バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】   作:ラムセス_

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五エ門道場

 

「まだまだ踏み込みが甘い」

 

 五エ門が無表情で呟くと同時、いつ抜いたかすらわからない速度で刀が抜き放たれる。

 一閃。

 怖気の走るほど美しい白刃の煌めきが空間に光を残す。

 私は全身切り傷だらけでなんとかその剣閃をかわし、鉤爪を構える。

 

「ここだ!」

「心意気は買うが……やはり甘い」

 

 首に迫る音速の刃は回避不可能。ゲームセットだ。

 私の首と胴を間違いなく泣き別れさせていたであろう一撃は、ぴたり、と直前で停止した。

 

「……ッ!」

「うむ。お主も疲れたであろう。しばし休憩とする」

 

 マジで首落ちたかと思った……。

 はい、師匠!と元気よく返事して私は道場後ろに置いてある飲み水のペットボトルの元へと向かった。

 

 さて、なんでこんなことになったかと言うと、話は一ヶ月前に遡る。

 

 ようやく長い眠りより目覚めた降谷さんと、今後の動きについて相談をしていたところから始まる。

 まぁ、現状を改めて整理して報告すれば、降谷さんは無言で再び奥に引きこもりかけたのだが。

 

 「待て、待ってくれ。なんだそれ、どうやったらそうなるんだ。冗談だろ???」と降谷零は大変混乱していらっしゃった。

 

 果たしてそれは私がベルモットの側仕えでキティと呼ばれるようになったことを指すのか、はたまたジンの飲み友になったことか。

 それかアイリッシュと今度一緒に旅行に行くことか、どれを指すのかわからない。

 

 やらかした──もとい、築いてきた経歴が多すぎるからな。

 もっと具体的にどれが問題だったか教えてもらわないと。

 開き直りって言うな。己の仕事ぶりに満足しているだけだ!

 

 私が何度丁寧に説明申し上げても「は?」「うーん」「理解が追いつかない」と降谷さんはチベットスナギツネみたいな顔で首を振るばかり。

 私よりずっと頭がいいはずだろ貴方は!大人しく現実を受け入れてくれ!

 

 最終的に「無理。無理だこれ。バーボンの役はお前に任せた」と言って深層心理で寝込む体勢に入ってしまった。

 待って起きて寝ないで。せめて私にボクシング教えてからにしてくれ。

 などと頼み込んでようやく渋々ながら裏方としてバーボン業務に参加してもらえるようになったのであった。

 

 せっかく深層心理の底でまったり実録降谷零24時を楽しむ計画がパァである。

 なんだよ裏方って。

 降谷さんが全部やればいいじゃないか。大丈夫頑張れば鉤爪も慣れるからインド人嘘つかない。

 

 せめてもと深層心理での思考の共有を使いながら、降谷さんの馴染みのボクシングジムで戦闘技術を身につけようとしたのだが。

 

 そこで問題が発生した。

 私の身体能力が高すぎて、通常の試合形式じゃまるで練習にならなかったのだ。

 

 こればっかりはいくら本職が集まってもどうしようもない。

 通常の打ち込みなんて見てから回避余裕だし、最近はアイリッシュとやっても考え事しながらだって掠りもしなかったからな。

 

「これ以上の使い手となると、もう石川五エ門ぐらいしか思いつかないな」

 

 と、苦笑いする降谷さんに私はピンときた。

 

 そうだ!石川五エ門だ!

 私がガタリと立ち上がったのを、降谷さんは豆鉄砲を喰らった鳩のような顔で見送ることとなった。

 嘘だろこいつ、って顔してますね主人格よ。残念、私はいつだって本気だ。

 

 組織を通じて連絡先を探ってもらい、外部専用の公式コンタクト先へとメールを送信する。

 ルパン達、公式のメールアドレスとかあるのね…。

 時々アニメ2時間スペシャルとかで悪役組織がルパンに連絡してるけど、それがこのメールアドレスなのかもしれない。

 

 稽古つけてくれ、なんてたとえ連絡がついたとして断られるのがオチだろうが。

 ダメ元で頼むくらいはタダだろう。

 

 翌日昼、スパムメールとして無視されるだろうとばかり思っていたメールに返信があった。

 

 返事は『一週間後、xx/xxの17:00にxxxxxxの路地裏の黄色い看板の下で合流』

 これには降谷さんも心底驚愕したらしく「嘘だろあのルパン三世の一味だぞ!?暇なのか?」と態々口で叫んでいた。

 

 以上、経緯説明終わり。

 休憩もそろそろ切り上げだろうし、せっかくのビッグネームによる直々の訓練なんだ。

 本腰を入れて挑まねば失礼だ。

 

 道場の中央付近にたてば、斬鉄剣を抜いた五エ門が風のような自然体で気配すら無く立っていた。

 

「では、もう一度だ。全霊で来るといい、獣」

「言われずとも!」

 

 全力の踏み込み。

 瞬間襲いくる袈裟斬りを素早く左右にステップしてかわし、重心を低く保つ。

 分身して見えるほど高速の動きだと人は言うが、果たしてどの程度本当か。

 脇を締めて隙を見せないように。拳を出したら素早く戻す。

 

 素人に毛が生えた程度の知識でしかないが、本職に教わったそれは確かな技術として私の中に染み付いていた。

 

 打ち合いながらも五エ門が口を開く。

 

「あの時の邂逅から見違えた。まだまだ未熟な部分も残るが、十分実戦で通用する動きであろう」

「ありがとう、ございますっ!っふ、!」

「あんなつまらぬ組織などに身を置かず、拙者達と共に来ることを考えてはどうだ」

「生憎、僕も志がありますので───お断りだ、石川五エ門。俺達は警察官だからな」

「そうか。残念だ」

 

 口を出した降谷さんに動揺することなく、五エ門は一瞬のうちに3合もの刃を空間に残す。

 それを頬を切り裂かれながらも死ぬ気で避けきり、素早さの増した爪を振るう。

 五エ門の着物右袖に若干の切り傷が入る。

 これだけやって着物にかする程度ってホント五エ門バケモノ具合が凄い。

 

 降谷さんについては五エ門にすでに話をしてある。

 降谷さん自身も最初は五エ門と手合わせを望んでいたのだが、私と五エ門の鉄爪VS斬鉄剣の戦いを見て素早く前言撤回した。

 いわく「なんだあれ。人間の動きじゃないだろ。ほぼ剣客バトル漫画のそれだったぞ」とのこと。

 初めから分かっていたことじゃろがい。

 

 「来るといい、ボクシングを嗜むのであろう」と五エ門先生は快く降谷さんとの手合わせを引き受けてくれるも。

 降谷零は顔を真っ青にしてぶんぶん首を振った。

 犯罪者相手に弱気とは情けないぞ降谷零!それでも公安警察か!

 

「中で見てて何が起こってるのか把握すらできない。お前本気で俺か?組織に変な改造とか施されてないか?───普通にそのままの貴方ですけど」

「うむ。お主の動きは極まった自然の強さだ。あの小物達の手が入っているとは考えにくい」

「五エ門もそう言ってます───納得いかない。俺はバケモノじゃない」

 

 失礼な。化け物はちゃんと目の前に五エ門先生がおるじゃろ。

 将来もし私がいなくなったら代わりに降谷さんが戦うことになるんだし、今のうちにきちんと基礎を身につけようね。

 

 無理?人間は普通に弾丸を武器で弾いたりできない?

 

 はっはっは。降谷さんてばなにをおっしゃるやら。

 こう、ピーンククククひょいっ、とね、そんな感じで体を動かせば楽勝ですよ。

 あっ待って拳を振り上げないで嘘じゃない嘘じゃないんです。

 

 休憩の合間合間に深層心理で戯れあえば、彼との仲も深まってきた実感も湧く。

 頭脳担当の降谷零、肉体労働の私。

 表向きは私がバーボンとしてこれまで通り振る舞い、要所要所で降谷さんが助言や手出しをすると言う方針で決定している。

 

 これで高度に政治的な場面でも強力な頭脳役の補助が受けられるようになったのだ。

 ありがたいことこの上ない。

 

 降谷さんも「これほど強大な戦力が手の中にあるんだ。活用しない手はない」と挑戦的な笑みを浮かべていた。

 戦略担当がそう言うなら、私も安心して動けると言うものだ。

 

「お主ら、本当に仲がいいな。多重人格とはそういうものなのか」

「僕らの場合多少特殊かもしれませんね───そうだな」

 

 五エ門先生の指導を賜り、私の動きもずいぶん安定性が増した。

 今後の任務も今まで以上にスムーズに行くことだろう。

 

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