バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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神饌

 

 あれから、世間は混迷を極めた。

 

 なにせ落下してきた無人探査機が東都上空五キロメートル地点で突如消失してしまったのだ。

 

 NAZUは通信の回復を試みるも失敗。

 大気の流れで海上に流れてしまった説、オカルト説、世間では様々な説が入り乱れた。

 最終的にNAZUの発表で計算に誤りがあり、太平洋側に落下して通信が断絶していたのだ、とされた。

 

 無論、それはルパンが世紀の「星を盗んだ報告」を世間にぶち上げるまでのわずかな結論であったが。

 

 件の無人探査機本体の方に関しては、ルパンを通じて「惑星探査機を盗んだが、不要だったので返却する」というていで話を進めていたのだ。

 

 ご丁寧に新聞社や各種メディアにまでルパンが報告したおかげで、私は「星を盗んだ狐怪盗」「ロマンの盗人」と書き立てられることとなった。

 どうも、騒がれるのを読んでいたルパンは、名義をきちんと私にしておいたらしい。

「俺様がやった仕事じゃねえってのに騒がれるのは性に合わないんでね。自分のケツは自分で拭きな」とイタズラげに笑うルパンを思い出す。

 

「それよりもさぁ、オメーほんと俺らの中でもオカルト担当になったって言うの?本当まぁ便利に育っちゃって!」

「俺の相棒なんだ、これくらいは当然だ。なぁ安室?」

 

 輝く笑顔で降谷さんが私へと笑いかける。

 恥ずかしいのでそんなに胸を張らないでくれ。

 

 現在の私はルパン達の要望で逃走道具袋の役割を果たしている。

 取り回しの良い小型プロペラ飛行機から車やら緊急用のロケットランチャーまで。

 立派な動くアジトって奴だわな。

 

 中はどれだけでも拡張できるから、潜水艦も問題ないぞ。

 人間が入るのは難しいんだがな。

 

 何故か人間に関してはどんなに入れようと踏ん張っても全然入れることができないのだ。

 民俗学等になぞらえて、名前を呼んでみたり本人の同意を得てみたり努力はしたのだが…どうにも中に他人を入れることができない。

 

 入られても降谷さんが嫌がるから、それで良いと言えば良いのだが。

 降谷さん曰く「実家に他人を入れる気はさらさらない」。あそこは実家扱いらしい。

 深層心理に人の避難できるセーフティハウスがあれば取り回しが数段変わってくるのに、残念なことだなぁ。

 

 ちなみに、現在の深層心理には、武家屋敷の隣にルパン用の逃走用具が置かれた第二倉庫が建てられている。

 第一倉庫では着替えや非常食等の雑多な品もありつつ、奥にνガンダムがこぢんまりと膝を抱えて小さくなっている。

 

 立ってると場所を取るからな、モビルスーツ。

 背中のフィンファンネルや各種武装も重ねて床置きだ。

 

 ルパンが「俺様も本物のガンダム見たい!!!」とソファの上にひっくり返って泣き喚いたが、これ以上世界観を崩すわけにはいかない。

 私は「常識がおかしくなるので二度とだす予定はありません」ときっぱり言い切った。

 

 断られたルパンはわざとらしい半べそで、どこから取り出したかも分からないガンプラ(完成・塗装済)を棚の上にどんどんと並べ出した。

 

 一個、二個、三個……十五個……二十個。

まだまだ出てくる。

 一つずつポーズが違うあたり執念の深さが感じられる。

 ここまで知らぬ存ぜぬを貫いていた次元さんが、どんどん増えるガンプラにたまらず叫んだ。

 

「おい、これ以上アジトにおもちゃを増やすんじゃねぇ!あと良い加減アジトのど真ん中に飾ってあるレゴをなんとかしろ!あれどのアジトに行っても有るんだがどうなってんだ!?」

「それは五エ門師匠に言ってください。というかルパン、そんなにガンプラを飾っても僕はガンダムは出しませんよ」

 

 恨みがましい目でルパンがこちらを見て「ガンダム……」と歯軋りしている。

 仕方ない。

 また世間のほとぼりが冷めた頃に、遠く砂漠か海上ででもガンダムを出せば良いか。

 

 

 

 

 と、そんな感じの愉快なルパン一味の会話があった後のこと。

 公安への詳しい説明をするため、風見さんをセーフティハウスに呼んで話をすることとなった。

 

 やや埃っぽい畳敷きの小さなアパートに呼ばれ、風見さんは呆然と私達の告げた言葉を鸚鵡返しにした。

 

「えーっと、つまり……東都に落下してきた無人探査は降谷さんによって異空間に飛ばされて?それをルパンを通してNAZUに返却したと?」

「ああ。俺たちの力で神隠しした、と言った方が適切か。なんにせよ危機は回避された」

「かみかくし……?」

 

 風見さんが背後に宇宙を背負っている。

 まあ、私が風見さんの立場だったとしたも「つまりどういうことだってばよ…」しか言えることはない。

 

「えーっと、言っている意味がよく…」

「まあまあ。結論を急がず。こちらを食べてゆっくりしていってください」

 

 狂人を見る目をし始めた風見さんへ、私は机の上に置いた本格和菓子をずずいと前へ出した。

 そしてにっこり微笑めば、風見さんはうっと怯んだようだった。

 

「は、はぁ……では、お言葉に甘えて」

 

 風見さんが何気ない動作で練り切りを竹の爪楊枝で一口大に切る。

 

 なお、この和菓子は深層心理で降谷さんが手作りしたものだ。

 桜の形をした美しい練り切りは、味も十分ながら美しさも職人並。

 

 もちろん事前に私と降谷さんで二人で食べて安全は確認済みだ。

 

 これで問題ないようなら元手ゼロの子ども食堂とかできそうだし、夢が広がるな。

 ドキドキと感想を待っていると、風見さんが動いた。

 

 ぽとり、と食べかけの練り切りを手から取り落とし、そのままぐらりと体が傾いて───。

 

「か、風見ィーッ!?!?」

 

 そのまま、バタリと机に向かってうつ伏せに突っ伏してしまった。

 しかも倒れ込んだ風見さんの姿がどんどん薄くなっている!

 半透明の風見さんを慌てて抱き起せば、どうやら魘されているらしかった。

 

「うう…桜の庭園?生活感がある……誰か住んでいるのか……?」

 

───ちょっとこっちきてくれ安室!深層心理にも風見がいる!こいつ俺らの世界に取り込まれかけてないか!?

───うわっ本当ですね!?人間は来れないはずなのに…早く蹴り出さないと不味いことになりそうだ!

───バッグから出してみるか。それでひとまず外へ出せるだろう!

 

 降谷さんが急いでバッグから風見さんの半分を取り出す。

 中の物の取り出し方なんてそれしか知らないからだが、コレでうまく行ってくれれば万々歳だ。

 

 ずるり、と風見さんを引き摺り出せば───当然の結果だが現実世界の風見さんは二人になった。

 しんと私達二人ともが黙りこくる。

 

───まずいまずいまずいまずい

───どうしますコレ。風見さん増えちゃいましたけど

───どっちも半透明だし、ともかく一度一つに重ねてみよう。合体するかもしれん

───え、ええ。そうですね。では失礼して…あれ、うまく重ならない…ちょっとでもズレるとダメなんでしょうか

───いや、こっちの手を右に下げれば…よし、重なった!

 

 四苦八苦してなんとか完璧に重ね終えると、風見さんはなんとか半透明状態から実体を取り戻したようだった。

 

 どっと嫌な汗が背中を濡らしていたことに気がつく。

 

───元に戻ってよかった……危うく風見さんを二つにしてしまうところだった…紅子さんは神饌、と言ってましたけど。まさかここまでの効果があるとは思ってもみませんでした

───今後、深層心理の食べ物は俺たちだけで食べよう。間違っても他人に食べさせるわけにはいかないな

───ですね…ああびっくりした

 

 ふと、転がった食べかけの練り切りを見て、今回の風見さんは半分しか食べなかったことに気が回った。

 全て食べたら通常は不可能な人間の神域転移ができたのだろうか。

 そしてその場合、帰ってくることはできるのだろうか。

 

 私はブルリと震えてこれ以上の実験はしないことを心に決めた。

 なんとなく、食べた人間が戻って来られなくなってしまう気がしたからだ。

 

 げに恐ろしきは神饌である。

 別に部下に勝手に盛った私たちの発想が恐ろしいとか、そういうわけではないので悪しからず。

 




・神饌
人が食べれば神域へ連れて行かれる、神にのみ食が許された食べ物。
降谷さんが自ら手間を惜しまず作っているため、非常に美味。
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