バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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土日は休みのような気がきたが、気のせいだった。


ゼロの執行人⑥

 

 当日。

 

 既に違法アクセスとテロリズムの疑いで日下部検事は指名手配済みだ。

 エッジオブオーシャンの爆破がなかったから、当然毛利探偵の冤罪は無し。

 また毛利探偵を助けるために決行された無差別ハッキングも行われなかった。

 

 だが、それで犯人の危険性が落ちたかといえばそうではない。

 静かに確かに、地球に帰還する無人探査機を人の住まう地に落下させんと企てているそれは危険極まりない。

 

 また、何処からどう嗅ぎつけたのか、沖矢昴を足にしたコナン君と途中ですれ違ったのは予想外ではあった。

 

 私がレンタカーを使っていたのに目ざとく見つけたらしく、落下地点近くに車を停めた私たちに駆け寄ってきたのだ。

 コナン君が見覚えのあるスバル360から降りて走ってくる。

 

「安室さん!さっきあっちで日下部検事を見たんだ!」

「…そっちは君に頼んだ、僕は今からはくちょうについてやることがあってね」

「!それ、NAZUが対処してたってやつだよね。無人探査機への信号は直すことができたんじゃないの!?」

「万が一ってこともあるから。何はともあれ、間違っても警視庁に探査機が落下なんてしないよう万全を期す必要がある」

 

 というか、私たちが日本でうろついているとこにもはや言及すらしない様子だ。

 予想はしていたのだろうが、本当に話が早くて助かる。

 

 軽くコナン君に手を振って、私は警視庁のビル内に走った。

 

「じゃあ頼んだよ」

「あ、ちょっと安室さん!!」

 

 何か言いたげな視線を向ける赤井さんを尻目に、私は軽く走って階段を駆け上る。

 

 ここは犯人である日下部検事の狙いの中心である警視庁前だ。

 既に避難が済んで警視庁内も無人。

 周辺地域一帯の民間人の避難も完了しており、しんと静かな夜の気配があたりを満たす。

 

 運動エネルギー兵器は比較的有効範囲が狭く、周囲への影響が少ないが……それでも、実際に使用されたことがなくその被害は未知数だ。

 住民の生命を考えれば避難もやむなしだろう。

 

───めまいがするほどの経済的損失だな。もし防げなければ人命も失われる、あの公安検事、いくらなんでも先走り過ぎだ

───まさか僕らが羽場二三一について話す前に行方をくらませるとは……後手に回りましたね。油断していた僕の失態です

───よせ。俺も検事という立場を捨てて潜伏を選ぶとは思ってもみなかった。エッジオブオーシャンで先回りしたのが不味かったか

 

 風見からの報告によると、先週末に公安の見張りを振り切って日下部検事が逃走したらしい。

 その後の行方も掴めず、計画的な逃走だったとのこと。

 思い詰めたような様子だったというから、公安の動きに不信感を覚えていてもおかしくない。

 

 ネットが主な今回の犯行の主戦場だ。

 どこに居ても犯行が決行可能だと考えれば、逃亡は犯行の抑止にはならない。

 

───はくちょうに気を取られすぎたな。だが、そのぶん探査機対策は完璧にすることができた。それをもって汚名返上とすることにしよう

───ええ。僕らならそれができる

 

 上空5キロに広がる注連縄の巨大な円を、私達はそっと見上げる。

 

 神域との出入りがバッグを通してしかできない、という縛りをいかに緩くするかが今回の勝負だった。

 バッグという形は無人探査機の落下予想地点の広さに比べてあまりに小さい。

 

 例えば一枚布を「風呂敷」という伝統的鞄と捉えて布に触れたものを神隠しできるようにしてみたり。

 特注の口だけ大きなバッグを作ってみたり。

 

 その中でも私たちが目をつけたのはメッシュネットバッグだ。

 

 紐を緩く編んで作ったそれなら、布の大きさに関わらず巨大化がしやすい。

 紐と紐の間を極限まで遠くすれば、そう目立たず上空にも設置できる。

 

 海に出て試してみたところ、総面積二キロ平方メートルほどのサイズにしても触れたものの神隠しが可能だった。

 魔女のアドバイスで紐には注連縄を使えば、さらに効率は高まった。

 

 ほぼ注連縄に軽くポケット状の箇所がぶら下がってるだけの状態だが……それでも神隠しの発動は可能だ。

 

 降谷さんが「そういえば」といって空を見上げながら私に話しかけてきた。

 

───この注連縄なんだが、フォックステイルの仕事の緊急事態用に腰に巻いておかないか?

───……えーと、どういうことです?

───袋の形にして腰に巻いておけば万が一の事態でも緊急脱出が可能だろ。目立たず小道具も出し入れできるし

 

 うーん、腰に注連縄を巻くと大蛇丸になっちゃう気がするんだが…まぁいいか。

 どことなく釈然としない気がするが、便利なのは確かだ。

 

 その時、魔女のファンタジーな念話的何かが耳に届いた。

 

『注連縄の設置はできたわよ。これで、落下した探査機は運動速度そのままに神域を蹂躙するでしょう。準備はできてるかしら?』

「問題ありません。当初の落下域である海を再現した区画を具現化済みです」

『ならいいわ。あとはせいぜい頑張りなさい、幼な神』

 

 魔女の通信が切れる。

 普通ならこんなもの使わなくても神隠し程度できるらしいのだが、そこは私の不徳とするところ。

 こうして皆に助けられて、なにより降谷さんがいるからこそ、私は朧ながらも神たりうるのだろう。

 

 再び、と言ってもいいのか微妙だが、電話が鳴る。

 こんな時間帯に千客万来だな。

 

『今どこにいるんですか、降谷さん!あの少年からあなたを警視庁前で見たという証言があったんですが!』

「ああ、ちょっと用事があってな。それで、なんの用だ風見」

『っはい、日下部の身柄を押さえました!今無人探査機の変更したセキュリティコードを聞き出しています』

「それはもう間に合わないだろう。探査機については俺の方でなんとかする。お前達はこれから起こることをNAZUにうまく誤魔化してくれ」

『え?誤魔化すって、一体何を……あ、切らないでください降谷さん降谷さんてば』

 

 ぴっと容赦なく降谷さんが電話を切る。

 もうすぐ落下時刻だ。これ以上は流石に電話はしていられない。

 

 夜空を見上げ、落下してくる惑星探査機を想う

 来い、来い、来い。

 我らが領域へ来い、はくちょうよ。

 

 惑星探査機が迫る。気配で感じる。

 スマホの専用データが現在位置と距離とを通知する。

 

 あと3秒、2秒、1秒。

 

 今。

 

 目を見開く。接続を開始する。

 扉を開く。星を取り込む。

 彼方で光が瞬いた。

 

 ふぅ、と息を一つつく。

 まだ寒さの残る空気が夜の気配に当てられて冷たく肌を撫ぜる。

 

 私は少しだけ笑った。

 

 

 

「………無人探査機はくちょうの『神隠し』。無事完了した」

 




・注連縄
神の領域との境界を示すもの。
本人イメージは庭の垣根。
探査機は垣根に突っ込む他の家の子のサッカーボール。
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