。
持ってきたPC一式を開いて、簡易的にガス栓のシステムへとアクセスを行う。
ハッキングは降谷さんの得意分野だ。
ルパンにも褒められた広範な知識と、セキュリティの穴を嗅ぎつける感性でもって電子の海を渡る力は私のそれを遥かに超える。
ルパンに散々揶揄われながら特訓したもんな。ネット戦。
途中揶揄われすぎて何度頭の血管が切れるんじゃないかと戦々恐々としたことか。
演習戦でせっかく掴んだ尻尾がルパン顔のシンバルモンキーが馬鹿笑いしてるGIF動画だった時なんか、怒りを通り越えて一週間ぐらい屋敷の自室から出てこなくなってしまったからな。
まぁ、それらの能力の強化は降谷さんの魂が強化されて、悪意や気配を察知する性能が高くなってきたのも影響しているのだろう。
今回もIoTガスバルブに悪意の鱗片を感じ取っているようだし。
「チッ、やはり簡単にアクセスが可能だ。だがここで尻尾を掴めないとなると…次の犯行が読めないな」
「まさか、ここの機器に何者かが不正に接続する可能性があるということですか!?」
「ああ。難易度としては比較的容易だから、深い専門的知識がなくとも聞き齧っただけでアクセス可能だ。悪戯でもあれば大問題だ」
「ですが、電化製品ですよ?アクセスしたからと言って早々何かができるわけでも……」
じろり、と降谷さんが風見さんの方へと振り返った。
咎めるような厳しい視線だ。
反射的に風見さんが身を固くした。
「ガスバルブに接続してガス漏れを起こし、その後適当な電化製品をショートさせれば完璧だな。サミット中に決行すれば世界の要人をまとめて始末できる」
「!?!?」
「流石にセキュリティホールとしては大きすぎるだろう。頭の痛い問題だな。サミットは二週間後だったか?」
「はい!それと、まだネットは繋がっていませんが……来週には開通予定でした」
「念には念を入れるくらいがちょうどいい」
私が詳しい説明をしていないのにも関わらず、降谷さんはそこで起きるであろうことを原因から見事当ててみせた。
降谷さんほどの頭脳を以てすれば、悪意でベタついたネット操作できるガス栓をみた時点で何が起こるのかわかったのだろう。
まさにさすがと言う他ない。
ただし、風見さん達公安の面子には勘について説明していない。
原作の言葉になぞらえれば、警察は証拠のない話には付き合わないからだ。
だが数々の報告から黒田管理官も風見さんも察してはいるはずだ。
「俺からの進言はそのくらいだ。強い言葉を使ったが、所詮は部外者の意見だ」
「そんな、部外者などと……直前の変更は負担になるのは確かですが、これは確かに看過できる問題を超えています。上に報告すれば問題なく動くことができるはずです」
「それはよかった。もし爆破されれば被害は甚大だっただろうからな。世界各国からの非難も避けられない」
その言葉で、まさに具体的に爆破されることを私たちが直感したと理解したはずだ。
風見さんはざっと顔色を青ざめさせた。
───サミットに向けて世界に冠たる姿を見せようとするのは分かるがな。頭が痛い問題だ
───まあ、エッジオブオーシャンが爆発する前で良かったじゃないですか。爆発してたら日本もいい恥晒しでしたし
───なんでこうどいつもこいつも爆破テロを計画するんだ。まったく、これで犯人も諦め……は、しないだろうな
立ち上がりため息をついて部屋を出ようとする。
ひとまずこれだけ説明できれば公安相手にはそれでいいだろう。
風見さんがいろいろと指示の予定をメモしながら、わたしたちを呼び止める。
「あ、降谷さんどこへ!?」
「そろそろ出ようと思ってな。俺は国際指名手配犯なんだぞ?警察に囲まれて、肩が凝って仕方ない」
「………」
風見さんは一瞬悲痛そうになにかいいたげな顔をしたが、結局何も言うことなく口をつぐんだ。
降谷さんはそれを不思議そうに見やって、首を傾げながら「そういえば」と私に話しかけてくる。
───それに、さっきから頭上になにか嫌な予感がして仕方がない。何が危険なのかもわからなくてモヤモヤするんだが、何かわかるか?
───具体的には無人探査機が降ってくる感じですね。ほぼ「神の杖」みたいなもんですから、このエッジオブオーシャンぐらいは軽く吹き飛びますよ?
───……は?
神の杖とは、アメリカが開発中と噂される運動エネルギー爆撃兵器だ。
大まかにいえば軍事衛星から大きな物体を射出し、超高速で地上にある目標にぶつける、というもの。
規模の大きな拳銃と言って差し支えない。
今回の無人探査機「はくちょう」のハッキングも、大まかにいえばそれに近い。
───馬鹿なのか???通常で考えれば、探査機の着陸には高度な計算が必要なんだぞ。それをハッキングで操作して、もし狙いとは別の場所に落ちたらどうするんだ?
───さぁ………ですが、このままだとNAZUは青ざめ米国は頭を抱える事態になりそうです
───くそ!こんな最悪なハイジャックテロ初めて聞いたぞ!
ダン!と近場にあったシンプルな作業机を降谷さんが叩く。
木製の机はめしゃりと割れ凹み、話しかけようとしていた風見さんがドン引いた。
一瞬、場に沈黙が満ちた。
───えっ、………えっ???
───あーやっちゃいましたね降谷さん。現場の備品を破損させるなんて
───待て待て待て、力なんてほとんど入れてなかったぞ、欠陥品じゃ……まさかお前、最近俺に盛ってる謎のものの効能じゃないだろうな?
ぎくっ、と私は肩が跳ね上がった。
私が魂の破片を降谷さんにせっせと盛っているのに彼は気づいていたらしい。
あれには魂の強化の効能があり、それに伴い肉体も強靭になることはわかっていた。
ただ、あんなふうに人外の膂力を与えるものだとは思ってもみなかったが……。
───いや、あれはあくまでプロテイン程度の効果ですよ?軽く殴った程度で机が割れるなんて素がゴリラとしか言いようが…
───あ゛???
───ごめんなさい
私は素直に謝った。
部下の前で恥をかいてしまった怒れるゴリラに勝てるほどの力は持ち合わせていないのだ。
降谷さんは汗をダラダラと流す風見さんに向き直り、絞り出すように言ったのだった。
「……、………後で弁償する」
どっと汗を流しながら風見さんは無言で頷いた。