バーボンなオリ主と降谷さん【現在公安ルート連載中】 作:ラムセス_
アジトから焼け出された後、たどり着いた街で私たちはアメリカ空軍からの招待状を得ることになった。
それも常の公的機関との関係性…つまりは連行ではない。
ふっと現れた赤井秀一が正面から話しかけてきたのだ。
赤井はサングラスにマスクというわずかばかりの変装をしたまま「やぁ、降谷くん達。それとかの大泥棒ルパン三世」と言って笑いかけた。
「何の用だ、FBI。俺たちは忙しいんだ。お前に構っている暇はない」
「そう言うな降谷君。少し長官からの依頼でな、君たちに来てもらいたいところがある」
「牢屋なら断っておくぞ」
すげない降谷さんの言葉に、赤井さんは軽く笑って肩をすくめるアメリカンな仕草をした。
「もちろん違うとも。以前俺が訓練のため軍に所属していたことがあると話したことはあったかな」
「覚えがないな」
「そうか、まあいい。それで、国防長官が君たちに聞きたいことがあるらしい。これでもアメリカの国防の危機でね。快諾してくれると嬉しい」
ちらり、とルパンに視線を向ける。
ルパンはパチクリと惚けた顔で瞬きをした。
「ま、こんだけ熱烈歓迎されてんだ。招待ぐらい受ける度量がなくちゃな」
「赤井、案内しろ。手早くな」
「………別に構わないんだが、なぜそうも君は俺への当たりが強いんだ?君はもう公安でも何でもないだろう」
むすっとしたまま降谷さんは何も答えない。
多分魂レベルで相性が悪いんだと思われるが、これでもマイルドになった方だ。
案内されたのは近場の空軍基地だった。
そこの会議室らしき一室に通され、私たちは安っぽいパイプ椅子にどすりと腰を下ろした。
やってきたのは屈強な軍人が数人。後からやってきた管理者と思しき人間がお偉いさんだろう。
彼らは皆名乗らないので詳しいことは分からない。
とはいえ、犯罪者と政府の重役だ。お互い名乗らない方が後腐れないのに間違いない。
彼らの話は長かったが、概して言えばアメリカを脅迫して最新の医学・生命工学技術を強請ろうとする不届き者がいた、ということだった。
下手人の名はマモー。
ルパンへの要望はマモーの本拠地を教えろ、とのこと。
「そりゃ俺らも聞きてぇよ」
「ふざけるな!正直に吐かねばお前のためにならんぞ!」
「そんなこと言われたって知らねぇもんは知らねぇって。なぁ、次元」
「そうだな。不二子ともあれから連絡がつかねえし、向こうから仕掛けてくるのを待つしかねぇのが現状だ。だが……オメェなら何か知ってんじゃねえか、安室」
その場全員の視線が私に集まる。
「僕は、」と少しだけ詰まったので、ルパンはひっそりと私の耳元で囁きかけた。
「勘っつーか、ある種の未来予知なんだろ」
「!」
「いいぜ。この状況だ。詳しいことは聞かねえでおいてやるよ」
ルパンはどうやら察してはいたらしい。
そこまで言われては仕方ない。
私は重くなりそうな口を何とか開き、原作知識を開帳した。
「カリブ海の個人所有で一番大きな島、ですね」
「なに?」
「恐らくはハワード・ロックウッドの所有する個人の島です。ロックウッド氏その人がマモーの正体、というわけですね」
長官らしい人物がよく整った口髭を撫ぜて、鋭く目を細めて私を見た。
「本当かね?」
「相手は大富豪です。どちらにせよ裏付け調査は何かしら必要かと」
「……その通りだな。話が早くて助かる」
長官は少しばかり思案した後、ゆっくりと目を開けた。
そこには憐憫とも打算ともつかない複雑な思いが滲んでいる。
「やはり我が国へ来ないかね、降谷零元捜査官。君も、本国から不当に追放されたことに思うところはあるだろう?」
「………」
「我が国は自由の旗を掲げる真の民主主義国家だ。君の力を十全に発揮するには十分な懐の広さもある」
私は身じろぎした。
降谷さんが黙ったままなのが気持ちを重くする。
「君も好き好んで犯罪者なんぞやっているわけじゃないだろう?」と長官は笑いかける。
降谷さんは暫し目を伏せてから、重く、己を鞭打つように宣言した。
「俺はそれでも、桜の代紋に魂を捧げているのです。その誓いを、裏切ることはできません」
「……なるほどな。本当に分からんよ、これほどの捜査官を手放す日本の意図が」
長官は肩をすくめて首を振った。
話はそこでおしまいだった。
約束通り私たち3人は速やかに解放され、五エ門師匠の「ふむ。降谷、お主の日本料理が食べたい」という言葉で飯にすることになったのであった。
その日の夕方。
急がば回れというけれど、やはり時の運を逃してはならぬ。
つまり突入突入!というわけだ。
アジトを焼いて幾度も襲撃をかけてくれたお礼参りに、やってきましたカリブの島々。
マモーの城、個人所有らしい美しい島の一つに到着した私たちは、かつて海賊の縄張りだったであろう美しい海と白い砂浜とを通り過ぎながらボートを走らせていた。
もちろん緊急脱出用に深層心理には小型船五隻と飛行機3機、潜水艦一機が常備されている。
この車庫は入れ替わりが激しく、逃走中に壊れたりでどんどん顔ぶれが新しくなっている。
白い砂浜は絹のように滑らかで、係留したボートの浮かぶ桟橋は水底まで見えるほど透き通っている。
そんな南国の楽園も見かけだけ。
島に着いた途端、私たちはマモーの手下に包囲された。
色とりどりのTシャツを着たラフな男達が揃いも揃って頭を丸めているさまは、なんだか服装のカラフルさも相俟ってチンピラのようだ。
その間を足音もなくやってくる小さな男が一人。
砂浜だと言うのに跡も残さず空中を滑るように動くのは、マモー、その人である。
「まさかそちらからやってきてくれるとはな。ルパン。それに……真実の不老不死。神の卵よ」
「あん?そりゃ安室のことか?」
ルパンが眉を吊り上げた。
マモーはルパンにも並々ならぬ興味がある様子だが、それ以上に後ろに立つ私達に焼くような熱視線を向けているようだった。
「君の複製は失敗だった。作れども作れども君のような特異な力は宿らなかった」
「!……俺の、クローンを作ったのか!?それをどうする気だ!」
「もうすでに廃棄したよ。ただの凡庸な失敗作だったのでね」
マモーのクローンは自意識までも完璧にコピーする、埒外のクローン技術だ。
それはまさに、降谷さんという自意識が作られては処分されたと言うことに等しい。
白熱する意識を何とか息を吐くことで発散させ、青ざめて絶句する降谷さんをゆっくりと覗き見る。
「おいおいおい、そりゃ聞き捨てならねぇなぁ。クローンだって?どういうことだよ」
「ふん。君は黙っていたまえルパン三世。君はあの処刑されたルパンが何者かも知らないのだろう」
「何者だってんだ?あん?」
「ふふふ、どうだろうね」とだけ言ってマモーは私へと体を向け直した。
やはりルパンより私を注目しているようだ。
「さぁ、フォックステイル。私と共にくるがいい。君こそが私と並びこの世の神となるに相応しい!」
「……そんな戯言に乗るとでも思っているんですか?マモー。ハワード・ロックウッドの地位を持つもの」
「ほう。それももう把握済みか。素晴らしい。私に永遠の命の秘訣を明け渡すんだ。私はそれでついに永遠の命を得て、真の神へと至る!」
まさに、聞くに堪えない汚言であった。
私はどんどんと意識が冷たく凍るような感覚に囚われた。
許すことはできない。こんな俗物が神を名乗るなど!
遙かより見下ろす神格の幼体として、許容などできようはずもない!
「断る」
同時に、怒りのままにマモーの護衛15人全員の首を落とす。
つるりと、まるで荷物を取り落とすかのように頭を肩から転げ落とした。
魂の刃で手すら動かさず、首を縊るように刃の糸を絡めたのだ。
これには予備動作が無いため会話中の奇襲にも適している。
「なっ…!」
「マモー。ゼロのクローンの亡骸はどこにあるか吐け」
次いでギリギリと魂の紐でマモーの全身を縛り上げ、吊り上げる。
まるで見えない何かに引き上げられるような形になったマモーは、自身の念動力で抵抗しているのか空中でもがいている。
だが残念。非力な念動力なんかより、この魂の紐はずっとずっと強力だ。
キリキリと気道を絞めれば、マモーは不気味な高笑いをしながら私をせせら笑った。
「なんだ、自分に同情でもしたのか!がっかりだよ、神とは我一人、己一人を至上とする者!そのような精神性では、力の持ち腐れというものだ!」
「黙れ。必ず貴様の本体をバラしに行く。培養液の中でせいぜい震えているがいい」
「……!な、なぜそれを、いや、分かっていてここへ来たのか!」
怒りが頂点に達し、魂の動きが抑えられなくなる。
うねり暴れる魂の波が砂浜を大きく抉り、木々を薙ぎ倒し、岩に大きな爪痕をつける。
岩石がえぐれる音が耳に痛い。
「あっ、安室!落ち着け!」と次元さんが帽子を押さえてわたわたと手を動かす。
「吐け、マモー」
「はははは!処分したと言っているだろう!そんなものすでに無……カハッ、」
そうして。
マモーの遠隔子機の首へと食い込んだ魂の縄が、奴の素っ首を縊り落とした。
・降谷零のクローン
相棒がいなくてパニックになっているところを皆処分された。
ここはどこだ、安室がいない、何故、どうして───!?