バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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加速加速ゥ!


ゼロの執行人④、あるいは四次元ポケット

 

 あの後。

 渋る麗しき魔女相手に力の教授を頼み込めば、「私はその辺専門じゃないのだけれど」といいながらも一通りの使い方を教えてくれた。

 

 例えば、神罰。

 一般的に神は人に罰を与える。

 私がかめはめ波のポーズをしても、恥も外聞もなく必殺技名を叫んでも、当然ながらうんともすんとも言わなかった。

 

 例えば、祝福。

 神は一部の人間に加護を与えることがある。

 座禅を組んで目の前にいた紅子さんに一心不乱に祈ってはみたものの、「貴方、驚くほど神の才能無いのね」と一刀両断された。

 

 と、一事が万事そんな感じであった。

 唯一深層心理内の鯉はどうやら化身に類するものらしいが、外に出せるわけでもなし。

 

 収穫ゼロと言って差し支えない状況に、さしもの降谷さんも私もしょぼくれた。

 内側で体育会系部活の大会さながらに応援してくれていたんだけどな、降谷さん。

 

 紅子さんは若干気の毒そうな顔でため息をつき、私を見やった。

 

「貴方の人間としての意識が強すぎるのよ。思い込み、と言ったらいいのかしら」

「そう言われましても。今日から『貴方は神です』とか言われても納得できる人間は少ないでしょう」

「頭が硬いわね」

 

 ピシャリと言われてますます私は縮こまった。

 どうしろって言うねんて。

 この状況でアイアム神!と自信満々に言い張れるのは降谷さんぐらいのものだ。

 世にはびこるなろう系転生者はどうやって能力を使っているのだろうか。

 そんな急に力を与えられてマニュアルも無しの投げっぱなしじゃ操作方法なんてわかりようがない気がするのだが…そのへん皆上手くやっているのだろうか。

 

 魔女が窓際に放ってあった旅行用のボストンバッグを見て、これのようなものよ、と仕方なさそうに口を開く。

 

「便利な能力が手に入ったと喜びなさい。ほら、神域なんて某猫型ロボットの四次元ポケットみたいなものなのよ」

「へぇ……それは便利ですね。こう、持ってる鞄に手を突っ込むと未来のアイテムが出てきたりして」

 

 私がやや笑いながらボストンバッグをたぐりよせ、手をバッグに突っ込む仕草をした。

 そして中のタオルを掴んで取り出そうとした、そのときだった。

 

 ずるり、と1メートルほどもある大きな錦鯉がバッグからサイズ感を無視して引き摺り出された。

 錦鯉はビチビチと跳ねている。

 

 …………。

 

 私は無言で錦鯉をバッグに戻した。

 

「…………間違えました」

「絵面酷かったわね。どうしてそんな弱そうな化身作ったの?」

「観賞用なんですから池の鯉に高望みしないでください。色艶は最高なんですよ?……でなくて。ええ、はい。えーっと、アレで成功なんですか……?」

「成功ね。よかったじゃない」

 

 もう一度鞄に手を伸ばし、意識して深層心理内の屋敷にあった作りたての苺大福を引き摺り出す。

 今度は狙い通り苺大福を取り出すことができた。

 降谷さんの手作り大福だ。

 一口。美味しい。

 

「あ、食べます?」

「結構よ。流石に神饌(しんせん)に手を出す気はないわ」

 

 何故か深層心理の中で降谷さんがモゾモゾ動いている感じがして、私は声をかけた。

 

───どうしました?

───これで俺が外に出たらどうなるんだろうかと思ってな

───こここ怖いこと言い出さないでください!?魂だけで放り出されたら死にますよ!

───今ならいけるかなと思って

 

 降谷さんが生き急ぎ野郎過ぎる。

 一瞬愛想を尽かされたのかと思ってドキドキしたが、そうではないようで一安心。

 私もうっかり死しないよう、この方法で降谷さんの中から出ることがないようにしなければ。

 

 ふむ。と降谷さんが顎に手を当てた。

 どうやら池の中に戻されて暴れている錦鯉を池のそばで観察しているようだ。

 ガラスの蓋につけられた穴から餌をやっている。

 

───この力を使えば、例えば落ちてくる無人探査機を中に入れてしまえば万事解決じゃないか?

───うーん、鞄にどうやって無人探査機を入れるかが悩みどころですね

────どうして鞄を通さないと出入りできない仕様なんだ。日本の国際的名誉と安全がかかってるんだぞ、早く仕様変更してくれ

───無理を仰る……というか、落ちてくる無人探査機の運動量もそのまま中に転移したら、屋敷ごと吹き飛ぶんですが

 

 はぁ!と寺生まれのTさん並みに力んではみたが、やはり鞄を通さずに中から物を出すことはできなかった。

 魔女が救われぬ者を見るような目でこちらを見ている。

 

 私はそれを努めて無視して、降谷さんに代替案を出してみた。

 

───コナン君にバッグを蹴ってもらって、落ちてくる無人探査機にぶち当ててもらう……?

───お前のそのコナン君への熱い信頼はなんなんだ?それできるのは人外だけだぞ

───ならドローンに鞄を乗せて探査機に突っ込ませる?

───悪くはないが……奇行過ぎて誰が協力してくれるんだ?と言う内容だなソレ

───そう言う時の阿笠博士ですよ

 

 魔女がセーフティハウスの棚を漁り、勝手に中の備蓄品である煎餅を持ってきてもしゃもしゃと食べ始めた。

 暇しているらしい。

 どうも申し訳なくなって、私は冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出してコップに注いで魔女へと渡した。

 

「あの、例えばなんですが、上空の指定した位置に鞄を浮遊させておく魔術とか使えますか?」

「それくらいならできるけど。鞄から卒業する方が楽だと思うわよ」

「それは一応期日まで鋭意挑戦します。が、何事もサブプランは持っておくべきだと思いまして」

 

 そう言うと、紅子さんは快く応じてくれた。

 

「いいわ。大勢の命がかかっていると言うのだから、多少は協力しましょう」

「ありがとうございます」

 

 実に優雅に妖艶に微笑む魔女だが、手には海苔巻き煎餅が握られている。

 締まらないことこの上ない……が、これは言わぬが吉だろう。

 

 あとは当日、日下部検事を捕らえて探査機の落下を止めるだけだ。

 

───回収した探査機、後でどうする?

───ルパンを通じてNAZUに届けてもらいましょうか。貴重なものですし、僕らが持ってても仕方ないですしね

 

 話を軽くまとめつつ、私はもう一度魔貫光殺砲でも出す勢いで手を突き出して力んだ。

 

 しかし、なにもおこらなかった!

 残念ながら、いい年したおっさんが少年時代を忘れられないだけの図である。

 

 私は座布団に座り直し、ちょっぴり泣いた。

 

 




神隠し
鞄(種別問わず)の開口部に触れたものを深層心理内の武家屋敷に転送する。
なんか変だが、これでも立派な神隠しである。
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