バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】 作:ラムセス_
速報、ルパン死亡。
なんの冗談だという話だが、捕まえて処刑されたのだとニュースが流れたのだ。
どうやら警察の検死の結果、ルパン本人であることが濃厚とされたようだ。
死体の状態も良く、これならDNA鑑定をはじめ顔を見て本人かどうか確かめることもできただろう。
というわけで、ルパン本人はアジトのソファで寝転がってポコポコ怒ってばかりだった。
「なんだってんだ全く。俺が処刑?ならこの俺はなんなんだよ」
「ルパンの偽物が処刑されたと考えた方が良さそうですね。しかし何のために、という疑問が残りますが」
「あー、不二子ちゃんの件と何か関係があんのかねー」
ついこの間、ルパンはエジプトのピラミッド内から謎の石を盗み出したばかりだ。
次元が仕入れてきたビンテージ物のウイスキーを味わいながら管を巻いた。
「また懲りずにあの女の言うことホイホイ聞きやがって。絶対また何か面倒ごとを引き連れてきやがったんだよ」
「うむ。拙者も同意見だ。弟子よ、お主はなにか感じることはあるか」
三対の目が私を真剣に見る。
こうやって時々意見を求められるようになったのは、私が勘と呼んで憚らない原作知識の賜物だろう。
ピラミッドの謎の石、偽ルパン処刑、と来ればまさにそれは『劇場版ルパン三世 ルパンVS複製人間』に他ならない。
私は慎重に口を開いた。
「かなり酷いことになりそうですね。具体的にはこのアジト、爆発四散すると思います」
「なにぃ!?どういうことだそりゃ!ここにはこの酒の他にもコレクションが沢山あんだぞ!」
「あと、敵は………気に食わない」
「ほう。気に食わない、か」
五エ門先生が不思議そうに片眉を上げた。
「お主が感情的な意見を言うとは珍しいと思ってな」
「……失礼しました。お見苦しいところをお見せしました」
私はふっと我に返って、恥ずかしさにいたたまれなくなりながら視線を逸らした。
何故かマモーのことが強烈に気に食わない、と、神と名乗るあの男のことが酷く忌々しいのだと自身が感じていることに気がついた。
それがなぜかはわからない。
ただ、あの男を許してはならないのだと感じている。
そんな私を見て、降谷さんがカラカラと快活に笑った。
───なるほど、お前プライドが高いからな。それでかもしれない
───!?!?
降谷零に、あの妖怪プライドエベレスト男に「お前はプライドが高い」とか言われただと!?
わたしはあまりの衝撃に言葉を失った。
───そんなにですか!?そんな僕プライド高い方でしたか?
───お前、自分が敵に軽んじられるとすぐキレるだろう。舐められたら殺すというか。俺としてはお前のそう言うところは好ましいと思うが
───な、舐められたら殺すって……鎌倉武士じゃないんですから
自分の言動を振り返ってみてもそういうところは……無くはないな。うむ。
そこで気がつくことが一つ。
まさか、コレが前に紅子さんが言っていた、神としての───
「あ、そろそろ時間だから俺行ってくるわ。不二子ちゃんとのデートの時間だ」
ルパンが意気揚々と立ち上がり、その場はお開きとなった。
間違いなく罠だが、そんなことルパンとて分かって貢いでいるのだから始末に負えない。
「じゃ、お前らあとはよろしくなー」
軽く手を振るルパンの後ろ姿を目にしながら、私を含めたルパン一味全員が、事件の始まりをぼんやりと感じ取っていた。
というわけで、無事に謎の石を不二子さんに奪われたルパンが昼のカフェテラスで資料を探る今現在。
突如軍事用ヘリの機銃で一斉掃射を受け、私たちは瞬時に戦闘態勢に入らざるを得なかった。
一瞬時間が遅く感じる。
乱れ飛ぶ銃弾。
悲鳴を上げる市民達。
イマイチやる気のない五エ門先生がチラリと私に視線を寄越したので、反射で斬鉄爪を取り出して構えた。
コレはお主がやれ、の意だ。
仕方ない。
迫る初弾を直前で全て弾き、次の二撃目を余裕を持って切り落とす。
舞うように白い着物を靡かせ、狐面のふさ飾りを揺らして舞踏を魅せる。
今の私の見た目は狐面に紅白の着物、そして腰に注連縄を巻いている奇妙な姿だ。
形だけでも神としての自覚を持つことが大事だ、と魔女からの助言もあったので、普段からこの格好をするようにしている。
この姿のモデルはお稲荷さん、すなわち稲荷神だからな。
もっとも、本来的な稲荷神である宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)は狐の姿はしていないが。
装填済みの弾が切れたのか、それともいったん十分だと判断したのか、軍用ヘリはその機銃の回転を停止させた。
私の周りの銃弾は爪で全て弾かれ、目の前のアスファルトにめり込んでいる。
残念ながら、わたしの手の届かなかった範囲では死人も多い。
銃弾を腹や頭に受け、血を流している一般市民も数多い。
こんな街中でこれ以上無茶苦茶にぶっ放されては被害は増えるばかりだ。
魂を糸状にして素早くホバーするヘリコプターへと放ち、そのまましゅるりと引き絞る。
手にかかる重さはまるでない。
ずしん、と。
豆腐でも切るように、埒外の切れ味でヘリを切り落とした。
「流石安室ちゃーん!」とルパンが調子良く笑ってみせる。
魂を変形させた刃は近距離では変形時間分斬鉄爪に劣るが、遠距離攻撃では最優と言っていい取り回しだ。
そしてそのまま車を走らせれば、お次は銭形警部のパトカーの群れだ。
急いでルパンが車のアクセルを踏み込む。
ルパンの意味不明なまでのドライビングテクニックは降谷さんも敵わないところ。
街中を縫うように駆け抜け、人気のない崖沿いの広野を進む道を選択する。
拡声器越しに「ルパン逮捕だー!」という銭形警部の声が聞こえる。
最近はコレを聴くと体がビクッとするようになってしまった。
私もすっかりルパン一味ということだろう。
助手席から顔を出しているのは諸伏さんだ。
それを見つけ、降谷さんが思わず「ヒロ!?いたのか!」と嬉しそうにした。
いや喜んじゃあかんやろ。彼は私たちを捕まえにきとるんやで。
そのさらに背後には、道いっぱいを占拠するような巨大な青いトラックが一台。
ずずずずず、と馬力の違いで段々と距離を縮めるトラックに段々と嫌な予感を覚え、私はルパンに問いかけた。
「あれ、斬りますか?」
「いや、その必要はないね。何事も斬ってばっかじゃ芸がねえってな!見てろぉ!」
ハンドルを切り、歪んだガードレールをうまく使って一段上の林へとするりと逃げ込む。
「なんとぉ!?追えーっ追えーっ!」と叫ぶ銭形警部の声を聞きながら、ふと振り返ったその瞬間。
巨大トラックが警察車両のうち一つを轢き潰した。
続けて2台目も無惨に身長ほどもあるタイヤに押しつぶされてペシャンコになる。
私は思わず車の外に飛び出していた。
「お、おい安室!」
次元さんの慌てた声に返事をする余裕もない。
銭形警部なら問題ないだろうが、諸伏さんは別だ。
あんなトラックに轢き潰されたら死にかねない。
ほぼ反射、無意識の領域で魂を縄とし、トラックを釣り上げる。
右手でぐいと持ち上げるポーズをしたのは考えての行動ではなかった。
そして拳を握り込むと同時に、トラックは糸状に変わった魂によって賽の目状に切り落とされた。
潰されかかった銭形警部の車は後輪がダメになったのか動かないようだ。
「フォックステイル……」と何か痛ましいような顔をした銭形警部は首を振り、「だとしても逮捕だ!」と気勢を上げた。
「ひゅー、安室ちゃんさっすがぁ!超能力者さながらだったぜ」
「ははは。すみません、勝手に飛び出て。行きましょうルパン」
「良いのか?」
「はい。この状況では僕らといる方が危険だと思われますので」
遠くから戦闘機がこちらへ向かってくるのが見えている。
たぶんこれ、爆撃されるやつだ。
ルパン達の車へと大急ぎで戻り、林の中を走り出す。
木々が邪魔でうまく位置がわからなかったのか、飛来した戦闘機は適当に無誘導爆弾をばら撒いた。
素晴らしい威力の爆発に車はくるくると横転し、ルパンは窓からポロリと落ちてむすっとした顔をした。
それでようやく戦闘機は帰っていったが……予想通りというべきか。
ヘトヘトで帰ってきたアジトは完全に燃やされて見る影もなかった。
私の警告を聞いて重要なものは皆神域内に移動済みだったからよかったものの、ビンテージもののワインやお気に入りのソファなんかは見る影もない。
あと地味に石川五右衛門レゴが移動してあった。
あんな大きなものいつの間に避難させたんだ。
皆ぷりぷりと怒っていたが、どちらかといえばまだ見ぬ敵への警戒が勝っているようだった。